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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻12号

1974年12月発行

雑誌目次

視座

大腿骨頸部内側骨折の治療法について感ずること

著者: 伊丹康人

ページ範囲:P.963 - P.963

 大腿骨頸部内側骨折にはSmith-Petersen以来,多数の術式と固定法が工夫され,改良が加えられてはいるが,「現在なお理想にはほど遠いものがある」といつても過言ではあるまい.たとえば,Pugh nailを用いたJacobsは,51人中3年以上経過した44人についてみると,優良73%,骨頭壊死7%,偽関節20%であつたという.ReicheltはDoppel-Schraubeを用い,231骨折中骨頭壊死は41骨折,偽関節は50骨折に発生したと報告している.さらにKochはDoppel-nagelungを用い,優良52.8%,不可24.4%であつたともいつている.MetzはまたDeyerle法を用い,43人中2年後の成績は,骨頭壊死11.6%,偽関節は4.7%であつたとしている.Frangakisによれば,骨頭壊死の頻度は13.3〜67.8%,平均44.7%といつている.
 以上のように,頸部内側骨折の骨頭壊死の発生頻度は,報告者によつてまちまちであり,また骨折の型によつてはもちろん,治療法によつても差があり,一概にはいえないが,合併症として部分的壊死から完全な骨頭全体の壊死を含めば,20〜30%の骨頭壊死,10〜15%の偽関節を生ずるという,きびしい現実を,これまた否定することはできない.すなわち,Astley Cooperらが150年前に大腿骨頸部内側骨折に対して"unsolved fracture"といつた言葉は,現在なお生きている.

論述

Ankylosing Spondylitisに対する頸椎部矯正手術に関する一考察

著者: 井上駿一 ,   土屋恵一

ページ範囲:P.964 - P.974

 Marie-Strümpell disease,Pelvospondylitis Ossificans,Rheumatid Spondylitisともよばれる強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)は通常仙腸関節にはじまり上行しながら椎間関節,靱帯の骨化をひきおこし,腰椎前彎の喪失,著明な頸椎,胸椎の前彎形成のため遂に仙骨より後頭部にいたるまでの全脊椎が1本の竹のように"bamboo spine"となり高度な日常生活動作の障害,重大な外傷の危険に常にさらされるところの特有な疾患である.本症に対する外科的矯正法は1945年Smith-Petersenにはじまり主として骨切り術による矯正が幾多先人の手により発表されている.今これらを通覧すると一般に骨切り部の高位としては比較的安全な腰椎上部を選んでいるものが多く,骨切り部より上位の頸,胸椎部における代償性前彎の形成により直立位を得ようとしている.

小児下肢切断者のリハビリテーション—特に下肢先天奇形・欠損児に対する義足装着と訓練について

著者: 加倉井周一

ページ範囲:P.975 - P.985

はじめに
 最近数年間に,これまで遅れていた身体障害者とりわけ切断者や麻痺患者等肢体不自由者を対象にしたリハビリテーションが各地で積極的に行われるようになつたことは喜ばしいことである.リハビリテーションの分野の一部門を占める義肢装具についてもさまざまな問題が指摘されるようになり,医師とりわけ整形外科関係でも補装具に対する関心が高まつてきた.
 周知のように1960年に発生したサリドマイド薬渦による重篤な先天性両上肢高位欠損児を契機としてわが国でも動力義手の開発が各地で行われてきた.けれどもその結果は必ずしも障害児の実用に十分耐え得るものとはいえず,今後さらに新しい見地に立つた研究開発が望まれる次第である.

2回手術による指屈筋腱再建術—腱移植術の前に人工腱を用いる方法

著者: ,   田島達也

ページ範囲:P.986 - P.993

いとぐち
 1965年,著者は動く人工腱に対する生体反応として新しい腱鞘が形成されその中に遊離移植された腱はその機能を保持することができる事実を公表した6,7)
 以来この方法を用いて著者らの成績はますます向上しつつあり9),高度な指屈筋腱損傷を救うためにはまず信頼できる人工腱を初回手術で挿入しておくことが指屈筋腱損傷に対する再建手術の成績を改善するために有効な手段であると確信するに到つた.

