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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻8号

1989年08月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

上顎洞癌T4症例の頭蓋底郭清法

著者: 森田守

ページ範囲:P.588 - P.589

 上顎洞癌症例には減量手術と照射,動注を行い,動注,照射の反応が治まってから,再度全麻下に腫瘍の根治的切除を行うのを原則としている。T4では照射最を減量手術の前後にそれぞれ約14Gyと,T3症例よりも少し多めにしているが,動注回数は6回(5FU250mg×6)前後にとどめている。

トピックス 顔面外傷

顔面軟部組織損傷に対する処置の基本的な問題について

著者: 楠見彰 ,   村上富美子 ,   荻野洋一

ページ範囲:P.591 - P.598

はじめに
 顔面は血行の豊富なところであり,比較的小さい裂傷であっても血液が顔面に流れると重大な出血に感じられやすい。このために患者や家族は外傷による出血があると不安に陥ることがあるが,ガーゼなどで丹念に血液を拭いて創の程度を明らかにすると,軽度な傷であることが多い。たいていの出血はしばらく圧迫していると止血してくる。また一見絶望的な組織欠損を思わせる創であっても,ジグソーパズルを組み立てるがごとくていねいに組織を元の位置へ戻していくと,欠損がわずかであることをよく経験する。広範囲の軟部組織損傷は交通外傷に合併することが多く,欠損もしくは創の方向性にはある程度の共通性がある。すなわち口唇縁や,外鼻孔縁,眼瞼縁がめくれるように皮膚が剥離していく。自動車のフロントガラスによる損傷では,頬部や額に上向弧状の傷を生じやすい(図1,2)。このような外傷に対して正しい診断と処置法を身につけることにより,術後の結果は十分満足いくものが得られる。
 ここでは基本的な顔面軟部組織損傷の処置方法について述べる。

救命救急医療における顔面外傷

著者: 益子邦洋 ,   本多正久 ,   長谷川雄二 ,   大塚敏文

ページ範囲:P.599 - P.605

I.はじめに
 交通外傷や高所墜落など強大な物理的エネルギーによって全身に重篤な外傷を負った患者では,通常顔面にもなんらかの外傷を伴っていることが多い。顔面外傷はそれ自体生命的予後を不良にするものではないが,機能的そして美容的予後の観点からきわめて重大な注意を払わなければならない外傷である。すなわち見る,聞く,嗅ぐ,息をする,声を出す,物を食べるといった機能のほかに,顔面は患者の喜びや悲しみ,怒りなどの情緒を表現したり,知性や個性などをも表現する大切な機能を有しているからなのである。個々の顔面外傷に関しては他の著者によりあますところなく述べられているので,本稿では救命救急医療における顔面外傷,いいかえるならば多発外傷の一分症としての顔面外傷に焦点を当て,診断と治療の要点を述べる。

顔面外傷とマイクロサージャリー

著者: 上田和毅 ,   波利井清紀 ,   山田敦

ページ範囲:P.607 - P.614

はじめに
 通常の顔面外傷ではマイクロサージャリーを必要とするケースはそれほど多いものではない。しかし重度の障害においてはしぼしば適応が生じ,大きな効果が発揮される。具体的には神経の縫合,耳下腺管の吻合,涙小管の吻合などのように微細な構造の修復に用いられるほか,顔面に大きな組織欠損が生じた場合にも血管柄付遊離組織移植としてマイクロサージャリーの技術が利用される。
 マイクロサージャリーは周知のごとく手術用顕微鏡下に手術操作を行う技術であり,形成外科領域では主として微小血管の吻合,funicular patternを考慮した緻密な神経の縫合に用いられてきた。前者は遠隔部の組織を血行を温存したまま移植するという血管柄付遊離組織移植の技術を成立させ,後者は神経の機能回復の飛躍的な改善をもたらした。今日マイクロサージャリーの応用は広範に及び,卵管の縫合,停留睾丸・胆道閉鎖症の治療など,臨床各科にわたってさまざまに利用されている。

鼻の外傷

著者: 内田豊

ページ範囲:P.615 - P.621

I.はじめに
 顔面外傷の中で外鼻が受傷する機会は多い1)。今日のモータリゼーション,スポーツの振興などもそれらの主な要因の一つになっているが,一方では人間関係のもつれから喧嘩による場合も意外に多い。また鼻外傷というと外鼻錐体のそれを指すものと狭義には考えられているものの,がんらい外鼻と鼻腔,鼻腔と副鼻腔は形態的にも機能的にも同一視すべきものであるがゆえに,ここで取り上げたい臓器組織は外鼻錐体を中心にその周辺組織が外傷を受けたさいに起こる諸問題ということを中心に記述を進めてみたい。

