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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻1号

1989年01月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

注意すべき癌前駆症(舌,口腔)

著者: 法貴昭

ページ範囲:P.4 - P.5

 舌,口腔の癌前駆症は喉頭,鼻副鼻腔と同様,乳頭腫,乳頭腫症,白板症などに代表さねる疾患である。一般に患者にとって自覚症状が比較的軽度であり,また治療としても手術療法や薬物療法も通常外来で行える。そのため患者にとって疾患の重大さの自覚が欠けることが多い。また悪性化は年単位の経過後に生ずることが多いため医師がフォローアップを怠ることがある。

トピックス スギ花粉症

昭和63年(1988年)のスギ花粉飛散の特徴

著者: 王主栄 ,   古内一郎 ,   馬場廣太郎

ページ範囲:P.7 - P.10

はじめに
 空中の花粉飛散は気象によって左右される1)ことがすでに知られている。昨年(昭和63年)のスギ花粉飛散も気象条件によっていくつかの特徴がみられる。まず①全国的に飛散数が多く,②飛散開始日が早く,③4月に入ってからヒノキ花粉の飛散が例年になく多い,などが挙げられる。今回は当大学の所在県である栃木県を中心にして,昨年度のスギ飛散の特徴を検討する。

スギ花粉飛散予報の現状について

著者: 村山貢司

ページ範囲:P.11 - P.15

I.はじめに
 東京を中心とした関東周辺のスギ,ヒノキの花粉の飛散予報(以下,スギ花粉情報)の現状と問題点,およびその今後について概略を報告する。
 欧米各国では以前から花粉によるアレルギー症はよく知られており,これを予防するための花粉地図や花粉カレンダーが毎年出されている。日本においてスギ花粉症が発見されたのが昭和38年のことで以来25年になるが,マスコミなどで取り上げられ,患者がその症状を花粉症と自覚するようになったのは最近のことであろう。
 スギ花粉の飛散は気象と深い関係があるという話を耳にして,日本でも花粉の予報ができないかと考え調査を開始したのが昭和60年,関係機関の協力を得て予報を開始したのが62年の春である。

日本の林業とスギ花粉症

著者: 古越隆信

ページ範囲:P.17 - P.20

I.林業の変遷
 わが国の国土は67%が森林によって占められている。この森林はかつて日本人が採集民族であった頃には,生活の場であり生きるための糧を得る場でもあったのが,農耕文化の発達とともに農地が開拓され,人は集落や都市に住むようになった。近世になってもその名残りがあり,自然の力による生産物として木材その他の野生資源の供給源として利用されてきた。
 森林が木材生産の経営対象地となったのは江戸時代からであり,藩政を支える財産の管理対象として森林があった。本格的な森林の管理経営が始まったのは明治以降で,とくに大正時代からは国有林で,人工造林といって有用な樹種を人為的に植え込み,計画的に木材を生産する事業が行われるようになった。また戦後は国土の保全,復興と重要な生活資源である木材生産を目指した国の施策として,民有林も含めた大規模な人工造林が行われ,全森林面積の40%が人工造林地となった。

スギ花粉症の病態

著者: 佐々木好久

ページ範囲:P.21 - P.25

はじめに
 スギ花粉症はI型アレルギーであり,アレルギー学的には室内塵によるアレルギー性鼻炎と同じ範疇に属しているものとされている。スギ花粉症の増加やこの症状の激しさの背景には,スギ花粉の飛散の増加,NO2などの増加による大気汚染,生体の側の感受性などさまざまな要因の複雑な絡み合いがある。

昭和63年のスギ花粉症に対する私の治療

1988年のスギ花粉症とその治療

著者: 宇佐神篤 ,   本間芳人

ページ範囲:P.27 - P.29

はじめに
 1988年の春はスギ花粉の産生が多いこととそれに伴うスギ花粉症の重症化が予測されていた。それだけに近年行われるようになった抗アレルギー剤による予防的治療に対する一般臨床家の関心はさらに深まった年だったと思われる。
 今春のスギ花粉症について概観し,ついで自験の治療内容,とくに抗アレルギー剤につき述べる。

スギ花粉症に対する私の治療

著者: 藤田洋祐 ,   山越隆之 ,   今野昭義 ,   片桐仁一 ,   小関洋男 ,   山崎博

ページ範囲:P.31 - P.36

I.はじめに
 スギ花粉症は毎年同じ時期に出現しているのに,20年以上医育機関に在職していたゆえか,そのなまなましい実態にシーズンを通して接したことはこれまでなかった。今年はそれができるという半ば期待めいたものをもっていたら,幸か不幸か1982年以来6年ぶりの当り年となった。そこで本項を依頼されたのを良い機会に,1988年のスギ花粉シーズンの臨床経験を中心に本症の疫学と治療に関する雑識を述べてみる。

スギ花粉症に対する私の治療

著者: 中原聰

ページ範囲:P.37 - P.39

はじめに
 近代病といわれるアレルギー疾患は最近頓に増加の傾向にあり,花粉症とくにスギ花粉症ではさらにその傾向が著しい。
 私は一開業医としてスギ花粉症に対しごく普通の治療を行っているが,昭和59年および60年の治療成績を第24回日本鼻科学会で報告1)した。その当時と本年昭和63年の治療を比較調査して,その変遷を考えながら諸家のご批判を仰ぎたいと思う。

