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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科60巻7号

1988年07月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

鼻茸様所見を示した鼻腔腫瘤の4症例

著者: 弓削庫太 ,   星慎一 ,   平野敏一 ,   吉弘隆匡 ,   大藤周彦 ,   浅野伍朗

ページ範囲:P.534 - P.535

 鼻茸は日常診療でよく遭遇する疾患である。われわれは最近鼻鏡検査では単なる鼻茸様の腫瘤を示し,摘出後の病理組織検査の結果,毛細血管腫,化膿性肉芽腫,乳頭腫,悪性黒色腫と診断された症例を経験したので報告する。

トピックス 鼻閉の新しい治療法

レーザー手術

著者: 熊沢忠躬 ,   三谷武生

ページ範囲:P.537 - P.540

I.はじめに
 鼻閉に対する治療は古くから,腫脹した粘膜を取り除くという考え方からの手術療法と,炎症反応あるいはアレルギー反応を抑え腫脹を取り除くという考え方による保存療法とに二大別されている。保存療法は最近薬理学の発展に伴い飛躍的に進歩してきている。しかし保存療法で効果を示さない症例に対しては下甲介切除術,鼻内整形術を,アレルギー性鼻炎に対してはさらにVidian神経切断術などの手術療法を施さなければならないという点は今日でも変わらない。これらの症例に対して,手術療法を受ける側,すなわち患者の負担を少しでも軽減して行きたいとして,凍結手術や電気凝固法など外来でも施行可能なものが考案されてきた。しかしこれらの方法でも疼痛,出血による患者の負担は必ずしも小さいものではなかった。そこで小児に対しても容易に施行できる,疼痛,出血のない外来手術を,という考えに基づき筆者らにより考案されたのがこれから述べるレーザー手術である。

電気凝固療法

著者: 王主栄 ,   古内一郎

ページ範囲:P.541 - P.544

I.はじめに
 鼻閉に対する治療は薬物がほとんど効果がないため現在一般的に手術療法が行われている。手術によっては一定期間の入院治療が必要である。しかし電気凝固による治療は出血もなく,また術後ガーゼの挿入が必要ないため入院の必要もなく,一般外来で行うことができる。耳鼻咽喉科の日常診療ではこれを鼻出血の局所止血法に使用している。しかし鼻閉に対する保存的療法としての電気凝固法は使用頻度が少ない現状である。電気凝固はどのような特性をもつのか,安全性はどうかなど,ある程度理解していなければ,より安全より有効な利用はできないと思われる。
 生体に通電し熱を発生させる研究は1878年にArsonvalが初めて発表しているが,その後1891年Nikola Teslaが人体に高周波電流を流すと温熱が生ずると報告している。1926年には電気メスの臨床応用が報告された。

クライオサージェリー

著者: 寺尾彬 ,   洲崎春海 ,   福田覚

ページ範囲:P.545 - P.552

I.はじめに
 クライオサージェリー(cryosurgery)によって生体の局所組織を破壊しようとする試みは19世紀半ばに始まる。先人はこの手段をまず腫瘍の治療に導入した。冷却剤は氷と食塩の混合物でそこから得られる温度は−18℃であった1)。当然ながらなんとも効果は挙がらず,その後しばらく文献は途絶えたままとなる。
 クライオサージェリーが本格的に広く行われるようになったのは,フロン(freon),炭酸ガス,笑気(亜酸化窒素ガスN2)O,液体窒素(liquidnitrogen)など−40℃から−196℃までの低温を自由に利用しうることが可能となった20世紀も半ばを過ぎてからで,外科,泌尿器科,皮膚科,婦人科,眼科,耳鼻咽喉科の各領域で応用発展するところとなった。

下甲介化学剤手術—トリクロール酢酸の使用経験

著者: 八尾和雄 ,   高橋廣臣 ,   設楽哲也

ページ範囲:P.553 - P.560

はじめに
 鼻閉に対する下甲介への手術治療は下甲介切除術,粘膜下下甲介切除術,電気焼灼術,レーザー手術,凍結手術などがあり,よい成績が報告されている。さらにこれらの手術方法に加えて,歴史的に占くは行われていたがなぜか最近の教科書から姿を消し行われなくなった化学剤による腐蝕手術1)がある。われわれはこの腐蝕手術に注目し,とくに80w/v%トリクロール酢酸による腐蝕手術を臨床に応用した。結果は安全で副作用がなく簡易的であることは当然として,他の手術法に劣らぬ鼻閉改善成績が得られた。すなわち処置を越えた手術方法であるため,この方法をあえて下甲介化学剤手術と称して報告する。

