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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻9号

1989年09月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

外耳道腺様嚢胞癌

著者: 鰐渕伸子 ,   石塚洋一 ,   木村元俊 ,   武田永勇

ページ範囲:P.670 - P.671

 腺様嚢胞癌は頭頸部領域での発生率が高く,唾液腺,鼻副鼻腔が全体の約80%を占め,その他気管支,咽頭,口腔などにみられるが,外耳道における腺様嚢胞癌の発生は稀である。われわれは初めに耳癤として治療され,その後,外耳道腺様嚢胞癌と診断された1例を経験したので呈示する。

トピックス 睡眠時無呼吸症候群

睡眠無呼吸症候群の病態

著者: 高崎雄司 ,   太田保世

ページ範囲:P.673 - P.679

I.はじめに
 世界的にみれば,最近の約20年間に睡眠時の呼吸障害に関する研究が積極的に行われ,睡眠時の呼吸障害が呼吸器疾患分野の中心的研究テーマの一つになってきたといっても過言ではない。そしてこの間,睡眠無呼吸症候群は睡眠時の呼吸障害の病態の解明や治療法の開発が飛躍的に進み,今日に至っている。しかしながら睡眠呼吸障害に関するいくつかの疑問点がいまだ解決されずに残っていることも事実である。その一方で,北米では年間10万人もの患者が睡眠無呼吸症候群と診断され,そのうちの約半数である5万人に対し本症に対する治療が行われている1)。しかし睡眠呼吸障害研究会の集計(全国30施設)によれば,現在までの数年間で本邦で本症候群と診断した症例数はわずか約800人にとどまっている。この原因の一つに,北米とわが国との間の食生活習慣の相違があるが,実際に臨床に携わりこれら患者と接する機会を有する医師の,睡眠無呼吸症候群に対する関心のなさが主因となり,診断されるべき症例が診断されずにいる可能性が強い。
 本章では本来われわれ臨床の場で頻繁に接する可能性がある睡眠無呼吸症候群の病態について,最近の知見を中心に述べてゆく。

睡眠時無呼吸症候群の検査と診断

著者: 戸川清 ,   宮崎総一郎 ,   山川浩治 ,   多田裕之 ,   板坂芳明

ページ範囲:P.681 - P.687

I.はじめに
 睡眠中に呼吸が寸時止まる現象は正常人でもみられるが,その回数は少なく,時間も短い。しかし呼吸停止が頻回に起こり,停止時間も長いと,その影響を無視できない。Guilleminaultら1)は10秒以上続く換気停止状態(sleep apnea)が1時間当り5回(sleep index 5)以上,または7時間の睡眠中に30回以上存在し,動脈血酸素飽和度(SaO2)低下,その他の臨床症候を伴う場合を病的と規定して睡眠時無呼吸症候群sleep apnea syndrome(SAS)と命名した。
 睡眠時無呼吸状態は換気と呼吸運動の同時記録結果から以下の3型に分けられる2)

口腔・咽頭疾患と睡眠時無呼吸症候群

著者: 小川浩司

ページ範囲:P.689 - P.693

I.はじめに
 睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に継続的に呼吸が停止する疾患と定義することができる。臨床症状としては,大きないびき,寝苦しさ,寝不足による昼間の眠気である。大半の症例では覚醒時には健常者となんら変わることがなく,特異的所見は認められない。睡眠時無呼吸症候群の原因は,中枢性のものを除けば,気道狭窄によるものと過度の肥満によるものである。肥満の場合は,気道に器質的狭窄部位がなくても換気量の絶対的増加によって気道が相対的に狭窄するためである。
 さて気道狭窄の起こる部位として実際に問題になるのは軟口蓋を中心とする部位と喉頭蓋を含めた下咽喉の部分,喉頭以下の部分である。肥満による場合でも,これらの部位の狭窄が合併しているのが一般的で,耳鼻咽喉科的に診て処置をすることは必要である。

小児の睡眠時無呼吸症候群

著者: 古賀慶次郎

ページ範囲:P.695 - P.701

I.はじめに
 小児には上気道狭窄を起こす先天性・後天性疾患は,鼻腔から気管まで多数ある。このなかで覚醒時には呼吸障害がなく睡眠時に顕著になる呼吸障害は,鼻腔と咽頭の狭窄症の一部に限られる。新生児では覚醒時でも鼻呼吸しかできないから,鼻閉はapneaの原因になってもsleep apneaの原因にはならない。したがって小児では,呼吸障害のなかで睡眠時無呼吸の性格をはっきりさせておく必要がある。
 小児で閉塞型睡眠時無呼吸を示す典型は扁桃アデノイド肥大である。小児の手術例の1/3〜1/2のは扁桃アデノイド肥大である。このなかには1〜2歳の若年幼児の症例も含まれる。この場合,手術の適応について医師間の意見は必ずしも一致しない。ことに1,2歳の肥大症例に対して当然すぐにも手術すべきであるのに,もう少し成長するのを待って手術するように勧める場合が耳鼻咽喉科医にも小児科医にもしばしばみられる。このような事例をみるにつけても,呼吸障害が慢性に続くとき全身に与える悪影響の理解が医師の間で充分なされていないと考えさせられる。小児の無呼吸症候群を理解することは睡眠中の呼吸と全身の関係が小児にとっていかに大切かを理解するに役立つ。無呼吸症候群は稀に起こる症例として軽視できない理由はそこにある。