吹き抜け骨折

著者: 牧嶋和見

ページ範囲:P.623 - P.627

I.吹き抜け骨折の呼称
 吹き抜け骨折との呼称は,blowout(blow-out)fractureの訳語であり,orbital blowout fractureを意味する。一般に吹き抜け骨折は眼窩縁や涙骨などの顔面骨骨折を伴わず,pure blowout fractureともされる。
 吹き抜け骨折はこの種の病変がしばしば眼窩底部に発現することから眼窩底骨折とも呼称される。しかし骨折と眼窩内容物の脱出は篩骨巣部にも発現するので眼窩壁骨折とも呼称される。

下顎骨骨折

著者: 平通也 ,   田嶋定夫

ページ範囲:P.629 - P.634

はじめに
 下顎骨は顔面下3分の1の形態を成すとともに顎関節機能と咬合機能の基本である。したがって下顎骨骨折によって生じる形態的ならびに機能的障害はきわめて大きい。可及的早期の治療が必要である。ここでは下顎骨骨折の診断,治療についてのわれわれの考えを述べる。

鏡下咡語

深夜の宴

著者: 調賢哉

ページ範囲:P.636 - P.637

 十数年前のこと,高度なアレルギー性鼻炎,顔面全体のアトピー性皮膚炎,それに気管支喘息を併発している小児が私の診察室を訪れた。驚いたことに,アトピーは皮膚科,喘息は小児科,さらに鼻が閉まるので私のクリニックを受診したものであり,今まで治療していた皮膚科,小児科の先生方はお互いに連絡をとっているわけでもなく,私の所に受診するさいも紹介状一つ持っていない状態であった。それで,今まで診ていた先生の所に電話して使用されている薬剤を知り,ようやくアレルギー性鼻炎の治療をした経験がある。それ以来,幸いに私は私自身アレルギー性鼻炎があり,アレルギーに興味をもって勉強していたし,現在東海大学医学部の学生である次男が気管支喘息があり発作に悩まされていたため,それを治そうと喘息の勉強もしていたので,このような症例は一貫して私が治療を行う方針をとった。この方針は患者から非常に喜ばれた。このことが世間に知れ渡るようになると,アレルギー性鼻炎合併のない気管支喘息単独の症例もかなり受診するようになったが,気管支喘息重積状態というべき症例も,家庭医で治らず遠方から運び込まれるようになった。こうなると,気管支喘息の発作は午前3時から明方にかけて起こることが多いので,夜は睡眠不足の日が続くようになった。しかし翌日の勤務に差し支えるほどでもなかった。とくに最近開発された肥満細胞・好塩基球などからの化学伝達物質遊離を抑制するとされている,いわゆる"抗アレルギー剤"がアレルギー性鼻炎,気管支喘息,アトピー性皮膚炎のすべてに有効であり,とくに予防的使用の効果が認められている現在,各個に診療していたのではよほど連絡を密にとらないと重複投与などの危険があるわけである。したがって局所所見を充分に把握できる私ども耳鼻科医が,アレルギー科としてこの方面に進展したら如何と思う。これが難しい場合,少なくともアレルギー性疾患すべてに関する知識を深めていくべきであろう。
 さらにこの頃から,以前からメニエル病に対し私が行っていた鼓索神経切断術が学会から厳しい批判を受けていたが,世間の人びとからは認められて(最近,社会保険の手術点数が決定された),手術を希望するメニエル病患者およびその類似疾患(突発性難聴,椎骨脳底動脈循環不全症など)が増加した。このような手間のかかる疾患の増加とともに日常の外来終了が午前2時〜3時になることが多くなった。したがって手術はどうしてもその後に行わざるをえない状態となった。初めはこのことは私にとってかなり苦痛であり,睡魔と闘いながら手術を行うこともあった。そのうちに,頭脳および体調が午前2時〜3時に絶好調にもってゆくことを憶え,このような形態で手術をすることが当然のこととなり,さらに重要な愉しみになってきた。というのは,物音一つ聞こえない森閑とした手術室で,精神を集中して手術に打ち込むことによって,九大笹木一門の得意とする丁寧な手術が落ち着いてでき,手術成績がよくなったからである。また手術用顕微鏡下に行う中耳手術の場合,あたかも彫刻家が彫刻をしてゆくときもかくやと思えるような気分になる。このようにして,このやり方は私のクリニックではすっかり定着してしまって,十数年経過した。

