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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻3号

1974年03月発行

雑誌目次

視座

姿勢と整形外科

著者: 山田憲吾

ページ範囲:P.201 - P.202

 姿勢と運動とはHaglundの定義にまつまでもなく整形外科の基本的重要課題である.前者は,骨格筋の生理的現象として,γ系神経支配によつて反射的に営まれる筋活動の静的表現であり,後者はα系神経支配によつて随意的に営まれる動的表現である.あらゆる運動は姿勢(肢位)の背景の下に円滑に演出されるものであつて,両者は常に表裏一体,互に相補の関係にある.
 さて,随意運動指令の主座は脳皮質の一次的運動領野にあるとされるが,配下の末梢体部に対応し特定の中枢性支配区域がある.その区域の解剖的広さは体部の広さと必ずしも比例しない.一般に巧緻運動を必要とする体部に対してはその区域領野が広く,然らざるものは狭い.Penfieldの模式図でも明示されるように,一次的運動領野は顔面器官や手に対しては広く,下肢には狭く,軀幹に至つては無視し得るほどに狭い.このような錐体路系(α系)支配の乏しい体部に対しては,皮質下の基底核や脳幹,脊髄の錐体外路系(γ系)自動機構がその機能を補填している.即ち,皮質領野の狭い下肢では,その機能が歩行のような半自動機構によつて補われ,それを下肢の主要な仕事としている.また,皮質領野の殆んどない軀幹は,脳幹脊髄系のγ回路を介する反射機構(平衡機能)により専らその姿勢を保持し,筋トーヌスによつてそれを自動的に維持することが軀幹の本態的な役目とされている.そして,このような中枢神経機構,即ち,その内部のからくりによつて末梢体部の機能分担が合理的に配備され,個体としての全般的な機能統合がなされる.

論述

集団の性腺被曝を考慮した新しい乳児先天股脱検診の在り方について

著者: 篠原寛休 ,   土屋恵一 ,   舘野之男 ,   田中仁

ページ範囲:P.203 - P.211

 先天性股関節脱臼の治療開始時期は,可及的早期であることが,その予後によい結果を齎らすとの見解は議論の余地がない.
 しかしながら,ある地域,集団の中から脱臼児をscreeningする問題となると,その時期もさることながら,方法論においても,幾多の未解決の問題が残されている.

減圧症と骨関節の変化—3.潜水士の骨壊死と潜水環境

著者: 川島真人 ,   鳥巣岳彦 ,   加茂洋志 ,   林皓

ページ範囲:P.212 - P.222

はじめに
 前回は潜水病の総論的問題をとりあげたが,今回は潜水士の骨壊死と潜水環境および成因について述べようと思う.
 圧縮された高圧空気の下で作業を行う潜函工にはじめて骨病変を見出したのはBornsteinとPlate(1911),およびこれと独立した報告者であるBassoe(1911)である.1939年Kahlstromは病理組織学的に潜函工の骨1病変を骨壊死として証明,その後欧米では,多数の潜函工の骨壊死の報告が続いている.

境界領域

コラーゲンの架橋と整形外科的疾患

著者: 林泰史 ,   五十嵐三都男 ,   松浦美喜雄 ,   吉野槇一

ページ範囲:P.223 - P.230

はじめに
 骨,軟骨,腱,皮膚など整形外科で扱う臓器の主成分はコラーゲン線維であることはよく知られているが,コラーゲンの構造の変化が臓器に与える影響については知られないことが多い.それはコラーゲンという蛋白は活動性が低く,ただ体を支持しているのみと考えられていたため,興味が少く,研究の遅れた分野となつていた.しかし最近コラーゲンの構造,機能に関する研究が急速にすすみ,殊に加齢や疾患に重要な意味を持つと考えられている架橋構造についての研究が盛んとなり分子レベルでの変化がつかめるようになつてきた.
 コラーゲンの構造と整形外科的疾患の関係は深い.たとえば小児の骨折で骨が屈曲する生木骨折がみられるが,成人,老人ではそれがみられない.その原囚は骨無機質の質や量の変化とともに骨コラーゲンの変化に起因することは容易に想像される.しかし骨の無機質の研究に比べ,有機質,特にコラーゲンの研究が非常に遅れているために,老人の骨に対してカルシウム投与をしようという努力はされているが,骨コラーゲンを変化させようという治療は少い.本文で述べるコラーゲンの研究,特に架橋に関する研究はこれらの問題解決の緒である.リウマチなどにみられる病的腱断裂を始め,外傷性腱裂(アキレス腱断裂をも含む)においても腱コラーゲンの構造上の変化が基礎状態として存在していることも考慮せねばならないだろう.