睡眠時無呼吸症候群の手術的治療法

著者: 藤田史朗

ページ範囲:P.703 - P.712

はじめに
 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive SleepApnea Syndrome,以下OSASと略記)の手術的治療は過去十年間画期的進展をみた。従来,外科医にとって盲点であった,夜間のみに起こる上気道閉塞を手術的に治療する道が開かれて,今後本症候群の治療面で耳鼻咽喉科医の知識と技術に対する期待がますます増大していくように思われる。歴史的にみると,1969年にKuhloらが病的肥満のPickwickian症候群患者に行った気管切開術がOSASの手術的治療の最初の試み1)である。彼らはこの方法で睡眠時に起こる上気道閉塞部位を新しく作られた気道により回避できるため患者に劇的な症状の消失がみられたと報告している。以来,長年の間,気管切開術がOSASの手術的治療法の主流と見做されていた。
 1980年,筆者がOSASの新しい手術的アプローチとして,Uvulopalatopharyngoplasty, UPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)の術式と最初の12名の重症患者に行った術後成績をアメリカ耳鼻咽喉科アカデミー総会で発表して以来,全米各地の耳鼻咽喉科医や睡眠障害専門医の興味を喚起し,多くの追試が行われた2)。その結果UPPPが,これまで君臨していた気管切開に代ってOSASの手術療法で最も頻繁に行われる手術法となった。しかし本法を重症のOSASの患者に無選択に行った場合には,すべての患者に同じような反応がみられるわけではない。ある症例では全く劇的な自覚症状の改善(過剰睡眠症身体疲労感の消失)をみ,他覚的にもpolysomnogramで無呼吸発作の消失と酸素飽和度の正常化がみられる一方,自覚症状では患者自身が良くなったと報告していても,他覚的検査ではそれを裏づける結果がみられず,術者の期待を裏切る場合もしばしば起こる。この術式の有効率は,患者の選択,術者の技術,および疾患の重症度などの影響による変動はあるが,一般に50〜60%と報告3)されている。UPPPに全く反応を示さなかった症例や,部分的反応はあっても他覚検査上依然として無呼吸症候群が治癒の段階に達していない症例の多くは,下咽頭部閉塞が合併していると考えられる。

原著

頸部に発生したCastlemanリンパ腫(mixed type)の1例

著者: 久木元延生 ,   斎藤雄一郎 ,   和多田等 ,   飯田英信 ,   木田亮紀

ページ範囲:P.713 - P.716

I.緒言
 われわれ耳鼻咽喉科医にとり臨床上,頸部腫瘤は日常しばしば遭遇するものである。Castlemanリンパ腫は縦隔に好発し頸部に発生することは比較的少ない良性腫瘍である。われわれは最近頸部に発生したCastlemanリンパ腫の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

上鼓室耳小骨骨性固着症とprimary mastoid cystの併発例

著者: 山岨達也

ページ範囲:P.717 - P.722

I.緒言
 手術の既往がなく乳突洞に嚢胞が発生するpri—mary mastoid cystは比較的稀な疾患とされ,成因としては慢性炎症,外傷,先天異常などが考えられている。症状はさまざまであるが,特徴的な臨床像に乏しく,巨大な嚢胞を形成するまで症状が出現せず,X線撮影により発見される1)ことも多く,また多くの報告では乳突蜂巣の骨破壊を伴うX線透過像が認められている。
 一方つち骨・きぬた骨と上鼓室との固着は,つち骨癒着症が代表的なものとして知られており,鼓室硬化症,中耳癒着症,耳硬化症の部分症状,先天性奇形,慢性炎症刺激による靱帯の骨化などが原因2)と考えられている。

乳幼児の扁桃周囲膿瘍の2例

著者: 井本正利 ,   宇佐神篤 ,   岩崎聡 ,   野末道彦

ページ範囲:P.723 - P.726

I.はじめに
 扁桃周囲膿瘍は抗生物質が発達,普及する以前には頻繁にみられた疾患であるが,今日では減少している。しかし耳鼻咽喉科の日常診療において今でも時々遭遇する疾患である。その発病年齢分布は20歳代から30歳代にピークがあり,小児には稀とされている。今回われわれは稀と思われる2歳児と3歳児の扁桃周囲膿瘍例を経験したので報告し,乳幼児の扁桃周囲膿瘍の成立および治療法に関する若干の考察を行い,併せて自験の45例の成人の扁桃周囲膿瘍との比較検討を行った。

