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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻12号

1989年12月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

咽頭角化症

著者: 古川仭 ,   大尾嘉宏己 ,   木村恭之 ,   梅田良三

ページ範囲:P.1062 - P.1063

 咽頭角化症は組織学的には陰窩上皮が高度に角化したもので,原因不明の疾患とされている。青年期の女子にやや多いとされているが,本症は63歳の男性で,1カ月前からのどの違和感が出現し当科を受診した。咽頭痛,咳漱はない。両側口蓋扁桃,舌根扁桃に白色の多数の硬い角状突起を認めた(図1,2)。また舌背には発赤した粒状隆起が中央部に存在し,その前方に白色の苔がみられた(図3)。この角状突起物は擦過や,摂子では除去することとができず,鋭匙鉗子にてかなりの力を要して引き抜くことができた。CRP,ASO,ASK等は正常範囲で一般採血検査上異常なく,ワッセルマン反応(—)であった。咽頭培養検査でα,γ-strecptococcus,Neisseria,Micrococcus,K. pneumoniae,K. oxytoca,H. Parainfluenzaeが検出され,真菌培養で,カンジダ陽性であった。
 自覚症状が軽微であるため抗真菌剤のうがい(ナーイスタチン,1万単位/ml,1回20ml,日に4回)で経過観察したところ,1週間で異和感は消失した。それから3年後,偶然再検する機会があったが咽頭角化物は完全に消失していた。

トピックス 耳鼻咽喉科と中国医学

耳鼻咽喉科と中医臨床

著者: 丹沢章八 ,   秋山茂明

ページ範囲:P.1065 - P.1069

はじめに
 最近いわゆる東洋医学に対する関心が高まりつつある。本誌にこのような企画が登場するのも,こうした風潮の現われと見ることができよう。「東洋医学」と現代医学が互いに接近してきたようにも見えるが,あまりにも異なる両者の融合は容易ではなく,現状はむしろ多くの問題が生じていることを物語っている。
 このような場合,まず相互に理解し合うことが必要である。そこで両医学融合について考察してみると,その問題点は「東洋医学」自身の科学化の立ち遅れと,安易な科学化の蔓延に集約できる。つまり「東洋医学」自身は容易に科学化を達成できない存在でありながら,その内外から強引に科学化されることを要求されているのである。

めまいと中医臨床

著者: 代田文彦

ページ範囲:P.1071 - P.1074

はじめに
 めまいのことを眩暈げんうんとげんうんいう。眩とは目の前が暗くなることであり,目がかすむさまをさし,暈とは頭がくらくらすることである。
 類語は多くあり,頭暈ずうんして目がかすむものを巓てん眩げんといい,目がかすんで頭暈するものを目眩もくげんといい,頭がぼんやりして重く目がかすみ星が出るものを眩冒げんぼうという。そのほか,旋運せんうん・目運もくうん・眼運がんうん・頭眩運ずげんうん・眼眩がんげん・冒眩ぼうげん・掉眩ちょうげん・頭風眩ずふうげん・風頭眩ふうずげん・頭暈ずうん・旋暈せんうん・眼旋がんせん・眩転げんてん・頭面風ずめんふう・昏朦こんもうなどいろいろの表現がされている。

難聴・耳鳴に対する中医臨床

著者: 佐藤弘

ページ範囲:P.1075 - P.1079

はじめに
 聴力の低下を伴う聴覚異常,聴覚障害である難聴,耳鳴については西洋医学でも臨床的に難治性症状であるといわれている。耳疾患には疾病の種類と程度の差はあるものの難聴に耳鳴が合併する場合が多い。同時にこの症状を引き起こす原因疾患も非常に多く,原因不明のものもあるといわれている。
 難聴は西洋医学では大きく,伝音性,感音性,混合型の三種類に分類されて,それぞれがさらに細かく病因病理別に分けられ診断治療が行われている。

