簡易な鼓膜形成術—フィブリン糊を用いた接着法
著者:
湯浅涼
,
西條茂
,
冨岡幸子
,
草刈千賀志
,
欠畑誠治
,
香取幸夫
,
金子豊
ページ範囲:P.1117 - P.1122
はじめに
鼓膜形成術Myringoplastyは形成材料の移植固定部位により1) overlay法,2) underlay法,3) sandwich法などと呼ばれ(図1),術者の好みで選択され,またそれぞれに工夫が加えられている。鼓膜の構造からみればsandwich法が最も自然であり,治癒機転も理想的であるが,技術的に多少の熟練を要する。しかし,いずれの方法でも一般には皮膚切開を耳前後に置き,外耳道皮膚,鼓膜皮膚層の剥離などが必要であり,かつ,10日前後の入院を要する。一方,穿孔鼓膜の閉鎖を外来で簡易に行う方法として,従来から,静脈弁1),脂肪組織2),接着紙テープ3),フィブリン膜4),皮下結合織5),その他の材料6)を用いたいくつかの方法が報告されている。しかし,確実性の点からは前記sandwich法が優れており,これら簡易法は主として外傷性鼓膜裂傷などの特殊例にのみ応用されているのが現状である。われわれは,最近発売された生理的生体接着剤Fibrin glue(BeriplastRP)を用いて,従来の方法にはない数々の特徴をもち,外来で簡易に短時間で行える方法を87耳に試みた。その結果,従来のsandwich法と同等もしくはそれ以上の術後成績が得られることが実証されたのでここに報告する。