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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻2号

1974年02月発行

雑誌目次

視座

手の新鮮外傷の初療

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.109 - P.109

 日本で手の外科に関心をもつ人がふえ出してから,まだやつと20年といつてよいであろう.日本手の外科学会が1957年に発足してから今年で約15年である.しかし,その間に手の外科は目覚しく進歩発展し,またいちじるしく普及した.今日では,少くとも整形外科医である限り,手の外科を特殊な分野と認めない者はあるまい.
 しかしその特殊性を認める意味が,複雑な手の構造や機能と,その障害を修復する際の再建手術のむずかしさなどに主眼がおかれていて,むずかしい症例は専門家に任せればよいという気持に連つているように思われる.それはそれで悪くないのであるが,どうしても専門家ばかりに任せておけないのが,手の新鮮外傷の初療である.

論述

脊髄Vascular Malformationの臨床—自験例6例を含めた116例の臨床的考察

著者: 辻陽雄 ,   大塚嘉則

ページ範囲:P.110 - P.128

緒言
 脊髄麻痺を来たす脊髄外科的疾患の一つとしての脊髄血管形成異常は,比較的稀なものと考えられてきた観がある.その理由には蒲原ら35)の指摘するような脊髄脈管解剖や病理に不明な点が多いほか,本症がしばしば脊髄の広範な部位にわたつて存在し,bizarreな臨床経過,病像を呈しうること,さらに決定的な診断法に乏しかつたこと等も大きな原因と考えられる.従つて従来は脊髄腫瘍,arachnoiditis,myelopathy,myelitis,multiple sclerosis,amiotrophic lateral sclerosis,spinal arteriosclerosis,Buerger病,intermittent ischemia of the spinal cord,spinal cord syphilisなどの臨床診断で保存的あるいは外科的に治療されて,手術や剖検8)で始めて確定された例が少なからず存在した。ここ十数年来,西欧においては本症の診断と治療に急速な進歩がみられて来たものの,外科的治療には顕微外科的設備と熟練を要するためにしばしば手つかずのまま手術を中断することが少なくなかつたし,かかる経験は決して稀でなかつたはずである.

胸骨柄部体部間関節症(Arthrosis of the Manubriosternal Joint)について

著者: 伊藤恵康 ,   福田宏明 ,   高橋正憲 ,   大平民生

ページ範囲:P.129 - P.139

はじめに
 胸骨とその周辺は,僅かにその骨折,柄部体部間関節(Manubriosternal joint…以下MS関節と略記する)の脱臼10)等が注目を集めるに止まり,整形外科日常診療において見捨てられた領域の感が少なくない.
 そこで,最近我々が経験したMS関節関節症の病態を,胸骨の発生,解剖,MS関節の加齢変化等,多方面から検討論述する.

スポーツ選手の腰部障害—特に重量物挙上様式をとる種目を中心として

著者: 市川宣恭 ,   広橋賢次 ,   小松堅吾 ,   若林亘 ,   長田明 ,   馬場康夫 ,   渡辺径宏 ,   越宗正晃 ,   黒田晃司 ,   松田英樹 ,   神原俊和 ,   前田勉

ページ範囲:P.140 - P.148

はじめに
 スポーツ選手における腰痛はトレーニングをつむ過程において一時期の発症あるいは軽症のものは止むをえないものとし,なかには腰痛がおこつて始めて一人前であるという暴論すらきかれる.いずれにしろいまわしい症状の一つである.
 一般にトレーニングの負荷処方の原則としてover load principleがあり,intensity,duration,frequencyのそれぞれについて数量化し,個人ごとに運動処方を与えるというトレーニング処方の合理化を計る傾向がみられるが,高度の技術を駆使しなければならない場合や,できるかぎりの重量物の負荷にたえねばならない競技スポーツにおいて,あらゆる動作の運動軸となる脊柱,ことに力の支点となる腰椎下部は生体力学的にも想像以上の過度の負荷がかかり,その解剖学的弱点と相俟って障害をおこしやすい.

