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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科60巻8号

1988年08月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

Sturge-Weber症候群

著者: 鈴木正治 ,   中村英生 ,   山岸益夫 ,   中野雄一

ページ範囲:P.624 - P.625

 Sturgc-Weber症候群は顔面皮膚,頭蓋内(脳軟膜),眼(脈絡膜)に生じる血管腫症である。病因は不明であるが,遺伝的素因の関与は否定的である。診断は,①顔面(とくに三叉神経領域)の血管腫,②片麻痺,てんかん,知能障害などの精神神経症状,3脈絡膜の血管腫緑内障ないし牛眼,同側半盲などの眼症状,④頭部単純X線像上あるいはCT像上の石灰化像などにより行われる。
 これまでSturge-Weber症候群については皮膚科,小児科,神経内科各科においての報告が散見されるが,耳,鼻,咽頭などの所見について詳しく述べているものは皆無である。今回われわれは鼻粘膜の血管腫病変により中鼻道が閉塞し一側性の副鼻腔炎を起こしたと考えられるSturge-Weber症候群症例を経験したので報告する。

原著

外耳道の計測

著者: 奥野妙子 ,   野村恭也

ページ範囲:P.627 - P.632

I.はじめに
 正常外耳道の形態に関する計測値の報告は比較的少ない。これは適切な方法がなかったためであろう。方法としては屍体を用いたものが主であった。しかし最近は高分解能CTを用いることにより,生体で耳介,軟骨部外耳道,骨部外耳道すべてにわたりその自然の関係を保ったまま形態を観察,計測することが可能となった。
 今回,われわれは成人の側頭骨CT写真を用いて外耳道の長さ,径,峡部,屈曲の状態などを軟骨部外耳道,骨部外耳道両者こわたって観察,計測したのでここに報告する。

頸静脈球高位の2症例—画像診断上の特徴について

著者: 八木昌人 ,   園田哲史 ,   宮田守 ,   平出文久 ,   森田守

ページ範囲:P.633 - P.638

I.緒言
 頸静脈球高位は内頸静脈の走行異常であり,中耳手術,鼓膜切開のさいの偶発的出血の原因としてよく知られている1〜3)。今回私どもは中耳疾患に伴って発見された頸静脈球高位を2例経験したので報告し,その画像診断上の特徴について若干の考察を加える。

当科における慢性中耳炎の臨床集計—とくにめまいと内耳瘻孔について

著者: 大上研二 ,   関谷透 ,   野口高昭 ,   植木篤雄

ページ範囲:P.639 - P.643

I.はじめに
 慢性中耳炎は耳鼻咽喉科領域において重要かつ頻度の高い疾患である。その初発症状,臨床経過(随伴症状,再燃の有無など),聴力検査,平衡機能検査などの検査所見は個々の症例により多岐にわたる。手術的治療法,とくに鼓室形成術についても鼓膜,中耳腔の再建法は個々の症例により各種選択されている。
 今回当科において過去5年間に手術を行った慢性中耳炎症例191例について,その臨床所見を集計し若干の知見を得たので報告する。

無顆粒球症をきたした甲状腺機能亢進症の1手術例

著者: 山田弘之 ,   矢野原邦生

ページ範囲:P.645 - P.648

I.緒言
 甲状腺機能亢進症はBasedow病と同義語として扱われることの多い疾患である。現在その治療法として,①薬物療法,②アイソトープ療法,③外科的手術療法があり,一般に第一選択として薬物療法が採用される。薬物療法は治療期間が長いという欠点もあるが,アイソトープ療法より安全であり,比較的使用しやすいという利点がある。しかし薬物療法の副作用の中には頻度こそ少ないが無顆粒球症という重篤な副作用があり,近年注目されている。
 最近われわれは薬物療法による治療中に無顆粒球症を招来したため外科的手術療法を余儀なくされた1例を経験した。甲状腺機能亢進症に対する治療における外科的手術療法の意義について一考を得たので,若干の文献的考察を加え報告する。

甲状腺腫瘍との鑑別を要した頸部海綿状血管腫の2症例

著者: 中溝宗永 ,   河西信勝 ,   内田正興 ,   佐藤之俊

ページ範囲:P.649 - P.655

I.はじめに
 頭頸部には良性,悪性さまざまな腫瘍が発生する。その中で血管腫は良性腫瘍としてはさほど稀な疾患ではないが,深在性のものでは時として診断に苦慮することも少なくない。とくに前頸部においては比較的頻度が少なく,甲状腺腫瘍との鑑別が問題になることがある。今回われわれは前頸部に発生した血管腫2症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

頸部に発生したガス形成菌感染症の1例

著者: 藤本政明 ,   難波正行 ,   城戸信行

ページ範囲:P.657 - P.661

I.はじめに
 ガス形成菌感染症は従来から「ガス壊疽」として知られ,急速な病状の進展をみるために医師や一般の人びとに恐れられているが,頸部に起こることは非常に稀である。われわれは高齢の男性で副咽腔間隙膿瘍に伴い頸部にガス形成菌感染症を生じ,治療の効なく気腫発生後2日で死亡した症例を経験したので報告するとともに,若干の考察を加え諸兄の御批判を仰ぎたい。