スポーツ選手の膝レ線所見—とくに膝の外反度と膝蓋骨高位について

著者: 腰野富久 ,   高沢晴夫 ,   岡本連三 ,   深谷茂

ページ範囲:P.994 - P.1002

はじめに
 スポーツ外傷の統計調査は水町によるもの11)をはじめ数多くの報告がみられる.また高沢ら14)は関節炎,関節症,筋肉痛および外傷後遺症などの慢性疾患をスポーツ障害として外傷とは別の方向から研究を進めている.今回昭和46年度より日本体育協会にて,膝・足関節のスポーツ研究調査15,16)を通して,多数の一流スポーツ選手の膝関節について,臨床所見およびレ線学的所見を観察する機会を得たので,そのレ線像から,下肢のアラインメントおよび膝蓋骨の位置関係を中心に計測結果をまとめて報告する.

手術手技

Microvascular surgery

著者: 玉井進

ページ範囲:P.1003 - P.1009

はじめに
 1960年,Jacobson & Suarez1)によつて開発されたmicrovascular surgeryの技術は,現在では,整形外科領域にも広くとり入れられ,切断指再接着術や血管付皮弁移植術などに,その真価が遺憾なく発揮されている.Microvascular surgeryといっても,われわれの領域で用いられるのは,脳神経外科と違つて,微小血管の端々吻合術が主体を占めている.この技術を修得するには,適当な指導者のもとで数週間みつちり練習する必要がある.一応の基本を身につければ,この技術を応用した動物実験を続けて,臨床の実際に備えねばならない.撓まぬ努力なくしては,満足すべき成績は期待できない.
 本誌では,microvascular anastomosisの基本手技について紹介するが,文章では十分書きつくせない手技上の微妙なポイントも多々あることを御了承いただきたい.本著がこれからmicrosurgeryを始めようとする人達への道しるべとなれば幸いである.

第47回日本整形外科学会総会より

頸椎症性脊髄症<総合討議>

著者: 小野村敏信

ページ範囲:P.1011 - P.1016

 第47回日本整形外科学会総会(会長:柏木大治教授,昭和49年4月,神戸市)において,頸椎症性脊髄症の治療成績が総合討議の一つとして取り上げられた.この討議はいわゆるブライトン方式によりchairman津山直一教授,co-chairman平林洌助教授の司会で行われ,6題の研究発表があり,私もintroductory speakerとして参加したが,本症の観血的治療上の問題点が多角的に検討され,この疾患に経験深い方々の意見を知ることができた.ブライトン方式はこのテーマのように対象とする疾患あるいは治療方針に共通する部分の多いときには,従来の方法に比べて導入部を省略し,討論の焦点をはつきりさせることができるので非常に良い方法であると考えられる.今回は時間の関係上,討論時間がもうすこしあればという印象を受けたが,われわれがこの方式に慣れてくれば実りの多い進行法となるであろう.
 以下この討議でとりあげられた問題点を順を追つて紹介してみたい.実は各演者から予め御寄せいただいた研究内容はいずれも本症観血的治療の広い範囲にわたるものであつたが,討議の構成上各演者にはそのうちの2,3の問題に限つて御発表いただくよう依頼したため,席上十分に述べていただけなかつたのではないかと危惧している.そこで,ここでは各演者が予稿の中で述べられた御意見もできるだけ加えて報告したい.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(27)

著者: 古屋光太郎 ,   金子仁 ,   骨・軟部腫瘍症例検討会

ページ範囲:P.1017 - P.1021

63歳男性の右足関節腫瘍症例
 A 症例は63歳・男性で主訴は右足の疼痛および腫脹です.発症は昭和47年11月で,階段より転落し,右足関節捻挫,その後約2ヵ月くらいしてから段々右足が腫脹し,近医にてマッサージ等を受けていましたが,局所症状はさらに悪化し,昭和48年5月当科に紹介されました.初診前のX線経過は(第1図)のごとくで踵骨下面を中心に骨吸収・破壊像が進行しております.最初calcaneusのmetastatic cancer to boneの疑いでわれわれのところに送られてきた患者です.
 初診時全身所見は体格中等度,栄養良好で検査所見では,血沈値の亢進,CRP 6(+),LDH値の軽度上昇がみられる他は異常はありませんでした.

鼎談

日本の整形外科の黎明期

著者: 岩原寅猪 ,   片山良亮 ,   天児民和

ページ範囲:P.1022 - P.1033

 天児 「整形外科の黎明期」を語るですが,ところが,私はこの3人の中で一番若手ですから,実際の黎明期というのはあまり—,それを知つておられるのは片山先生ですね(笑い).
 片山 われわれもやはり途中からですね.