私は知りたい

異常値の読み方(5)糖尿病

著者: 川合厚生

ページ範囲:P.639 - P.642

はじめに
 糖尿病は必ずしも内科で発見されるとは限らない。たとえば筆者のところへ通院中の某患者は,初め耳に"おでき"ができて耳鼻咽喉科を受診し外耳道炎と診断されたが,そのさい尿糖を検出されたことが糖尿病発見の端緒となった。しかしこのように未治療状態の糖尿病患者が耳鼻咽喉科や頭頸部外科を受診する事例は,あってもきわめて例外的と思われる。大部分の患者は糖尿病のほかに上記領域の疾病を偶発的に合併して,管理する内科医からの紹介状をもって両科を受診するに至るものと思われる。このような患者を迎え受けて当該科の医師が対応するに当たって,参考になるだろう事柄について以下に記述してみたい。前半は糖尿病のコントロールの指標をいかに読むかについて述べ,後半では手術前・後の管理について言及する。

原著

外耳道原発の腺癌の1症例

著者: 小口直彦 ,   飯野ゆき子 ,   鳥山稔 ,   服部英行 ,   埴岡啓介

ページ範囲:P.643 - P.646

I.はじめに
 外耳道原発の悪性腫瘍は比較的稀な疾患であるが,その中では扁平上皮癌が最も高頻度で耳垢腺癌はきわめて稀である。
 今回われわれは肺癌および転移性骨腫瘍治療中に左耳の掻痒感,耳漏を訴え,外耳道からの組織診で耳垢腺癌と病理診断された症例を経験したので報告した。

原発性扁桃Hodgkin病の1症例

著者: 寒川高男 ,   中西弘 ,   横山道明 ,   榎本雅夫

ページ範囲:P.647 - P.650

I.緒言
 頭頸部における悪性リンパ腫はその報告1,2)のほとんどがnon-Hodgkinリンパ腫で,原発部位としては頸部原発が最も多く,ついでWaldeyer'sringの順である。またWaldcyer's ringに病変をもつ悪性リンパ腫は数多くの報告3〜6)がみられるが,ほとんどがnon-Hodgkinリンパ腫である。その中で扁桃に原発したHodgkin病の報告はきわめて少ない。
 今回扁桃原発と考えられるHodgkin病を経験したので報告する。

気管内炎症性偽腫瘍の1症例

著者: 平賀智 ,   武田二郎 ,   開発展之 ,   藤島則明 ,   橋本卓樹 ,   朝田完二 ,   山崎義一

ページ範囲:P.651 - P.654

I.はじめに
 気管の原発性腫瘍は稀な疾患である。しかし疾患の理解および検査手技の向上と普及とともに発見頻度が増加しているのが現状である。今回著者らは気管内の炎症性偽腫瘍症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

アミロイドーシスを伴った巨舌症例

著者: 斎藤稚里 ,   西岡慶子 ,   宇野芳史 ,   上田節夫 ,   増田游 ,   田囗孝爾

ページ範囲:P.655 - P.658

I.緒言
 アミロイドーシスとは線維性蛋白質であるアミロイド細繊維が細胞外沈着を起こしてくることを本態とする疾患をいい,1854年Virchow1)がAmyloid(アミロイド)という名称を用いて以来,多数の症例が報告されててきた。一方,荒木ら2)によると,剖検例列の約2.5%にアミロイド沈着が検出されるという報告もなられることなどから,臨床症状を呈さないアミロイド沈着もはなはだ多いといわれる。アミロイドーシスにおける巨舌の報告4〜6)によると,アミロイドーシス全患者の約15%に巨舌を伴い3),とくに長期罹患歴を有する症例に多くみられる7)ともいわれているている。耳鼻咽喉科領域では多くは喉頭アミロイドーシスに関する症例報告8〜10)がみられる。以上のような理由から,ほとんどの患者は内科的疾患として治療を受けることになるので,耳鼻咽喉科へ巨舌を主訴として受診する症例は比較的稀である。今回われわれは2例の巨舌を主訴に受診したアミロイドーシスを経験したので,巨舌とアミロイドーシスに関して若干の文献的考察を加えた。

CPC

栄養チューブにより大動脈破裂をきたした1例—右側大動脈弓症例のチューブ栄養の注意点

著者: 松岡秀隆 ,   栗田茂二朗 ,   平野実

ページ範囲:P.659 - P.662

 長期間の栄養チューブ留置が原因で,食道の圧迫壊死をきたとし,大動脈弓の破裂を起こした,右側大動脈弓を伴う下咽頭癌の1例を経験したので,その臨床経過ならびに剖検所見を報告する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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