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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻4号

1974年04月発行

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視座

正しい手術を

著者: 河邨文一郎

ページ範囲:P.295 - P.295

 先日,"臨床整形外科"の座談会(第9巻第6号掲載予定)に出席した.テーマは先天股脱に対する骨盤骨切り術だつたが,その討議のなかで,Chiari法や私の変法などで臼蓋をつくるとき,骨頭をふくめて下方折片をどのくらい内側方へ押しこむべきかが話題になつた.もちろん新臼蓋が骨頭を十分に蔽うようになるまで,上方折片を外側方へ開き,同時に下方折片を押しこむべきだと答えたが,これはこの種の骨盤骨切り術が臼蓋形成術の一種である以上は当然のことである.小骨盤がそのためかなり狭くなつたところで心配はいらない.術後,時日がたつにつれて小骨盤の再拡大が自然に起こつてくるからである.要は一気に強固な臼蓋をつくればよいということだ.
 ところが,骨盤の狭小化をおそれるあまり,この手術にSpitzy式に骨片を移植して臼蓋をつけ加える方法を日整総会で発表したひとがあつた.これでは骨盤骨切り術とはいえないのである.どのような手術の場合でも,その方法の日的を正しく理解し,その手技を正しく行なうのでなければ意味がない.ましてや,正しくない手技を用いてその手術法の価値そのものを論議するとしたら,これは困つたものとしかいいようがないであろう.

論述

軟骨内骨化における酸性ムコ多糖の組織化学,生化学的研究

著者: 中川正 ,   安原徳政 ,   野上宏 ,   寺島洋治 ,   揖野学而 ,   岩田久 ,   中川正美 ,   森谷光夫

ページ範囲:P.296 - P.307

はじめに
 哺乳類の骨の成長様式としては一度軟骨を通つてから骨化する軟骨内骨化と,軟骨を経ないで直接骨化する結合織性骨化(または膜様骨化)の二種類の異つた過程があり,頭蓋骨,顔面骨,下顎骨および鎖骨の一部は後者に属し,長管骨,脊椎などは前者に属している.
 比較発生学上では結合織性骨化の方が古い骨化様式であり,5億年前に存在し,現在の脊椎動物すべての起源と考えられている甲胃魚はこの結合織性骨化による外骨格をもつている.軟骨内骨化は脊椎動物の中でもやや進化した硬骨魚類以上になつてはじめて認められる,さらに二次性骨端核が出現するのは像頭属以後であるといわれている22,36,62)

減圧症と骨関節の変化—4.潜水病性骨病変の経年的変化について—潜水士127名の7年間追跡調査

著者: 鳥巣岳彦 ,   加茂洋志 ,   川島真人 ,   林浩

ページ範囲:P.308 - P.318

はじめに
 乱獲やヘドロの影響で近海では就業できなくなり,次第に沖へ出かけ,より深海で就業せねばならなくなつたことや,生活のため一度に少しでも多くの海産物を取ろうと,長時間潜水や無茶な浮上方法を行なわなければならぬ社会的的背景が,日本の潜水士に慢性減圧症である骨壊死を高頻度に発生させている最大の原因であろう.
 前回X線所見の分類,骨壊死の発生頻度などについて記載した.さてこれらの骨変化は一度発生すると非可逆的に進行し短時間の内に関節の破壊を起すに至るのであろうか.またこれらの骨変化の進展は潜水を止めれば止まるものなのか.潜水を中止すれば骨壊死は新たに出現することは無いのであろうか.潜水生活を継続するか止めて転業するか思案せねばならぬ段階でおこるこれらの疑問に村しては,症状を有する患者の一回の検診だけでは不十分で,一定の集団を経年的に観察してのみ解答が与えられる.

