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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科60巻1号

1988年01月発行

雑誌目次

「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」への改題にあたって

ページ範囲:P.1 - P.1

 本誌は1928年久保猪之吉によって創刊されて以来,その編集方針に従って耳鼻咽喉科臨床誌としての責を果たしてきた。
 今世紀後半における科学技術の進歩により医療も専門化の傾向にあったが,検査用・治療用機器の開発により医療のあり方も変わり,専門領域が明確でなくなった。耳鼻咽喉科も例外でなく,その標榜領域から次第に拡大されてきた。

目でみる耳鼻咽喉科

口腔の良性限局性結合織増殖性疾患,いわゆる線維腫

著者: 高橋廣臣

ページ範囲:P.6 - P.7

 良性の結合織の限局性増殖は一般に線維腫と総称されているが,真性の腫瘍は少なく反応性(刺激性)増殖が多いとされている。ただしこの両者を厳密に区別することは困難な場合があり,また日常臨床上あまり重要ではないので,筆者はわかりやすく線維腫と総称することにしている。代表例を示す。

トピックス 頭頸部がん診療の最前線—どこまでわかるか・どこまで治るか

画像診断で頭頸部腫瘍がどこまでわかるか

著者: 松林隆 ,   石井勝己 ,   菅信一 ,   西巻博

ページ範囲:P.9 - P.17

 頭頸部に限らずいずれの部位の画像診断においても,正常組織と病的組織との区別ができる検査技術が存在することが前提であり,とくに病的組織が陽性像として描出され,正常と病変との境界が明瞭に表示されるものほど優れた診断法である。今まで頭頸部において最も有効なのは高解像性X線CTであったが,現在最も注目されている画像診断法は磁気共鳴画像法(magnetic resonanceimaging, MRIと略称)である。このとくに軟部組織の違いに対する感度が高く,放射線被曝がなく非侵襲的なMRIは,まだ発展途上にあるがすでにX線CTに優る点も多く,近い将来X線CTに取って代る気配である。
 X線CT,MRIなどのコンピュータによるディジタル画像技術によって,かつてX線診断学が究極の目標とした肉眼的病理解剖像に匹敵する,見方によってはそれを凌駕する高解像度の腫瘍形態画像診断法が今日では現実のものとなっている。

(頭頸部)腫瘍の病理組織診断における免疫組織化学検査の有用性

著者: 渡辺慶一 ,   堤寛 ,   覚道健一

ページ範囲:P.19 - P.28

はじめに
 もともと出筆依頼を受けたタイトルは"臨床検査で頭頸部腫瘍がどこまでわかるか"ということであったが,臨床検査も最近は生化学,遺伝分子生物学,血液学,免疫化学,ウイルス—微生物学など,それぞれの分野に高度なレベルで専門化し,病理形態学者である著者にはとても理解しきれないところまできてしまっている。そこで寛容なる読者諸氏にお許しを願い,解説を著者の守備範囲にある病理組織検査に絞って進めることにする。
 病理組織検査の領域でも最近静かにしかし着実に小さな革命が起きつつある。すなわちH&E(ヘマトキシリン・エオシン)染色とごく限られた脂肪,糖,粘液など組織化学,それに電顕観察など,ほぼ純形態学的手法にのみ頼っていた病理学組織検査への免疫組織化学の活?な応川がそれである。この技法の応用によりいろいろな生物活性,機能性物質(酵素,ホルモン,免疫グロブリン,核酸,諸種レセプター,細胞骨格等々)の組織・細胞内存在部位が染め分けられるようになり,組織,細胞の形態学的変化のみならず機能的な変化をも合わせて検出できるようになってきている。その結果純形態学的にはまったく同じ細胞と見なされ判別のつかないものが,機能的には別のものであることがわかったり,また逆に形の違いから別の細胞と思われたものが機能的には同じものであることが明らかにされたり,さらに生化学的・免疫化学的検査との対応,比較検討などが可能になったりなどして,病理組織学にもちょっとした変換,革命がもたらされようとしているわけである。