不幸な転帰をとった幼児気道内異物の2症例—初期治療ガイドラインの提案—

著者: 藤本泰幸 ,   宮田守 ,   森川守

ページ範囲:P.671 - P.675

I.はじめに
 われわれは異物除去そのものには成功したものの不幸な転帰をとった幼児気道内異物症例を2例経験したので,その臨床経過を紹介するとともに気道内異物に対する処置に関する若干の文献的考察を加えて報告する。

下咽頭の食物異物

著者: 伊藤裕之

ページ範囲:P.677 - P.680

I.はじめに
 気管や食道の異物は医療技術の進歩の著しい今日でも時には生命にかかわることがあり,数多く報告されている。これに対して,気管と食道の分岐部直上にあたる下咽頭の異物には魚骨のような尖鋭な異物が多く,梨状窩,舌根部,喉頭蓋谷などにしばしば認められるが,臨床的には危険な事態を惹き起こすことは稀であるためか,下咽頭異物は気管や食道の異物に比べると臨床では決して少なくない1,2)にもかかわらずその報告例は少ない3〜11)
 最近われわれは下咽頭異物としては比較的稀と思われた下咽頭の食片異物を3例経験したので,若干の考察を加えて報告する。

鏡下咡語

MÉNIÈREかMENIÈREか—メニエールの墓碑銘をめぐって—

著者: 渡辺勈

ページ範囲:P.664 - P.665

 メニエール病の文献をひもとくさいに,その名前の綴りに相違があり,およそつぎの3種があることが知られている。
1.MÉNIÈRE

私は知りたい

NK細胞

著者: 馬場廣太郎 ,   浅井忠雄

ページ範囲:P.667 - P.669

I.はじめに
 natural killer (NK)細胞は腫瘍発生の監視機構やウイルス感染防御機構に関連した,いわゆる生体の自然抵抗性にかかわるリンパ系細胞といわれている。1975年Herbermanら1),Kiesslingら2)は特定の免疫学的刺激誘導操作を受けない正常動物のリンパ系組織の細胞が一部の腫瘍細胞(とくにリンパ性白血病細胞株)に対して細胞障害性をもつことを見出した。すなわちリンパ球系のある細胞集団は抗原感作を必要とせず腫瘍細胞を破壊することがわかり,この新しい概念の細胞がNK細胞と称されるようになった。
 NK細胞は機能面からの研究ばかりでなく,とくに表面マーカーを表現しうるモノクローナルな抗体の開発によって全容が明らかにされつつあり,その多様性から混迷の段階にあるといってもよいであろう。ここではなるべく簡単にNK細胞についての概念的理解を得るための解説を加え,詳細については他書に譲りたいと思う。

CPC

長期の経過をたどった上咽頭腫瘍の1例

著者: 江浦陽一 ,   木村謙一

ページ範囲:P.681 - P.683

 近年耳鼻咽喉科領域の悪性腫瘍は他科同様に増加傾向にある。医学の進歩により治療成績は向上しているが,まだまだ十分とはいえない。
 今回上咽頭悪性腫瘍で11年間に及び局所はよく抑制されたものの頸部リンパ節転移を繰り返し,最終的には長い間瘢痕化した上咽頭粘膜部に再発し不幸な転帰をとった症例を経験したので,その臨床経過ならびに剖検所見を報告する。

医療ガイドライン

耳鼻咽喉科学校保健の現状と問題点

著者: 荒木元秋

ページ範囲:P.685 - P.689

 最近,国政に地域保健重視の姿勢が打ち出され,地方自治体は昭和60年3月地域保健計画を,昭和62年2月地域医療計画を制定することになり,専門医は地域保健活動に参加協力することが要請されることになった。これに伴い医師会は開業医中心からの脱皮を図り,勤務医師加入に門戸を開き,会費,医賠責等に優遇策を樹て,地域保健に医師の総力を結集しようとの態勢が整備されつつある。日本耳鼻咽喉科学会ではこれに応えて,学校保健は地域保健の一環として全会員が関与すべきであるとし,医育機関,病院勤務医師の学校保健参加を促し,まず全国の児童・生徒の健康診断100%達成を呼びかけている。編集者の要望もあり,標題について大学医局の研修医の方々を対象に記述することとした。

海外トピックス

アジア・オセアニア耳鼻咽喉科学会議

著者: 天津睦郎

ページ範囲:P.691 - P.693

はじめに
 第6回アジア・ナセアニア耳鼻咽喉科学会議(6thAsia-Oceania Congress of Oto-Rhino-LaryngologicalSocietics)が,L.H.Hiranandani会長のもと1987年11月9日より13日までの5日間インドのニューデリーで開催された。会場はHotel Taj Palaceが使われ,ほとんどすべての学会行事は当ホテルで行われた。この学会は4年に1度世界耳鼻咽喉科学会議の中間で開催され,今同は4年前韓国のソウルでの学会に引き続き第6回目の学会となる。
 筆者は学会場のHotel Taj Palaceに宿泊しながら本学会に参加する機会を得たので,感じたままに本学会の印象を述べることにする。学会の前々日の11月7日夜デリー空港に到着バスで同ホテルに入ったが,部屋の割り振りに不手際がありしばし待たされた後,いったん入った部屋が不完全で再び他の部屋に移され,同夜は慶応大学の村上泰助教授と同室で一泊することになった。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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