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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻6号

1989年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

Mikulicz病

著者: 今野昭義 ,   伊藤永子

ページ範囲:P.426 - P.427

 1884年にMikuliczが両側涙腺,耳下腺,顎下腺の無痛性,左右対称性の腫脹を伴い,慢性の経過を示す1症例を報告して以来,Mikulicz病または症候群の名のもとに多くの症例が報告されている。本症はSchafferらによつて基礎疾患が明らかなMikulicz症候群と基礎疾患不明なMikulicz病に分類され,さらにMorganらによって病理組織学的所見をもとに従来(Mikuiicz病とされてきた症例は均Sjögren症候群(以下SjSと略)の亜型であると報告された。これが欧米における今日の一般的な見解である。著者はこれまでにMikulicz病と診断せざるをえない症例を11例経験したが,Mikulicz病とSjSの間には以下に示す大きい臨床像上の違いがある。現状では両者は別個の疾患として症例の集積,整理を行つておく必要があろうと思われる。

原著

楕円形輪状軟骨による声門下狭窄1剖検例を通しての検討

著者: 八木昌人 ,   市村恵一 ,   水口国雄 ,   宮田章子 ,   横路征太郎

ページ範囲:P.429 - P.433

I.緒言
 先天性声門下狭窄(以下,声門下狭窄と略)は先天性喘鳴の原因として数多く報告されている。しかしその多くは内視鏡,あるいは手術時の所見に基づいており,剖検により狭窄部位の形態学的特徴について考察した報告は少ない。今回私どもは声門下狭窄で死亡した生後1か月の乳児の剖検例を経験した。病歴の詳細はすでに報告1)済であるが,今回はとくに狭窄部位の形態学的特徴について考察を加えたい。

滲出性中耳炎診断におけるMRIの応用

著者: 堀芳朗 ,   友田幸一 ,   三苫藤吉郎 ,   山脇利朗 ,   山下敏夫 ,   熊沢忠躬 ,   加藤勤 ,   田中敬正

ページ範囲:P.435 - P.439

I.はじめに
 近年の目覚ましい画像診断技術の進歩の中で核磁気共鳴画像法(magnetic resonancc imaging:MRI)は現在とくに注目を集める検査法の一つである。このMRIは水素原子密度の違いを反映し従来のX線画像とは違った情報を得ることができる。とくに従来のX線では困難であった軟部組織間の診断に優れている。今回このMRIを滲出性中耳炎患者に応用し,液貯留の状態ならびに耳管,上咽頭(アデノイド)病変との関係について従来のX線CT画像と比較検討し,その画像の特徴と本検査法の臨床的有用性について検討した。

頸部転移リンパ節治療後に生じた頸動脈洞反射亢進症の1例

著者: 土田伸子 ,   吉村理 ,   田中克彦

ページ範囲:P.441 - P.444

I.はじめに
 頸動脈洞反射亢進症とはわずかの刺激で頸動脈洞反射による血圧低下,徐脈,あるいは失神などの症状が起こされるものをいう。
 本症は頭頸部腫瘍に起因したり,あるいはその治療に伴って発症することがあり,頭頸部外科医として念頭に置くべきものであるが,この領域での報告は本邦では7例をみるのみである。

右下咽頭梨状窩瘻による急性化膿性甲状腺炎

著者: 丹生健一 ,   市村恵一 ,   伊藤修 ,   八木昌人

ページ範囲:P.445 - P.448

I.はじめに
 急性化膿性甲状腺炎は近年,多くの場合に下咽頭梨状窩瘻が基礎疾患として存在することが広く知られるようになってきた。われわれは今回右下咽頭梨状窩瘻が原因となった急性甲状腺炎の1症例を経験したのでここに報告する。

遊離骨付肩甲皮弁を用いて再建を行った下顎エナメル上皮腫の1例

著者: 坂口正範 ,   松尾清 ,   武田進 ,   深澤収 ,   勝野哲 ,   岩沢幹直 ,   峯村俊一

ページ範囲:P.449 - P.454

I.はじめに
 肩甲皮弁scapular-flap は1980年dos Santos1)により発表された肩甲回旋動脈を栄養血管とする皮弁であるが,1981年Teotら2)はこの動脈の枝が肩甲骨外側縁を栄養していることから,本皮弁が骨付皮弁として挙上できる可能性を示唆した。その後Swartzら3)は血管柄付遊離骨付肩甲皮弁osteocutancous scapular flapを用いて21例の下顎の再建を有いその有用性を報告した。しかしまだ本邦での報告例4)は数少なく,今後症例の積重ねが必要と思われる。
 今回われわれは下顎エナメル上皮腫症例に対して骨付肩甲皮弁を用いて下顎欠損部の再建を行い,良好な結果を得たので報告する。

甲状舌管壁異所性甲状腺由来乳頭癌の1例

著者: 山岨達也 ,   田中利善 ,   高橋敦

ページ範囲:P.455 - P.460

I.はじめに
 正中頸嚢胞は甲状舌管の消失機転の異常が原因とされる先天性頸部腫瘤で,日常診療において比較的よくみら来る疾患である。一方正中頸嚢胞に癌腫を併発することは稀1)であり,また嚢胞内に癌腫が原発することに否定的な見方2)も存在する。今回われわれは甲状性舌管壁異所性甲状腺に由来したと思われる嚢胞状変性を伴う乳頭癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を行い報告する。

