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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻8号

1974年08月発行

雑誌目次

視座

脊柱側彎症に対するDwyer手術

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.641 - P.641

 一歩も二歩も遅れていたわが国の脊柱側彎症の外科も故鈴木次郎教授,山田憲吾,松野誠夫,井上駿一教授らの努力によつて今日ようやく国際的水準に達したとみられる.ドイッ医学の基盤の上にたつ日本医学は,よしそれが臨床であつても,常に基礎医学的裏づけをもつて歩むことを忘れない.この特質が脊柱側彎症の研究においても物を言つて,いまや追いついて追い越す時機が来ているといえる.
 脊柱側彎症の外科もvon Lackum(1948)のtransection jacket,Risser(1955,1958)のturn buckle hinging jacket,localizer castなどの保存的方法,およびHibbs(1914),Moe(1958),Goldstein(1959),Risser(1964)らの手術的方法などの時期はすでに過ぎて,Blount(1953)のMilwaukee brace,Dewald & Ray(1970)のhalo-pelvic tractionなどの保存的方法とHarrington(1962),Dwyer(1969)などの手術的方法とが治療法の主流をなすにいたつた.

論述

脊柱側彎症に対するDwyer手術

著者: 大谷清

ページ範囲:P.642 - P.649

はじめに
 脊柱側彎症にたいする脊椎固定術の歴史は古く,Albee(1911),Hibbs(1911)の後方固定術に始まる.その後,Risser(1955)のturnbuckle cast法,localizercast法等の脊柱側彎矯正法の発展にともない,脊椎後方固定法もMoe(1958),Risser(1964),Goldstein(1966)らにより改良されつつ,脊柱側彎症の手術療法は画期的な進歩をとげてきた.1962年P. R. Harringtonは特殊な器具による側彎矯正と後方固定を加えた手術法を発表して以来,いわゆるHarrington法は広く普及し,そのすぐれた成績は内外より多く発表されるに至り,今日脊柱側彎症の手術療法の主流をなすものといえる.
 一方,脊柱側彎症にたいする椎体侵襲の試みは,わが国においても故鈴木教授(1957)による椎体のstapling法,その後井上教授(1969)の椎体骨切術による矯正法などが発表されてきた.ところで,Allan F. Dwyerは1964年以来,前方椎体侵襲により彼独自の考案になる器具を用いて側轡矯正を試みた,以来,すでに100余例におよび,彼の手術法およびそのすぐれた成績はすでに発表されている.

骨のX線写真読影の基礎—陰影の濃淡を規定する因子を中心に

著者: 星野孝

ページ範囲:P.650 - P.658

 骨のカルシウム代謝の研究の格段の進歩を背景に,骨のX線像の解釈にも従来とちがつた考えが必要になつてきているし,またX線撮影装置や画像処理技術のめざましい進歩につれて見慣れないX線像の読影の必要に迫られることもこれからは次第に多くなつてくるであろう.従つてこの際,陰影の濃淡を規定する因子を中心に,以上の2つの観点から実例を示しながら展望してみることは時宜にかなつたことと思われるのである.

学会印象記

第29回米国手の外科学会より

著者: 山内裕雄

ページ範囲:P.659 - P.663

 第29回米国手の外科学会は,1974年1月15・16・17の3日間,J. F. Kennedy暗殺の街として有名なDallasで開催された.学会の運営は,例年とほぼ同様であり,39題の演題と,小グループにわかれたPanelとに十分な時間をさき,わかり易い学会ではあるが,同時に開かれているOrthopaedic Research Society学会の常連にいわせると,なれあい学会であり,つまらない演題が,余り批判もなく発表される,といつた陰口もいわれているそうである.その学会の報告を書くこと,既に5回目であるので,全般の印象はこの位にして,印象に残つた演題を拾つて行こう.

第7回先天股脱研究会のあらまし

著者: 香川弘太郎 ,   先天股脱研究班

ページ範囲:P.664 - P.668

 第7回先天股脱研究会は,4月4日の午後6時半より神大附属病院講堂で開かれた.
 当日は日整会総会の第1日目ということもあつて,御参加下さつた先生は優に四百人を越え,研究会というよりはむしろ学会の雰囲気の中で行われた.

