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原著
タイ航空事故による航空性中耳炎症例
著者: 石丸幹夫1 石川元一2
所属機関: 1ひょうたん町耳鼻咽喉科医院 2石川耳鼻咽喉科医院
ページ範囲:P.213 - P.219
文献購入ページに移動I.はじめに
航空性中耳炎自体はとくに珍らしい疾患ではない。これまでにも諸家の報告にあるようにその発生のメカニズムはほとんど解明されており,耳管機能がきわめて重要な役割を果たし,それを取り巻くさまざまな因子,たとえば上気道炎,副鼻腔炎,鼻中隔彎曲症,睡眠,飲酒,慣れ等の影響が報告1,2)されている。しかし今回の症例はその発生のメカニズムが特殊な事故によるものであるだけに,中耳内気圧が外界に対して相対的に高圧に,そしてまた低圧になったという2相の変化を考えざるをえず,鼓膜所見をできるだけ詳細にみながら中耳障害の発生機転を検索してみた。
事件は昭和61年10月26日に発生したタイ航空エアバスの圧力隔壁の破損劇故で,それにより発生した航空性中耳炎の5症例をみる機会を得たが,これは事故による機内の急激な減圧と続いてなされた急降下による加圧であり,通常の飛行では考えられないような気圧変動であっただけに意義深い症例と考えられた。
航空性中耳炎自体はとくに珍らしい疾患ではない。これまでにも諸家の報告にあるようにその発生のメカニズムはほとんど解明されており,耳管機能がきわめて重要な役割を果たし,それを取り巻くさまざまな因子,たとえば上気道炎,副鼻腔炎,鼻中隔彎曲症,睡眠,飲酒,慣れ等の影響が報告1,2)されている。しかし今回の症例はその発生のメカニズムが特殊な事故によるものであるだけに,中耳内気圧が外界に対して相対的に高圧に,そしてまた低圧になったという2相の変化を考えざるをえず,鼓膜所見をできるだけ詳細にみながら中耳障害の発生機転を検索してみた。
事件は昭和61年10月26日に発生したタイ航空エアバスの圧力隔壁の破損劇故で,それにより発生した航空性中耳炎の5症例をみる機会を得たが,これは事故による機内の急激な減圧と続いてなされた急降下による加圧であり,通常の飛行では考えられないような気圧変動であっただけに意義深い症例と考えられた。
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