文献詳細
特集 ウイルス感染症
III.特殊なウイルス感染症
成人T細胞白血病(adult T cell leukemia;ATL)
著者: 山口一成1 石川哮2
所属機関: 1熊本大学医学部付属病院輸血部 2熊本大学医学部耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.929 - P.934
文献概要
Human T lymphotropic virus type I (HTLV—I)1,2)はヒトで初めて発見されたRNA腫瘍ウイルス(レトロウイルス)であり,西南日本,カリブ海,アフリカに多発する成人T細胞白血病(ATL)3)の原因ウイルスである。日本にはATL患者は少なく見積っても年間300名は発生しており,HTLV-Iキャリアは100万人以上存在する。ATL発症のメカニズム解明のために多くのウイルス学的,分子生物学的な研究がなされている。ATL患者にはすべて抗HTLV-I抗体が存在し,腫瘍細胞のDNAにはHTLV-Iプロウイルスがモノクローナルに組み込まれており,HTLV-Iが細胞に感染したのちある細胞がモノクローナルに増殖して白血病細胞となったことがわかり,ウイルスがATLの原因であることが明らかとなった。
ATLではウイルス学的検索は病因解明,臨床診断,感染対策に大きな貢献をもたらしている。ここではATLの病態,診断,HTLV-I感染からATL発症へ至る自然史,HTLV-I感染対策,ATLの治療について述べる。
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