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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科60巻6号

1988年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

Underlay法再評価のために

著者: 新井邦夫

ページ範囲:P.442 - P.443

 underlay法をもはや古典的手術とする向きもあるが,形成された鼓膜がきわめて自然な外観を呈することや,その手技の応用性が高いこと等で,現今主流を占めるSandwich法と比較して有利点も多々あると考える。

原著

家族性の両側性聴神経腫瘍の1家系

著者: 朴茂男 ,   服部康夫 ,   弓削庫太 ,   永野泰宏 ,   富田伸 ,   大屋滋 ,   浅野佳徳

ページ範囲:P.445 - P.449

I.はじめに
 聴神経腫瘍の多くは一側性であるが稀に両側性に発生することがある。
 両側性聴神経腫瘍は臨床的にも病理組織学的にも一側性聴神経腫瘍とは異なったいくつかの特徴を有している。両側性聴神経腫瘍は遺伝疾患であるvon Rccklinghauscn氏病の合併症として出現することが多いことより,その発生に遺伝的要因が関与していると考えられる。今回われわれは難聴者の多発する1家系を経験し,家系中2名が両側性聴神経腫瘍を有していることを確認し,他1名にもその可能性が高いという興味ある知見を得たので報告する。

急性低音障害型感音難聴を呈した外リンパ瘻の1例

著者: 山岨達也 ,   塩野博己 ,   野村恭也

ページ範囲:P.451 - P.454

I.緒言
 1968年のSimmons1)の論文以来,特発性の外リンパ瘻が急性,反復性の蝸牛・前庭障害を引き起こす新しい疾患概念として注目されてきた。当初は突発性難聴の成因として重要視されていた外リンパ瘻ではあるが,聴力障害を欠く症例の報告2,3)もみられるようになり,その内耳障害の実態はいまだ明らかではない。
 一方急性低音障害型感音難聴については最近の報告4,5)によりその概念がまとまりつつある。しかし病因についてはまだ明らかではなく,種々の病因が考えられている。

機能的眼振の1例—Flutter like oscillations様の異常眼球運動を示した登校拒否症

著者: 岡田真由美 ,   新井寧子 ,   堀口文 ,   古内一郎

ページ範囲:P.455 - P.460

I.はじめに
 flutter like oscillations(以下FLOと略す)は稀な異常眼球運動の一つで,脳炎,腫瘍,血管障害などによる小脳または小脳神経路の障害で発現すると報告1〜3)されている。FLOと似た眼球運動にはopsoclonusと随意性眼振がある。随意性眼振とは随意的に眼振の解発と停止ができるものをいい,病的意義はない1,4〜14)
 われわれは,メマイ,頭痛,嘔気の症状を訴えFLOに酷似した眼球運動を示した13歳の少女の症例を経験した。心理療法を開始後,患者のメマイなどの症状の訴えとFLO様眼球運動は消失し,代わって随意性眼振が出現するという興味深い経過をみせた1例なので報告する。

頸部神経原性腫瘍の4症例

著者: 野中学 ,   目沢朗憲 ,   森園徹志 ,   奥田稔

ページ範囲:P.461 - P.467

I.はじめに
 頭頸部領域においては末梢神経由来の腫瘍は比較的稀なものである。今回われわれは頸部の末梢神経由来の神経鞘腫2例,神経線維腫2例を経験したので報告する。

副交感神経刺激における鼻汁分泌に対する臭化イプラトロピウム局所投与の抑制効果

著者: 朝倉光司 ,   東英二 ,   榎本和子 ,   形浦昭克

ページ範囲:P.469 - P.472

I.はじめに
 鼻アレルギー症状発現にはhistamine等のchem—ical mediatorの直接作用と自律神経反射を介する間接作用が関与している。これら鼻アレルギー症状のうちで水性鼻漏に関しては,Vidian神経を介した副交感神経反射が重要な役割を担っていると考えられる。
 さらに鼻アレルギー患者では自律神経系自体にも変化が生じており,交感神経系の反応性の低下1)と同時に副交感神経系の反応性の充進2)が証明されている。最近の抗アレルギー剤の進歩の結果,Vidian神経切除術の対象例は減少しているとはいえ,種々の治療に抵抗を示す水性鼻漏に対しては重要な治療手段の一つと考えられる。

