icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科60巻2号

1988年02月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

アブミ骨動脈遺残症例

著者: 山本悦生

ページ範囲:P.98 - P.99

 胎生4,5週に出現し胎生3か月中に消失するアブミ骨動脈が,生後も遺残している例は非常に稀で,これまで29例の報告があるのみである。多くは側頭骨病理組織標本や中耳手術中に偶然発見される。最近経験したアブミ骨動脈遺残を伴った耳硬化症の1例を供覧する。

原著

イヤーパティRを矯正装具として利用した埋没耳の治療の一工夫

著者: 稲木匠子 ,   丘村煕

ページ範囲:P.101 - P.103

I.はじめに
 埋没耳(袋耳,Cryptotie, Taschenohr, pocketear)は,耳介上部が側頭部皮下に埋まっている先天奇形で,日本人では比較的多いとされている。本症の治療法は手術的治療が主体であると考えられてきたが,非観血的治療法でもかなり良い結果が報告されるようになり,いくつかの矯正装具が考案されている。
 われわれは従来行われている方法に較べて非常に簡単な矯正方法を考案し,好結果を得たので,その方法と成績を紹介する。

巨大な鼻・副鼻腔血管腫の臨床的術前診断と治療

著者: 森泰雄 ,   岩崎幸司 ,   船井恒嘉 ,   田中秀夫 ,   峯田周幸 ,   三浦克敏 ,   星野知之 ,   野末道彦

ページ範囲:P.105 - P.111

I.はじめに
 巨大な鼻・副鼻腔血管腫は画像診断上骨欠損像を呈し,悪性腫瘍との鑑別に苦慮することが多い。また手術的操作を加えるさいには大出血に遭遇することもあり,術前診断が重要である。しかしとくに副鼻腔に発生したものでは術前診断は難しい。実際われわれも輸血を必要とするような術中出血を認め,後に血管腫と判明した症例を過去4例中2例に経験している。
 今回血管腫の術前診断可能で,外頸動脈結紮術後容易に,少量の出血のみで一塊に摘出しえた巨大な鼻・副鼻腔海綿状血管腫の1例を経験した。

後頭蓋窩から副咽頭間隙へ進展した小児髄膜腫の1症例

著者: 多田渉 ,   永澤昌 ,   鈴木衞 ,   原田康夫 ,   小田一成 ,   沖修一

ページ範囲:P.113 - P.117

I.はじめに
 髄膜腫は多くは頭蓋内あるいは脊椎管内に発生するが,時として頭蓋外にも発生あるいは進展することがある。今回われわれはCollet-Sicard症候群をきたして当科を受診し,頸静脈孔を中心として後頭蓋窩より副咽頭間隙に連続して広がる小児髄膜腫の1症例を経験したので報告する。

側頭骨chondroblastomaの1症例

著者: 吉村恵理子 ,   奥野妙子 ,   原田勇彦 ,   野村恭也

ページ範囲:P.119 - P.123

I.はじめに
 軟骨芽細胞腫(chondroblastoma)は原発性骨腫瘍のわずか1%を占めるにすぎず1)稀な疾患である。発生部位はさまざまであるが一般に長管骨の骨端部に発生し,頭頸部領域に生じることはきわめて珍らしい。今回われわれは側頭骨のchon—droblastomaを経験し,術後約10年を経た現在も良好な経過を得ているので,ここに報告する。
 なお現在までの報告をみると,側頭骨のchon—droblastoma症例は著者の検索しえたかぎりでは国外に14例を数え,本邦では伊藤ら2)に続いてこの報告が第2例目の報告となる。

鼻・副鼻腔に発生したhemangiopericytomaの1症例

著者: 伊藤衛 ,   平川勝洋 ,   夜陣紘治 ,   原田康夫 ,   黒川道徳

ページ範囲:P.125 - P.129

I.緒言
 hemangiopericytomaはすべての血管性腫瘍の1%程度の稀な腫瘍であり,また鼻・副鼻腔に発生したものは過去に本邦においては8例の報告をみるのみである。
 今回われわれは鼻・副鼻腔から一部頭蓋内にまで及んでいた症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