両側後天性後鼻孔閉鎖症の1例

著者: 浦野正美 ,   五十嵐文雄 ,   田中久夫 ,   川名正博 ,   山岸益夫 ,   野々村直文 ,   中野雄一

ページ範囲:P.471 - P.475

I.はじめに
 後鼻孔閉鎖症は比較的まれな疾患で,先天性のものと後天性のものがある。その大部分は先天性で,生後まもなく呼吸困難,哺乳障害などで発見されることが多い。後天性の場合は外傷,梅毒,アデノイド手術後などに起こってくることがあるが,なかには原因のはっきりしないものもある。
 今回特発性と考えられる両側後天性後鼻孔閉鎖症の1症例を経験したので報告する。

鼻腔より発生した若年性血管線維腫の1例

著者: 広田敦子 ,   辺土名仁 ,   苦瓜知彦 ,   横山和則 ,   杉本太郎 ,   渡辺勈

ページ範囲:P.477 - P.482

I.はじめに
 若年性血管線維腫は腫瘍の性質が易出血性で拡張的増殖力をもち,しかもほとんどの例が鼻咽腔に発生するため部位的に全摘出することが難しく,再発しやすい。このため良性腫瘍とはいえ,臨床的には悪性腫瘍に準じて取り扱われている。今回われわれが経験した症例は右鼻腔の側壁に発生し鼻咽腔には全く病変を認めなかったが,われわれが文献的に調査した範囲では鼻咽腔に茎部をもたない血管線維腫は本邦ではわずかに19例の報告のみであった。本症例に対して鼻外切開法(lat—eral rhinotomy)1)を施行し腫瘍を完全に摘出しえた。本論文で血管線維腫に対するlateral rhi—notomyの有用性を強調し,合わせて鼻咽腔以外に発生した血管線維腫を文献的に集計し報告する。

頭頸部腫瘍における血清中扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原)について

著者: 長沼英明 ,   稲木勝英 ,   八尾和雄 ,   岡本牧人 ,   高橋廣臣

ページ範囲:P.483 - P.487

I.はじめに
 扁平上皮癌関連抗原(以下SCC抗原)は子宮頸部扁平上皮癌の肝転移巣より分離されて,TA−4(1977年に加藤らによって報告された腫瘍関連物質)と共通抗原性を有し,TA−4の亜種と考えられる分子量45,000の蛋白質である。SCC抗原は正常者の血中にもわずかに存在するが,正常扁平上皮組織と扁平上皮癌ではSCC抗原産生能には明らかな相違が認められており,とくに子宮頸部扁平上皮癌の診断および経過観察において有用性が高いと報告1〜6,10)されている。頭頸部腫瘍症例における報告も最近散見するが,われわれも血清SCC抗原の測定を行い検討したので報告する。

鏡下咡語

ダイビングと耳鼻咽喉科疾患

著者: 梅田悦生

ページ範囲:P.462 - P.463

 ダイビングは1年を通してできるマリンスポーツです。透明でブルーな海,美しい熱帯魚,珍らしい海底の植物。しかしそこには危険もいっぱい。海外旅行の傷害保険料もダイビングをするとなると2倍に跳ね上がります。ですが,「ダイビングにはどのような危険があり,どうすればそれを避けることができるか」を知れば危険はおのずと遠のきます。本稿ではダイビングの技術そのものの習得はさておいて,初心者が陥りやすい,技術前の体調の問題について触れてみます。

私は知りたい

異常値の読み方(4)心機能検査

著者: 上原哲史 ,   石村孝夫

ページ範囲:P.465 - P.470

 手術前に行われるスクリーニング検査のうち,心臓血管系の検査所見の異常に関して,日常診療で問題となりやすいものを中心にして述べる。
 心疾患のうちで,手術を行えば明らかに予後が悪いとされる心筋梗塞症の急性期や,種々の原因による心不全状態に関しては,充分に検討される必要がある。

CPC

放射線誘発舌線維肉腫の1剖検例

著者: 杉原志朗 ,   小川晃 ,   清水龍一 ,   佐竹文介 ,   牧野総太郎 ,   松浦鎮

ページ範囲:P.489 - P.492

 放射線誘発肉腫は多数報告されており,その種類は多彩である。しかし舌癌放射線治療後に発生した線維肉腫の報告は稀である。若年発症した舌癌の放射線治療後に照射部位に線維肉腫を併発した症例を経験したので提示する。

医療ガイドライン

アレルギー用剤の現状と近未来の展望

著者: 大塚博邦

ページ範囲:P.493 - P.497

I.はじめに
 鼻アレルギーをはじめとするI型アレルギー疾患の発症にはいろいろな要因が関与するが,その中でとくに重要なのは抗原抗体反応により肥満細胞や好塩基球から遊離される化学伝達物質である。鼻アレルギーではヒスタミンが主役を演じていることはいうまでもないが,最近はロイコトリエンも症状の発現にとって重要な因子であることが明らかとなりつつある。また喘息においてはPAF (platelet activating factor),substance P,major basic proteinの関与も注目されている。
 一方,鼻アレルギー,喘息などのI型アレルギー疾患は増加の傾向にある,といった話が聞かれるが,この問題は日耳鼻総会1),日本アレルギー学会2)のシンポジウムで取り上げられ,事実患者数は増加していることが明らかになった。その原因として食生活や生活環境の変化,とくに食物の多様化と添加物および防腐剤の問題,生活様式の変化に伴う抗原の増加,ストレス,大気汚染の影響などが指摘されている。

海外トピックス

箪笥の中の補聴器

著者: 三好彰

ページ範囲:P.499 - P.501

 補聴器は耳に付けるものだったっけ?それとも箪笥の中にしまっておくべきものだったろうか?
 現在の日本における補聴器の使われ方をみていると,私はついそんな皮肉を言ってみたくなる。だけど,補聴器がそんな使われ方しかしていない,その原因は何だろう。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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