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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻11号

1989年11月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

Modified Fan flapとTongue flapを用いた下口唇およびオトガイ部の再建

著者: 五十嵐秀一 ,   五十嵐文雄 ,   田中久夫 ,   冨山道夫 ,   中野雄一

ページ範囲:P.970 - P.971

 Fan flapは主に下口唇の悪性腫瘍摘出後の下口唇再建に用いられている。今回われわれは下口唇のみならずオトガイ部におよぶ広範な顔面血管腫症例に対し,flapの形状を長方形としたModified Fan flap(以下Fan flapと略記)とTongue flapを用い顔面の再建を行い良好な結果を得た。

トピックス 耳鳴

耳鳴症の臨床

著者: 神崎仁 ,   小川郁

ページ範囲:P.973 - P.976

はじめに
 耳鳴は難聴,めまいと共に内耳疾患の3主徴の一つとされているが,難聴やめまいに比べて診断・治療の両面で遅れているのが現状である。これは耳鳴の発生機序が未だ明らかでないことや耳鳴の他覚的検査法が確立されていないことに加えて,耳鳴が痛みなどと同様に全身的・心理的要因など多くの要因により影響され易いためとも考えられる。
 しかし,耳鳴を主訴に病院を訪れる患者は多く,今後これらの問題を解決することは耳鼻咽喉科医の使命であるといえる。

耳鳴の病因・成因

著者: 村井和夫

ページ範囲:P.977 - P.982

はじめに
 耳鳴は疾患ではなく聴覚系を中心とした障害によって現われた症状の一つと理解されている。聴覚系は非常に複雑な構造をもち,数多くの部分から構成されており,そのいずれの部位の障害によっても耳鳴は発生し得るものと考えられている。
 しかし耳鳴を訴えている症例でも耳鳴の性状は多種多様で,耳鳴がどの部位から発生しているのか,その病態が如何なるものかを確実に捉えることは困難である。例えば慢性あるいは急性の音響曝露,あるいは耳毒性をもつ薬剤の投与後にしばしば耳鳴を訴える例を経験することは良く知られている事実である。しかしこれらの外的な因子が耳鳴の原因となることは,臨床例が提示され,その臨床的経過,所見を知り得ることと,同様の外的因子が加えられた実験動物等による内耳の形態の変化,電気生理学的所見等から耳鳴の病態を推測することに過ぎない。

耳鳴検査法

著者: 大内利昭

ページ範囲:P.983 - P.987

はじめに
 耳鳴は検者の診察所見により他覚的耳鳴と自覚的耳鳴=真性耳鳴に分類される。しかし耳鳴の大部分は真性耳鳴である。従って耳鳴検査法とは主にこの真性耳鳴を評価する検査法であるといえる。しかし真性耳鳴の原因および病態は未だ不明であり,確立された生理学的耳鳴検査法は存在しない。現在行われている耳鳴検査法は主に音響心理学的耳鳴検査法である。
 一方,耳鳴は3つの主な性状を有している。すなわち音色,高さ(ピッチ),大きさ(ラウドネス)である。従って耳鳴検査法では耳鳴の有するこの3つの主な性状を評価することになる。

耳鳴の薬物療法

著者: 小田恂

ページ範囲:P.989 - P.992

はじめに
 耳鳴は古くから患者のみならず臨床医をも悩ます不快な症状であり,多くの先達がその治療に多大な労力をついやしてきた。しかしながら,今日に至るまで,画期的な治療法が確立されないまま,根治的な治療法の模索が続いている。
 治療法が確立されない最大の理由は耳鳴の病態生理がいまだに十分解明されていないという点にある。

耳鳴マスカーおよびバイオフィードバック療法

著者: 北嶋和智 ,   北原正章

ページ範囲:P.993 - P.996

はじめに
 耳鳴を引き起こす原因は多数にのぼると考えられ,また現実に如何なる病態が耳鳴を引き起こしているかも不明の場合が少なくない。従ってその治療法は多岐にわたる。そのうちで機器を用いた治療法について述べる。

