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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科60巻4号

1988年04月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

球状外耳道異物摘出の一方法

著者: 納谷裕

ページ範囲:P.274 - P.275

 幼児の球状外耳道異物の摘出は泣いたり動いたりするため意外に難しい。従来の方法では摘出が難かしいと思われる症例でも,本方法で容易に摘出できる。

トピックス 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の人工臓器

人工中耳

著者: 柳原尚明

ページ範囲:P.277 - P.282

I.植込型人工中耳開発の背景
 鼓室形成術の成績は近年著しく改善し,多くの症例において中耳炎症の治癒と聴力の改善が確実に得られるようになってきた。しかし骨導聴力不良例,耳管機能不全例,アブミ骨可動性の障害例では,鼓室形成術によって聴力の改善をはかることは依然困難である。これらの問題点を克服して聴力の改善を得るためには,WullsteinのV型分類に代表される中耳伝音機構の再建理論の枠を超えた,革新的な発想による聴力改善手術を開発することが必要と考えられる。
 鼓室形成術によって聴力改善が得られない場合,一般には補聴器の装用が勧められる。電子音響工学の目覚ましい進歩により補聴器の品質,性能は向上し,小型化も一段と進んできたが,現在のアナログ型補聴器の使用は必ずしも患者を満足させるものではない。患者の多くが補聴器を使用したがらない理由には以下のようなものが挙げられる。

22 channel cochlear implant患者の語音聴取能とその生理学的考察

著者: 船坂宗太郎 ,   高橋整 ,   湯川久美子 ,   城間将江 ,   熊川孝三

ページ範囲:P.283 - P.289

I.はじめに
 Cochlear Implant(以下CIと略す)はわが国では立ち遅れた感があるが,欧米諸国では広く行われ国際学会も2年ごとに開かれている。CIは高度の蝸牛難聴ないしは聾の患者に対し,蝸牛の電気刺激により会話や環境音の聴取を可能とするもので,現在実用化されている方式は,①蝸牛の刺激部位によりextracochlcarとintracochlear,②電極数によりsingle channelとmultichannel,③電気刺激波形によりanalog型(音声波形を濾波・変調などの処理をしたうえで送り込む)とdigital型(音声波形の特徴を抽出し,これを電気パルスで送り込む)とに分類することができる。
 筆者らは1985年末より現在まで,ニュークレアス社製の22channel cochlear implantを8名の聾患者に施行し,会話聴取能力の再獲得に有用であるとの結論を得ている。今回はリハビリテーションを一応終了した5人の患者について報告し,あわせて言語聴取に関する生理学的考察を述べることにする。

人工顎骨—人工生体材アパタイトによる下顎骨の再建

著者: 大西正俊

ページ範囲:P.291 - P.297

I.はじめに
 人工生体材料のなかでもセラミックスは近年その臨床応用における有用性が大きいことから注目されている。とくに骨補填材としてリン酸カルシウム系のハイドロキシアパタイトは組織親和性に優れ,骨組織と直接癒着する性質をもつことからすでに人工骨として市販されており,関連各科において臨床応用されている。本稿ではこれらの臨床適応のうち人工顎骨,とくに下顎骨の再建についての概要を述べてみたい。

埋め込み式代用喉頭

著者: 仲田充雄 ,   宇佐神正海 ,   江口実美

ページ範囲:P.299 - P.306

I.はじめに
 無喉頭者における音声機能の回復は医学的にも社会的にも重要な問題である。無喉頭者の発声法にはCzermak(1859)の考案から発する人工喉頭を用いる方法1〜3)とGutzmann(1908)4)による食道発声法とに始まる。
 喉頭摘川例の音声回復法としての食道発声法は第一選択法とされているが,その習得率は60〜70%であるといわれている5)。代用喉頭の閉発はCzermak(1859),Gussenbaucr(1874)6)以来,Tapia式(1883)人工喉頭,1950年代後半に開発された皮膚伝導式電気人工喉頭(transcervicaIEIectro Larynx)7)などの器具を用いるものと,Conlcyら8),Asai9)らの喉頭形成術によるものとが行われてきている。

培養皮膚移植による皮膚再建

著者: 黄金井康巳 ,   塩谷信幸

ページ範囲:P.307 - P.313

I.はじめに
 近年生体組織を構成する細胞を生体外に取り出し,培養系で細胞を増殖し再構成させた後,再び生体に移植,永久生着させ,臓器・器官としての機能を維持させる試みがなされ注目を集めてきた。このような培養細胞を用いた研究分野のうち,「培養皮膚」は最も進んだ領域として臨床応用も行われるまでに発展した。
 いわゆる培養皮膚(cultured skin)が著しい進歩を遂げた理由としては,

原著

スギ花粉による感作と発症

著者: 相原康孝 ,   目沢朗憲 ,   大塚博邦 ,   奥田稔

ページ範囲:P.315 - P.319

I.はじめに
 近年スギ花粉症患者は増加する傾向にあり,また日常診療においては季節時に症状がなくてもスギのRASTまたは皮内反応が陽性を示す患者が多くみられる。今回スギのRASTまたは皮内反応が陽性でも季節性の症状がない患者がどのくらい存在するか,またその年齢構成はどうか,また季節性の症状をもつ患者との比較から,何歳頃スギに感作されそれから発症までどのくらいかかるかなどを検討してみた。
 以下季節性の症状をもつものを顕性スギ花粉症RASTまたは皮内反応が陽性でも季節性の症状をもたぬものを潜在性スギ花粉症と呼ぶ。

