原著
副鼻腔粘液・膿嚢胞診断におけるMRIの有用性について
著者:
山下敏夫
,
堀芳朗
,
熊沢忠躬
,
加藤勤
,
田中敬正
,
山内康雄
,
松村浩
ページ範囲:P.541 - P.546
はじめに
副鼻腔嚢胞の発生頻度は前頭洞および節骨洞に圧倒的に多く,したがってその解剖学的特徴から主症状は眼球突出,複視,視力障害など眼症状が先行し,眼科を経由して耳鼻咽喉科医にその診断,治療を求められる場合が多い。本来この疾患は鼻内所見に乏しく,従来はその診断を単純X線撮影,X線断層撮影に頼っていたが病変を正確に描出するには限界があった。近年Computed Tomography(CT)の登場によりこの嚢胞の周囲臓器とくに脳や眼窩への圧迫,拡大,骨の破壊などを診断する力が飛躍的に向上した。しかしこのCTも冠状面を得るためには被検者に無理のある体位を要求しなければならぬことや矢状面が得難いことなどから嚢胞の立体的把握には困難があり,さらには嚢胞と腫瘍との鑑別の難しさや放射線被曝の問題もあり,必ずしも理想的なものとはいえない。
一方Magnetic Resonance Imaging (MRI)は耳鼻咽喉科領域にも急速に普及し,副鼻腔疾患に対する応用の報告も散見できるようになった1〜7)が,副鼻腔はじめに嚢胞への応用の報告はほとんどみられない。著者らは副鼻腔嚢胞8例に対しMRIを施行し,その立体的把握能力や質的診断力においてCTを凌駕するとの結論を得たのでここに報告する。