座談会

膝関節周辺巨細胞腫治療の趨勢

著者: 青池勇雄 ,   鳥山貞宜 ,   赤松功也 ,   石井清一

ページ範囲:P.319 - P.326

 青池 それでは,これから,膝関節周辺に発生した骨の巨細胞腫の治療の現在のあり方と趨勢ということについてお話しをうかがいます.
 お3人の先生方は,それぞれたくさんの症例をご経験になつておられ,それらを検討されて,治療法のあり方についてご意見をお持ちになつておられますので,そういう方面から,ひとつお話をうかがいたいと思います.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(25)

著者: 古屋光太郎 ,   骨腫瘍症例検討会

ページ範囲:P.327 - P.330

32歳女性の左上腕痛
 A 患者さんは32歳女で小学校5年の頃に(12歳の時)に左の上腕を骨折し,それ以降上腕に変形があります.今年の2月に左の肘をぶつけまして,ひどく痛み近医を受診していますが,5月頃から冷房が入り始めると,また痛みが強くなつてきたため私たちの外来にきた患者さんです.
 血液所見,胸部レ線像では異常はありません.

臨床経験

血友病性関節症のレ線学的検討

著者: 檜山建宇 ,   井沢淑郎 ,   陣内一保 ,   佐藤功 ,   古橋一正 ,   長尾大

ページ範囲:P.331 - P.339

はじめに
 血友病性関節症について,欧米では比較的多くの研究発表がなされているが,本邦において,特に,整形外科領域での報告は少ない.
 抗血友病製剤(注)の開発により,出血の管理は容易になつたにもかかわらず,反復する関節内出血による関節症の進行はさけ難いのが現状である.この関節内出血をどの程度反復すると,関節症がどの程度悪化するのか,また,変化は全く非可逆性なのかどうかなどについては未だ明らかになつていない.

腰椎分離辷り症に対する後側方固定術について

著者: 漆谷英礼 ,   田村哲男 ,   稲垣正治 ,   谷本秀二 ,   岩瀬毅信

ページ範囲:P.340 - P.345

はじめに
 脊椎分離,辷り症に対する観血的療法として,主として行われているのは脊椎固定術である.現在迄種々の固定術が行われており,いずれも好成績が発表されている.
 Watkins23)により1953年,発表された後側方固定術は,骨癒合の良好な点から近年注目されるようになり,わが国でも高岸18),増原12),戸祭19),三谷14)らによる発表がみられる.

脊椎骨粗鬆症の病的骨折による脊髄麻痺の治験例

著者: 須田公之 ,   池田彬 ,   鴇田征夫

ページ範囲:P.346 - P.350

 老人の脊椎骨粗鬆症に合併する椎体圧迫骨折は日常臨床上しばしば遭遇する疾患であるが,脊髄麻痺症状を呈することはきわめて稀である.われわれは最近このような症例を経験し,手術により脊髄麻痺症状の回復をみたので報告する.

慢性関節リウマチの膝関節のレ線像変化について

著者: 池田一郎

ページ範囲:P.351 - P.354

 慢性関節リウマチ(以下RA)は,関節を場としておこり慢性で常に進行的な炎症である.概して手指などの小関節を初発とし,それらの関節の疼痛,腫脹,変形などは日常よく経験するところである.しかし一方,大関節である膝関節もよく罹患し腫脹,疼痛を訴えて外来に受診する症例も決して少くない.むしろ坐位,立位などの特殊な生活様式をもつ日本においては,膝の機能障害を来した症例の生活の場における苦痛は少なからざるものがある.手関節,手指,足指などと異り強直,脱臼などの変形を来すことは少いが,整形外科的見地よりみれば,この罹患した膝関節の治療は今後の課題である.

右第10肋骨の外軟骨腫由来と思われる2次性軟骨肉腫の1例

著者: 山際裕史 ,   向井智志 ,   佐野実

ページ範囲:P.355 - P.357

はじめに
 軟骨腫と軟骨肉腫の鑑別は必らずしも容易でない.ことに,2次性軟骨肉腫は異型が少なく,成長もゆるやかで,転移することが少なく,予後は骨の悪性腫瘍中もつとも良好であるとされている.
 本稿では,66歳女子で,右第10肋骨に生じた,外軟骨腫由来と考えられる2次性軟骨肉腫と考えられる症例を報告し,若干の文献的考察を加える.

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 22—Synovial sarcoma

著者: 金子仁

ページ範囲:P.290 - P.293

 滑膜肉腫主たは滑液膜肉腫と呼び,青少年の膝関節の下部に好発するがその他の関節,滑液嚢,腱鞘部からも発生する。極めて悪性度の強い腫瘍で肺に転移することが多い。
 組織学的には線維肉腫部と腺形成部または間隙部が混在する。

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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