薬物療法

著者: 奥田稔

ページ範囲:P.561 - P.564

はじめに
 鼻閉を起こす原因は多彩であり,外鼻,鼻副鼻腔,鼻咽腔の奇形,外傷,炎症,腫瘍など多くの疾患,病態が挙げられる。そのうち薬物療法の対象となるのは鼻副鼻腔の広義の炎症や機能的疾患であろう。具体的には急性,慢性の鼻副鼻腔炎,鼻茸,鼻アレルギー,血管運動性鼻炎,薬物性と内分泌性・心因性の鼻炎,欝血性鼻炎などであろう。
 これらの疾患の鼻閉は粘膜の腫脹で起こる。鼻粘膜の腫脹は欝血,浮腫などの循環障害,分泌腺の腫大または数の増加,細胞浸潤,結合織の増生による。それゆえ鼻閉の治療はこれらの病態の改善にある。この病態の改善法は原因疾患により異なるのはいうまでもない。

原著

最近の小児慢性副鼻腔炎に対する上顎洞穿刺洗滌療法について

著者: 長舩宏隆 ,   野村俊之 ,   長尾まゆみ ,   水吉陽子

ページ範囲:P.565 - P.570

I.はじめに
 最近では副鼻腔炎の軽症化とともにアレルギー性鼻炎などの増加傾向がいわれている。 しかし実際の日常診療においては治療に苦慮するような症例も少なからず認められる,成人であれば根治手術の適応となる症例でも,小児では年齢的に問題が多い。
 今回私どもはこのような症例に対して上顎洞穿刺洗條療法と薬物療法との併用を行い,その治療効果と限界について検討したので報告する。

咽喉食摘頸部廓清術後に生じたGerstmann症候群の1例

著者: 鍋島みどり ,   高橋正紘 ,   東さ織

ページ範囲:P.571 - P.574

I.はじめに
 頭頸部の手術は術野が狭くしかも解剖学的に複雑な構造であるため術後合併症をきたす可能性が高い。 とくに放射線照射後に手術を行う場合,周囲との癒着,壊死,易出血性などにより手術が困難なことがある。
 われわれは喉頭癌で放射線照射後約1年を経過して嚥下困難を生じ,咽頭・喉頭・頸部食道切除術,頸部リンパ節廓清術,頸部食道再建術を施行し,術後に片麻痺とGerstmann症候群をきたした1例を経験したので報告する。

Melkersson-Rosenthal症候群の1症例

著者: 田山二朗 ,   庄司稔 ,   福田三弘 ,   山岨達也

ページ範囲:P.575 - P.579

I.はじめに
 Melkersson-Roscnthal症候群は繰り返す顔面の浮腫,再発性顔面神経麻痺,溝状舌(皺壁舌)を特徴とする症候群である。この症状の記載は1894年Hübschmann1),1901年Rossolimo2)にみられるが,顔面神経麻癖と顔面の浮腫との関係が示唆されたのは1928年のMelkersson3)によってである。さらに1928年Rosenthal4)が溝状舌を補足し,遺伝素因の存在を強調した。1949年Lüscher5)がこれをMelkersson-Roscnthal症候群と命名している。
 本症候群は臨床的に比較的珍しいものであるが,今回われわれは本症例を経験したためここにその報告をするとともに若干の文献的考察を加えた。

口蓋扁桃に巨大な腫瘤を形成した急性前骨髄球性白血病の1例

著者: 坂口正範 ,   浅輪勲

ページ範囲:P.585 - P.589

I.はじめに
 白血病のさいにみられる口腔・咽頭所見としては,扁桃の腫脹,壊死,潰瘍形成,出血などが挙げられるが,今回われわれは扁桃に悪性腫瘍を思わせる巨大な腫瘤を形成し,剖検によって非白血性,腫瘤形成性の急性前骨髄球性白血病と診断された症例を経験したので報告する。

鼻腔腫瘍と誤診された鼻腔内encephalomeningoceleの1例

著者: 坂口正範 ,   浅輪勲 ,   山本香列

ページ範囲:P.591 - P.594

I.はじめに
 encephalomeningoceleは頭蓋骨の裂隙から脳が脱出する先天的な奇形で,後頭部に発生することが多い。耳鼻咽喉科領域に出現することは稀ではあるが,鼻茸と間違えて手術し髄膜炎などの危険な状態を招くことがあるので留意する必要がある。われわれは初め鼻腔腫瘍を疑って摘除を試み,手術の途中でencephalomeningoceleと気づき,あらためて根本的な手術を行った症例を経験したので報告する。