耳鳴と心身医学

著者: 朝隈真一郎

ページ範囲:P.997 - P.1001

はじめに
 耳鳴の発生する機序や,耳鳴が人を悩まして病気として成立する過程を考える場合,心理的な因子が大きく関与するであろうことは疑う余地はない。耳鳴症の患者を治療するにあたって,その患者の耳鳴に心理的因子がどのように,またどの程度に関与しているのかを適正に評価して,それに応じた心身医学的なアプローチが必要なことは多くの先生方が感じておられることとおもわれる。耳鳴症の治療に,精神安定剤が頻繁に使用されている事実も,そのことを暗示している1)
 耳鳴についての研究は1970年代中ごろから欧米で盛んになった。我が国では1970年代の終頃から耳鳴の研究が盛んになり,耳鳴の検査法について大きな成果が得られた。また,治療法についても,キシロカイン鼓室内投与,キシロカイン静注,抗けいれん剤投与,マスカーなど様々の試みがなされて,一定の成果をおさめている。しかし,耳鳴に対する心身医学的な分析研究はいまなお不十分であり,多様な心身医学的治療を,具体的にどのように日常の臨床に取り入れていくかという問題は殆ど手つかずで残されている。ここでは,耳鳴と心理的因子の関わりについてあらためて知識を整理して,耳鳴症の心身医学的な治療の可能性について考えてみたい。

原著

頭蓋骨を広範に破壊した悪性線維性組織球腫の1例

著者: 中澤操 ,   花島隆敏 ,   山根仁 ,   菅野勇

ページ範囲:P.1003 - P.1007

はじめに
 悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histio—cytoma, MFH)は,組織球由来の細胞が繊維芽細胞に変化する腫瘍で,多核巨細胞,炎症性細胞等を伴い,極めて多彩な像を呈するものである1)。その病理学的診断は必ずしも容易ではないが,いわゆる花籠状2)(storiform pattern)を呈することを特徴としている。MFHは軟部組織に発生する成人の悪性腫瘍の中ではもっとも多く3),ほぼ全身に発生することがわかっているが,近年骨由来のMFHも報告されている。
 他の悪性腫瘍と同様に,臨床像は局所に腫瘤を形成しつつ周囲を破壊,増殖していくものであるが,頭頸部MFHの場合,局所再発,遠隔転移の頻度が高く,予後不良である。

唾液腺のClear Cell Tumor—3症例の臨床像,病理組織像について

著者: 高木摂夫 ,   野島孝之 ,   飯塚桂司 ,   佐藤信清 ,   井上和秋 ,   田中克彦

ページ範囲:P.1009 - P.1013

はじめに
 唾液腺腫瘍は種類が多く,腫瘍性の筋上皮細胞が多分化能を有するため組織形態学的に多彩となり病理学的に興味深い点が多い。
 今回我々は,稀な唾液腺のclear cell tumorの3例を経験したので,その病理組織像および臨床像について検討し報告する。

大阪大学における鼻アレルギーの現況—(第12報)副鼻腔炎を伴う鼻アレルギーにおけるプロンカズマ・ベルナの皮内テストについて

著者: 渡辺泰樹 ,   荻野敏 ,   入船盛弘 ,   佐藤かおる ,   原田保 ,   松永亨

ページ範囲:P.1015 - P.1018

はじめに
 当科では,鼻アレルギーの患者に対し,アレルゲン確定のため,種々の皮内テストを施行している。その中の一つとして多種死菌ワクチンであるブロンカズマ・ベルナ(Broncasma Berna,以下,BB)を行っている。今回,BBの皮内テストと鼻アレルギーに合併する副鼻腔炎との関係を検討したところ,興味ある成績を認めたので若干の考察を加え報告する。

頭頸部腫瘍剖検例の臨床病理学的検討—第1報 鼻・副鼻腔悪性腫瘍

著者: 小池聰之 ,   宇野欽哉 ,   岡本宏司 ,   佐藤嘉余子 ,   万代光一 ,   土井原博義

ページ範囲:P.1019 - P.1023

はじめに
 頭頸部領域に原発を有する悪性腫瘍の遠隔転移は比較的少なくない。特に上顎癌は早期発見の困難さに加え,解剖学的に頭蓋内浸潤を生じやすく,生存率も低く,遠隔転移を論ずるには至らなかった。
 しかし,近年治療手技の向上により5年生存率もよくなり,それに伴なって遠隔転移を生じた症例をしばしば経験するようになった。

