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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科60巻10号

1988年10月発行

文献概要

特集 ウイルス感染症 II.ウイルス感染症

母体ウイルス感染による聴器障害

著者: 鳥山稔1

所属機関: 1国立病院医療センター耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.903 - P.909

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I.はじめに
 1940年オーストラリアで風疹が大流行したあとに,先天性白内障の子供が多く生まれ,その母親を調べると妊娠中に母親が風疹に罹患していたことをGregg1)が1942年に報告した。当時Greggは風疹によって先天性の白内障と心臓病を生じることに気づいたが,後になって先天性聴力障害の起きることにも気づいた。1943年Swanら2)が風疹障害児31例中,心臓疾患22例,白内障12例,難聴12例,知能障害2例,小脳症3例を認めたと報告したのが,風疹による聴覚障害について記載した最初の論文であった。彼らは,妊娠2か月以内に風疹に罹患すると100%,3か月で50%に,生まれてくる子供に異常があると報告し,1949年Abelらは3か月以内で87%,4〜6か月で42%に異常があると報告した。
 1964年New York市の妊婦の1%以上が風疹に罹患し,翌1965年沖縄に風疹が大流行し,米国で約30,000人,沖縄で約200人の風疹症候群の障害児が生まれた4〜6)。それ以来約10年ごとの周期でわが国でも風疹が大流行をするようになったが,一つには風疹のワクチンの普及,一つには妊婦が風疹に罹患した場合,障害児発生の予防のために人工流産を行うようになったことなどにより,いわゆる風疹症候群児が生まれることは少なくなってきた。それでもなお現在でも風疹症候群児が全く生まれないわけではなく,昭和61年〜62年にかけての流行時などに,散発的に風疹症候群児は生まれている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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