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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻4号

1989年04月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

Ramsay Hunt症候群に伴う口腔咽頭ヘルペス

著者: 池田稔 ,   久木元延生 ,   大森英生 ,   鶴町昌之 ,   田中正美 ,   北郷秀人 ,   冨田寛

ページ範囲:P.248 - P.249

 Ramsay Hunt症候群は耳介帯状疱疹を基本的徴候とし,さらに第VII,第VIII脳神経麻痺を伴う症候群である。帯状疱疹は耳介後部に出現する場合(図1)もあり,また口腔内に出現することもある。図8はHunt1)により指摘されている膝神経節からの知覚神経領域であり,この部に一致した皮疹,粘膜疹はRamsay Hunt症候群の一症候とされる。

トピックス 耳鼻咽喉科のリハビリテーション

補聴器のリハビリテーション—中途失聴者の聴能訓練

著者: 倉内紀子

ページ範囲:P.251 - P.256

I.はじめに
 成人になってから失聴した,いわゆる中途失聴者のリハビリテーションでは,補聴器をいかに有効に使いこなせるようになるかが重要な課題となる。
 補聴器を装用したものの,ことばがよく聞き取れないとか,そのわりに雑音ばかりでうるさいなどの訴えは非常に多く,また1人で5個も6個も購入しながら全く使用していないという例も稀ではない。

めまい・平衡障害のリハビリテーション

著者: 徳増厚二

ページ範囲:P.257 - P.264

I.はじめに
 身体障害者福祉法による平衡機能障害認定と関連して,平衡機能障害患者が社会復帰するためのリハビリテーション(以下リハと略す)の具体的方法が早急に検討されねばならない。身体運動障害のリハ医学は上田1)によれば,ポリオ,肢切断を対象とした第1期より,脳血管障害,脳外傷後遺症,脳腫瘍手術後の神経麻痺を対象とする第2期へ進み,現在小脳性運動失調2),パーキンソン病,筋萎縮性疾患,末梢神経障害なども扱う第3期に入っている。筋,関節に一次的障害がなく,前庭系,視覚系,深部知覚系,あるいはそれらの中枢の病変で出現する平衡障害と,平衡感覚の異常である「めまい」の運動療法の確立が望まれている。平衡障害リハについては1946年Cawthorne3),Cooksey4)以後,McCabe5),Dix6)をはじめとして,わが国ではその評価法をも含めてTakemoriら7),小島8)などの報告がみられる。
 ヒトの乳幼児期に,骨格・筋・神経系の発達とともに繰り返しの運動で直立,歩行が可能になる。さらに小児期の戸外での遊び,青年期のスポーツで平衡機能が向上する。この平衡機能獲得の過程からみて,疾病で生じためまい・平衡障害の回復には,運動訓練が重要な意味を持つと予想される。平衡リハの方法とその評価法の研究の一端として,北里大学病院で急性めまい入院患者に実施した運動療法を報告する。

嚥下障害のリハビリテーション

著者: 進武幹

ページ範囲:P.265 - P.270

I.はじめに
 嚥下障害におけるリハビリテーションの対象となる患者は,主として①口腔,咽頭,喉頭などの悪性腫瘍摘出後に嚥下の通路に形態的欠損が生じた場合,②脳血管障害,変性疾患,脳外傷などにより神経・筋系の機能脱落をきたした場合,などである。これらの嚥下障害患者のリハビリテーションは系統的に行われていないのが現状である。米国では医師と言語療法士,看護婦などがチームを組み,リハビリテーションのプログラムが作成されつつある。本邦では二,三の施設で独自に経験的に施行されているにすぎない。その理由は種々考えられるが,嚥下障害患者を取り扱っている医師の関心が薄いこと,あるいはリハビリの効果があまり期待できないことなどが挙げられよう。
 リハビリテーションを行うには,嚥下障害の的確な評価がなされ,それに対応する治療のプログラムを作成しなければならない。このためには,耳鼻咽喉科・頭頸部外科医,神経内科医,脳神経外科医,さらに医療関係者などが協力し合って解決しなければならないと考えている。現在,確立された方法はないが,文献的考察を加え,今後の問題点を挙げ,参考に供したい。

喉摘者のリハビリテーション

著者: 佐藤武男

ページ範囲:P.271 - P.277

はじめに
 喉頭進行癌,下咽頭・頸部食道癌のために,またまれに頭頸部癌,甲状腺の進行癌などのために,治療手段として喉頭全摘出術が行われる。これらの患者は喉摘者(the laryngectomized, laryn—gectomee),無喉頭者(alaryngeal patient)または気管呼吸者ともいわれていて,身体障害3級に認定されている。
 1945年以後の治療技術の進歩につれて,これらの喉摘者の永久治癒率が向上し,自然死に到るまでの管理が重要な問題となった。筆者は喉頭癌の治療は代用音声,とくに食道発声法の習熟によって完成すると考えている。したがって喉摘者リハビリテーションの中心となるのは食道発声教室であり,その育成と質の高い運営が最も重要であると考えている。

成人の言語障害

著者: 柴田貞雄

ページ範囲:P.279 - P.289

I.はじめに
 高齢化時代を迎え,成人の二大言語障害,すなわち失語症と運動障害性構音障害のリハビリテーションに対する要請は,ますます増加の一途を辿ると予測される。耳鼻咽喉科はそれらの診断,治療,およびリハビリテーション(以下,リハと略記する)に深く関わり,責任を果たさなければならない。
 そこで小稿では上記二つの障害のリハについて,臨床の過程に沿って解説し参考に供したい。

