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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科62巻4号

1990年04月発行

雑誌目次

トピックス ダニとアレルギー

住居内のダニ類とその分布について

著者: 高岡正敏

ページ範囲:P.275 - P.281

はじめに
 近年,アレルギー疾患は増加の傾向にあるといわれ,中でも住居内ダニ類との関係が注目されている。私は過去多くの方々と共に住居内ダニ類の生態調査を行ってきたが,その目的はアレルギー疾患の発症とダニとの関係を明らかにすることであった。また,その解明は本疾患の予防や治療を行う上で意義深いと考えられた。
 このような視点から,臨床面でもアレルギー疾患の症状の改善を図るために,患者の生活態度の見直しや住環境の整備などの指導が行われるようになってきた。しかし,それらの基礎となっている住居内ダニ類の調査資料は意外に少ない。そのため,今までそれらの指導は感覚的あるいは経験的な部分に頼らざるを得ず,このような状態では指導する側はもちろん,される側も確信をもってその対策に当れない状況にあったと思われる。また,現在行われている画一的な患者への指導では,各患者にとって必ずしも的を得た対応であったとは言いがたい。なぜなら,各患者宅の住環境や患者の生活態度は一様ではなく,その状況はすべて異なっていると思われるからである。

ダニとアレルギー

著者: 斎藤洋三

ページ範囲:P.283 - P.287

はじめに
 室内塵は永らく気管支喘息と鼻アレルギーのアレルゲンとして知られてきたが,今まではその中のさらに重要なアレルゲンはダニ,とくにチリダニ科のヒョウヒダニ属(Dermatophagoides属)であることが確定された。最近ではアトピー性皮膚炎の病因にも,ダニの関与があるといわれるほどである。以下,その歴史的経緯を述べ,ダニ・アレルギーに関しての簡単な解説をする。

ダニと鼻アレルギー

著者: 藤田洋祐 ,   小関洋男 ,   山越隆行 ,   片桐仁一 ,   山崎博 ,   今野昭義

ページ範囲:P.289 - P.296

はじめに
 室内塵が鼻アレルギー(鼻ア・)最大の原因抗原であることは,毎春のようにスギ花粉症が社会的話題になっている今日でも変りはない。それは過去20数年にわたる皮内反応陽性率の遷変をみれば容易に理解できる(図1)1)。ところでチリダニ(Mite)が室内塵(HD)の主抗原であることは周知の事実であるから,鼻ア・の主たる原因抗原はMiteであるということになる。鼻ア・にMiteがどの程度関与しているのかについて私達はこれまで諸所に報告してきたが,今回このような命題を与えられたのをよい機会に,ダニが関与しているであろうと思われる鼻ア・の疫学をはじめ,その臨床検査成績,減感作療法の効果などについてまとめてみることにする。

小児とダニ

著者: 赤坂徹 ,   内村公昭 ,   山口博明 ,   丸尾はるみ ,   三ツ林隆志 ,   高木学 ,   岡田文寿 ,   鈴木五男 ,   前田和一

ページ範囲:P.297 - P.303

はじめに
 最近10年間の気管支喘息が急激に増えている理由の一つとして,換気が不十分な上にアルミ・サッシにより気密性が高くなり,じゅうたんの使用頻度が増えるなど家屋構造の変化がダニの成長に好都合になったことがあげられている1)
 小児科領域におけるダニの関わり合いは,アレルギー疾患,特に気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎の原因として報告されている。本稿では,主要な吸入抗原であり最近では皮膚からの感作が報告されているDermatophagoides(ヒョウヒダニ)属と,食品から発見されて吸入抗原としても注目されているstorage Mites (ニクダニ)の臨床的意義,診断と治療について述べる。

ダニと喘息

著者: 湯川龍雄 ,   牧野荘平

ページ範囲:P.305 - P.312

はじめに
 気管支喘息は,発作性の呼吸困難と喘鳴を示す疾患で,American Thoracic Society (ATS)による定義“喘息とは種々の刺激に対して気管および気管支の反応性が亢進しており,気道系の広範な狭窄を特徴とし,その狭窄は自然に,また治療により改善される疾患である”1,2)にあるように,気道の過敏性という病因の上に可逆的な気道狭窄という機能的変化を基盤にしている。一方,多くの喘息患者は,何らかの吸入アレルゲンに対しIgE抗体を持つ頻度が高く,その吸入暴露により発作が誘発される典型的なアトピー性疾患と言える3)。何故,このように呼吸生理学的異常とアレルギー免疫学的異常が共存するのかは依然不明であるが,ダニが最も重要なアレルゲンの1つであり喘息の病態に深く関与していることは周知のとおりである。
 本文は,これらの観点からダニと喘息の関係,取り分け喘息におけるダニの意義について最近の知見と当教室の臨床結果をまじえて簡便にまとめてみたい。

