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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科60巻10号

1988年10月発行

特集 ウイルス感染症

V.臨床ウイルス学

ウイルスの分類と病原性

著者: 渋田博1

所属機関: 1東京大学医科学研究所ウイルス感染研究部

ページ範囲:P.957 - P.965

文献概要

I.ウイルスの分類法の概要
 病原体として発見されたウイルスは,研究初期の段階ではその病気の特徴で分類されていた。たとえば向神経性ウイルスなどといったものである。その後,培養細胞を用いてウイルスを研究する道が開け,また生化学や電子顕微鏡技術の進歩もあり,ウイルスは形態と化学的組成を中心にいくつかの生物学的特徴を加味して分類されるようになった。化学的組成というのはウイルスのゲノムがDNAかそれともRNAかということ,そのゲノムの形はどうか(環状とか直鎖状とか),ウイルスが脂質性の外皮(エンヴェロープ)を持っているかどうか,などである。ここでゲノムとは遺伝子全体を指す言葉であり,ゲノムの中の個々の遺伝子座をこの文では単に遺伝子と呼ぶことにする。なお細菌から高等生物にいたるまですべての生物のゲノムはDNAでできているが,ウイルスではゲノムがDNAのものとRNAのものがある。生物学的特徴とは,共通の抗原を持っているか,発癌性はどうか,細胞内の増殖部位が核内か細胞質か,逆転写酵素を持っているか,などといったことである。最近,ウイルスゲノムの構造解析が急速に進歩し,ゲノムの中の遺伝子の種類とその配列,すなわちゲノムの微細構造によってウイルスを分類するようになってきた。しかし上記の形態と化学的性質によるウイルスの分類とゲノムの微細構造によるウイルスの分類は大筋において一致しており,前者による分類を後者によってさらに細かなものにするといってもよい。表1に医学上重要なウイルスの分類を載せておく。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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