Ludwig's anginaの1例

著者: 山岨達也 ,   塩野博己 ,   田中利善

ページ範囲:P.595 - P.601

I.緒言
 口腔底から顎下部,舌下部に蜂窩織炎が波及し致命的気道閉塞をきたす病態は古くはHippocratesの時代から知られていたという1)。1836年にWhilhelm Friedrich von Ludwig2)が5症例の臨床的観察および剖検所見について報告し,後にCamereによりかかる病態は"Ludwig's angina"と呼称されるようになった3)。1940年代初期には約100例報告4〜6)され,病因,診断基準,起炎菌について検討されているが,とくに診断がつけば早急に切開排膿を要することが強調されている。その後抗生物質の出現,この病態の認識の普及に伴い罹患率および死亡率は低下し,最近の報告では切開排膿は必ずしも必要ではなく適切な抗生物質の投与が大事である7,8)とされている。
 今回われわれは下顎第二大臼歯の歯根嚢胞に起因したLudwigs anginaの1症例を経験し,とくにその上気道所見を観察しえたので,若干の文献的考察を併せて報告する。

亜急性甲状腺炎における超音波検査の意義

著者: 山田弘之 ,   矢野原邦生 ,   宮本良生

ページ範囲:P.603 - P.607

I.緒言
 亜急性甲状腺炎は甲状腺炎症性疾患の一つであり日常臨床において時折経験する疾患ではあるが,内科的治療が行われるためわれわれ耳鼻咽喉科医が遭遇する機会は意外と少ない。
 本症は30〜40歳代の女性に多く,上気道感染に続発した前頸部の1疼痛,腫脹が初発症状であることが多い。急性期にはしばしば甲状腺機能亢進症状を呈し,血沈の著明亢進のほか血清サイロキシン(T4),血清蛋白結合ヨード(PBI),サイログロブリン値の上昇などの臨床検査値の変化を認める、,このほか123Iあるいは131I摂取率の低下も本症の確定診断の助けとなることがある。本症は発症後急性炎症症状の消退を認め,検査値の異常も経過を追うに従い正常化する。

鼻中隔顆粒細胞腫の1症例

著者: 永澤昌 ,   黒川道徳 ,   渡部雄二 ,   米原修二

ページ範囲:P.609 - P.612

I.はじめに
 顆粒細胞腫は腫瘍細胞質内のエオジン好性顆粒を特徴とする腫瘍である。本邦では約200例の文献報告があり,皮膚,舌,口腔を好発部位としている。しかし鼻腔に発生することは稀で本邦では報告がない。今回われわれは鼻中隔に発生したものとしては本邦初の顆粒細胞腫を経験したので報告する。

両側内耳道の著明拡大を伴ったperilymph gusherの1症例

著者: 海江田純彦 ,   中島成人 ,   隈上秀伯

ページ範囲:P.613 - P.617

I.はじめに
 perilymph gusherはアブミ骨手術のさいにみられる異常であり,クモ膜下腔と内耳リンパ腔の間に広い交通路が存在するためにアブミ骨底板の開窓とともに多量の外リンパが勢いよく流出する状態をいうが,術前にその発生を予測することは困難と考えられている。今回われわれは両側内耳道の著明拡大を伴う家族性難聴で,鼓室試験開放のさいアブミ骨へのわずかな操作でperilymphgusherに見舞われた症例を経験した。両側内耳道拡大に両側難聴を伴う例はきわめて稀であり,珍しい症例として報告するとともに若干の文献的考察を加えてみた。

鏡下咡語

これからの医療に何を求めるべきか—頭頸部癌のターミナル・ケアを通して

著者: 形浦昭克

ページ範囲:P.582 - P.583

 私たちの大学病院は新棟となって久しく,はたして外装にあった内容ある医療がなされているであろうかと討論する機会をもった。各科の助教授,講師,婦長および副婦長の代表が集まり,種々の角度からその問題点がいくつか検討された。その集約された課題は末期癌患老のケア(ターミナル・ケア)を今後どのように考え対応するかが最も関心あるものとなった。確かに大学病院という特殊性から手術を中心とした集学的治療が主体となり,長期間入院する機会が少ないのではないかという意見も出されたが,今日の医学における教育の流れにおいて死に対する学問の分野が生み出されつつある中で,大学がその方針を打ち出すべき時ではなかろうかという大方の賛同が得られた。そんな医療の現場において,医師だけではなく,看護婦,検査技師および放射線技師など,コメディカルスタッフとのチームカンファレンスのもとにより患者中心の優れた医療ができるのではないかとその原点に立つことになった。そうして"医療を考える会"が発足した。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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