化学療法で頭頸部がんがどこまで治るか

著者: 犬山征夫 ,   藤井正人 ,   田中寿一

ページ範囲:P.29 - P.34

はじめに
 頭頸部がんに対する化学療法の発展を年代順にみると,まず薬剤の面では1950年代後半のmetho—trexate (MTX),1967年のbleomycin (BLM),そして1973年のcisplatin (CDDP)があげられる。一方投与方法の面では1950年の動注化学療法(Klopp),1977年のcell kineticsに基づく多剤併用療法の開発(Price, Hill),1981年の新しい化学療法の理論に基づいたneo-adjuvant chemotherapy(Frei III)1)の導入があげられる。しかし現時点では頭頸部がんを化学療法のみで治すことは不可能に近いので,腫瘍の進展度,組織型,既治療の有無,患者の年齢,performance statusなどの因子を考慮しつつ,化学療法を他の治療方法と同時にあるいは連続的に併用しつつ,集学的治療の一環として用いるのが現実的である。したがって本稿においても頭頸部がん治療における化学療法の役割を中心に最近の進歩と今後の展望を述べてみたい。

レーザーで頭頸部がんがどこまで治るか

著者: 平野実

ページ範囲:P.35 - P.42

はじめに
 レーザーで頭頸部がんがどこまで治るか,という問いに答えるのは簡単なことではない。つまりここまでと一口に言い切ることは難しい。しかし答えがないのではない。いろいろな説明を加えながら答える必要があるのである。
 そこで順を追って説明をする。なおレーザーにはいろいろな種類があるが,頭頸部がんの治療に有用性が確認されているレーザーはCO2レーザーとNd-YAGレーザーであるので,ここではこの二つのレーザーに限って記述する。

頭頸部がんに対する温熱療法

著者: 柄川順

ページ範囲:P.43 - P.47

I.はじめに
 がんに対する温熱療法は,表在性腫瘍に対する臨床経験を経て,現在深部腫瘍に対してチャレンジが進められている。表在性腫瘍に対してはすでに10年近い経験が重ねられており,とくに放射線との併用で有効である。頭頸部がんに対しては,発生部位がさまざまであり,また原発巣,転移巣,そして再発がんに対するものなど,多力面から試みられたと思われるが,温熱療法についてまとまった報告は多くない。この理由は,今までの手術療法,放射線療法が有効な方法として確立しており,治療プロトコールに温熱療法を導入する意義がそれほど大きくないと考えられているためであろう。そのためか,今までの治療適応としては,転移性がんや照射後の再発などに対しての利用が多くなったと考えられる。この面からいえば,放射線併用温熱療法は決して役に立たないものではなく,有効な症例が多く認められている。

座談会

頭頸部外科—歴史・現状・未来像をめぐって

著者: 北村武 ,   廣戸幾一郎 ,   岡本途也 ,   三宅浩郷 ,   坂井真

ページ範囲:P.49 - P.63

 坂井(司会) 今日はお忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。
「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」への改題とその周辺
 本誌「耳鼻咽喉科」誌は1928年(昭和3年)に久保猪之吉先生が創刊されて以来,今年でちょうど60年目を迎えることになります。創刊時は誌名に表わされているように耳鼻咽喉が中心であったのですが,近年頭頸部の比重が著しく増大してまいりましたので,第60巻から誌名を新たに「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」と変えて新しい時代に即したものにして行きたいと考えております。