減圧症と骨関節の変化—2.減圧症の実験的研究

著者: 林晧 ,   川島真人 ,   北野元生 ,   島巣缶彦 ,   加茂洋志

ページ範囲:P.149 - P.154

緒言
 減圧症の病態を把握し病因を究明するために19世紀以来幾多の実験的アプローチが試みられてきた.われわれもまた臨床的な減圧症の研究の他に実験的にも,犬,家兎およびラットを用いて減圧症を作成し,病理組織学的な検索を加えたので,それらの結果をもとにしながら減圧症の本態にメスを加えていきたい.

検査法

整形外科および形成外科領域における3H-thymidine autoradiographyの応用

著者: 井上四郎 ,   榊田喜三郎 ,   市田正成 ,   芦原司

ページ範囲:P.156 - P.162

 ここ数年来,われわれの分野に属する学会において,種々のautoradiographyを用いた研究が発表されるようになつてきた.その多くのものは,組織や細胞の代謝過程のあるステツプに特異的な前駆物質を投与し,その標識されたアイソトープのとりこみを利用して行なわれてきた.この標識物を追跡することによつて細胞,組織の代謝を,細胞レベルでより明確に把握することが可能となつた.また時間のfactorを考慮に入れたdynamicな観察ができるようになつたわけである.これらの有用な研究方法も慣れない術語や組織所見のため広く親しみをもつて理解されないのが現況である.しかし実際にこのような研究方法を理論的にも,また技術的にも習熟してみれば,かえつて単純明解な研究方法であるとさえいえよう.
 われわれもこの数年,主として3H-thymidine autoradiographyを応用して,広く研究を進めてきた結果,非常に有効な研究手段であると信ずるので,ここに一般的な解説とともに,実際の手技について説明する.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(24)

著者: 金子仁 ,   骨腫瘍症例検討会

ページ範囲:P.165 - P.168

4歳女児,左肩甲骨後部の無痛性腫瘤
 A 患者は4歳の女児で昭和47年の7月中旬に左の肩甲骨の後方の無痛性腫瘤,母親が気付いて来院しております.同じ生活をしていても父親は全然気付いていないということで,徐々に発症してきたのではないか,と想像しております.地方の先生から紹介されて,われわれの外来に参りました.
 Past historyはございませんし,全身状態も良好でblood chemistryにも異常なく,ただ肩甲部が腫れているということだけで,強く押せばもちろんtendernessはありますが臨床症状としては,左肩関節もよく動きますし,腫れ以外に何もないわけです.僅かにlocalのvenous dilatationが軽くみられる程度で,私共最初muscle由来のものかなと思つてレントゲン写真を撮りました.これが当時のレ線写真(第1図)で,このような肩甲骨の広範な破壊像を認めます.そこでEwingかneuroblastomaのmetastasisかということで,biopsyをやりました.これはopenでやりましたが,出血はあまり強くみられませんでした.小指頭大のspecimenを取出して,中検に組織診をお願いしたのですけれども,結果はどうも私共が考えておるものと食い違う結果とはなりましたが,私共はirradiationをfirst choiceに考えていました.

臨床経験

橈骨末端骨折の治療成績

著者: 坂上正樹 ,   佐藤洋 ,   平山隆三 ,   新谷貫之

ページ範囲:P.169 - P.178

 椀骨末端骨折はしばしばみられる骨折であるが,高齢者に多く発生することから,その治療には困難を覚えることが多い.今回我々は過去7年間に当科を訪れた橈骨末端骨折症例について,follow upを行う機会を得たので若干の考察を加え報告する.

硬膜骨化を伴つた頸椎後縦靱帯骨化症の2剖検例

著者: 武市早苗 ,   高橋正倫 ,   井形高明

ページ範囲:P.179 - P.185

はじめに
 脊椎靱帯の石灰化ないし骨化を示す疾患としては,変形性脊椎症,強直性脊椎関節炎1),いわゆるForestier病2〜5)ないしphysiologic vertebral ligamentous calcification6),黄靱帯骨化症7〜10)などが知られている.その他,1960年にいたり月本11)が「脊椎圧迫症候を呈した頸椎椎管内仮骨の剖検例」と題して,後縦靱帯の化骨症例を報告し,さらに1962年に寺山ら12)が「後縦靱帯骨化症」という名称を提唱して以来,本症の報告例数も漸次増加している13〜21)
 われわれの2症例は,生前レ線像で,頸椎椎体後面に2重層状の異常石灰化陰影を認め,後縦靱帯骨化症と診断されている.しかも剖検により,2重陰影が後縦靱帯のみでなく同部の脊髄硬膜にも各々別個に仔在する骨化巣によつて形成されることを確認し得たので報告する.

