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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻12号

1989年12月発行

トピックス 耳鼻咽喉科と中国医学

顔面神経麻痺と針灸

著者: 菊池尚子1 牧上久仁子2

所属機関: 1北総白井病院 2東京女子医科大学附属第二病院耳鼻科

ページ範囲:P.1081 - P.1084

文献概要

はじめに
 一般に東洋医学では,病名によって治療法を選択するのではなく,個々の症例の全身的な異常状態をさぐり,これを調節することによって局所の疾患の治療も行う。望診(視診),聞診(聴診),問診,切診(触診のことで,脈をみる脈診,腹壁の緊張状態などをみる腹診,経絡に沿って経穴を押さえて圧痛や抵抗をみる切経がある)によって,病態が虚しているか実しているか,またどの経絡に異常があるかを診断する。この虚実という概念は現代医学にはなく,その基盤となっている漢方の考え方が陰陽五行説である。治療のための経絡が決まると,その経絡上にある経穴の機能を考えあわせて,最終的に治療点が決められる。その上で,病態が虚していれば不足している気を補うための「補」の針の刺し方,灸のすえ方をする。実していれば気を減らす「潟」の針の刺し方(例えば吸気とともに速めに針を刺し,呼気とともにゆっくり抜く,など数種の方法があり,補では全てその逆を行う)や灸のすえ方をする。
 灸には経穴効果とは別に,熱によって破壊された細胞から出るある種の物質が免疫機構を刺激し,疾病の治癒機構を促すとの説もあり,補の手段としては針よりもむしろ有効であるとの考えもある1)。一般に灸は針に比べて効果の発現が遅く持続が長いため慢性疾患に,針はその逆で,急性疾患の治療に使われることが多い。しかし灸は熱い,灸痕を残すなどのほかに,病院内で行うには嗅いの問題もあり敬遠されがちで,客観的データに乏しい。中国の文献でも,臨床上顔面神経麻痺の治療としては刺針治療が主体であるとの集計報告がある2)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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