術後性乳突部嚢胞の1例

著者: 中村雅一 ,   奥野妙子 ,   水野正浩

ページ範囲:P.321 - P.324

I.はじめに
 慢性中耳炎において乳突蜂巣の炎症性病変に続発してコレステリン肉芽腫が形成されることは,日常臨床ではしばしば経験することである。またコレステリン肉芽腫を伴った乳突部嚢胞も稀ながら症例報告が認められるが,その成因についてはまだ明らかではない。今回私どもは中耳手術後30年以上の経過の後に,コレステリン肉芽腫を伴って嚢胞を形成した症例を経験したので,若干の文献的考察とともに報告する。

三叉神経痛ならびに顔面痙攣に対するS状静脈洞後方からのアプローチによる神経血管減圧術

著者: 張開文 ,   孫志庭

ページ範囲:P.329 - P.332

I.はじめに
 三叉神経痛と顔面痙攣は中・高年者に比較的多くみられる疾患である。1977年Jannettaら1)が顔面痙攣に対し神経血管減圧手術が有効であることを詳細に報告して以来,多くの研究者がこの術式を追試してきた2〜4)
 従来からの方法は主として迷路の後方から神経血管に到達する方法であったが,著者らは1985年以来,S状静脈洞の後方から到達する力法で手術を行い,良好な成績が得られたので報告する。

中耳粘膜に色素斑がみられた太田母斑の1症例

著者: 森園徹志 ,   八木聰明 ,   鈴木文雄 ,   坂口文雄

ページ範囲:P.333 - P.335

I.はじめに
 太田母斑は黄色人種に多く,眼瞼から頬部にかけ褐色の着色を通常は片側性にみるものである1)。日本人に比較的多い疾患ではあるが,日常の耳鼻咽喉科診療で鼓膜あるいは中耳粘膜の色素斑に遭遇することはほとんどない。今回われわれは中耳粘膜に色素斑を伴った太田母斑症例を経験したので,若干の考察を加え報告する。

上顎洞に発生した濾胞性歯嚢胞の2症例

著者: 山岨達也 ,   塩野博巳

ページ範囲:P.337 - P.343

 Ⅰ.緒言 濾胞性歯嚢胞は顎骨内に発生する歯原性嚢胞の一つで,大半は嚢胞腔に歯冠を包含する含歯性嚢胞である。歯科,口腔外科からの報告は多くみられるが,上顎洞に進展する症例が比較的稀なため耳鼻咽喉科からの報告は少ない。今回われわれは上顎洞に進展した2症例を経験したので,若干の文献的考察を併せて報告する。

中甲介に4本の過剰歯が存在した1症例

著者: 鈴木雅一 ,   高山孝治 ,   古屋信彦

ページ範囲:P.345 - P.348

I.はじめに
 鼻・副鼻腔に歯牙が発生することは比較的まれである。しかし鼻・副鼻腔に発生した歯牙が原因で鼻閉,鼻出血,副鼻腔炎,さらには頭重,顔面蜂窩織炎の生じた報告もある1〜3,5,6)
 鼻・副鼻腔のどの位置にどんな歯牙が発生しうるのかを知っておくことは,それぞれの症例にたいしてどのように対処すべきかを的確に判断するうえで重要なことと思われる。

成人鼻腔に発生した胎児型横紋筋肉腫

著者: 戸田勝也 ,   岸本勝 ,   井村成充

ページ範囲:P.349 - P.354

I.はじめに
 横紋筋肉腫は主として四肢,?幹に発生するが頭頸部領域に発生することも稀ではなく,頭頸部では眼窩内が最も多い。なかでも鼻副鼻腔に生じるものは予後も悪くかつ治療法も確立していない。頭頸部領域での横紋筋肉腫は主として1〜12歳ぐらいまでに多発するが,最近われわれは成人の鼻腔に原発した胎児型横紋筋肉腫を経験した。本症例について報告するとともに文献的考察を加えることとする。

鏡下咡語

ゴルフ交友録

著者: 名越好古

ページ範囲:P.326 - P.327

 私がゴルフを始めたのは昭和43年であるが,岩本彦之焏教授にすすめられたのがきっかけだったように記憶している。当時を振り返ってみると,学会では耳鼻咽喉科処置点数の減点問題で全国の耳鼻科医の保険医総辞退という最悪の事態にまで発展し,故園田厚生大臣の肝入りでようやく政治解決をみた翌年に当たる。当時私は学会の社療委員長をしていたので一苦労をした直後であった。また大学では全国的に学生運動が吹き荒れていた頃で,わが東邦大学でもその余波で揺れ動いていた時期であって,病院長であった私は何かと苦労のあった時期であった。こんなギスギスした人間関係を経験していたので,それまではとかく金持のスポーツのように思えて精神的に抵抗のあったゴルフを,すすめられるままにすんなりやる気になったのであろうと思っている。
 同じように大学の中でもゴルフを始める気運が生まれて,現桑原理事長,現淺田学長,現東京医大柳沢教授(元東邦大生化学教授)等もゴルフを始めるようになり,現木下名誉教授(産婦人科),故亀谷教授(元第一外科教授),千木良理事等とともに,あちこちのコースに出掛けた記憶が限りなく浮かんでくる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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