顔面神経麻痺と針灸

著者: 菊池尚子 ,   牧上久仁子

ページ範囲:P.1081 - P.1084

はじめに
 一般に東洋医学では,病名によって治療法を選択するのではなく,個々の症例の全身的な異常状態をさぐり,これを調節することによって局所の疾患の治療も行う。望診(視診),聞診(聴診),問診,切診(触診のことで,脈をみる脈診,腹壁の緊張状態などをみる腹診,経絡に沿って経穴を押さえて圧痛や抵抗をみる切経がある)によって,病態が虚しているか実しているか,またどの経絡に異常があるかを診断する。この虚実という概念は現代医学にはなく,その基盤となっている漢方の考え方が陰陽五行説である。治療のための経絡が決まると,その経絡上にある経穴の機能を考えあわせて,最終的に治療点が決められる。その上で,病態が虚していれば不足している気を補うための「補」の針の刺し方,灸のすえ方をする。実していれば気を減らす「潟」の針の刺し方(例えば吸気とともに速めに針を刺し,呼気とともにゆっくり抜く,など数種の方法があり,補では全てその逆を行う)や灸のすえ方をする。
 灸には経穴効果とは別に,熱によって破壊された細胞から出るある種の物質が免疫機構を刺激し,疾病の治癒機構を促すとの説もあり,補の手段としては針よりもむしろ有効であるとの考えもある1)。一般に灸は針に比べて効果の発現が遅く持続が長いため慢性疾患に,針はその逆で,急性疾患の治療に使われることが多い。しかし灸は熱い,灸痕を残すなどのほかに,病院内で行うには嗅いの問題もあり敬遠されがちで,客観的データに乏しい。中国の文献でも,臨床上顔面神経麻痺の治療としては刺針治療が主体であるとの集計報告がある2)

顔面痛と鍼灸—とくに非定型顔面痛について

著者: 北出利勝 ,   兵頭正義

ページ範囲:P.1085 - P.1090

はじめに
 真性三叉神経痛の発作と思われる顔面痛については,すでに紀元前1世紀ころ,有名なギリシャ人医師Aretaeusが記しているといわれる1)
 近年になり,Peter J Jannettaは,root entryzoneにおいて,血管の圧迫のために生じた脱髄により"short circuit"が形成されることが三叉神経痛(ならびに顔面痙攣)の主要原因であることを指摘している。真性三叉神経痛と鑑別すべき疾患として,歯および副鼻腔由来の続発性三叉神経痛,舌咽神経痛,ヘルペス後神経痛,非定型顔面痛,群発性頭痛,顎関節症などがある。

中国医学と西洋医学の接点—証の科学化

著者: 阿部博子

ページ範囲:P.1091 - P.1094

はじめに
 現代医療の中で漢方薬が使用されるようになって久しいが,一般的な漢方薬の評価は「長期に服用していると何となく体の調子が良くなる」といった程度のものに過ぎず,治療の手段としての確かな位置付けを得たり,あるいは専門領域において疾患治療の限界を拡大するものとして評価されるには至っていない。
 このように漢方療法や漢方薬が現代の医療に受け入れられ難いのはその薬理作用について科学的検討や解析がなされていないことも理由の一つであるが,それよりむしろ漢方医学における病気の治療に対する考え方が西洋医学とは根本的に異なっていることが原因であるように思われる。

原著

耳鼻咽喉科領域での全身麻酔手術—統計的検討ならびにその問題点

著者: 石塚洋一 ,   木村元俊 ,   河西研一 ,   大藏眞一 ,   大村昭人

ページ範囲:P.1095 - P.1099

はじめに
 近年,麻酔学の進歩により全身麻酔下の手術が耳鼻咽喉科に限らず全科的に増加傾向にある。耳鼻咽喉科の手術での全身麻酔法は,吸入麻酔による気管内挿管法が絶対的適応となり,短時間の手術に対しては非挿管法のマスク法も行われている。しかし,吸入麻酔においては呼吸器,循環器の合併症,さらに,悪性高熱症といった重篤な合併症があり注意が必要である。そこで今回われわれは,当院耳鼻咽喉科で行った全身麻酔手術の統計的検討を行うとともに,全身麻酔手術の問題点について検討したので報告する。

小唾液腺由来の単形性管状腺腫の1例とその組織学的検討

著者: 村上匡拶 ,   中江進

ページ範囲:P.1101 - P.1105

はじめに
 WHOの唾液腺腫瘍分類(表1)において,単形性腺腫の中でも「other type」は比較的稀であり,今まであまり興味を持たれていない。今回私達は口腔前庭に発生した単形性管状腺腫を経験し組織学的検討の機会を得たので,文献的考察を加え報告する。

北里大学病院における頭頸部がんの統計学的観察—第1報 13年間のがんの実態調査より

著者: 高橋廣臣 ,   岡本牧人 ,   八尾和雄 ,   亀谷徹

ページ範囲:P.1107 - P.1111

はじめに
 昭和60年から63年にわたって"北里大学病院における13年間のがんの実態調査"と題する院内班研究が計画され,大学病院開設(昭和46年7月)より13年間(昭和59年12月まで)における全科の悪性新生物患者の統計的観察を行った。データは,全て大型コンピューターに入力した。
 本研究の目的は,われわれの病院におけるがん診療の実態を客観的に評価し,最終的にはがん治療成績の向上を計ることにある。