臨床経験

腰痛に対する体操療法

著者: 日下部明 ,   遠藤尚暢 ,   川村正典 ,   猪苗代勇 ,   松木昇

ページ範囲:P.669 - P.676

はじめに
 腰痛を人生のいずれかの時期に経験するものは人類の80%以上を占めるともいわれ,事実これらの患者が整形外科を訪れるものの大多数を占めている.その源は人類の進化の過程における直立姿勢の獲得に発し,脊柱の静的あるいは動力学的姿勢の異常や,脊柱の機能的単位をなす脊椎・椎間板,ならびに椎間関節・靱帯・筋等の周囲組織の器質的変化またはそれらの不均衡にあると考えられているが,多くの腰痛はこれまでのclinical entityによる各種疾患に診断することの困難ないわゆる腰痛症が多数を占めている.その中には現代社会におけるストレスや不安に基づく感情的要因(emotional factor)や,運動不足による筋力の低下や姿勢の変化によるものも含まれ,腰痛がいわば現代に生きる入類の宿命の1つとなつているような感じさえする.われわれ整形外科医にとつてこれらの腰痛疾患の解明とそれに対する各種の治療法の確立が望まれ,中でも大部分を占める保存的治療をよりlogicalなものとすべく検討することが重要な課題の1つであろう.わが国における一般的な腰痛に対する保存的治療は牽引療法や温熱による理学的療法,あるいは過剰とも思える投薬・注射に頼つているのが現状のようである.しかしながらここに古くより行われてきた整形外科的治療体操の価値と意義を見直す必要があろうと考えられる.

当科における膝前十字靱帯の再建術—特にKenneth Jones法について

著者: 依田有八郎 ,   奥泉雅弘 ,   今井純郎 ,   村松郁夫 ,   小野沢敏弘

ページ範囲:P.677 - P.682

 膝関節は安定性を維持するために内部には半月板,側副靱帯および十字靱帯があり,外部には多くの筋群がとりまいている.
 膝関節の内部構造の病変は一般に膝内障と呼ばれ,その膝内障のうちでも発生頻度の少ない前十字靱帯断裂に対して当科では昭和45年より昭和48年まで7例の再建術を行なつた,このうち4例に膝蓋靱帯の中央部1/3を利用するいわゆるKenneth Jones1,2)法を施行し,良好な成績をおさめたのでここに報告する.なお術直後の1例を加えるとJones法施行例は5例となるが今回の報告には含めてはいない.

腫瘍細胞胞体内硝子球"hyaline globules"について—骨肉腫の剖検1例

著者: 森芳紘 ,   吉田春彦 ,   湯本東吉 ,   前山巌

ページ範囲:P.683 - P.688

 胞体内硝子様小体は,1901年Mallory16)が酒客肝硬変の肝細胞にalcoholic hyaline(Mallory体)とよばれる硝子様小体を記載して以来,主として人の肝や実験動物の肝で,その形態・組織化学・電顕所見および臨床的意義などについて各方面から詳細に研究されてきたが,そのmorphogenesisについては議論が多く,一致した見解はえられていない.一方,人材料で肝細胞以外の細胞にこれと類似した硝子様小体を認めたという報告は,Dekker1,2),岡野23,24),小島15)らのそれがあるにすぎず,きわめてまれである,私達は,骨肉種細胞の胞体内に多数の硝子球が認められた1剖検例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Acrocephalosyndactylism(Apert)の1例

著者: 中谷正臣 ,   有田親史 ,   岩本由美子 ,   藤原朗

ページ範囲:P.689 - P.692

 合指症は先天性奇型において,比較的多く見られる疾患であるが,1906年Apert2)が報告した塔状頭蓋,両手,両足の対称性,合指(趾)症等を特徴とするacrocephalosyndactylismはきわめて稀な疾患である.われわれは最近本症の1例を経験したので報告する.

