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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻7号

1989年07月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

急性化膿性鼓膜炎

著者: 星野知之 ,   佐藤大三 ,   伊藤久子 ,   向高洋幸 ,   石崎久義

ページ範囲:P.508 - P.509

 急性化膿性中耳炎のさいにみられる急性の炎症状態を除くと,鼓膜の急性炎症をみることは少ない。鼓膜は外耳から入る病原菌に対しては強いものである。しかし稀ながら存在する急性の鼓膜炎がある。その2例を紹介する。
 症例1は31歳男性で,受診2日前に海水浴にいった。拍動性の左耳痛と耳漏が主訴で,鼓膜にはツチ骨周辺の発赤肥厚があり(図1a),酸を塗布すると多数のびらんがなられた(図1b)。Bacillus subcilisが培養され,抗生剤(CMX)の点耳薬で急速に治癒した(図2)。

トピックス 抗菌薬の選び方・使い方 耳鼻咽喉科・頭頸部疾患を中心として

抗菌薬の選び方

著者: 馬場駿吉

ページ範囲:P.511 - P.514

はじめに
 耳鼻咽喉科・頭頸部領域は生体が外界と接する最前線に位置する部位であるところから,微生物の侵襲も受けやすく,感染症の好発するところとなっている。したがってその治療には抗菌化学療法がしばしば必要となる。一方近年の抗菌薬の開発は目覚しく,つぎつぎ新しい薬剤が登場してきており,これらをどのように選択すればよいのか迷うほどになっている。
 そこでここでは薬剤選択上必要な基本原則を整理するとともに,代表的な疾患についてその具体的な選び方を述べてみたい。

セフェム系薬剤とペニシリン系薬剤の使い方

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.515 - P.520

I.セフェム系薬剤の使い方
1.セフェム系薬剤の分類
 セフェム系抗生物質はセファロスポリン系,セファマイシン系,オキサセフェム系に分けられるが,図1にみられるようにベータラクタム環を有するので,ベータラクタム系抗生物質に大きく含まれる。
 セフェム系抗生物質は抗菌範囲によって,第1・第2・第3世代と分類されている(表1)。

フルオロキノロン剤の使い方

著者: 松本文夫 ,   森川清見 ,   森田雅之 ,   佐藤康信

ページ範囲:P.521 - P.526

I.はじめに
 抗菌剤療法の基本方針は当然のことながら適正薬剤の選択と副作用発現防止である。とくに前者については原因菌の決定にもとづく好感受抗菌剤の選択が主体であるが,抗菌剤療法で良好な臨床効果を得るためには優れた抗菌力を有する薬剤の選択はもとより,感染臓器への移行の良否を考慮した薬剤の選択が要求される。
 フルオロキノロン剤はその広い抗菌域と優れた抗菌力,良好な組織内移行性によって臨床各科領域で広く使用されている。しかし本系剤はグラム陽性球菌に対する抗菌力がグラム陰性桿菌に対するそれよりははるかに劣ること,また副作用,他の薬剤との相互作用など,臨床上いくつかの問題点が指摘されている。

テトラサイクリン系・マクロライド系・アミノ配糖体系薬剤の使い方

著者: 谷本普一

ページ範囲:P.527 - P.532

はじめに
 新キノロン剤や新しいセフェム剤など最近の抗菌剤の夥しい開発と感染症治療の進歩の中にあって,テトラサイクリン系抗生物質(TCs)やマクロライド系抗生物質(MLs)は一般細菌に対するその抗菌活性の点で新しい抗菌剤に席をゆずるかにみえた時期があった。
 しかし現在は黄色ブドウ球菌に対するTCsの抗菌活性,難治性気道感染症に対するエリス口マイシン(EM)療法など,抗菌活性の見直しや新しい適応の拡大などにより,TCsやMLsは再び評価されるべき薬物として登場してきている。

耳鼻咽喉科領域の抗真菌剤の使い方

著者: 村井信之

ページ範囲:P.533 - P.539

はじめに
 近年の抗生物質の進歩や癌の治療法の発展など,医学の進歩とともに真菌症は医学の多くの分野でますます注目を浴び,これが新しい抗真菌剤の研究に拍車をかけ,種々の新しい抗真菌剤が開発された。
 ここでは耳鼻咽喉科真菌症に対する薬剤とその使用法を考えるために,まずこれら疾患の病態,さらにはその起因菌の種類とその治療法について述べるとともに,抗真菌剤の種類やその使用上の注意点などについても解説する。

原著

副鼻腔粘液・膿嚢胞診断におけるMRIの有用性について

著者: 山下敏夫 ,   堀芳朗 ,   熊沢忠躬 ,   加藤勤 ,   田中敬正 ,   山内康雄 ,   松村浩

ページ範囲:P.541 - P.546

はじめに
 副鼻腔嚢胞の発生頻度は前頭洞および節骨洞に圧倒的に多く,したがってその解剖学的特徴から主症状は眼球突出,複視,視力障害など眼症状が先行し,眼科を経由して耳鼻咽喉科医にその診断,治療を求められる場合が多い。本来この疾患は鼻内所見に乏しく,従来はその診断を単純X線撮影,X線断層撮影に頼っていたが病変を正確に描出するには限界があった。近年Computed Tomography(CT)の登場によりこの嚢胞の周囲臓器とくに脳や眼窩への圧迫,拡大,骨の破壊などを診断する力が飛躍的に向上した。しかしこのCTも冠状面を得るためには被検者に無理のある体位を要求しなければならぬことや矢状面が得難いことなどから嚢胞の立体的把握には困難があり,さらには嚢胞と腫瘍との鑑別の難しさや放射線被曝の問題もあり,必ずしも理想的なものとはいえない。
 一方Magnetic Resonance Imaging (MRI)は耳鼻咽喉科領域にも急速に普及し,副鼻腔疾患に対する応用の報告も散見できるようになった1〜7)が,副鼻腔はじめに嚢胞への応用の報告はほとんどみられない。著者らは副鼻腔嚢胞8例に対しMRIを施行し,その立体的把握能力や質的診断力においてCTを凌駕するとの結論を得たのでここに報告する。