典型的な頸性めまいの2症例

著者: 伊藤彰紀 ,   坂田英治 ,   伊藤靖郎 ,   平塚仁志

ページ範囲:P.727 - P.733

I.はじめに
 頸部の回転または伸展によって生ずるめまいをいわゆる"頸性めまい"(cervical vertigo)と呼んでいる。この発症原因にはさまざまなものが含まれており,したがってこれは単一疾患ではなく症候群として考えるのが妥当である。
 今回われわれは典型的な頸性めまいの2症例を経験した。これらの症例に対して椎骨動脈撮影(vertebral artery angiography:VAG)を行ったところ,首を回した位置で椎骨動脈(vertebral artery)の明らかな異常が証明された。すなわち椎骨動脈の高度な循環障害に起因する頸性めまいであった。

鼻・副鼻腔乳頭腫10例における臨床的および免疫組織学的検討

著者: 大井聖幸 ,   粟田口敏一 ,   菊地俊彦 ,   小池修治 ,   高坂知節

ページ範囲:P.735 - P.739

I.はじめに
 鼻・副鼻腔乳頭腫は比較的稀な良性腫瘍であるが,再発率が高く時に癌に併発したりあるいは癌化をきたすことがあるため,臨床上注意を要する疾患の一つである。また最近ではヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)の関与も報告1,2)されている。今回われわれは当科で経験した10例の鼻・副鼻腔乳頭腫について臨床的および免疫組織学的に若干の検討を加えたので報告する。

鏡下咡語

高周波電気凝固術と鼻アレルギー

著者: 志井田守

ページ範囲:P.742 - P.743

 高周波電流を応用した電気外科のうち,耳鼻咽喉科では主として電気凝固術が利用され,最近保険診療の点数項目にも認められた。耳鼻咽喉科高周波電気治療研究会(高電研)は1977年河嶋の尽力で発足したが,その後毎年総会の研究発麦と会誌発行を続けて来た。1983年には日耳鼻学会から専門医の研修集会に認定されたが,電気治療というと取り付き難いのか,いまだ一般化していない。幸い鏡下咡語の原稿依頼を機に,今回は新規入門のさいにも役立つよう具体的に解説してみたい。

私は知りたい

異常値の読み方(6)貧血

著者: 廣野晃 ,   三輪史朗

ページ範囲:P.745 - P.747

I.貧血とは
 貧血は血液単位容積中のヘモグロビン(Hb)濃度が正常範囲以下に低下した状態と定義される。Hb濃度の低下は血液の酸素運搬能の低下を意味し,結果として組織のhypoxiaをきたす。貧血の諸症状はこの組織hypoxiaおよびそれに対する生体の代償的機序に基づく。
 貧血は種々の原因により引き起こされるが,①失血によるもの,②赤血球産生の低下によるもの,③赤血球破壊の亢進によるもの,の三つに大別される。表1にそれぞれの代表的な疾患名を挙げた。貧血の臨床上とくに重要なことは,Hbの低下という同一の検査所見を示し類似した臨床症状を呈しても,その特異的治療法が疾患によって全く異なるものがあることである。たとえば鉄剤の投与は鉄欠乏性貧血に対しては原因療法であり著効を示すが,鉄芽球性貧血,再生不良性貧血では無意味なばかりか有害でさえある。またビタミンB12欠乏による悪性貧血と葉酸欠乏症とは同じ巨赤芽球性貧血の像を示すが,悪性貧血に対して葉酸のみを投与すると神経症状を悪化させる恐れがある。したがって貧血患者の診療にあたっては治療に先立ち,どのタイプの貧血かを的確に診断することがきわめて重要である。

CPC

進行性鼻壊疽の1例

著者: 形浦昭克 ,   鈴木敏夫 ,   原渕保明 ,   佐藤昌明 ,   佐藤睦

ページ範囲:P.748 - P.754

 進行性鼻壊疽は鼻咽頭領域に発生する進行性の壊死性肉芽腫様病変として特異な位置を占めてきた。鼻に肉芽腫をきたす疾患として,臨床および病理学的所見よりWegener肉芽腫症は独立したentityをもつが,いわゆる進行性鼻壊疽に文すする報告は多種多様の名称が用いられ,混乱を招いてきた。かかるリンパ網内系増殖疾患は現在の免疫学の飛躍的な発展により,表面マーカーや機能の検索から病理組織学的にもT細胞型悪性リンパ腫の特徴を有することが判明した。今回われわれは発病して1年7か月を経て全身への浸潤をきたし死亡した症例を提示する。

医療ガイドライン

高度先進医療(4)人工骨による顔面形態の再建

著者: 奈良卓 ,   湊祐廣 ,   小泉良 ,   鈴木偉彦

ページ範囲:P.755 - P.760

I.はじめに
 身体のなかで顔面は最大の露出面をもつことから人の目を惹きやすく,しばしば美醜の対象とされる。このようなことから顔に機能的あるいは形態的に異常がないと思われる人で些細な傷跡を気にしたり,またより美しくと整容術を望む人などさまざまである。一方熱傷,交通外傷あるいは腫瘍切除後の醜形,変形を訴える人には,1日も早い社会復帰をさせるため機能形態両面から最大限の努力を払い,修復再建に努めなければならない。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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