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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科62巻10号

1990年10月発行

症例特集 頭頸部腫瘍

II.鼻・副鼻腔

上顎に発生したAmeloblastic Carcinomaの1症例

著者: 田中寿一1 川井田政弘1 犬山征夫2 藤井正人3 高岡哲郎3 細田兵之助3 川浦光弘3 田路正夫3 田中一仁3 大熊敦子3 川崎和子3

所属機関: 1都立大塚病院耳鼻咽喉科 2北海道大学医学部耳鼻咽喉科学教室 3慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.843 - P.848

文献概要

はじめに
 Amelobalstomaは,歯胚の上皮成分であるエナメル器ないし歯堤から発生した,分化度の高い細胞より構成される良性の腫瘍である。しかしながら非常に稀ではあるが,リンパ節や肺,椎骨等に転移巣を形成することがあり,World Health Or—ganization (WHO)は,腫瘍細胞の分化度が高く病理組織学的には良性であっても,転移を形成しているということを重視して,これをMalignant ameloblastoma (以下,MA)と定義した。すなわちWHOの定義によれば,細胞の分化度については言及せず,転移が存在すればすべてMAとして分類することになった。ところが,そうして分類されたMAの中には,原発部位や転移部位のどちらか,あるいは両方に分化度が低く異型性をもった細胞をもつものが存在することが判明し,また,たとえ転移がなくても,原発部位の細胞の分化度が低くかつ浸潤性に発育しているAmelobla上stomaも報告されている。このようにAmelobla—stomaの細胞の分化度や発育形態が実際には一様でないために,転移の有無についてしか言及していないWHOの定義では,病理組織学的に分類をしていく上では不都合が生じてきた。後に詳述するごとく,Slootwegら1)はこうしたWHOの定義の不明確さを訂正し,転移の有無に関係なく,その組織中に分化度の低い細胞のみられるAmelo—blastomaはすべてAmeloblastic carcinoma (以下,AC)という疾患に分類した。今回われわれは,上顎に発生したAmeloblastomaで,再発をくり返すうちに病理組織学的に悪性所見を認め,最終的にACと診断されるに至った症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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