母指内転拘縮におけるキルシュナー鋼線の利用

著者: 前田敬三 ,   三浦隆行 ,   木野義武 ,   中村蓼吾

ページ範囲:P.693 - P.698

 手に占める母指の重要性は周知のごとくであり,欠損した場合には造母指ないしは母指化術の適応となることが多い.しかし,母指が存在してもその機能を失つたものは無きに等しいか,かえつて障害とさえなることがあり機能の再建が必要となる.
 母指は,他の指と同様に知覚と伸展,屈曲の動きが正常であることのほかに物を把持する役目上他指と対立位になることが要求される,母指対立筋,短母指外転筋,短母指屈筋などが正常であつても,これらの動きを阻害する因子が存在すれば対立位をとることは不可能となるが,母指の内転拘縮はその現われの1つである.Littler3)をはじめとして多くの人達6,8,9,11)が母指内転拘縮の発生原因を分類,列挙しているが,拘縮の主因をあげれば,田島らの述べたように皮膚性,深筋膜性,筋性,CM関節の関節包性,靭帯性および骨性の拘縮などに大別される.皮膚性拘縮に対してはZ形成のほか,遊離植皮,有茎植皮,sliding flap法7)などの植皮により,深筋膜性の場合はこれの縦切により,筋,関節包,靱帯に起因する時は母指内転筋,第1背側骨間筋などの切離,移行,関節包切開,大菱形骨摘出などが行われている.

軟部骨原性肉腫の1例

著者: 荻野幹夫 ,   蜂須賀彬夫 ,   石上英昭

ページ範囲:P.699 - P.701

はじめに
 四肢軟部より発生する悪性腫瘍の中には,本来その場所にある組織より由来し,かつその生産する細胞間質が本来そこにあるものである場合,たとえば線維肉腫,横紋あるいは平滑筋肉腫,脂肪肉腫,血管肉腫のごとき場合と,本来はそこにない組織を作る肉腫,たとえば骨原性肉腫,軟骨肉腫,悪性滑膜腫のごとき場合,およびまつたく未分化のものに分けることができる.その中で第2のグループに属するものは症例も少ないので多くの成書中にも簡単に触れられているに過ぎない.本文ではわれわれの経験した珍しい軟部横紋筋中に発生し,急速な経過をとつて死に至つた骨原性肉腫の1例を報告する.

大胸筋皮下断裂の2例

著者: 姫野礼吉 ,   川罵真人 ,   佐藤護彦 ,   脇田吉樹 ,   岩淵亮

ページ範囲:P.702 - P.705

はじめに
 大胸筋皮下断裂は,文献的に他の筋断裂と比較して稀な疾患である,1822年,Patissierが,巨大な肉塊をフックでひつかけて持ちあげようとして大胸筋断裂を起こした肉屋の少年の症例を最初に報告してから,1973年,Bragi Gudmundssonが,レスリングの試合の最中に,対戦者から左腕をマットで捕えられ,身体を反対側に投げつけられて左大胸筋の筋腱移行部の断裂を起こした28歳のレスラーに関する症例を報告するまでに,32症例が,主にフランス,ドイツ,イギリスの文献で述べられている.日本では未だ症例報告がない,われわれの病院では,大胸筋皮下断裂の2例を経験したので,その症例を報告し,性,年齢分布,受傷機転,断裂部位,治療方針等について検討してみる.

興味ある異物の7症例

著者: 宝積豊 ,   山田勝久 ,   山野内忠雄 ,   高沢晴夫 ,   山口智 ,   富田和夫

ページ範囲:P.706 - P.711

 異物の症例は日常数多く見られ,診断に困ることはむしろ稀であるが,中には思わぬ病像を呈し,診断を誤ることがある.経験豊かな諸家においては,1例や2例の経験があろうかと思うが,文献的には非常にその報告は少ない.
 われわれは興味ある経過をとつた数例の異物の症例を経験したので報告する.

カラーシリーズ 整形外科手術・1

上位頸椎に対する経口腔侵襲法

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.636 - P.639

 結核,リウマチ,骨折,脱臼,腫瘍,奇形など上位頸椎疾患に対する経口腔侵襲法(transoral approach)は1947年Thomson, Negus.が咽後膿瘍の掻爬に用いたのを嚆矢とする.本法によれば環軸椎への到達は直截的,容易であり,視野は良好である。DeAndrade(1969)の推奨する胸鎖乳突筋前縁からの侵襲法は外頸動脈の重要な分枝を切断し,上喉頭神経に与える損傷が大きく,さらに視野は狭隘で良好とはいえない.
 本法成功の要点は部位的特殊性から感染と椎骨血管損傷の防止である.感染防止のために次のことを厳守する.術前に既存の齲歯,副鼻腔炎,扁桃腺炎を治療する.術前3日から口腔,鼻腔にテトラサイクリンなどのスプレー,アクロマイシントローチを投与する.手術前日は朝食のみ許可し,以後は禁食とし,含嗽を充分に励行する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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