スギ花粉症治療における薬剤の選択

著者: 野村公寿

ページ範囲:P.41 - P.43

I.はじめに
 近年のスギ花粉症患者の増加は社会的にも関心を集めている。とくに1988年は久々の大量飛散が予想され,実際患者も早く来院した。
 ちなみに東海大学医学部の屋上では,春の空中花粉測定を開始した1月25日にはすでにスギ花粉は飛散しており,表1に示すように3月中旬には例年にない大量の飛散が記録された。

スギ花粉症治療の実態と考察

著者: 寺尾彬

ページ範囲:P.45 - P.48

I.はじめに
 患者を治療するにあたって大切なことは,速やかに効果をあげて良くなったと相手に実感してもらうことだと思う。
 これを鼻アレルギーについていうならば,①蒼白色の鼻粘膜を赤味を帯びたものに変えること,②著しい浮腫性腫脹によって生じた鼻閉をとること,③そしてこの状態を長く保つことができるような治療法を選択することであろう。

原著

診断に苦慮した耳下腺管異物の1例

著者: 内薗明裕 ,   深水浩三 ,   古田茂

ページ範囲:P.49 - P.53

I.緒言
 耳下腺管異物に関する報告は稀である。しかもこれらの報告例の大半が経導管よりの侵入異物であり,体表から外傷などに起因し長期間介在した異物例はきわめて稀である。われわれは最近,約40年前の爆発事故のさいに飛散した小石片により右耳下腺管が閉塞し,以後反復性に耳下腺部の腫脹と疼痛をきたしたきわめて稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

耳下腺部に発生したCastleman lymphomaの1例

著者: 若狭加奈子 ,   小林俊光 ,   橋本省 ,   川瀬哲明 ,   高坂知節

ページ範囲:P.59 - P.63

I.はじめに
 1954年Castieman1)が縦隔内に発生した胸腺類似の腫瘤を"lymph node hyperplasia"として記載して以来,同様の症例は220例以上,本邦でも60例以上が報告2)されており,一般にCastlemanlymphomaと呼ばれている。発生部位では縦隔以外にも頸部,腹部,腋窩,鼠径部,その他さまざまな例が知られている。
 私どもは7,8年間に徐々に増大した耳下腺部腫瘤を呈した本症(hyaline-vascular type)を経験した。本症が耳下腺部腫瘤として発生する例は比較的少なく,また手術時に顔面神経の取扱い方の問題もあったことから,本症例を報告し文献的考察を加えた。

舌癌を伴ったCole-Engman症候群の1症例

著者: 小川晃弘 ,   宇野欽哉 ,   小池聰之 ,   岡部健一

ページ範囲:P.65 - P.69

I.はじめに
 Cole-Engman症候群は頸部,躯幹上部,四肢の網状色素沈着,爪の萎縮・変形および粘膜白斑症を主症状とする先天性外胚葉形成異常のきわめて稀な疾患である。本疾患の性格上その報告も皮膚科領域に多く,耳鼻咽喉科における本疾患の報告は1982年に仲田ら1)が1症例を報告したもののみである。
 このたびわれわれは舌癌を当科で精査,加療中に,その特異な皮膚病変と血液異常,ならびに家族歴より全身性の遺伝性疾患を疑い,最終的にCole-Engman症候群と診断しえた1症例を経験した。その臨床経過を報告するとともに,若干の考察を加えた。

著しい骨肥厚を伴った前頭洞篩骨洞嚢胞症例

著者: 青木彰彦 ,   杉田公一 ,   洲崎春海

ページ範囲:P.71 - P.75

I.緒言
 最近筆者らは前頭洞の粘液嚢胞が前頭蓋窩内にたきく進展し,その後方および下方の骨壁が著しく肥厚しているため画像診断上特異な像を呈した前頭洞節骨洞嚢胞症例を経験した。本症例において前頭洞の後壁などの著しい骨肥厚の成因に関して若干の考察を加えたので報告する。

下顎部の帯状疱疹に内耳障害のみを伴ったHunt症候群の1例—とくに平衡機能検査の経過を中心に

著者: 池田元久 ,   武藤二郎 ,   秋元利之 ,   永代絹男

ページ範囲:P.77 - P.82

I.はじめに
 耳介および外耳道部の帯状疱疹に顔面神経麻痺と耳鳴,難聴,めまい・平衡障害などを伴った疾患はいわゆる典型的なRamsay Hunt症候群とされている。しかし種々の亜型が存在することが知られており,頻度は少ないが顔面神経麻痺を欠き,耳帯状疱疹に内耳障害のみを伴った症例も報告1〜5)されている。
 またRamsay Hunt症候群の帯状疱疹は耳領域以外の,三叉神経,舌咽神経,迷走神経,第2,3頸神経領域にも発生しうると報告6〜8)されている。

鏡下咡語

耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療の将来像について考える

著者: 金子敏郎

ページ範囲:P.56 - P.57

 この度,耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療の将来像について感想を述べるように依頼されたが,われわれの扱う学問的分野が将来どのような発展を遂げるかという予想を立てることは困難な側面がある。なぜなら医学の進歩は周辺科学の発展によって大きく変化する可能性が高いからである。
 したがってこれから述べることは独断と偏見による夢物語に終る面があるかも知れないが,あらかじめ御容赦願いたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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