簡易な鼓膜形成術—フィブリン糊を用いた接着法

著者: 湯浅涼 ,   西條茂 ,   冨岡幸子 ,   草刈千賀志 ,   欠畑誠治 ,   香取幸夫 ,   金子豊

ページ範囲:P.1117 - P.1122

はじめに
 鼓膜形成術Myringoplastyは形成材料の移植固定部位により1) overlay法,2) underlay法,3) sandwich法などと呼ばれ(図1),術者の好みで選択され,またそれぞれに工夫が加えられている。鼓膜の構造からみればsandwich法が最も自然であり,治癒機転も理想的であるが,技術的に多少の熟練を要する。しかし,いずれの方法でも一般には皮膚切開を耳前後に置き,外耳道皮膚,鼓膜皮膚層の剥離などが必要であり,かつ,10日前後の入院を要する。一方,穿孔鼓膜の閉鎖を外来で簡易に行う方法として,従来から,静脈弁1),脂肪組織2),接着紙テープ3),フィブリン膜4),皮下結合織5),その他の材料6)を用いたいくつかの方法が報告されている。しかし,確実性の点からは前記sandwich法が優れており,これら簡易法は主として外傷性鼓膜裂傷などの特殊例にのみ応用されているのが現状である。われわれは,最近発売された生理的生体接着剤Fibrin glue(BeriplastRP)を用いて,従来の方法にはない数々の特徴をもち,外来で簡易に短時間で行える方法を87耳に試みた。その結果,従来のsandwich法と同等もしくはそれ以上の術後成績が得られることが実証されたのでここに報告する。

巨大な先天性真珠腫と中頭蓋窩手術

著者: 古川仭 ,   大尾嘉宏巳 ,   山本憲 ,   梅田良三 ,   山嶋哲盛 ,   山下純宏

ページ範囲:P.1123 - P.1126

はじめに
 中耳に発生した真珠腫が,内耳破壊1),頭蓋底侵入2),時に頭蓋内合併症3)を併発することがよく知られている。一般にそのようなケースは中耳炎に続発することが多く,後天性真珠腫である。最近われわれは,内耳障害を呈した患者で,錐体骨を破壊し,中頭蓋窩に進展した巨大な先天性と考えられる真珠腫を脳外科医との協力で経中頭蓋窩法で摘出した。ここにその症例を報告し手術法について紹介する。

鏡下咡語

コミュニケーション医学

著者: 設楽哲也

ページ範囲:P.1114 - P.1115

 この題で何か書くように依頼があったので私が適切であるかどうかは別として責を果たす事にする。内容的に要素が多く散漫であることと,話を進める意味で主張が強いところがあり,猿の尻笑いと冷かされる恐れがあるが耐える事とする。

CPC

下咽頭癌切除後の再建皮膚より発癌したと思われる症例

著者: 吉野邦俊 ,   佐藤武男 ,   馬谷克則 ,   藤井隆 ,   八田千広 ,   垣淵正男 ,   沢田達

ページ範囲:P.1127 - P.1130

 下咽頭癌は進行癌が約8割を占めており,咽頭喉頭全摘出術がほとんどの症例で必要となる。そして,摘出後の欠損が大きくて一次縫合が無理な場合,再建材料として局所あるいは遠隔の皮膚,または腸管(胃,空腸)が用いられている。とくに近年,再建外科の進歩により,切除後の欠損をあまり気にせず十分な切除が行えるようになった。
 しかしこのような努力にもかかわらず治療成績は不良であり,5年生存率は依然として30%前後である。したがって長期生存例はまだまだ少ないのが実状であるが,そのような生存例において,再建に用いた皮膚から発癌したと思われる例を最近3例経験した。そのうちの1例を呈示する。

医療ガイドライン

耳鼻咽喉科における細菌検査—(2)薬剤感受性検査

著者: 杉田麟也

ページ範囲:P.1131 - P.1138

はじめに
 感染症の治療に化学療法剤を用いる場合,もっとも適切な治療を行うには,原因菌に対してもっとも効力のある薬剤を使用するのが望ましいことはいうまでもない。そのために薬剤感受性検査が考えられ,ひろく実施されている。とくに近年多くの化学療法剤が開発され,またその一方ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌,アニピシリン耐性インフルエンザ菌など耐性菌の存在が報告されている現状では,菌種を決定しただけで,どの薬剤が有効であるという推定は困難である。
 感受性検査の目的は,(1)臨床上適切な治療を行うための薬剤選定が最大の目標であるが,一方では,(2)薬剤の評価における抗菌スペクトルの決定,(3)感受性分布の調査による疫学上の応用,(4)さらに薬剤感受性の差による菌種鑑別の応用など,ひろい範囲にわたる。

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第61巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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