皮下型サルコイドージスの1症例

著者: 高田宗世 ,   荒川弥二郎 ,   志羽孝 ,   堂下幸雄 ,   池田真康

ページ範囲:P.186 - P.189

 Sarcoidosisは,1869年Hutchinsonによる皮膚変化の観察が最初であり,その後1899年Boeckが臨床的,組織学的に詳細に本症の,皮膚病変を研究し,これをSarcoidと名付け,1934年Schaumann11)が皮膚病変のみならず他の臓器にも同じような病理組織変化を示すもののある事を認め,これをbenigne lymphogranulomaの概念ないし範疇に含まれるべきものと発表し,現在では,肺,リンパ節,眼,皮膚,その他の諸臓器に非結核性の類上皮細胞肉芽腫を生ずる系統的な全身疾患として注目を浴び,各科領域において,その病像と成因に関して多くの発表がみられている.
 皮下型Sarcoidosisの最初の報告は,1904年Darier & Roussy3)が皮下結節を主訴とする患者を組織学的に検索し,BoeckのSarcoidと全く同じ所見を得,これをSarcoides sous-cutaneesとして発表した.本邦では1936年谷村13)らの症例が最初であり,園田12)によるとDarier-Roussy皮下類肉腫またはSarcoidosisで皮下病変を伴なつた報告例は26例を数える事ができたと述べている.

スポーツによる脛骨近位骨端線離開と脛骨上端横骨折の2症例

著者: 奥田哲章 ,   富重守 ,   加川渉 ,   山田元久 ,   鳴戸聰雄 ,   松尾陽壮 ,   熊谷洋幸

ページ範囲:P.190 - P.192

 頸骨結節摧裂骨折はスポーツ特に走り高跳び,走り幅跳び等大腿四頭筋を急激に収縮する場合に起り,そんなに稀れなものではない.
 Watoson-Jonesはこの𦙾骨結節骨折を3型に分けているが,このたび私達はこれらの分類に属さない稀有な2例を経験したので報告する.

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 20—Histiocytoma

著者: 金子仁

ページ範囲:P.104 - P.107

 Histiocytomaはいまだ議論の多い腫瘍で,組織球が腫瘍の主体である.腫瘍細胞は一定の配列は示さず,胞体の中に脂肪,血鉄素,などを喰食しているものもある.時に多核巨細胞が出現する.一般に良性であるが,時に悪性化する.
 好銀線維は線維腫または線維肉腫にきわめてよく似ている.

学会印象記

イギリス整形外科学会に参加して

著者: 川島真人 ,   鳥巣岳彦

ページ範囲:P.163 - P.164

 カナダのバンクーバでの国際高圧学会,米国シアトルでの日米天然資源開発会議に出席の後,アメリカの各所をまわつて英国に渡り,イギリス整形外科学会(British Orthopedic Association)に出席する機会を得たので報告する.
 イギリス整形外科学会は春と秋の2回開催されるが我々の参加したのは秋の学会である.1973年の9月19日から22日の期間,ロンドンから汽車で3時間ほど離れたBirminghamのBirmingham大学で催された.

整骨放談

Dr. SCHOLLの店

著者: 水野祥太郎

ページ範囲:P.155 - P.155

 世界に名を知られた人は数すくなくはないであろうが,Dr. SCHOLLのような知られかたは,ちよつと他に類がないように思う.すくなくとも整形外科に関係した方面としては.
 はじめてヨーロッパに着陸した1950年秋,ジュネーブの大通りを物珍らしく歩いた日,とつぜんこの既知の名の看板にぶつかつて,胸をどきんとさせたのである.のち,ロンドンの目抜きの商店街リージエント通りでもお目にかかつたが,やがて欧米の中都市にはほとんどこの看板の下がつていることが分かつた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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