文献詳細
原著
頸部腫瘤が主訴であった梅毒の2症例
著者: 田中寿一1 犬山征夫2 藤井正人1 高岡哲郎1 細田兵之助1 川浦光弘1 田路正夫1 田中一仁1 大熊敦子1 川崎和子1
所属機関: 1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科 2北海道大学医学部耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.209 - P.213
文献概要
日本における梅毒症例は統計上は非常に少なく,最近5年間をみても1年あたり1,600〜2,500人である1)。しかも教科書的には耳鼻咽喉科領域は梅毒の主症状の発現部位ではなく,したがって耳鼻咽喉科医が梅毒という疾患を診断する機会は稀である。しかし近年,早期顕症梅毒症例の増加および性行為の多様化による臨床像の変化が指摘され2),その反映として耳鼻咽喉科領域においても,1983年以後,それまでの30年間に全く報告のなかった咽頭梅毒症例の報告が散見されるようになった3〜6)。
一方,耳鼻咽喉科医が頸部腫瘤を訴える患者を診察する機会が多いことは周知の事実であり,しかも頸部腫瘤をきたす疾患は多種多様であることが知られている7)。しかしながら,頸部腫瘤が主訴であった梅毒症例については現在まで報告をみない。今後は耳鼻咽喉科医が梅毒に遭遇する機会が増えると思われるので,われわれの経験した症例を報告し,読者の参考に供したい。
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