目でみる耳鼻咽喉科

外鼻再建術—Scalping flap

著者: 田原真也 ,   天津睦郎

ページ範囲:P.272 - P.273

 腫瘍切除や外傷による外鼻の欠損に対する治療法としては,鼻唇溝部や頬部からの局所皮弁,前額皮弁等様々の方法がある。中でもScalping flap1)は前額から頭部に広い茎を有して血行が豊富なため,充分な組織を無理なく移植できる。著者らは好んで多用している。代表的な症例で術式を供覧する。
 症例 79歳,男。1987年7月7日,喉頭癌にて喉頭摘出術を受け,以後外来通院中であった。

原著

骨性外耳道閉鎖に伴う耳性脳膿瘍の側頭骨病理

著者: 上房啓祐 ,   加我君孝 ,   桜井尚夫 ,   児玉章 ,   庄司宗介

ページ範囲:P.313 - P.317

はじめに
 化学療法の進歩によって耳性頭蓋内合併症は著しく減少し,耳性脳膿瘍に遭遇することは稀になった。今回われわれは原因不明の骨部外耳道の異常増殖から始まり,耳性脳膿瘍に発展して死亡した1例のCTならびに側頭骨病理所見について検討したので報告する。

内側型高位頸静脈球と頸静脈球憩室—その画像診断と臨床的意義

著者: 東野哲也 ,   河野浩万 ,   狩野季代 ,   森満保

ページ範囲:P.319 - P.324

はじめに
 錘体骨底部において頸静脈球を納める頸静脈窩は,極めて解剖学的変異に富む部位であるが,なかでも臨床的に問題となるのが上方に拡大した頸静脈窩,すなわち頸静脈球高位と言われる状態である。この高位頸静脈球は進展方向により外側型と内側型に分類される。鼓室底から中耳腔内に進展し鼓膜所見で透見されたり鼓膜切開や外耳手術の際の大出血の危険性から古くより耳科医の関心がもたれていたものが外側型に当たる。
 これに対し内側型は錘体内側に突出するためX線学的検査なしではとらえられず,極めて稀なものと考えられてきた。しかし,断層撮影やCTの普及により頸静脈窩と内耳構造の位置的関係の把握が容易となった今日,内側型高位頸静脈球や頸静脈球憩室が種々の内耳障害に関与している可能性が指摘されつつある。

多剤併用療法(ACP療法)が著効を示した声門上癌の1例—喉頭進展癌の集学的治療における癌化学療法の果たす役割について

著者: 川井田政弘 ,   福田宏之 ,   甲能直幸 ,   藤井正人 ,   田中寿一 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.325 - P.329

はじめに
 喉頭癌の治療法の主体は放射線治療と手術である。早期癌に対しては放射線治療あるいは喉頭部分切除術が行われるが,進展癌では喉頭全摘出術が行われることが一般的である。
 今回,われわれは進展した声門上癌(stageIII)の症例を経験した。当初は喉頭全摘出術を予定していたが,術前に多剤併用による癌化学療法(多剤併用療法)を試みたところ,著効を示し,臨床的に腫瘍の消失をみたので,引き続き放射線治療を施行して一次治療を終了した。本症例を報告するとともに,喉頭癌治療における化学療法を組み入れた集学的治療について若干の検討を加えた。

声帯に発生した尋常性疣贅—human papilloma virusの免疫組織化学的検索

著者: 山本祐三 ,   川上友美 ,   坂哲郎 ,   中島徹 ,   牧本一男 ,   高橋宏明

ページ範囲:P.331 - P.335

緒言
 喉頭に発生した尋常性疣贅は極めて頻度が低く,確定診断に際し喉頭角化症,扁平上皮性乳頭腫,疣贅性増殖症,疣状癌などと鑑別が困難なことが多い。著者らは声帯に発生し,再三の切除術にもかかわらず旺盛な増生力を示し,遂には喉頭全摘出に到るという興味ある臨床経過を辿った声帯尋常性疣贅の一症例を経験したので,確定診断に至る経緯と診断方法の意義について検討し報告する。

