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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻5号

1974年05月発行

雑誌目次

追悼

島 啓吾先生遺影・略歴

ページ範囲:P.365 - P.365

略歴
明治44年1月25日生
昭和6年3月 福岡高等学校卒業

故島啓吾先生を悼む/島啓吾教授を悼む

著者: 松野誠夫 ,   天児民和

ページ範囲:P.366 - P.366

 昭和27年6月,アカシアの花もそろそろ散りはじめた札幌の地に,久留米医大の教授より北大整形外科の教授として赴任されましてより20年,先生の育てられました弟子は実に二百数十名余になり,先生が御赴任の当時ほとんど処女地といつて良かつた北海道の各地に現在のように多数,整形外科医として活躍しております.
 この間先生は,脊柱,股関節,骨腫瘍,骨成長の各研究に取り組まれ,これらに関する業績は日本整形外科学会,あるいは国際学会に報告され,また第34回日本整形外科学会長として新企画の学会を主催され,日本整形外科学会に残されました業績は極めて大きいと思います.

視座

読書の術

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.367 - P.367

 普段何の気にも止めずに読書しているが,考えて見ると読書も一種の技術がいる.本が読めるとは書いてあることの意味が理解できることで,字が読めることとは違う.字が読めて,本が読めるように小学校から習練を重ねてきているわけで,その人の知識に応じて読書の能力が違つてくる.外国語の本ではなかなか字が読めないし,また専門外の本では理解できないからこれも本が読めない.
 小説や週刊誌などでは特殊な専門的知識が必要でないから,すらすらと読んでゆける.専門書でも自分に関係していることでなら読むのはやさしい.

論述

ペルテス病の治療—Abduction Plaster Cast法について

著者: 岩崎勝郎 ,   鈴木良平 ,   井上喜博 ,   岡崎威 ,   近藤晴彦

ページ範囲:P.368 - P.376

はじめに
 従来ペルテス病の治療法としては免荷が基本的なものであつたが,近年,大腿骨々頭を寛骨臼内に深くつつみこんで,骨頭へのmouldingを行なわせるという考え方にかわつてきた.
 Craig(1963)は,保存的にはabduction cast,観血的にはderotation osteotomyを推奨し,また,Axer(1965)は,subtrochanteric osteotomyが骨頭変形防止に有効であると述べている.Harrison(1966),Katz(1967),Karadimas(1971)なども股関節を外転位に保持するCastやBraceで治療した方が,従来の免荷を主とした保存的療法より良好な結果を得たと報告している.さらにKatz(1967)は,大腿骨々頭の発育機構の障害と変形発生との関係を考察し,骨頭の寛骨臼によるmouldingの必要性を強調した.Petric(1967,1971)は,股関節45°外転位のBraceを作つて歩行させ,治療期間の短縮をみたと報告し,またSalter(1972)は,innominate osteotomyを行なつて骨頭を十分にcoverしたあと荷重させている.本邦においても同様な考え方のもとに,股関節を外転位に保持し歩行ができるような装具の考案が西尾(1969),武部(1972),渡辺(1972)らにより報告されている.

頸椎部における損傷脊柱の再建について

著者: 大谷清

ページ範囲:P.377 - P.388

はじめに
 古いGuret(1862)の統計によれば,全骨折中で脊椎損傷のしめる割合は0.33%と稀有な損傷であると記載される.ところが,近年産業の発達と交通の複雑化,スピード化にともない,一般外傷と並んで脊椎損傷も逐年増加の趨勢にあることは諸家の統計が示すとおりである.重度の脱臼骨折からレ線上骨傷の明らかでない椎間板損傷,さらにはいわゆる鞭打ち損傷まで含めると患者数の激増はすさまじい.しかも,本損傷の発生には局地性がなく,全国至るところにみられるようになつてきたことも近来の大きな特徴といえる.
 周知のとおり,脊椎損傷は胸腰移行部,下位頸椎に頻発する.国立村山療養所の統計によると全脊椎損傷の53.1%が胸腰移行部,次が下位頸椎の29.5%である.脊椎は脊髄を容れている.したがつて,脊椎損傷は脊髄損傷を合併することが少なくない.なかんずく,下位頸椎は脊髄周囲のゆとりが少なく,下位頸椎損傷は頸髄損傷を合併することが多い.