甲状腺へ単独転移をきたした腎細胞癌の1例

著者: 加藤昭彦 ,   宮原幸則 ,   矢野原邦生 ,   矢花正 ,   保科彰 ,   永野道夫

ページ範囲:P.1025 - P.1028

緒言
 腎細胞癌は全身のあらゆる臓器,組織へ転移する癌として知られており,頭頸部領域への転移も稀ではないといわれている。しかしながら,甲状腺への単独転移例の報告は少なく,本邦においては我々の渉猟しえたかぎりで6例の報告があるのみである。
 今回我々は腎細胞癌摘出術後1年で孤立性甲状腺転移をきたした1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

頭蓋骨膜弁を用いた大きな頭蓋底再建—鼻中隔軟骨肉腫症例

著者: 吉田豊一 ,   佃守 ,   古川滋 ,   久間祥多 ,   林明宗 ,   亀田陽一 ,   山口和郎 ,   前川二郎 ,   西條正城 ,   安瀬正紀 ,   久保田彰

ページ範囲:P.1029 - P.1033

はじめに
 近年,頭蓋底に生じた,あるいは浸潤した悪性腫瘍に対し積極的に手術治療を行った報告を散見するようになった1)。頭蓋底を切除するのを決断するのは,未だに容易なことではない。腫瘍はとれても,再建が問題になる。鼻腔側の粘膜が温存される場合は脳外科的アプローチにより遊離骨移植で済まされるが,全層にわたって欠損する場合は多角的アプローチが必要となる。つまり,切除,再建には経鼻的あるいは開頭によるアプローチをしなければならない2〜4)。それには脳外科,耳鼻科,形成外科の集学的手術治療が必要となる。二方向からの手術をすることで切除だけでなく,再建も確実になされる。脳の嵌頓や感染などを防止するうえで非常に重要なことである。頭蓋底再建には脳圧および重力に耐えうる強度と確実な鼻咽腔側の上皮による被覆再建が必要である。
 我々は比較的悪性度が低い鼻中隔由来と考えられた軟骨肉腫症例で,広く頭蓋底を切除し,これを再建して良好な結果を得られたので,以下に報告する。

鏡下咡語

五感の順位

著者: 大和田健次郎

ページ範囲:P.1038 - P.1039

はじめに
 古くから視聴嗅(臭)味触覚を五感といっている。この並べ方の順はどのような理由からであろうか。これらの感覚受容器をみると,触は全身に分布しているが,その他は頭部にある。このほか第六感といわれるものは,諸感覚と記憶の統合であって特別な受容器はない。五感には入っていないが,耳には平衡感覚の受容器もあり耳鼻科領域は感覚と関係が深い。
 感覚は全く主観的なもので当人しかわからない。感じを他人に伝えるにはことばによるほかないが,感じをことばで表現するのは極めてむつかしい。「苦い」といっても,その味を他人がどう感じているかわからず,違った味を苦いというかもしれない。「苦い」は味ではなく単なる表現にすぎないからである。

CPC

鼻腔原発末梢性T細胞型悪性リンパ腫の1例

著者: 原田康夫 ,   平川勝洋 ,   永澤昌 ,   夜陣紘治 ,   井藤久雄

ページ範囲:P.1041 - P.1047

 鼻副鼻腔原発の悪性リンパ腫は,初期治療により局所制御は比較的良好にもかかわらず,放射線照射範囲外の局所の再発ないし遠隔転移をきたし,その結果不幸な転帰をとる例も少なくない1)。当科では,過去14年間に経験した鼻副鼻腔原発の悪性リンパ腫の約60%が,3年以内に遠隔ないし全身転移をきたし死亡している。
 今回,我々は発症より3ヵ月の急激な転帰で死亡した,右鼻腔原発の末梢性T細胞型リンパ腫を経験したが,その症例より学ぶ点が多く,ここに提示する。

医療ガイドライン

耳鼻咽喉科における細菌検査—(1)培養

著者: 杉田麟也

ページ範囲:P.1049 - P.1054

はじめに
 耳鼻咽喉科医の日常診療において感染症患者の占める割合が大変に高い。感染症の治療は細菌培養検査および薬剤感受性検査成績に従って実施するのが理想であるが,化学療法が普及した今日,細菌検査の結果が出てから化学療法をすることはむしろまれで,検査材料を採取したならばただちに化学療法をおこなうことがふつうである。
 細菌検査も担当医が検体を採取し,用意しておいた培地に塗布,培養し,細菌の種類を同定するのが本来の姿である。しかし設備,時間などの理由で今日では病院の検査室,民間の検査センターに依頼していることが多い(図1)。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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