中耳手術でのキチン膜(ベスキチンW®)の使用経験

著者: 山本悦生 ,   大村正樹 ,   磯野道夫 ,   広野喜信 ,   水上千佳子 ,   竹村恵子

ページ範囲:P.337 - P.342

はじめに
 最近,熱傷や外傷性皮膚損傷の被覆保護材料として,キチン膜は広く使用されている1〜5)。われわれは,本材の創傷治癒促進効果,表皮化促進効果,良性肉芽形成効果に着目して,中耳手術に応用して良好な結果を得ているので,その使用経験を報告する。

内視鏡的篩骨洞微細手術

著者: 大西俊郎 ,   江崎史朗 ,   岩崎光雄 ,   橘敏郎 ,   馬場千恵子

ページ範囲:P.343 - P.349

はじめに
 最近の内視鏡,小型CCDカメラ,ビデオ機器の進歩により副鼻腔の内視鏡的手術が可能になり世界的に注目されている。この方法は鼻内篩骨洞手術を安全かつ確実に施行することを可能にし,手術効果を著しく向上するもので,現在,私どもの行っている手術法を内視鏡的篩骨洞微細手術(Endoscopic microsurgery of the ethmoid sinus)として記述したい。

耳鳴の鍼治療—(第1報)客観的評価法による治療効果の判定

著者: 清下悦源 ,   瀬沼広幸 ,   仲西宏元 ,   佐々木和郎 ,   金光敏和 ,   橘正芳

ページ範囲:P.351 - P.357

はじめに
 耳鳴は,耳鼻咽喉科領域において比較的多く認められる症状の一つである。そのほとんどが当人のみにしか聴こえない自覚的耳鳴であり,大半が感音難聴に伴うものである。西洋医学領域では耳鳴治療は薬剤療法を中心に各種工夫されているが,その効果の程度,持続性,副作用等の点で未解決点も多い。一方,東洋医学領域においても既に古典「黄帝内経素問」に耳鳴は経絡の一つである少陽に関連するとの記載があり1),鍼治療は現在なお常用されている。しかし,二重盲検法では対象群との間に有意差なしとする報告もあり2,3),適当な治療法の確立にはなお工夫を要する段階と言えよう。そのためにはまず治療効果を客観的に捉える方法をみつけなければならない。
 一般に,感覚異常に対する鍼治療の効果の定量的判定は困難を伴うことが多く,耳鳴についても例外ではない。今回,われわれは耳鳴に対する鍼治療の効果を客観的にとらえることを目的として,いくつかの方法を導入,鍼治療の効果を判定し,その治療効果を確認することができたので報告する。

学会トピックス

アレルギー研究の流れ—第39回日本アレルギー学会から

著者: 奥田稔

ページ範囲:P.359 - P.362

 第39回日本アレルギー学会は平成元年9月28日から30日まで,新宿京主プラザホテルで,日本医大耳鼻咽喉科学教室が担当で,約3,000人の参加を得て,盛大に開催された。学会創立以来,耳鼻咽喉科学教室の担当は始めてなので,会長として,会員の期待に応えるべく最大の努力を傾注した。
 さて「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」編集室からこの学会トピックスの執筆を依頼されて,ついつい引き受けてしまったが,その迂濶さに後悔している。シンポジウムその他特別演題の打合せ会にはできるだけ出席したが,学会当日は会の運営にまぎれて,ほとんど講演を聞いていないので,その内容をさも聞いたように記すのは憚かられるからである。後悔していてもはじまらないので,特別演題企画の意図,アレルギー学の最近の流れについて,私自身の主観的見解を記して責を逃れようと思う。

鏡下咡語

父祖の地へ

著者: 三好彰

ページ範囲:P.364 - P.365

 白老町ってご存じですか?えっ,「はくろうちょう」なんて知らない,ですって。困るなあ。それじゃあ,仙台市とこの「しらおいちょう」との関係なんて,まるでご存じないでしょうね。
 実はこの北海道白老町,道南の人口2万記千人の小さな町なのですが,幕末に仙台藩が蝦夷地警備の為に陣屋を置いた所なのです。当時蝦夷地にはロシアの南下が続き,松前藩だけでは蝦夷地の警備ができなくなってしまいました。松前藩は幕府に支援を依頼したのですが,その任は東北の各藩に託されることとなります。中でも仙台藩は,国後・択捉と樺太の南半分を含む蝦夷地の約三分の一を警備範囲として任されるのです。仙台藩では,蝦夷地の実地調査に派遣した三好監物らの報告によって白老に元陣屋(本陣)を,広尾・厚岸・根室・国後・択捉には出張陣屋を置くことにしました。現在白老町では町の開基を仙台藩元陣屋設営の年1856年と定め,三好監物を開設のきっかけになった責任者として記録しています。そしてこの三好監物が,私の5代前の御先祖様に当たるのです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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