討論

骨・軟部腫瘍症例検討

著者: 青池勇雄 ,   赤松功也 ,   荒井孝和 ,   石川栄世 ,   上村正吉 ,   薄井正道 ,   尾島昭次 ,   岡崎満雄 ,   金子仁 ,   神田実喜男 ,   櫛引孝昌 ,   後藤守 ,   佐野量造 ,   品川俊人 ,   須田暁 ,   杉浦良雄 ,   武内章二 ,   陳世雄 ,   鳥山貞宜 ,   西川英樹 ,   檜沢一夫 ,   藤巻悦夫 ,   前山巌 ,   三方淳男 ,   山下広 ,   渡辺誠 ,   青山和義 ,   浅尾武士 ,   猪狩忠 ,   伊藤忠厚 ,   牛込新一郎 ,   遠城寺宗知 ,   小山田喜敬 ,   岡田行生 ,   上徳善也 ,   北川敏夫 ,   小出健一 ,   佐川文明 ,   坂田礼一 ,   芝田仁 ,   須知泰山 ,   ターウォン・ラタナスイリ ,   竹嶋康弘 ,   土山秀夫 ,   中島輝之 ,   林侃 ,   広田映五 ,   古屋光太郎 ,   松野誠夫 ,   矢川寛一 ,   山室隆夫 ,   赤星義彦 ,   足沢国男 ,   石井清一 ,   岩崎宏 ,   牛島宥 ,   緒方孝俊 ,   太田富治夫 ,   門馬満 ,   川口智義 ,   桐野有爾 ,   小寺昭宏 ,   佐々木鉄人 ,   阪本桂造 ,   下田忠和 ,   杉浦勲 ,   高浜素秀 ,   近沢良 ,   堤啓 ,   名島啓太郎 ,   林博隆 ,   福間久俊 ,   本多儀一 ,   松原藤継 ,   矢島権八 ,   山脇慎也

ページ範囲:P.231 - P.265

 症例Ⅰ
 患者:29歳,男子
 現病歴:昭和46年11月,野球の試合中,空振りをした際に右上腕に激痛をきたし来院.

臨床経験

脊髄損傷患者における異所性化骨とAl-P値ならびにシンチグラムについて

著者: 蓮村元 ,   木下博 ,   平川寛 ,   大久保康一 ,   荒木信

ページ範囲:P.271 - P.276

はじめに
 脊髄損傷患者にみられる異所性化骨については1918年DejerineとCeillerがpara-osteoarthropathyとして発表して以来myositisossificans circumscripta neurotica,neurogenic ossifying fibromyositisなど,多くの名称が与えられている.そしてこのような化骨は脊損にかぎらず,多発性硬化症,脊髄のmeningioma,クモ膜炎11),脊髄性小児麻痺2,7,9),破傷風16),熱傷,頭部外傷や脳卒中による片麻痺17),日本脳炎,COガス中毒などにもみられることが報告され,病理組織学的にはこれが,単なる軟部組織の石灰化ではなくて完成した骨であることが知られている.しかしこの発症機転については,まだ充分に解明されていない.
 ところで現在まで異所性化骨と血清Al-P,Ca,Pなど血清成分の関連についての研究は多くなされているが,これら血清成分にあまり変動をみない1,2,3,5,7,8,11,12,16,18)という報告がほとんどで,これは,他の骨形成の旺盛な疾患たとえば,Paget病などにおける所見と趣を異にするように思われる.そこで我々は,脊損患老27名について経時的にAl-P値を計測して検討し,また87mSrによるシソチグラムを行なつたのでその結果についてもあわせて報告する.

乳児先天性股関節脱臼の治療経験

著者: 三宅詢 ,   釼持政男 ,   斎藤守 ,   山屋彰男 ,   村上隆一 ,   中西忠行 ,   松木忠 ,   北村憲治 ,   青木善昭

ページ範囲:P.277 - P.287

 私が浜松赤十字病院整形外科に赴任した昭和41年8月より,46年7月までの満5年間に,3ヵ月児を中心とする1歳未満の乳児先天性股関節脱臼に対し,われわれは一定の方針に従つて治療を行つて来たが,ここにその治療成績について報告する.

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 21—Extraskeletal Osteogenic Sarcoma

著者: 金子仁

ページ範囲:P.196 - P.199

 軟部組織に発生した骨肉腫で,大変珍しいものである,1956年,Fine and Stoutが46例の報告をした.
 大部分は成人に発生し,極めて悪性である.時にmyositis ossificansとの鑑別が難しい場合がある.

学会印象記

第13回国際リウマチ学会

著者: 諸富武文 ,   立沢喜和 ,   井上四郎

ページ範囲:P.266 - P.269

海外参加2,000人,国内500人
 1928年に発足した国際リウマチ学会は,4年毎に開かれ,今年で第13回目を迎え,本年10月1日より6日まで前日のwelcome partyを加え7日間にわたつて,大島良雄会長,諸富武文副会長,佐々木智也総括者および組織委員の方々の協力の下に,京都国際会議場において開催された.
 前日の多彩なる歓迎パーティに引続いて,10月1日午前9時より常陸宮殿下,同妃殿下の御臨席を頂いて,開会式がmain hallに厳粛に取り行なわれた.海外からの参加者は約2000人,日本からは約500人の登録があつた.予想以上の多くの海外からの参加者のため,会場内では日本の参加者が目立たないほどで,先ず真に国際学会という感を受けたと述べる人が多かつた.

オランダ整形外科学会の外野席より

著者: 鳥巣岳彦

ページ範囲:P.270 - P.270

 2カ月の暇をいただきカナダ,アメリカ,ヨーロッパの弥次喜多道中に出発しようとする直前に,我が病院の天児院長あてに,オランダのSICOT代表であるLowe教授より一通の招待状が舞込んだ.
 "オランダ整形外科学会第75周年を記念して,膝関節疾患の国際学会を来る9月13日より15日までの3日間にわたり開催するので,是非貴殿に御出席をお願いしたい"との主旨の手紙であつた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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