鏡下咡語

兆民の病気について

著者: 佐藤武男

ページ範囲:P.66 - P.67

 明治の自由民権運動の理論的指導老,中江兆民の病気は,ある書物によれば喉頭癌,また他の書物によれば食道癌となっていて一定していない。1986年に出版された立川昭二氏の『明治医事往来』(新潮社)によれば,死因は食道癌となっていた。しかし彼の症状と経過からみて納得しかねたので,引用された原著を探し出して読んでみた。
 その論文は明治35年(1902年)発行の日本消化機病学会雑誌第1巻第3号に掲載されており,岡田和一郎教授が『一二珍奇ナル食道癌ニ就テ』と題して報告している。その内容は3例の症例について,当時としては珍奇な食道癌として経過を報告したものであるが,この3症例は現在の医学常識からみると,いずれも食道癌ではなくて下咽頭癌に属するもので,第3例目に兆民の病歴が記載されている。これらの3例とも現在では特別珍奇なものではない。

原著

咽喉頭異常感のX線診断(その2.機能的異常)

著者: 須崎一雄 ,   入江五朗 ,   寺山吉彦 ,   田中克彦 ,   小崎秀夫 ,   上埜光紀

ページ範囲:P.69 - P.74

はじめに
 咽喉頭異常感の原因診断におけるX線学的検査は,これまで器質的異常の検出のみに偏重していた点を反省し,機能的異常の関与を検討するとともに,そのX線所見および検査法について考按した。
 従来指摘されている器質的異常のみでは,患者の愁訴を合理的に説明しきれず,また器質的異常を認めない場合の異常感の原因解釈に困難を感じている。

振子様眼振,感音性難聴を合併した白皮症症例

著者: 植木篤雄 ,   関谷透 ,   野口高昭 ,   清水敏昭

ページ範囲:P.75 - P.80

I.緒言
 白皮症はメラノサイト(メラニン産生細胞)の先天異常による遺伝性疾患で,病型として①眼皮膚型,②眼型,③皮膚型の3型に分類1,2)されている。本症のうち眼皮膚型,眼型では自発眼振を伴うことがあるとの報告2,3)がなされている。今回われわれは振子様水平性眼振と両側感音性難聴を合併した眼皮膚型白皮症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

扁桃肥大,アデノイド増殖による睡眠時無呼吸発作を呈した2幼児症例—術前術後の睡眠ポリグラフによる検討

著者: 鰐淵伸子 ,   加我君孝 ,   武田永勇

ページ範囲:P.81 - P.86

I.はじめに
 口蓋扁桃,アデノイド肥大などによる上気道閉塞症状を呈する患者の多くはいびきや傾眠を訴えるが,睡眠時無呼吸症候群,すなわち睡眠時に無呼吸発作を頻回に反復するために多彩な臨床症状を呈する場合がある。睡眠時無呼吸症候群は幼少児の突然死症候群1)の一つとして注目され,耳鼻咽喉科領域からは治療的アプローチ2,3)がなされている。
 今回われわれは睡眠ポリグラフによりアデノイドおよび口蓋扁桃肥大による上気道閉塞が原因と思われる閉塞性の睡眠時無呼吸発作を認めた2症例を経験し,1例は著しい肥満を伴っており,高度の肥満を伴った睡眠時無呼吸症候群として知られているPickwick症候群4)との関連性についても若干の文献的考察を加えて報告する。

新生児・乳児上顎骨骨髄炎症例—追跡調査例

著者: 猪熊哲彦 ,   関谷透

ページ範囲:P.87 - P.91

I.はじめに
 新生児・乳児上顎骨骨髄炎は抗生物質の発達により本疾患の典型例,あるいは重篤な症例は少なくなる傾向にある。しかしながらいったん発症すると犬歯窩や内嘴部に瘻孔を形成し,さらに上顎骨が腐骨化し高熱が持続する症例も認められる。また時に外切開法による治療後の顔面,頬部の醜形をきたす例をみる。
 すなわち成長期にある新生児,乳児の顔面骨に比較的大きな外科的侵襲を加えることは,顔面骨,上顎骨,歯牙などに及ぼす影響は少なくなく永続的障害を遺す懸念があり,したがって初期診療にあたっては本症の病態,経過について熟知しておく必要があると考える1)

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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