鏡下咡語

21世紀の耳鼻咽喉科をどうする—生き残りを考えよ

著者: 小池吉郎

ページ範囲:P.292 - P.293

 昭和63年10月ブラジルのリオデジャネイロでの国際シンポジウムに出席した時,大阪大学の松永亨教授と耳鼻咽喉科の将来について語り合った。松永教授は本年度の日耳鼻総会(会長熊沢関西医大教授)で21世紀の耳鼻咽喉科の進歩に関するパネルディスカッションの座長を務められるとのことから,耳鼻咽喉科の現状,研究開発と技術革新の方向などの話題が中心となった。総論的にはこのままでは耳鼻咽喉科の将来像が暗く,地盤沈下が進む危惧が大きいこと,またこれに対する対策が真剣に考えられておらず活性化の具体策が浮かんでないことから悲観的な見解に傾いた。
 最近の日本耳鼻咽喉科学会内での動きをみると,関連学会,研究会が目白押しに開催され,これに地方部会,医会等を加えると驚くべき数となる。各大学の教授連中はこの出席だけでも大変である。毎週出席しなければならない時がある。

原著

中気道(喉頭,気管,主気管支)のアレルギー

著者: 小川浩司 ,   橋口一弘 ,   山崎嘉司 ,   都築達

ページ範囲:P.295 - P.300

I.はじめに
 即時型アレルギーによる気道の疾患といえば,上気道では鼻アレルギーが,下気道では気管支喘息が代表である。そして喉頭や気管のアレルギーに関しては文献もほとんどなく,日常診療においても見過ごされがちである。しかし感冒(viralinfection)が治った後や,上気道感染とは無関係に乾性あるいは薄い粘液性の喀痰を伴った頑固な咳嗽が続いているのにもかかわらず,聴打診や胸部X線などの一般内科学的検査では肺の異常を認めず,内科医を訪れても喉頭の器質的疾患ではないかと耳鼻咽喉科にまわされる症例にしばしば出合う。このような症例は気道感染症にみられるような発熱や白血球増多,血沈値亢進などはなく,抗菌剤や消炎剤といった気道感染症に対する治療薬には反応せず,鎮咳薬も多くの場合無効である。
 鼻アレルギー患者でも同じような咳嗽を伴う場合があり,喉頭以下の中気道における即時型アレルギーが発症の原因として強く疑われる。このような疾患は気管支喘息とは病態が明らかに異なり,喉頭,気管,太い気管支といった中気道(mid—dle respiratory tract)が即時型アレルギー反応の標的になっていることが考えられる。

術後性上顎嚢胞術式の考察

著者: 塩野博己 ,   加瀬康弘 ,   堀内康治 ,   船井洋光 ,   飯沼寿孝

ページ範囲:P.301 - P.305

I.はじめに
 術後性上顎嚢胞の画像診断法は従来は普通X線診断法(単純撮影法,断層撮影法)が中心であったが,X線CTの導入によって術前の情報はより詳細となった。今回の報告では後術性上顎嚢胞のX線CT像を検討し,嚢胞に対する術式,ことに下鼻道側壁における鼻内開窓術の適応について報告した。
 この鼻内開窓術の適応となる条件についてはいまだ定説がないが,その最低条件とは,1)嚢胞は単房性であること(画像上も嚢胞内に不完全隔壁をもたない),2)嚢胞の内側壁は下鼻道側壁に接して膨隆していること,が必要であろう。

小唾液腺多形性腺腫の2症例

著者: 水野弥生 ,   広田佳治 ,   渡辺洋 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.307 - P.311

I.はじめに
 唾液腺腫瘍のうちで大唾液腺腫瘍の報告は数多くなされているが,小唾液腺腫瘍の報告は比較的少ない。今回われわれは軟口蓋,鼻中隔に発生した小唾液腺多形性腺腫を経験したので,ここに症例を報告するとともに若干の考察を加えた。

鼻内所見の乏しい鼻性頭蓋内合併症の2例

著者: 山田勝士 ,   加我君孝

ページ範囲:P.313 - P.319

I.はじめに
 抗生物質が頻用されている現在鼻性の頭蓋内合併症は珍しくなり,実際その報告も数少ない。しかしいったん発症した場合は現在においても,的確な処置が早期になされなければ死亡率が約50%というきわめて致命率の高い疾患であり1),迅速な診断と治療が必要となる。われわれは最近頭蓋内および眼窩内合併症を併発した例を含め,副鼻腔炎が原発巣と思われた非術後性の頭蓋内合併症を2例経験した。いずれも鼻症状,鼻内所見に乏しくCT検査により初めて鼻性と診断のついた症例であったため,受診に至る経過,治療,その後の経過について報告する。

鼻出血を主訴とした腎癌の篩骨蜂巣転移症例

著者: 久保将彦 ,   吉川元祥 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.321 - P.326

I.はじめに
 鼻・副鼻腔に発生する腫瘍は大部分が原発性であり,他臓器からの転移性腫瘍はきわめて稀1,2)とされている。今回われわれは難治性の鼻出血をきたし,手術により過去に治療を受けた腎癌の篩骨蜂巣への転移と診断された症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

中耳内へ進展した髄膜腫の1症例

著者: 内藤好宏 ,   土本正治 ,   林佐和子 ,   増田游 ,   小倉義郎

ページ範囲:P.327 - P.331

I.はじめに
 原発性脳腫瘍のうち髄膜腫は全体の約13〜18%1)とされており,gliomaについで多い腫瘍である。そしてそのほとんどのものは頭蓋内の髄膜より発生するとされており,頭蓋外に発生することは非常に稀である。このたびわれわれは左耳鳴・難聴および耳閉感を主訴として来院した症例に対し中耳腫瘍を疑い手術を施行したところ,中耳内髄膜腫であった1例を経験したので,ここに報告する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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