19例の甲状舌管嚢胞—自験例におけるSistrunk手術の評価について

著者: 西嶌渡 ,   竹生田勝次 ,   野崎信行 ,   市川容子 ,   時田信博 ,   渋沢三伸 ,   真栄田宗慶 ,   渡辺勈

ページ範囲:P.473 - P.477

I.はじめに
 甲状舌管嚢胞は甲状舌管の遺残組織より発生する。解削学的には舌盲孔から甲状腺峡部にかけて,正中頸部のあらゆる部位に発生する可能性を有する。また時に外界の皮膚との間にいわゆる甲状舌管瘻を形成することがある。この場合瘻孔は,通常?胞の破裂後に二次的に生じるが,出生時にすでに存在している1)こともある。臨床的には多くの場合単室性で,舌骨下面に接して甲状舌骨膜の高さで発生する場合が多いが,稀に舌骨の上下にわたって二室性に存在する2)こともある。
 昭和51年11月の開設以来昭和61年12月までに埼玉県立がんセンター耳鼻咽喉科で手術的加療の行われた13例の甲状舌管嚢胞,および昭和58年4月より昭和61年12月までに東京医科歯科大学耳鼻咽喉科で手術的加療の行われた6例の甲状舌管?胞の計19例について検討を加えた。この19例は全例Sistrunkの術式3)に基づいて手術が行われた。発生した嚢胞の解剖学的位置は舌骨の上下にわたって存在するものから,甲状舌管瘻を形成しているものなど多岐にわたっていた。臨床症状も無症状のものから,嚥下困難を呈し一見したところ悪性腫瘍を疑わせるものまでさまざまであった。

食道のbronchogenic cystの1例

著者: 伊藤和行 ,   藤田和寿 ,   竹内亘 ,   山田理

ページ範囲:P.479 - P.482

I.はじめに
 bronchogenic cystは胎生期の気管,気管支の異常発達により発生し,一般に胸腔内,とくに肺,縦隔に多く発生する1,2)とされている。食道での発生はきわめて稀で,Arbonaら2)の報告では1943年から1984年の42年間に7例を認めるのみである。われわれの検索しえた範囲では本邦では過去20年間報告は認められなかった。今回われわれはきわめて稀な食道のbronchogenic cystを経験したので報告する。

興味ある鼻腔異物2症例

著者: 山田理 ,   稲賀潔 ,   神崎裕士 ,   伊藤和行

ページ範囲:P.483 - P.485

I.はじめに
 鼻腔異物は幼小児がおもちゃなどを誤って外部より挿入して発生することが多く,初診時に視診で異物が確認摘出されることが一般的である。最近われわれは本人が異物を自覚せず長期にわたって放置していた成人の症例,および初診時に異物が確認されず摘出が困難であった症例を経験したので報告する。

喉頭外傷時に潜在的喉頭癌があったと思われた1例

著者: 久保武 ,   越宗麻子 ,   北奥繁夫 ,   宮口衛 ,   酒井俊一

ページ範囲:P.487 - P.491

I.はじめに
 喉頭外傷は発生頻度の比較的少ない疾患であるが,その治療法は個々の症例で異なり,音声および気道の再建に難渋する場合も少なくない。今回喉頭外傷後の嗄声に加え,その1年後に遅発性に起こった呼吸困難を訴えて来院,呼吸困難の原因を初めは外傷時に迷入した異物の遺残による肉芽増殖によるものと考えていたが,手術時の組織診により喉頭癌が同時に合併していたことが判明した症例を経験した。偶然とはいえ稀な症例であるのでここに報告する。

咽頭に発生した平滑筋肉腫の1症例

著者: 田矢直三 ,   石田稔 ,   野入輝久 ,   有賀秀治 ,   吉原渡 ,   宇多弘次

ページ範囲:P.505 - P.509

I.はじめに
 頭頸部に発生する平滑筋肉腫は稀である,咽頭に発生した巨大な平滑筋肉腫のため嚥下障害をきたし来院した1症例について報告する。平滑筋肉腫の治療は外科的摘出が最もよいとされるが,本症例ではなしえず放射線治療および化学療法を行った。

口蓋扁桃のlymphangiectatic fibrous polypの1症例

著者: 鈴木光也 ,   喜多村健

ページ範囲:P.511 - P.516

I.はじめに
 振子様扁桃はJurasz1)により最初に報告されてから欧米,本邦ともに数多くの記載2〜8)をみるが,扁桃に生じた有茎性腫瘤,なかでもlymph—angiectatic fibrous polypの報告は著者らが調べえた限り,欧米で2例9,10),本邦で6例11〜14)にとどまる。今回われわれは肉眼的形態により口蓋扁桃の振子様腫瘤と診断し両側口蓋扁桃摘出術を行い,光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡によりlymph—angiectatic fibrous polypと病理診断された症例を経験したので,文献的考察を含め報告する。