悪性変化した耳下腺由来良性混合腫瘍の2症例—腫瘍病因論の立場から

著者: 山本祐三 ,   川上理郎 ,   坂哲郎 ,   岡東周一郎 ,   和田公平 ,   牧本一男 ,   高橋宏明

ページ範囲:P.131 - P.137

I.緒言
 長い臨床経過を有する良性混合腫瘍にしばしば悪性変化がみられることは古くから知られており1,2),同一腫瘍内に良性部分と悪性部分の移行病変が認められることから,原発性の悪性混合腫瘍はほとんど存在せず良性混合腫瘍の悪性化したものに外ならないと考えられている1,3〜5)。しかし何故長期間存在する良性混合腫瘍が悪性化するのかなどといった癌化の病因論に立ち入った報告はみられない。
 最近著者らは10年以上の長い臨床経過を有する耳下腺由来混合腫瘍の2症例を経験し,病理組織学的に検討した結果,両症例ともに腫瘍組織の一部に異型細胞の増殖がみられ,それに近接して強い線維化や瘢痕が共存している像を認めた。従来から瘢痕組織に癌が発生することはよく知られており,瘢痕癌として確立された概念である6,7)。したがって著者らは今回の良性混合腫瘍の悪性化にさいしても,瘢痕形成がなんらか関与している可能性があるかもしれないと考え,腫瘍病因論の立場から瘢痕の意義について若干の考察を加えて報告する。

鼻粘膜広汎切除術:遠隔成績について

著者: 大塚博邦 ,   坂口喜清 ,   渡瀬隆雄 ,   目沢朗憲 ,   奥田稔 ,   高橋光明 ,   海野徳二 ,   木村廣行

ページ範囲:P.139 - P.144

I.はじめに
 鼻アレルギー症状の一つである鼻閉は鼻粘膜のmetachromatic cellから遊離したchemical media—torにより局所血流の循環障害や浮腫が生じた結果起こるものと,長期にわたって繰り返すアレルギー反応により結合組織の増生や血管の拡張が生じることによるものとがある1,2)。前者は可逆性で薬物などの保存的治療により奏効する場合が多いが,後者は治療に抵抗する1,3)。このような難治性の鼻粘膜の腫脹に対し従来より下鼻甲介粘膜広汎切除術を行ってきたが,手術後1〜2年は鼻閉は完全に消失するものの,長い経過をみると再び症状の悪化をみるものも経験する。著者らは下鼻甲介粘膜切除術後5年以上経過した症例をアンケートによって遠隔成績を求めた結果,術後2年まではよい結果が得られてもその後再発する例があり,とくに術前のくしゃみ,鼻汁の程度が高度なもの,またはこれらのコントロールできないまま手術した症例は鼻閉の再発をぎたしやすいという知見を得たので報告する。

当教室アレルギー外来の統計的観察

著者: 斉藤優子 ,   竹中洋 ,   水越文和 ,   昌子均 ,   神谷勝久 ,   紀平晋也 ,   志多真理子 ,   水越治

ページ範囲:P.145 - P.149

I.緒言
 近年耳鼻咽喉科領域において鼻アレルギーが増加の傾向を示すことが報告されている1〜4,7,8)。当教室でも互好ら5)が昭和51年から同56年までの6年間の鼻アレルギー症例について統計的観察を行い報告をしているが,今回はそれ以後の最近4年間の鼻アレルギー外来における統計的観察を行い,昭和51年から56年の6年間と昭和57年から60年の4年間と比較し(一部は昭和51年から55年と56年から60年で比較),最近の鼻アレルギーの傾向について考察を行い新たに若干の知見を得たので,これを報告する。

鼻腔内逆生歯の1症例

著者: 内田利男 ,   高川直樹

ページ範囲:P.151 - P.155

I.はじめに
 上顎歯の位置異常についての報告は多くみられる。1901年(明治34年)金杉1)が鼻腔内逆生歯牙発生の1例を報告してから本邦では90例ほどになる。埋伏歯(歯の萌出時期が過ぎても顎骨内あるいは粘膜下にあって萌出しない歯をいう)は日常臨床時にしばしば遭遇するが,逆生歯(歯冠と根尖との位置関係が逆転している歯をいう)は少なく,上顎の逆生歯はさらに少ない。
 今回鼻出血を主訴に左鼻腔内に萌出した逆生歯を経験したので報告する。