膝関節周辺に発生した骨巨細胞腫の治療

著者: 佐々木鉄人 ,   石井清一 ,   山脇慎也 ,   加藤哲也 ,   薄井正道 ,   姥山勇二

ページ範囲:P.389 - P.397

はじめに
 骨に原発する腫瘍の中で骨巨細胞腫(以下巨細胞腫と略す)は古くから諸家により注目され種々検討されてきたが,現在もその臨床的病理組織学的性状は判然としていない.実際,われわれが日常遭遇する巨細胞腫の多くは病理組織学的に良性と診断されるが,治療方法によつては局所再発率が著しく高く,稀には遠隔転移を起こすこともある反面,悪性と診断されながら治療後の経過良好な場合も多い.
 巨細胞腫の治療に関しては,骨肉腫に属すると考えられた時代から今日まで,本腫瘍に対する考え方の相違から種々変遷し1,2,6,9),現在も報告者5,7,12,13,21)によつて治療方法および治療成績はかなり異なつている.

骨形成因子(Bone Morphogenetic Property:BMP)とその分解系(BMP-ase)について

著者: 岩田久

ページ範囲:P.398 - P.404

はじめに
 脱灰骨を臨床的に応用した症例がすでに19世紀にみられるが,成功例11)12)の存在にもかかわらず,その生物学的,生化学的な追求によるmechanismの研究は10年前まで,そのまま放置されていた.また一方,骨誘導,骨形成,異所性骨化などに関する実験的な試みも種々なsystemを用いて広くおこなわれている1,2,5,6,13,18)
 実験的に骨ができてくる,いいかえれば実験的に骨を作ることができる系は大きく3つに分けることができる.すなわち,1)living tissueを筋肉内に移植する系で,これには,Urinary bladder mucosa6)を筋肉内に移植する場合,株化されたcell lineたとえばFL細胞1,9)を筋肉内に移植する場合,2)脱灰凍結乾燥骨18)などのdevitalized tissueを筋肉内に移植する場合,3)アルコール等の化学物質を筋肉内に入れて骨の形成をうながす場合,などがある.

減圧症と骨関節の変化—5.大腿骨骨頭壊死の病理組織学的研究—とくに潜水・潜函による骨病変について

著者: 浦郷篤史 ,   川島真人

ページ範囲:P.405 - P.412

緒言
 潜水士に比較的高率に発生する骨病変については,鳥巣,川島ら1)も指摘するように,重要な社会的問題として取り扱うべき現状にある.
 さて,潜水とほぼ同一発症機序で発病すると考えられる潜函作業に起因する骨病変の臨床的観察の報告は,欧米ではかなりの報告があるが,その病理組織学的研究に関する報告は少ない.まして本邦に多く諸外国には比較的少ない潜水士の骨病変に関する報告は見出しえないようである.

特発性無腐性大腿骨頭壊死について

著者: 星秀逸

ページ範囲:P.413 - P.422

 大腿骨頸部骨折,外傷性股関節脱臼,および気圧の変動に基づくcaisson病などの外傷性病変に続発しておこる虚血性壊死については,古くから多くの人々により,臨床的ならびに実験的に研究され,病態の解明,治療法についても多くの業績が発表されてきた.
 非外傷性の大腿骨頭壊死についてはFreund(1926)が両側性の大腿骨頭壊死について報告し,1936年特発性壊死と命名した.以前はかなり稀なものと考えられていたが,欧米では広範な調査研究がなされ,ここ10年間ではかなりの報告例がみられるようになつてきた.本邦においても最近報告例が増加し,注目をあつめるようになつてきた.とくに関節リウマチ,全身性エリテマトージス,血液疾患などの全身性異常に合併した症例や,さらにスラロイド剤大量投与後にみられる大腿骨頭無腐性壊死は増加の一途をたどつている.