鏡下咡語

教室の資料室

著者: 野村恭也

ページ範囲:P.494 - P.495

 私どもの耳鼻咽喉科学教室は"赤煉瓦"のなかにあるが,今そのうちの一室を資料室として使用している。その紹介を簡単にさせていただきたいと思う。
 資料というのは昔から教室に残っている,正しくは昔教室で使われていた診療用器械,標本,書籍などがほとんどである。九大にある有名な久保記念館とは比較にならないが,切替教授,佐藤教授より引き継がれ現在まで保存されてきたもので,一部整理されて展示され,一部は未整理のまま格納されている。

私は知りたい

モノクローナル抗体の臨床応用

著者: 杉山正夫

ページ範囲:P.497 - P.503

 1975年Köhlerら1)は細胞融合法を抗体産生細胞に応用し,モノクローナル抗体(MoAb)を産生するBハイブリドーマの作製法を確立し,その功績で1984年ノーベル医学生理学賞が与えられた。簡単に説明すると,抗原で免疫された動物が抗体を産生するようになってから脾臓(リンパ節でもよい)を摘出し,その単離浮遊細胞とミエローマ細胞(一般にHGPRT欠損株を用いる)を融合させHAT培地で培養すると,代謝経路に欠陥を持つミエローマ細胞は死滅する。脾細胞は培養1〜2週後に自然死滅する。ミエローマの不死性と脾細胞の代謝迂廻経路とを併せ持った融合細胞のみが生き残る。その融合細胞の一部は脾細胞由来の抗体産生能を持っており,その一つの細胞を増殖させクローン化する。このような1個の親細胞由来の細胞が産生する抗体はすべて単一の抗原決定基と反応する単一の抗体分子である。この抗体をmonoclonal antibody(MoAb)と呼ぶ。MoAbがポリクローナル抗体に比べ優れている点は,①一つのアイソタイプの抗体である。②化学的に同一の構造の抗体が永続的に得られる。⑥精製されていない抗原を用いてもその特異的な抗体が得られる。

CPC

放射線性頸椎壊死を伴った下咽頭癌症例

著者: 浅井昌大 ,   菅澤正

ページ範囲:P.517 - P.521

 病理解解剖は直接死因の解明のみならず原因疾患の進展や合併症の有無,ひいては疾患の基礎的な研究のうえでもきわめて重要であり,欠くことができない。しかし多忙な臨床業務に追われるあまりついつい施行しない傾向がないとはいえない。かくいう私どもの病院でも,原則として死亡患者全例について家族の方に病理解剖をお願いするものの,原疾患の拡がりなどが明確であると思うと,家族に対する説得も無意識のうちに弱いものとなる場合があり反省させられることが多々あるのが現状である。
 今同CPCとして呈示する症例はつい最近の症例であり,詳細な点ではまだ検討がすんでいないものの予想もしない合併症がみられ,あらためて病理解剖の重要性を痛感させられたもので,本CPCの趣旨に見合った症例と思われたのでここに呈示するものである。

医療ガイドライン

嚥下・咀嚼障害の認定法と書類の書き方

著者: 進武幹

ページ範囲:P.523 - P.526

I.咀嚼・嚥下障害の認定に耳鼻咽喉科医が携わることがなぜ適切であるか
 耳鼻咽喉科で取り扱われる器官のうち,口腔,咽頭,食道の主な機能は咀嚼と嚥下である。これらの障害の原因は多岐にわたるが,診断を行うにあたっては局所の視診,触診などがきわめて重要である。この基本的診察はわれわれ耳鼻咽喉科医が日常臨床で常時行っていることである。
 障害の認定を行うには咀嚼,嚥下にかかわる機能をよく理解しておかねばならない。この領域の専門的教育は卒前,卒後を通じ耳鼻咽喉科で取り扱っているのは周知の通りである。しかも身体障害者障害程度の診断項目は「咀嚼機能の障害」となっているが,主な内容は嚥下障害のことである。現行の区分では誤解を生じるので用語の改正が望ましい。このような理山で,認定にさいし耳鼻咽喉科医が行うのが最適であり,当然のことといえる。

海外トピックス

アメリカにおける音声言語医学の話題から

著者: 廣瀬肇

ページ範囲:P.527 - P.528

1.一般的動向について
 昭和62年5月から約2か月,米国Wiscons州Mad—ison市のWisconsin大学にあるSpeech Motor Con—trol Laboratoryに共同研究のため滞在する機会を得た。この期間に同大学耳鼻咽喉科音声外来をはじめ,いくつかの施設の現況をみることができた。このような経緯から,今回アメリカにおける音声言語医学の話題について寄稿を求められた次第である。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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