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長命は善か
著者: 天児民和12
所属機関: 1九州大学 2九州労災病院
ページ範囲:P.877 - P.877
文献購入ページに移動現在の臨床医学の救命の技術はあらゆる可能性を動員して強力に行われている.そのために人間の寿命はたしかに長くなつた.私の父が40年前に亡くなつた.満60歳であつた.その時に60歳まで長生きせられたのだからという皆様の挨拶を聞いてそうかなあと思つたが,今日では60で死亡することは若死である.しかし人間の命を長くすることが果して善と言つていいのであろうか.私は折々その壁につきあたつて当惑する.今は分業の世の中である.医師はただ救命にだけ努力すればよいのである.あとの問題は社会科学者が処理するべきである.そう割り切れば甚だ簡単ではあるが,では誰が社会科学者にこの問題を提議するべきであろうか.飯野先生もこれと同じようなことをどこかに書いておられたが,科学の進歩と人類の福祉,幸福というものがどこかでくい違つてゆくのにローマクラブのメンバーではないが不安を感じざるを得ない.
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