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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科60巻5号

1988年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

エプーリスの4例

著者: 大原奎昊 ,   内藤準哉 ,   有本恭三 ,   杉田佳信 ,   小村健

ページ範囲:P.360 - P.361

 エプーリスは一般に歯肉部に発生する良性の限局性腫瘤を総括した臨床名として用いられている。

原著

Mondini型内耳奇形と反復性髄膜炎

著者: 星野知之 ,   込田茂夫 ,   込田京子

ページ範囲:P.363 - P.367

I.はじめに
 特発性の耳性髄液漏や反復する髄膜炎を起こす症例でMondini型の内耳奇形が存在したという報告はまれでなく,ことに高分解能のCTが広く使用されるようになってから,近年ますます報告が増している。中耳からの髄液漏は頭蓋腔から中耳腔天蓋や耳管付近に入り込んだ脳膜脳瘤(menin—goencephalocele)から出たり,まれにHyrtl裂などの異常な裂孔からも起こることが報告されているが,Mondini奇形に合併するものが最も多い1)。わが国での内耳奇形に合併した反復性髄膜炎の症例数は,1987年の集計で14例あると報告2)されている。
 こうした症例で鼓室開放術を行うと,アブミ骨底板またはその付近から外リンパが流出するのがみられるか粘膜の袋状の膨隆3,4)があり,これを破ると勢いよく外リンパが涌出するいわゆるperi—lymph gusherがみられる。膨隆した粘膜は骨の瘻孔より内耳液が押し出した中耳腔粘膜である。著者らの知る限りでは,こうした粘膜の膨隆は写真で明瞭に示されたことがない。著者らは最近Mondini奇形に合併して反復性髄膜炎を起こした症例でこの写真撮影を行い,また摘出したアブミ骨を走査型電子顕微鏡(SEM)で検討したので報告する。

遅発性内リンパ水腫—症例報告と統計的観察

著者: 猪狩市世 ,   高橋正紘 ,   伊藤光子

ページ範囲:P.369 - P.375

I.はじめに
 一側聾の既往をもつものにめまいが好発することは亀井ら1)がすでに1971年に報告している。Nadolら2),Wolfsonら3)は1975年別個に,内リンパ水腫との関連でそれぞれ12例,5例の症例を報告した。Schuknecht は1976年4) delayed hydropssyndromeの概念を提唱し,さらに1978年5)本疾患を難聴発症後年余を経て回転性めまいを反復するipsilateral typeと良聴耳の聴力変動をきたすcontralateral typeに分類した。今回著者らは遅発性内リンパ水腫自験例の14症例を報告し,Schu—knecht theoryの問題点について検討した。

頸部リンパ節転移例に対する超音波断層診断の有用性—頸動脈との関連性を中心に

著者: 中村光七郎 ,   木谷伸治 ,   丘村煕

ページ範囲:P.377 - P.380

I.はじめに
 超音波断層検査は耳鼻咽喉科領域,とくに頭頸部腫瘍の画像診断として従来から利用1〜3)されてきた。最近エレクトロニクスの進歩に伴い,グレースケール方式により階調性に富んだ画像が得られるようになったことや,電子リニア走査方式により瞬時に断層像を観察できるようになったことで,ますます手軽に臨床応用されるようになってきた。
 超音波断層検査では組織学的診断をすることは不可能であるにしても,容易に腫瘍の性状を把握できる点,任意の断層面が得られ管腔構造の観察に適している点は捨てがたい。また頸動脈壁が管腔壁として十分に厚く,他組織と比べてより強いエコー源である4)ことを考えると,頸部腫瘍と頸動脈との関係をみるには優れた方法と思われる。

興味ある超音波像を呈した甲状腺癌の1例

著者: 山田弘之 ,   竹内理子 ,   堀みどり ,   坂倉康夫 ,   宮木良生

ページ範囲:P.381 - P.386

I.緒言
 甲状腺は表在性臓器であり触診の重要性が強調される一方,触診のみでは客観性に欠けるとの反省から種々の検査とくに画像診断が多用されるようになってきた。なかでも超音波検査はCTスキャンやシンチグラフィに比較して,人体への侵襲性,簡易度から多用される傾向にあり,最近ではルーチン検査として施行されている。
 超音波検査で求められるものは病変の描出,周囲との関係にとどまらず,最近では病変の良・悪性の鑑別にまで至っている。この点で最近の診断技術,機器の進歩により小病変の描出,病変の質的診断は着実に進歩しているといえる。しかし描出能が向上しながら,術前の検査で病変を指摘できない潜在癌がみられることも事実である。

