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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻6号

1974年06月発行

雑誌目次

視座

整形外科医よ職場へ進出せよ

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.459 - P.459

 最近,"狂乱物価"など異常な社会情勢の中でいろいろな職場や組合活動において,頸肩腕症候群や腰痛の問題が大きくクローズアップされ,社会的に混乱、紛糾のもとになつている.
 両疾患は人類が起立歩行開始以来,宿命的ともいえる弱点に基づくものであり,周知のように従来から頻発する.整形外科が非常に進歩したとはいえ,未だ原因疾患が明確に把握できない場合が少くない.以前は単なる整形外科的診察で大略こと足りたが,最近は職場環境さらに精神衛生まで立入つて綜合的に考慮しないと適確な診断がつかない場合が少くない.

論述

脳性麻痺の新しい早期治療法—Vojta(ボイタ)法について

著者: 佐竹孝之

ページ範囲:P.460 - P.466

はじめに
 脳性麻痺(以下CPと略す)に対する治療法は,近年,徐々にではあるが確実に進歩してきた.従来,治療の対象となつていたのは主に病型が既に固定し変形,拘縮が生じ,あるいは異常な姿勢反射が顕著で運動発達遅滞の著しい,いわゆる「障害」ができ上つた年長CP児であつた.これらの障害を有する患児の治療には多くの困難性があるが,整形外科的手術の適応,補装具や歩行Aid等の使用,さらにはPT,OT,ST等各専門パラメディカルの参加によるチームアプローチをもととした治療体系が確立され,これが福祉行政の進展とともに拡充され,発展して来,これまでかなりの療育の成果を挙げている.
 一方,急速に発達する乳幼児の中枢神経系が病変の場となるCPに対して,できるだけ早期より治療を開始することの重要性は以前より多くの先人が指摘するところであつたが,最近,小児神経学の進歩によつて乳幼児期の運動発達に関する知見は増加し,また,神経生理学に基礎をおく治療法が導入されることで,CPの早期診断,治療の可能性はますます大きくなつてきている.従来の治療体系に新しい治療法を組み込むことで,CPに対する治療も,乳幼児CPあるいはまだ病型が定まらないがいくつかの危険因子を持つ危険児(Risikokinder)を対象とする新しい治療の場が展開されることとなる.産科,小児科等他の専門科や保健所等の行政機構との協力のもとにRisikokinderを早期から治療のルートに乗せ得るような体制を作ることは焦眉の課題であろう.

関節移植における関節軟骨の運命

著者: 加藤文雄

ページ範囲:P.467 - P.471

要約
 関節移植における関節軟骨の運命に焦点をしぼり,臨床例の報告について文献的検討をおこなうと,同種移植のみならず自家移植においても,高頻度に軟骨の変性と関節症変化の発生が認められた.自家移植のモデル実験により,軟骨細胞の生存が正常な関節面の維持のために必要な条件であることが確かめられた.関節移植の理想的な実現のためには,関節軟骨を温存する方向で今後の研究がすすめられる必要があり,その方策のいくつかを示唆した.

学会印象記

第4回人工関節研究会をふりかえりて

著者: 諸富武文 ,   岡崎清二 ,   長井淳

ページ範囲:P.472 - P.474

はじめに
 第1回の人工関節研究会は京都大学伊藤鉄夫教授他のお世話により昭和46年1月,京都において発足した.それからすでに三年の月日が流れ,その間急速に人工関節手術に対する関心が高まり,かつ広く普及されるに従い,研究会に参加する医師の数も急激に増加してきた.
 第四回人工関節研究会は京都府立医大がお世話することとなり,私はじめ教室員一同の運営のもとに昭和49年2月2日京都文化芸術会館において開催された.今年の冬は毎日のように雪が降つていたが,当日の朝は珍らしく晴れ上り,会場に向う私の頬に冷たい風が心地よく感じられた.今回の研究会の盛り上りは一段と高く,開演時にはすでに会場はほぼ満席の盛況であつた.その後も出席者数はどんどん増加し,定員500人の椅子席では足らず,補助席を追加したがなおも通路,休憩室,出入口まで会員であふれていた.この日の出席会員数は約650人にも達していたとのことであつた.昨年の参会者の数より推定して,500席位であれば充分と予想していた主催側はこの盛況にあわてさせられた.

座談会

先天性股関節脱臼における各種骨盤骨切り術の検討

著者: 河邨文一郎 ,   岩原寅猪 ,   山田勝久 ,   香川弘太郎 ,   泉田重雄 ,   島津晃

ページ範囲:P.475 - P.487

 河邨 先天股脱は昔は内反足とともに整形外科医のめしびつの1つといわれたものです.古くて,しかも新しい問題,整形外科のある限り非常に大きなテーマでありつづけるでしよう.
 今日は,骨盤骨切り術の話,つまり観血的療法ということです.先天股脱の手術というものは非常にむずかしい点があるので,やらないで済めばそれにこしたことはないでしようが,やはり積極性を持つて取り組まねばならないような問題がある.坂口亮さんの本にも,私が前に河野左宙先生と学会で討論した時,若さのさかしらで河野先生を敗北主義だときめつけたことがありましたのを,その論争が大変面白かつたと書いてありますが,ともすれば敗北主義になりがちな自分達にむち打つて頑張つているのがわれわれの姿じやないかと思うのです.

臨床経験

手の外科における皮膚移植の問題点

著者: 三浦隆行

ページ範囲:P.488 - P.494

 皮膚移植は熱傷後の瘢痕拘縮はもちろんのこと外傷時の皮膚欠損,手指拘縮,先天性奇形などの治療に際して手の外科で繁用される重要な基礎的治療手段である.
 手における皮膚移植の問題点として,1.有茎植皮と遊離植皮の選択,2.植皮片デザインの2点を取り挙げて症例を中心とした検討を行ないたい.

