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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科61巻9号

1989年09月発行

文献概要

私は知りたい

異常値の読み方(6)貧血

著者: 廣野晃1 三輪史朗2

所属機関: 1東京女子医科大学病院輸血部 2冲中記念成人病研究所

ページ範囲:P.745 - P.747

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I.貧血とは
 貧血は血液単位容積中のヘモグロビン(Hb)濃度が正常範囲以下に低下した状態と定義される。Hb濃度の低下は血液の酸素運搬能の低下を意味し,結果として組織のhypoxiaをきたす。貧血の諸症状はこの組織hypoxiaおよびそれに対する生体の代償的機序に基づく。
 貧血は種々の原因により引き起こされるが,①失血によるもの,②赤血球産生の低下によるもの,③赤血球破壊の亢進によるもの,の三つに大別される。表1にそれぞれの代表的な疾患名を挙げた。貧血の臨床上とくに重要なことは,Hbの低下という同一の検査所見を示し類似した臨床症状を呈しても,その特異的治療法が疾患によって全く異なるものがあることである。たとえば鉄剤の投与は鉄欠乏性貧血に対しては原因療法であり著効を示すが,鉄芽球性貧血,再生不良性貧血では無意味なばかりか有害でさえある。またビタミンB12欠乏による悪性貧血と葉酸欠乏症とは同じ巨赤芽球性貧血の像を示すが,悪性貧血に対して葉酸のみを投与すると神経症状を悪化させる恐れがある。したがって貧血患者の診療にあたっては治療に先立ち,どのタイプの貧血かを的確に診断することがきわめて重要である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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