臨床経験

苗場スキー場診療所におけるスキー外傷について

著者: 岡田朋彦 ,   佐藤孝三 ,   斎藤次彦 ,   筒井勝彦 ,   比企能実

ページ範囲:P.423 - P.429

はじめに
 近年レジャーとしてスキーを楽しむことが一般大衆化しどのスキー場も混雑をきわめている.すでに知られているように,スキーはスポーツの中でももつとも外傷発生率の高いもののひとつである.通常トレーニングを行なつていない人でも気軽にできるスポーツであり,また高度に機械化されたゲレンデのため準備運動の不足を伴ない,これらが外傷発生のおもな原因のひとつであろう.したがつて各スキー場とも診療所が不可欠なものである.
 当教室では新潟県苗場スキー場において昭和38年より診療所を開設し,シーズン中整形外科医が応急診療のトレーニングをかねて常駐し,スキー場パトロール隊と協力してスキー外傷の救護にあたつてきた.この間診療とともにスキー外傷についての調査も常に行なつてきた.すでに当教室峰岸ら(1966)8)は昭和38年度より2シーズンのスキー外傷における統計的考察と,safety bindingの及ぼす影響について報告を行なつている.今回われわれは外傷発生率,外傷種類別および受傷部位別頻度などについて9年前の峰岸らの報告や諸氏の報告との比較を行ない,さらに最近のスキー用具と外傷との関連性,その使用状況について調査した.その結果若干の知見を得たので考察を加えて報告する.

Recurrent branchに主病変のあつた手根管症候群の治験例

著者: 久保井二郎 ,   山根宏夫 ,   矢部裕

ページ範囲:P.430 - P.433

 手根管症候群は欧米において多数の報告がなされ,本邦においても田島ら5),山岡ら7)の多数例の報告がある.しかし,母指球の筋萎縮のみを主徴とする手根管症候群の報告は比較的少なく,本邦においてその詳細な報告はみられない.
 われわれは母指球の筋萎縮を主徴とし,recurrent branchに主病変のあつた手根管症候群の1例を経験したので報告する.

Carpometacarpal Bossについて

著者: 前田敬三 ,   若山日名夫 ,   石川忠也 ,   青木正人 ,   柴田秀 ,   伊藤晴夫

ページ範囲:P.434 - P.438

 手背で,第2,3中手骨の基部に骨性隆起を有し,無症状に経過する場合もあるが,時に圧痛,運動痛などを訴える疾患がある.
 Fiolle7)がcarpe bossuと呼んで以来,英語の文献ではcarpal boss,carpal bossing,hunchback carpal bone,carpal or metacarpal boss,carpometacarpal bossなどと種々の名で知られているが,本邦ではまだあまり注目されていない.最近,私達は8例を経験し,うち2例には手術を行なう機会を得たので文献的考察とともに報告する.

Neurovascular digital transferによるacrosyndactylyの治療

著者: 三浦隆行 ,   木野義武 ,   中村蓼吾

ページ範囲:P.439 - P.441

 指をその神経,血管,腱とともに損失した指の位置に移行する手術は1931年にBunnellにより初めて報告された.この手術には指数の減少という難点はあるが正常の知覚を有する指のみにより機能的・形態的に良好な手の再建が可能であり,とくにその損失が手の機能に重要な障害となる母指の切断,先天性欠損の場合にはいわゆる母指化手術として数多くの報告が行なわれている.
 私達はacrosyndactylyの症例で通常の合指症治療の手術手技ではとうてい形態的にも機能的にも満足な指の分離が不可能と考えられた3症例に対してneurovascular digital transferを行ないかなり満足できる結果を得た.

肩関節腱板損傷を疑わせた結核性肩峰下滑液包炎の1例

著者: 小川清久 ,   藤村祥一 ,   柳下慶男 ,   鈴木邦雄

ページ範囲:P.442 - P.445

 肩関節の運動制限あるいは疼痛を主訴として整形外科を訪ずれる患者は少なくない.その原因となる因子はきわめて多様であり,しばしば診断に苦慮することがある.最近われわれは棘上筋腱断裂を疑わせる臨床像を呈し,諸検査成績より結核性肩峰下滑液包炎と診断した症例を経験したので,若干の文献的考察も加えて報告する.

両側膝蓋靱帯皮下断裂の1例

著者: 梶山英彦 ,   江川正 ,   朝長邦男

ページ範囲:P.446 - P.448

 最近スポーツ外傷は増加の傾向にあるが,膝蓋靱帯断裂は比較的少ない損傷である.私たちは最近両側同時に膝蓋靱帯断裂をきたした稀な症例を経験したので報告する.

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 23—Malignant Lymphoma

著者: 金子仁

ページ範囲:P.360 - P.363

 Malignant lymphomaは細網肉腫,リンパ肉腫,ホヂキン病,巨大濾胞性リンパ腫などを総称した名前であるが,我々は組織診断として細網肉腫か,リンパ肉腫か区別のつけ難い場合によく用いる.当然,リンパ節を始め,リンパ組織に発生する疾患であるが,皮膚のリンパ組織からも発生する.皮膚から発生するmalignant lymphomaとしてmycosis fungoidesは有名である.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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