文献詳細
原著
迷路から中耳腔へ進展した聴神経腫瘍の1例—中耳炎を併発し治療に難渋した症例
著者: 暁清文1 柳原尚明1 横井隆司1 近森義則1
所属機関: 1愛媛大学医学部耳鼻咽喉科学教室
ページ範囲:P.709 - P.713
文献概要
聴神経腫瘍は内耳道に発生し内耳孔から小脳橋角部へと進展するのが普通であるが,まれに末稍方向に拡がって迷路内に進展したり,迷路内に原発性の腫瘍が発生することがある。このような迷路内聴神経腫瘍にはその存在を疑わせるような特徴的な臨床所見はなく,小さいうちはX線検査やCT検査によっても写し出されないので診断は難しい。とりわけ原発性の場合は一定の大きさに達するまで迷路や内耳道の画像に異常所見を呈さないので診断は非常に困難である。実際これまでの迷路内聴神経腫瘍の報告のほとんどは,迷路摘出術のさいに偶然に発見された1〜8)か,死後の側頭骨病理検査で発見された9〜13)ものである。
今回報告するのは聴神経腫瘍が迷路からさらに中耳腔へと進展していた症例であるが,発見時すでにかなり大きくなっていたので原発部位が内耳道であるか迷路内か確定することは不可能であった。本例は中耳炎の合併がみられたことから3回に分けて摘出術を行ったが,手術後も再発して治療に難渋した。本例の手術所見ならびに治療経過について述べるとともに,迷路内聴神経腫瘍について文献的考察を行ったので報告する。
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