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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻3号

1989年03月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

甲状腺RIアンギオグラフィー

著者: 土師一史 ,   手島泰明 ,   平林秀樹

ページ範囲:P.170 - P.171

 99mTc-pertechnetate (99mTcO-4)の静注によるRIアンギオグラフィーを用い,甲状腺のRI摂取について動脈相,静脈相,125秒相(実質相)の評価を行った。ここに各疾患の代表例を示す。

原著

前庭神経炎—診断の要点と風疹ウイルス感染との関連性について

著者: 藤野明人 ,   徳増厚二 ,   岡本牧人 ,   竹内義夫 ,   八木一記 ,   五島一吉 ,   屋宜晃 ,   原田宏一 ,   古沢慎一 ,   伊保清子 ,   浅野和江 ,   鵜飼淳子 ,   鈴木淳子 ,   高宮春男

ページ範囲:P.173 - P.179

I.はじめに
 前庭神経炎は1952年Dix & Hallpike1)によって提唱された疾患概念で,近年その診断基準も作成され,めまい疾患のなかでは比較的よく知られている。しかし日常診療でその診断は必ずしも容易ではない。本疾患の自験例の臨床的観察から診断の要点を報告し,血清ウイルス学的検討からとくに風疹ウイルスとの関連について考察した。

早期聴神経腫瘍の検討—初発症状と温度性眼振検査,ABR所見について

著者: 五十嵐秀一 ,   小出千秋 ,   猪股茂樹 ,   北村哲也 ,   中野雄一

ページ範囲:P.181 - P.185

I.はじめに
 最近の画像診断法の発達により神経耳科学的検査では確定診断のつかない早期聴神経腫瘍が容易に診断できるようになってきた。とくにair CTcisternography (air CTC)とtarget imagingを併用することにより診断確率はほぼ100%といえる。一方画像診断で早期聴神経腫瘍と確定診断された症例の神経耳科学的所見を検討すると,温度性眼振検査での半規管麻痺(CP)やABRの陽性率は従来述べられているほど高率ではないように思われる。今回われわれは早期聴神経腫瘍の神経耳科学的所見と初発症状について検討を加えたので報告する。

低音障害型突発性難聴の臨床所見とその発症原因に対する一考察

著者: 吉川みゆき ,   阿部登 ,   大山孜郎 ,   志多英佐 ,   志多享

ページ範囲:P.187 - P.194

I.はじめに
 最近,発症が突発的でその聴力障害が低音部に限られしかも障害度が比較的軽い一側性急性感音難聴症例が発表されるようになってきた1,2)。これら低音障害型突発性難聴ともいうべき症例群は聴力障害度が大きいいわゆる突発性難聴とは異質なものとされ,その発症頻度はこれまで二次・三次医療機関から報告されてきた症例数からみて比較的稀な疾患として把えられていると思われる1,3,4)
 この理由としては,自覚症状が耳鳴や耳閉感を主とし難聴を訴えることが少なく,また難聴の訴えがあったとしてもその程度が軽く重症感がないため,患者のほとんどすべてが一次医療機関を受診しており,しかもその聴力像が低音部に気骨導差を示す場合伝音難聴を否定し難いために,その多くが中耳カタルあるいは耳管狭窄症として処理されてきたことに由来するのではないかと考えられる。

術後性上顎嚢胞におけるオルソパントモグラフィーの有用性

著者: 加瀬康弘 ,   飯沼壽孝 ,   大庭健

ページ範囲:P.195 - P.199

I.はじめに
 術後性上顎嚢胞の診断には画像診断が必須であるが,従来からの単純X線撮影法ではWaters法が有用1)である。しかし術後上顎洞の複雑な治癒機転と嚢胞の多様な局在性など2,3)のため,Waters法での嚢胞の質的診断,部位診断などは不十分であり,とくに上顎洞底部の読影は容易でなく4,5),上顎洞後壁の読影は困難である。したがって大多数の症例においては普通X線断層撮影法やCTを追加せざるをえない。今回われわれは術後性上顎嚢胞症例にオルソパントモグラフィーを応用し,単純X線撮影法(Waters法)およびCTと比較検討した。その結果オルソパントモグラフィーは上顎洞後壁欠損と嚢胞の上顎骨歯槽突起内進展の診断に優れることを証明した。またオルソパントモグラフィーは多房性嚢胞の診断にも有用と思われた。

副鼻腔ムコール症の1症例

著者: 長江大介 ,   馬場廣太郎 ,   後藤治典 ,   古内一郎

ページ範囲:P.201 - P.205

I.緒言
 真菌感染症は近年増加傾向にあり,耳鼻咽喉科領域においても同様で,とくに副鼻腔においても数多くの報告がなされるようになった。しかしながらムコール症は比較的稀な疾患であり,また宿主の免疫能低下などに併発するためきわめて予後不良であるとされている。今回われわれは急性骨髄性白性病(以下AMLと略す)に合併し不幸な転帰をとった副鼻腔ムコール症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

声門下肉芽腫2症例に対するT-tube挿入治験—Wegener肉芽腫との関連について

著者: 金聖眞 ,   玉置弘光 ,   渡部泰夫

ページ範囲:P.207 - P.212

I.緒言
 1931年Klinger1)が上気道の破壊性肉芽性病変,糸球体腎炎,脾肉芽腫,および血管炎などの所見を示した症例を報告したが,1936年Wegener2)が肺症状を伴った上気道の壊死性肉芽性病変,糸球体腎炎,および全身性の血管炎などを三主徴とする病態を一つの症候群として唱えて以来,この病態はWegener肉芽腫症と呼ばれている。
 Wegener肉芽腫症は上気道の炎症症状をはじめとして漸次多彩な全身症状を現わす全身性疾患である。本症は最近有効な薬物療法によりその予後が次第に向上してきている反面,罹病期間の長期化により比較的稀であった症状や所見もしばしばみられるようになってきた。