Superfine fiberscopeにより診断しえた感音難聴に伴った耳小骨奇形の1例

著者: 山口秀樹 ,   木村仁 ,   舩坂宗太郎

ページ範囲:P.551 - P.554

I.はじめに
 耳小骨奇形は多くは小耳症や鎖耳など外耳の奇形を伴うが,稀に耳介,外耳道,鼓膜は正常である例がある。そのような症例ではこれまでは診断確定のために試験的鼓室開放術が必要であった。試験的鼓室開放術から聴力改善手術に移行するのが大部分とはいえ,これは術後成績が予想できぬまま手術を行うことであり,症例によっては聴力改善手術が不可能であることもある。したがって患者の時間的・精神的負担は大きい。そのため外来で簡単にかつ安全に鼓室観察を行う方法が待ち望まれよう。われわれはこのほど直径0.6〜0.7mmという超微細ファイバー(superfine fiberscope,SFF)を開発し,耳管・中耳腔観察に応用してきた。今回,聴力検査上は高度の感音難聴を呈する症例にこのファイバーを用い,経耳管的に鼓室内を観察し併存する耳小骨奇形を発見しえたので,ここに報告する。

消化管ホルモン陽性の鼻腔原発腸管型腺癌の1症例

著者: 田村公一 ,   有澤嘉朗 ,   桂周良 ,   松浦健次郎

ページ範囲:P.555 - P.559

I.はじめに
 鼻副鼻腔領域における悪性腫瘍は上顎洞に最も多く発生し,組織学的には大部分が扁平上皮癌である。今回われわれは比較的稀れとされている鼻腔原発腸管型腺癌を神験した。本症例につき組織学的検討を有い,文献的考察を加え報告する。

鼻腔側壁に発生した多形腺腫の1症例

著者: 坂口正範 ,   佐藤圭司 ,   岡村光憲

ページ範囲:P.561 - P.565

I.はじめに
 多形腺腫は耳下腺,顎下腺などの大唾液腺に好発するが,小唾液腺の分布する口蓋,口腔底,頬粘膜,舌,口唇などにもみられ1),また稀ではあるが組織学的に唾液腺との類似点をもつ鼻腺,涙腺,汗腺,乳腺などからも発生する2-4)ことが知られている。
 鼻腔内に発生する多形腺腫は稀な腫瘍であるが,本邦での報告例の大部分は鼻中隔から発生2-7)しており,鼻腔側壁からの発生はきわめて少ない。われわれは最近下鼻甲介前端から鼻限にかけて基部をもった多形腺腫の症例を神験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

喉頭より発生した滑膜肉腫(synovial sarcoma)の1症例

著者: 宇野敏行 ,   小野寿之 ,   大槻晃直 ,   立本圭吾 ,   吉松政喜 ,   久育男 ,   橘正芳 ,   水越治

ページ範囲:P.567 - P.571

I.はじめに
 滑膜肉腫は滑膜,腱,腱鞘および関節包に生ずるまれな腫瘍で,男性にやや多く,好発年齢は20〜40歳である。発生部位は四肢がほとんどで,頭頸部領域に発生することはきわめて少なく,本邦ではその例をみない。今回われわれは喉頭より発生した滑膜肉腫の1症例に遭遇し治療する機会を得たので,若干の考察を含めて報告する。

興味あるCT像を呈した口腔底皮様嚢胞の1症例

著者: 原口秀俊 ,   辺土名仁 ,   苦瓜知彦 ,   小林憲明 ,   関守広 ,   三宅一範 ,   渡辺勈

ページ範囲:P.573 - P.577

I.はじめに
 皮様嚢胞の頭頸部領域における発生頻度は全皮様嚢胞の7%1)にすぎず,さらにそのなかで口腔底での発生頻度は全皮様嚢胞のわずか1〜2%1)である。今回われわれは非常に興味あるCT所見を呈する口腔底皮様嚢胞の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

Galvanic test今昔そして将来

著者: 関谷透

ページ範囲:P.548 - P.549

 めまい・平衡障害に関する専門書はもちろんのことながら,耳鼻咽喉科教科書にも目次あるいは索引でめまい症の検査項目を探せば,電気検査galvanic testの文字をみることができる。
 歴史的には1803年Voltaが本現象に着目しており,1907年Neumannが検査目的に使用している。ところが今日臨床上その使用頻度については微々たるものであるといわざるをえない。その理由は一般的には,"電気刺激"が患者に苦痛を与えるだろうということ,観察点をどこにおくか,記録が難しいから,そして刺激装置の使い方が難しいのではないか,といった"電気"に対する常識的な抵抗によるものがある。さらには少し学問的に,"刺激部位"が不明瞭,未詳であるからとする人もある。

医療ガイドライン

医師急増時代の医局の現状と将来像

著者: 澤木修二

ページ範囲:P.579 - P.582

はじめに
 医科大学が増設され,医師が急増し,このままでは医師の権威が失墜するのではと憂慮されている昨今である。勤務医の比率が高くなっているのも,注目すべき現象である。それに対応して日本医師会は毎年勤務医対策検討会を開いている。
 昨秋横浜でこの会が催された。「医師急増にともなう諸問題」がシンポジウムとして取り上げられ,私は「医師急増時代の医局の現状と将来像」を論じた。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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