臨床経験

肩鎖関節脱臼に対するBosworth変法の適応

著者: 平井啓 ,   原晃

ページ範囲:P.1034 - P.1040

はじめに
 Bosworth(1941)は,肩鎖関節脱臼の治療に鎖骨と烏口突起の間をvitallium screwで固定する方法を発表した.本法では肩の外転運動制限が危惧されたが,Kennedy(1954)らは肩甲骨の代償運動により外転が可能なことを指摘し,また,Weitzman(1967)は24新鮮症例にその変法を施行し好成績を得,本法の有効性を認めている.
 一般にこの部の損傷はその予後機能成績がよく,このため,肩鎖関節の二次的変化等はあまり問題にされなかつたが,高齢化とともに,肩の機能低下が考えられるので,肩鎖関節の変化を軽視すべきではないと思う.

大腿骨顆上骨折に対するCast-Braceの応用例

著者: 村瀬雅之 ,   瀬尾泰 ,   平川寛 ,   高浜晶彦

ページ範囲:P.1041 - P.1048

はじめに
 大腿骨遠位端部骨折は,従来比較的頻度の少ないものであつたが,近年交通・労働災害の激増とともに増加の傾向にあり,骨折の形態も粉砕型あるいは開放性のものが多くなつて,また関節内骨折の型をとるものも少なくない.本骨折は,荷重と広い運動範囲を要求される膝関節機能に対する影響が大きいところから,障害を残しやすく,骨折治療のなかではむつかしいもののひとつとされている.
 われわれは本骨折に対し,その骨折型に応じてBlade Plate. Tibia Bolt. 螺子・交叉性または逆行性髄内釘などにより,できるだけ解剖学的な整復と強固な内固定を行なつて,早期に運動練習することを原則としている.

Congenital clasped thumbについて

著者: 三浦隆行 ,   木野義武 ,   中村蓼吾

ページ範囲:P.1049 - P.1054

 Congenital clasped thumbは,1934年Zadek11)のcongenital absence of the extensor pollicis longusの1例報告以来,Miller(1944),Barsky(1951)1),White & Jensen(1952)9),Weckessor(1955)7),Broadbent & Woolf(1964)2),Crawford, Horton & Adamson(1966)3),Weckessor, Reed & Heiple(1968)8)らにより,pollex varus, infant's persistent thumb-clutched hand, flexion-adduction deformity of the thumb,先天性握り母指などの名称で報告され,本邦においても津下5),山下10),難波4)らの報告がみられる.
 これらの報告をみると,先天性に母指のMP関節伸展障害を主徴とする疾患ではあるが,その病像には報告者により異なるいろいろの型が含まれており,clasped thumbの名称でいかなる病像の疾患を考えればよいかは明らかではない.

骨形成不全症にみられる側彎症について

著者: 塚田忠行 ,   熊野潔 ,   高橋勇

ページ範囲:P.1055 - P.1058

はじめに
 骨形成不全症はその特異な臨床症状のために古くから知られた疾患であり,内外ともに文献は枚挙にいとまがないが,側彎症の合併は頻度が高いにもかかわらず,それをとりあげて論じた文献は散在するにすぎない.われわれは16例の本症の側彎症を分析してその自然経過について言及したい.

カラーシリーズ 整形外科手術・5

Dwyer法

著者: 大谷清

ページ範囲:P.958 - P.961

 1964年Allan F. Dwyerは前方椎体侵襲により彼独自の考案による矯正器具と椎体固定具を用いて側彎症にたいする矯正固定を試みた.以来,10年を経過した今日,その方法はやっと完成され,いわゆるDwyer法として今や脚光を浴びてきた.そもそも,側彎症に関しては,未だ解明されなければならない多くの問題を残しているが,本症のもたらす脊柱の形態学的変化は主として椎体にあり,椎体に侵襲を加えて変形を矯正することは合理的であり,妥当である.Dwyer法の利点はこの点にある.
 本法の利点は,①矯正固定が確実であること.②椎体の捻転矯正も可能であり,いわゆるrib humpも矯正できる.③固定範囲は比較的狭く,major curve範囲内であり,double major curvesの例は可橈性の悪い方の彎曲のみの固定で,両彎曲とも可橈性の良好なときは下位彎曲のみの固定でよい.④移植骨は少量でたりる.⑤手術侵襲は比較的軽い.⑥術後の臥床期間は短期間で,約2週間である.⑦外固定期間も短期で,約3か月である.⑧矯正喪失が少い等である.一方,本法の短所は何といっても技術的に難しく,脊椎外科技術の習熟が欠かせない.本法の最もよい適応部位は胸腰移行部であり,上位胸椎にかかる側彎にたいしては術野が狭く,操作がやりにくく本法の適応とならない.本法適応の上界は第5胸椎である.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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