文献詳細
原著
聴神経腫瘍手術と聴力保存—聴力保存手術適応症例の選択と術前検査所見
著者: 小川郁1 神崎仁1 塩原隆造2 戸谷重雄2
所属機関: 1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室 2慶応義塾大学医学部脳神経外科学教室
ページ範囲:P.347 - P.353
文献概要
近年,神経耳科学的検査や画像診断技術の進歩に伴い早期聴神経腫瘍の診断が可能にこなり,また術中モニタリング技術の導入などにより聴神経腫瘍(以下,ANと略す)の聴力保存手術も可能になってきている。しかし聴力の保存はいまだに容易ではなく,とくに日常生活に有用な聴力の保存はきわめて難しいのが現状である。また聴力の保存と腫瘍の全摘は時に相反するものとなり,聴力の保存を目標とする場合腫瘍の全摘が困難となることも少なくない1)。こうしたことから術前に聴力保存の可能性を予想しうるかどうかは今後明らかにすべき聴神経腫瘍手術上の問題点のひとつと考えられる。今回われわれはこれまでに聴力の保存を目標として中頭蓋窩経由法または拡大中頭蓋窩経由法—慶大変法により手術を行ったANの術前検査所見について検討し,術前検査所見より聴力保存手術の適応症例をいかに選択すべきかについて考察したので報告する。
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