文献詳細
原著
超音波検査で指摘可能であった甲状腺微小癌の1例
著者: 山田弘之1 矢野原邦生1 宮本良生2
所属機関: 1山田赤十字病院耳鼻咽喉科 2山田赤十字病院放射線科
ページ範囲:P.743 - P.746
文献概要
甲状腺癌においては現在のところ早期癌の臨床的概念はなく,従来のUICCのTNM分類のごとく腫瘍の大きさもその予後を考えるうえで重要視されなかった。その理由として甲状腺癌の予後が一般に良好でかつ臨床経過が長いことが挙げられる。また一方で甲状腺癌は無症状で経過し,また触診のみのスクリーニングに終始してしまうので,つい小さな癌を見逃してしまっていたためとも言えなくはない。
最近甲状腺の微小病変の発見に超音波検査が多用され,機器の進歩もあり,甲状腺癌の発見率は上昇傾向にある。最大径10mmφ以下の小型癌,さらには5mmφ以上の微小癌の発見には超音波検査は必須であり,このような微小病変の発見がひいては早期癌の臨床的概念を確立するかもしれない。UICCの1985年案ではTNM分類中T分類を腫瘍径によって分けてはとの報告もあり,今後微小病変の発見はわれわれ甲状腺癌を扱う老にとってはより一層重要視せねばならない目的となりうるものと考えられる。
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