19例の甲状舌管嚢胞—自験例におけるSistrunk手術の評価について
著者:
西嶌渡
,
竹生田勝次
,
野崎信行
,
市川容子
,
時田信博
,
渋沢三伸
,
真栄田宗慶
,
渡辺勈
ページ範囲:P.473 - P.477
I.はじめに
甲状舌管嚢胞は甲状舌管の遺残組織より発生する。解削学的には舌盲孔から甲状腺峡部にかけて,正中頸部のあらゆる部位に発生する可能性を有する。また時に外界の皮膚との間にいわゆる甲状舌管瘻を形成することがある。この場合瘻孔は,通常?胞の破裂後に二次的に生じるが,出生時にすでに存在している1)こともある。臨床的には多くの場合単室性で,舌骨下面に接して甲状舌骨膜の高さで発生する場合が多いが,稀に舌骨の上下にわたって二室性に存在する2)こともある。
昭和51年11月の開設以来昭和61年12月までに埼玉県立がんセンター耳鼻咽喉科で手術的加療の行われた13例の甲状舌管嚢胞,および昭和58年4月より昭和61年12月までに東京医科歯科大学耳鼻咽喉科で手術的加療の行われた6例の甲状舌管?胞の計19例について検討を加えた。この19例は全例Sistrunkの術式3)に基づいて手術が行われた。発生した嚢胞の解剖学的位置は舌骨の上下にわたって存在するものから,甲状舌管瘻を形成しているものなど多岐にわたっていた。臨床症状も無症状のものから,嚥下困難を呈し一見したところ悪性腫瘍を疑わせるものまでさまざまであった。