咽喉頭異常感を主訴とした甲状腺癌T4例の2手術例—術前診断における超音波検査の有用性

著者: 山田弘之 ,   矢野原邦生 ,   宮木良生 ,   矢花正

ページ範囲:P.221 - P.224

I.緒言
 甲状腺腫瘍は自覚症状に乏しく,発見の契機が家族などの他人に指摘されたものや他疾患の受診時に診察医に指摘されたものが少なくない。腫瘍が良性のものならばともかく悪性のものであった場合,発見の時期の遅れはわれわれ医師にとっても重たな問題である。
 われわれは咽喉頭異常感と甲状腺疾患との関連を追求し,甲状腺悪性腫瘍の早期発見において咽喉頭異常感は見逃すことのできない自覚症状ではないかと考えた。

鏡下咡語

続・裏方医者

著者: 米山文明

ページ範囲:P.214 - P.215

新しいということと旧いということ
 私がこの欄に同名のタイトルで一文を草してからもう5年経った。その後も私はソ連の名歌手ネステレンコからアメリカのアイドル,マイケル・ジャクソンまで,さらに多くのスター達に接している。そしていろいろな意味で新しさと旧さということの意義を考えさせられる昨今である。
 「若い者を軽蔑するな,自分も通ってきた道である。年寄りをばかにするな,自分も通るはずの姿である」と言った人がある。私の診療歴の中でも随分昔からつき合っている人もいるし,最近つき合い始めた人もいる。旧くから診ている人びとの声や体が年々変化してゆくのをみていると,その症状と治療の反覆,蓄積によって私も教えられることが多い。私自身の知識,経験の積み重ねにもなるし,患者さん白身の勉強にもなっていると思う。

私は知りたい

異常値の読み方(2)肝機能検査

著者: 大久保昭行

ページ範囲:P.217 - P.220

I.はじめに
 肝機能検査で肝疾患の病態をどの程度まで診断できるのだろうか。1975年に,当時のわが国の指導的立場にいた肝臓病学者のグループが,肝機能検査による慢性肝炎の病態診断能を検討した結果を発表1)している。
 その報告によると,専門家といえども1回の肝機能検査データだけでは慢性肝炎の病態診断はきわめて困難なことが示されている。その半面,経験の浅い医師であっても病歴や理学的所見などを参考にすれば,肝機能検査データにより慢性肝炎の病態をかなりの程度まで診断できることが明らかにされた。

CPC

著しい気道狭窄をきたした気管原発腺様嚢胞癌の1例

著者: 平野浩一 ,   小野勇 ,   海老原敏 ,   朝戸裕貴 ,   呉屋朝幸 ,   中島孝

ページ範囲:P.225 - P.229

 腺様嚢胞癌(adenoid cystic carcinoma:以下ACCと略す)はその大部分が小唾液腺由来のものである。気管原発ACCは頻度も低く当院では全ACC 98例中4例にすぎない。臨床的にも初期にはぜんそくとして治療されたり,甲状腺癌の気管浸潤や頸部食道癌および食道癌の頸部リンパ節転移との鑑別が臨床的には困難な場合もある。
 最近上記の特徴をよく示す気管原発のACCを経験したのでここに報告する。

医療ガイドライン

抗菌薬の現状と進歩

著者: 五島瑳智子 ,   宮崎修一

ページ範囲:P.231 - P.238

I.抗菌剤の開発と使用量の動向
 1929年FlemingがPenicillium notatumからpeni—cillinが産生される事実を報告してから,抗菌剤開発の進歩は著しく,わが国における抗菌剤の生産額は図1のように年々増加し,1980年には他の4大主要薬剤,すなわち循環器,中枢樽経系,消化器,腫瘍関連の薬剤の合計額に匹敵するに至っている。その後,他の薬剤群の生産額がそれぞれ増加したため抗菌剤の比率はやや低下しているが,総額では依然として首位を占めている。
 図2はわが国における各種抗菌剤開発の経緯を年次的に示しているが,これに関連して使用抗菌剤の種類と使用量にも変遷がみられ,図3に示されているように1970年代前半までかなりの量を生産していたクロラムフェニコール,テトラサイクリン,マクロライドなどの系統の薬剤に代って,ペニシリン,セフェムなどのβ—ラクタム剤の使用量が増加し,とくにセフェム剤の生産量はこの10年間に急増している。

海外トピックス

アメリカのスピーチリハビリテーション事情

著者: 小林範子

ページ範囲:P.239 - P.241

1.音声言語の社会的地位
 1988年はアメリカ大統領選挙がある年で,秋口に入ると,選挙戦が一段と熱気を増したのが日本にいても感じられた。現地アメリカでこれを目の当りに見ると,大統領候補およびその支持者,有権者,テレビなどから産出される音声エネルギーの強さのためか,「国を挙げての大騒動」という印象を受ける。よく話し,議論し,そして倦まない。趣向をこらした各種の効果を取り混ぜた選挙キャンペインの賑やかさから,アメリカ滞在1年目に経験した1980年の選挙では,その無限の派手さとアメリカ人らしい(と当時の私が思っていた)活発さだけが顕著に感じられた。
 英語の理解力が少々増加し,アメリカ文化の特徴も実感としてわかるようになった4年後,大統領選挙が前回とは異なって見えてきた。あの騒ぎは,大統領選挙の重大さとアメリカ国民の気質の現われ以外に,アメリカにおける人びとの音声言語運用法が具体的な特徴のひとつを反映したものとして写った。今回の選挙戦もそのような視点から観察すると,なかなか興味あるものとなった。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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