鏡下咡語

渦潮に魅せられ40年

著者: 田中昭男

ページ範囲:P.158 - P.158

 この「鳴門」の詩は,私が旧制徳島中学在学中に国語を教えていただいた宮本村雄先生が,大正11年に渦潮の懸賞募集に応じて当選し,以後15年にわたって国定教科書に掲載され,また小学唱歌として歌われたもので,先生白筆の詩碑が教え子たちの努力によって渦潮を見下ろす鳴門公園に建立されています。先生ぱ後年高校長になられた立派なご人格で,いつも笑顔でユーモアに富み,少し小柄のためか「ピーさん」の愛称で,全校生徒の尊敬の的でした。

私は知りたい

補体

著者: 小川浩司

ページ範囲:P.161 - P.164

I.はじめに
 1880年代は"goldcn eightics"と言われているように,細菌学の重要な発見が次々と成された。それに続く90年代は免疫に関する多くの仕事が行われたが,なかんずく北里—Behringによるジフテリアや破傷風抗毒素の発見は免疫学の臨床応用への幕明けであった。
 細菌で免疫した動物の血清がその菌を凝集し(Charring, Roger, 1889),また菌を溶解すること(Pfifrer, 1894),そしてこの血清中にBuchner(1894)によってalexinと名づけられた殺菌物質があることが明らかになった。Bordetは1895年に免疫動物の血清中には抗原に対し特異性がある熱に強い物質—抗体と非特異的で熱に弱い物質—alexinがあることを見つけ,この熱に弱い物質alexinが後にEhrlichによって補体(complement)と改名された。

CPC

高齢者喉頭腫瘍の1例

著者: 小田恂 ,   長舩宏隆

ページ範囲:P.165 - P.168

 耳鼻咽喉科領域の疾患のうち死亡症例の多くは悪性腫瘍によるものである。最近の化学療法ならびに放射線治療医学の進歩により,早期に発見され治療が開始された症例の治療効果は目覚ましいものがあるが,進行ガンや末期ガンに対する治療は延命効果を期待するのみに終始する場合も少なくない。
 周知のごとく,悪性腫瘍の病勢は若年者では早く,ときとして劇烈な進行を示し死に到らしめる場合もみられるが,高齢者の場合には比較的緩徐に進行し,呼吸器や循環器などの機能不全を合併して,それらが直接死因となり死亡する例も少なくない。

医療ガイドライン

音声・言語障害者に対する「身体障害者福祉法」の実践

著者: 柴川貞雄

ページ範囲:P.169 - P.173

I.はじめに
1.コミュニケーション障害における耳鼻咽喉科医の貢献
 コミュニケーション機能は,耳で聞き,それを脳で理解し,口で話す,という三つの側面が連続して完結するサイクルとして考えられる。耳鼻咽喉科は責任領域としてこのコミュニケーションを難聴,音声・言語障害として営々と取り組んできた唯一の専門の科である。その内容をざっと挙げてみても,オージオロジー学会,音声言語医学会などにおける学術研究活動,聴力検査士,言語療法土など関係専門職の育成,学会が主導する福祉医療の研鑚と実践の振興策など,コミュニケーション障害者への貢献は測り知れず,一般に高く評価されている。

海外トピックス

最近のヨーロッパ見聞—耳科学,鼓室形成術,人工耳,神経耳科学,頭蓋底手術,頭頸部形成術など

著者: 鈴木淳一

ページ範囲:P.175 - P.179

 本年3月下旬から5月中旬まで,1か月半,ヨーロッパに滞在して,いささか見聞するところがあった。訪問した場所は,イタリア(ベニス)に1週間,スエーデン(イェーテボリ,ストックホルム,ウプサラ)に合計2週問,スイス(チューリヒ)に2週間,東ドイツ(東ベルリン,ドレスデン)に1週間,そして最後はコペンハーゲンに1泊2日というものであった。別に6月下旬に3泊でスペイン(マドリッド)に出張したので,これも併わせてご報告したい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?