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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻5号

1989年05月発行

原著

無難聴性耳鳴の検討—感音難聴性耳鳴との比較

著者: 市川恭介1 鶴窪一行1 中嶋慶則1 梶本正子1 服部康夫1 中村賢二1

所属機関: 1日本医科大学第二病院耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.341 - P.345

文献概要

I.はじめに
 耳鳴の研究にさいして,これまでいくつもの分類が考えられてきた。まず他人に聴取可能か否かによって他覚的耳鳴と自覚的耳鳴にご分類される。他覚的耳鳴とは耳鳴を有する患者自身だけでなく周囲にいる人にも聴取できる耳鳴であり,反対に自覚的耳鳴とは患者自身にしか聞くことができない耳鳴である。他覚的耳鳴の症例は自覚的耳鳴に比べるとわずかであり,一般的に耳鳴という時には自覚的耳鳴を指している。そしてこの自覚的耳鳴を永浜1)は聴力型により分類し,伝音性耳鳴,感音性耳鳴,混合性耳鳴,および無難聴性耳鳴に分類した。前三者の耳鳴は聴力障害を伴う耳鳴であるが,無難聴性耳鳴は聴力障害を伴わない耳鳴であることが特徴であるとした。以前より一般的には難聴と耳鳴は発生原因が同一であると考えられており,どちらか一方しかみられない場合は奇異であるともいえる。これについて安田ら2)は,耳鳴と難聴の発生原因が同一なものだという立場に立つと,どちらか一方しかみられないことは全く奇異なことであるが,この事実を説明するのにつぎの二つを想定している。1)耳鳴と難聴の原因は病変がそれぞれ異なっている。したがって必ずしも同時期に発生するとは限らない。2)耳鳴と難聴の原因となる病変は同一のものである。しかし患者の心理的傾向によって,同じ大きさの耳鳴の病変も気づかれなかったりあるいは過大に感じられたりすると述べている。著者らは無難聴性耳鳴についてその発生要因を検索するために,一般的な耳鼻咽喉科的な検査に加えて心身医学的な検査も施行し,これらの成績について聴力障害を有する感音難聴性耳鳴のそれらと比較検討し,興味ある結果を得た。また無難聴性耳鳴の診断基準についてはさまざまな基準4,5)があるが,著者らの基準は125Hzから8kHzまでのすべての周波数で聴力レベルが20dB以内で大きなdipを認めないものとした。また持続性か断続性かにこついては今回はすべて含めた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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