悪性発作性頭位眩暈症

著者: 小山内龍一 ,   山根雅昭 ,   水野正浩 ,   渡辺博紀 ,   澤木誠司 ,   高橋裕秀 ,   佐竹良三

ページ範囲:P.387 - P.393

I.はじめに
 めまい疾患の中には,前庭神経炎やメニエール病などのように頭位とあまり関係なくめまいを起こすものがあるが,一方で頭位と密接に関係しためまい疾患もある。頭位と関係しためまいの中には,末梢前庭障害によって起こるものと中枢障害によって起こるものがあり,前者の代表的な疾患としては良性発作性頭位眩(benign paroxys—mal positional vertigo, BPPV, positional nystagmusof the benign paroxysmal type)があり,耳石器障害によるものと考えられている1〜3)。中枢障害によって起こる頭位性めまいは,悪性発作性(または持続性)頭位眩暈症(malignant paroxysmal (orpersistent)positional vertigo, MPPV),ないしBruns症候群といった概念とほぼ同義語と考えられている3〜8)。めまいの診療にあたっては,BPPVなどの末梢性疾患だけでなくMPPVについても充分な理解を有することが要求される。今回われわれはMPPVの3症例を呈示し,考察を加える。

鼻腔内にみられた結石様塊の1例

著者: 福田正弘 ,   韓東煕 ,   石橋敏夫 ,   庄司稔 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.395 - P.398

I.はじめに
 鼻石に関する報告は多く,1974年の犬山ら1)の統計によればすでに100症例を教える。症例の報告はその後も続き,現在では種々の分析法による化学的組成の解明やさらに電子顕微鏡を用いた表面微細構造の報告2)がなされているが,その成因についてはいまだ不明の点が多い。われわれは最近鼻腔内に発生した1症例を経験したが,病理組織学的検討から歯牙が核となり結石様変化を示したものと判明した。今回の症例の検討から,鼻石の生成過程について若干の考察を得ることがでぎたので報告する。

広範な膿瘍を形成した先天性耳瘻孔2例—局所皮弁を用いた皮膚形成術

著者: 大島猛史 ,   神林潤一

ページ範囲:P.399 - P.402

I.緒言
 先天性耳瘻孔は日常診療で高頻度にみられる先天奇形の一つであるが,しばしば感染,化膿を繰り返し時にその治療に難渋することもある。また正しい治療の行われていない例もしぼしば見受けられる。今回われわれは度重なる炎症のため広範な膿瘍を形成し陳旧化した大きな皮膚欠損を生じた先天性耳瘻孔2例に対し,局所皮弁を用いた皮膚形成術を施行し良好な結果を得たので,その手術法ならびに先天性耳瘻孔の治療上の問題点につき文献的考察を加えて報告する。

Frey症候群の1治験例

著者: 窪川志功 ,   山本香列

ページ範囲:P.411 - P.414

I.はじめに
 Frey症候群は味覚刺激にさいし耳下腺部の皮膚に発汗,発赤,疼痛をみるものである。原因の多くは耳下腺への外科的操作によるものであり,耳下腺手術後の不快な合併症の一つである。発症機構については神経過誤支配説が現在最も支持を得ている。すなわち唾液腺の分泌神経である副交感神経が手術時に切断され,その再生時に誤って近傍の汗腺や皮膚の微細血管を支配するという説1)である。治療法では神経過誤支配説等の推定される成因にのっとり考按された種々の方法が報告されているが,難治であり確実な方法がないのが現状である。今回われわれは耳下腺良性腫瘍摘出後に発症した1症例に対し,鼓室神経切断術と大腿筋膜皮下挿入術を併用し,良好な成績を収めたのでここに報告する。

鼻副鼻腔真菌症—症例報告と文献的考察

著者: 増田はつみ ,   岡田康司

ページ範囲:P.415 - P.420

I.はじめに
 鼻副鼻腔真菌症は単純X線検査にて片側性の副鼻腔陰影をみつけたさい,腫瘍,歯性上顎洞炎とともに鑑別すべき疾患とされている。しかし臨床の場においては比較的頻度が少ないこと,予後良好なことなどから,さほど重要視されていないのが現状であろう。しかるになかにはrhinocerebral mucormycosisのような致死率の高い病型もあり,注意が必要である。われわれは偶然に発見された節骨洞に限局する真菌症と,上顎腫瘍が疑われた真菌症の2症例を経験した。われわれの2例も含め本邦における115例について統計的考察を行ったので,症例提示とともにあわせて報告する。