小児大腿骨変形癒合骨折—旋回転位を中心として

著者: 矢野悟 ,   沢田雅弘 ,   宮本琢磨

ページ範囲:P.495 - P.501

はじめに
 小児大腿骨骨折に随伴する変形骨癒合のなかでも,側方,屈曲,軸転位はその旺盛な自家矯正力によりある程度は矯正されると言われている.しかし旋回転位はWeber20),,Schüttemeyer14),Vontobel19)によれば,自然矯正されず,下肢に旋回変形と歩容異常を残し,その結果,将来変形性股関節症を起すと述べられている.旋回転位はレ線的にも捉え難く,臨床的にも見逃され易いためか,その詳細な発表は少く,我国でも宮城10),猪狩4),松野8),糟谷6)等により旋回転位の注意が述べられている程度である.我々は昭和42年より6年間に治療した小児大腿骨骨折を対象として,旋回転位を分析した.今回その結果を報告し,予防法ならびに今後の対策を紹介したい.

骨頭骨折を伴つた股関節後方脱臼7例について

著者: 武智秀夫 ,   角南義文 ,   坂手行義 ,   藤原紘郎 ,   尾上寧

ページ範囲:P.502 - P.507

まえがき
 外傷性の股関節後方脱臼骨折は,いわゆるdash board injuryとして最近モータリゼーションの普及とともに多くみられるようになつた.本外傷は股関節の後方脱臼に臼蓋後縁の骨折や,臼蓋底の骨折を合併するもので,その型は種々ある.しかし脱臼と同時に大腿骨骨頭の骨折をともなつたものについての報告は,Stewart & Milford9),Thompson & Epstein10),Armstrong1),Waller11),Epstein2)の報告をみる程度で,その治療法や予後について詳細ははつきりしていないように思える.わが国では松原の報告した外傷性股関節脱臼162例中骨頭骨折を合併したものが33例あるのが最も多いものであろう.
 私どもは最近6年間に,岡山大学整形外科関連病院で7例の骨頭骨折を合併した股関節後方脱臼を経験した.これらの症例をもとに,その経過,治療法などについて,いささかの考案を加え報告したい.

照射後発生したExtraskeletal Osteosarcomaの1例

著者: 篠原典夫 ,   福間久俊 ,   中島啓雅 ,   下田忠和 ,   佐野量造 ,   広田映五 ,   吉田雅子 ,   山本浩

ページ範囲:P.508 - P.512

 われわれはきわめてまれな疾患である骨外性骨肉腫(extraskeletal osteosarcoma, extraosseous osteosarcoma)の一例を経験した.しかも,この症例は他疾患治療のために以前照射を行なつた部に発生し,欧米において数例の報告をみるにすぎない照射後に発生した骨外性骨肉腫の症例に類似し本邦にて未だ報告をみないものである.文献的考察を加えて報告する.

長生している進行性骨化性筋炎の経過

著者: 満足駿一

ページ範囲:P.513 - P.518

 進行性骨化性筋炎は,身体各所の随意筋,筋膜,腱,腱膜および靱帯等に確かな誘因なく多発性に,しかも進行性に異所的骨形成を来たす疾患である.その報告は,1692年のGuy Patinの記載に始まるとされ,かなり古くから知られており,本邦でも1913年,後藤の報告以来63例を数えるが,比較的稀な疾患である.しかし,報告時の患者の年齢は,本疾患の特徴からしていずれも比較的若く,我々の症例のように36歳までも長期間生存し得ている症例は,調べ得た範囲では見当らない.今回我々は,6年間引き続き観察している36歳の本症の1例の経過を報告し,若干の文献的考察を加える.

Dupuytren拘縮について

著者: 久保敬 ,   津下健哉 ,   生田義和 ,   渡捷一

ページ範囲:P.519 - P.523

 Dupuytren拘縮は,手掌腱膜の肥厚収縮による指の屈曲拘縮をきたす疾患であり,1832年,Dupuytrenによつて最初の報告がなされて以来欧米諸国,特に北欧においては数多くの報告がある.一方わが国ではきわめて少ないものであるとされていたが,従来考えられていた程少ないものではないことがわかつた.
 今回,私達が昭和34年より昭和48年までの15年間に経験した30症例のDupuytren拘縮について検討を加えて報告する.

陳旧性上肢電撃傷の機能再建

著者: 倉田利威 ,   渡捷一 ,   津下健哉 ,   栗原敬之

ページ範囲:P.524 - P.529

はじめに
 電撃傷は電流が導体と導体の間に発するアークとかスパークにより生じる熱に起因するelectrothermal burnと,電流の流れている導体に触れて,人体の中に電流が流れることにより生じるtrue electrical burnとに大別される.electrothermal burnの中でも特にarc burnは広範囲で皮膚全層におよぶ火傷を生じさせるが,それより深層の組織まではおよばない.True electrical burnは表皮にとどまるものから,皮下,腱,筋,血管,神経,骨にまでおよぶものがある(第1表).電撃傷には二つの問題がある.一つは電撃死の問題,他は電撃による局所の障害の問題である.今回は局所障害について検討を加えたのでこれについて述べる.

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 24—Epithelioid Sarcoma?

著者: 金子仁

ページ範囲:P.454 - P.457

 本例の題名に?をつけたのはEpithelioid sarcomaの決定診断が自信をもつてつけられないからである.
 Epithelioid sarcomaはEnzinger(Cancer, 26. 1029, 1970)によれば平均23歳の若年者の手の軟部組織に発生し、組織学的に小結節性で,好酸性の多型細胞よりなり,紡錘状細胞を混じ,一見上皮様配列がある.転移は少いが再発は多い.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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