鏡下咡語

絵のこと

著者: 森満保

ページ範囲:P.404 - P.405

 趣味は何ですかと聞かれることが多い。スポーツとしてはゴルフ一辺倒であるが,室内での趣味としては一応"絵"ですと答える。すると何かの機会に絵がお好きだそうでと個展の招待状をいただいたり,立派な美術書をいただいたりする。また時には一流画家の高価な油絵を買わないかと持ち込まれたりもする。そのたびにちょっと当惑することになる。
 絵が趣味だといってもその中味はいろいろである。料理が趣味といいながら,名物料理の食べ歩きであったり,クッキングであったり,料理評論であったりする。音楽でも自分で歌い楽器を演奏する能動派と聞くだけの受身派もいる。はたまたオージオアンプやスピーカに凝る装置マニアであったりもする。

私は知りたい

SCC抗原

著者: 木田亮紀 ,   遠藤壮一

ページ範囲:P.407 - P.410

 頭頸部悪性腫瘍の大部分は扁平上皮癌であるが,この扁平上皮癌に対する腫瘍マーカーとしてsquamous cell carcinoma related antigen(以下SCC抗原)が開発された。SCC抗原は子宮頸部扁平上皮癌の肝転移組織より分離され,それに対する抗血清を用い,2抗体法を利用したradioim—munoassay(RIA)系キットによって測定できる。この測定は外注により行うこともできる。
 血中SCC抗原の測定がどの程度臨床に役立つであろうか,頭頸部扁平上皮癌を中心にして述べる。

CPC

喉頭癌術後に消化管出血にて死亡した1例

著者: 横井久 ,   柳田則之

ページ範囲:P.421 - P.426

 術後合併症として上部消化管に発生する急惟潰瘍は,脳疾患におけるCushing ulcer,火傷後のCurling ulcer同様ストレス潰瘍に属するものとされている。近年外科手術の適応が拡大され,それに伴い手術侵襲も増大している。それにつれて術後の急性出血性病変も多くなっており,この傾向は頭頸部領域でも同様である。術後に合併する本疾患は,原疾患,手術侵襲,その他の術後合併症など種々の要因が重なるため,重篤な経過をとる場合が多い。今回われわれは喉頭癌術後に消化管出血をきたし死亡した症例を経験したので,剖検結果を合わせて報告する。

医療ガイドライン

平衡機能障害の認定法と書類の書き方

著者: 時田喬 ,   小高真美

ページ範囲:P.427 - P.432

I.身体障害者福祉法における平衡傷害の認定と耳鼻咽喉科医の貢献と責務
1.平衡機能と平衡傷害
 われわれは立ち,歩き,走るという日常の動作を,とくに身体の安定さに気を配ることなく行うことができる。むずかしい運動でも練習すれば,目的遂行のための運動にのみ意識を集中し,とくに身体の安定さに気を配ることなく行うことができる。 これは動作を行うにあたっては,随意運動とともに不随意的に姿勢の維持,運動の遂行を助けるためのつぎの諸機構が働いているためである。

海外トピックス

Cochlear Implant(人工内耳)の現状

著者: 船坂宗太郎

ページ範囲:P.433 - P.436

はじめに
 人工内耳(cochlear implant)とは,音を電気波形に変換して内耳に送り聴神経を直接刺激して内耳性聾患者に聴覚を引き起こす装置である。前号でNucleus社製22-channel cochlear implantの説明と使用経験を述べたが,今回は編集者の求めにより各国の人工内耳の状況について記載することとなった。
 聴神経の直接電気刺激は1957年DjournoとEyliesによって試みられ,1966年Simmonsは6本の電極を挿入してその結果を詳細に報告した。以来今口までアメリカ,イギリス,オーストリア,ドイツ,フランス,ベルギー,オーストラリアなどで各種の人工内耳が開発されている。そしてそれらのあるものは言語習得後に聾となった患者(postlingual deaf)の会話能力再獲得に有効であると評価されている。本論文では紙数の制限もあるので,これら各種の人工内耳の機構と有用性とを要約して述べ責を果たしたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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