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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科62巻7号

1990年07月発行

雑誌目次

トピックス 顔面神経麻痺

顔面神経麻痺の病因と麻痺程度の評価法

著者: 中村光士郎 ,   柳原尚明

ページ範囲:P.539 - P.543

A.顔面神経麻痺の病因
 耳鼻咽喉科の臨床において遭遇する顔面神経麻痺はほとんどが末梢性麻痺である。麻痺の原因は障害部位によって若干異なり,障害が脳幹から内耳道底までの間にあって起こる頭蓋内麻痺では,聴神経腫瘍や小脳橋角部腫瘍と,その手術損傷が原因となることが多く,内耳道底から茎乳突孔までの顔面神経管内で起こる側頭骨内麻痺では,ベル麻痺,ハント症候群,頭部外傷,中耳炎,腫瘍などによることが多い。茎乳突孔より末梢で起こる側頭骨外麻痺の原因は耳下腺腫瘍,なかんずく耳下腺癌と顔面外傷が主なものである。表1の当科顔面神経外来における原因別頻度に見られるように,側頭骨内麻痺の頻度が最も高く,なかでも全体の60%は臨床的に明らかな原因を特定できないベル麻痺である。この傾向は世界的にほぼ共通しており,その原因解明に努力が払われている。本稿では,まずベル麻痺の原因として注目されている最近のトピックスを紹介し,側頭骨内麻痺のその他の病因については診断上特に注意すべき点について言及することとする。

顔面神経麻痺の検査

著者: 八木昌人 ,   小林武夫

ページ範囲:P.545 - P.551

緒言
 顔面神経麻痺(以下,顔神麻痺と略記)の診断,治療にあたっては麻痺の状態を把握し,さらにその原因を検索することが必要となる。そのため顔神麻痺に対して種々の検査が施行されるが,その目的は1)麻痺の状態,程度の評価,2)原因疾患の検索,の2つに大別される(表1)。
 以下に個々の検査法の詳細を列記する。

末梢性顔面神経麻痺—側頭骨外麻痺について

著者: 海野徳二

ページ範囲:P.553 - P.558

はじめに
 顔面神経麻痺で最も多く見られるのは側頭骨内麻痺で,代表的なものはベル麻痺やハント症候群である。これらについては優れた研究がsupple—mentにまとめられているので1,2),側頭骨外顔面神経麻痺について述べる。これに属するものは頻度として少なく,その殆んどは耳下腺と関係したものである3)。耳下腺悪性腫瘍の神経浸潤によって生ずる場合もあるが,腫瘍手術によって起こることも多々あり,耳下腺腫瘍と顔面神経麻痺は切り離して考えることはできない。顔面外傷による麻痺は比較的少なく,耳下腺部の切創によるものが大部分である。本文ではこれらの疾患に対して我々自身が行った診療法や治療方針を振り返り,文献を参照として反省もし,治療方針を確立することを目的としている。最近になって用いられるようになったとか,従来の方法が変更になったとかではないが,これを以てトピックスとしたい。

頭蓋内疾患による顔面神経麻痺

著者: 小松崎篤

ページ範囲:P.559 - P.564

はじめに
 一般耳鼻咽喉科臨床においては顔面神経麻痺を考えるとき圧倒的に末梢性顔面神経麻痺が多いことは良く知られているが,これは頭蓋内疾患でも同様である。
 しかし,頭蓋内疾患では末梢性顔面神経麻痺のみならず,頻度は少ないが中枢性顔面神経麻痺も存在するので,以下に頭蓋内疾患にみられる顔面神経麻痺について述べたい。

顔面神経麻痺の治療

著者: 小池吉郎 ,   斉藤修

ページ範囲:P.565 - P.569

はじめに
 末梢性顔面神経麻痺を呈する疾患のうち,ベル麻痺は70数%であり,次いでハント症候群が約10%を占める1)。ベル麻痺の予後はハント症候群に比べ概して良好とされるものの,完全に回復するものは約60%で,残る30〜40%前後は不完全治癒となり,何らかの後遺症を残す。さらにこハント症候群では諸治療にこもかかわらず半数以上の症例が完全麻痺に至り,これらの症例の予後は極めて不良である。
 しかしながら最近では顔面神経麻痺,特にベル麻痺の病態が少しずつ明らかになるにつれて病態に即したより合理的な治療法が開発され,治癒率の向上がめざましく,特にステロイドを主体とした保存的療法は,現在ベル麻痺の治療のfirstchoiceになっている。

目でみる耳鼻咽喉科

鼓膜穿孔辺縁の高度な鼓室硬化症

著者: 坂井真 ,   佐藤むつみ ,   緒方哲郎

ページ範囲:P.536 - P.537

 鼓室硬化症とは,鼓室粘膜,耳小骨周囲,鼓膜などにコラーゲン沈着,硝子様変性,石灰沈着,骨化生などの炎症性終末組織を認める病態であり,独立した疾患ではない.病変の発生部位により症状,所見は異なるが,鼓膜穿孔の辺縁部に白色のビーズ状,あるいは真珠ようの球状の固い骨性組織として認められるものは極めて稀である.

原著

側頭骨線維骨異形成症の2症例

著者: 原田克也 ,   小松崎篤 ,   野村俊之 ,   谷野徹 ,   山本昌彦 ,   長舩宏隆

ページ範囲:P.571 - P.575

緒言
 線維骨異形成症は,線維性組織を伴った未熟骨組織の異常増殖をきたす原因不明の疾患であり,四肢および体幹骨によくみられるが,頭蓋骨もしばしばおかされる。しかし,頭蓋骨の中でも側頭骨病変は比較的まれである。今回,我々は真珠腫性中耳炎を合併した側頭骨線維骨異形成症2症例を経験したのでここに報告する。

急性高度難聴の側頭骨病理

著者: 浅野恵美子 ,   王娜亜 ,   鳥山稔

ページ範囲:P.577 - P.582

緒言
 急激に高度の感音難聴を生じる病因として,ウイルス感染,聴器毒,内耳出血,側頭骨骨折,内耳窓破裂などがあるが,ほかに原因のまったく不明な突発性難聴がある。これら急性高度難聴については,臨床的な研究は進んでいるが,その病理所見はヒトにおいてはなお充分に検討されているわけではない。
 今回,原因の明らかな,急激に高度難聴を起こす疾患として,腫瘍転移,内耳出血,カナマイ難聴と,原因不明の突発性難聴の内耳病理を検索し,急性高度難聴の機序にこつき考案した。対象は,急激に高度感音難聴を起こした8例,14耳(内耳への腫瘍転移1例2耳,内耳出血1例2耳,カナマイ難聴1例2耳,突発性難聴5例8耳)である。このうちの4例についてはすでに報告してあるが1,2),これらをまとめた。また,聴力にこついては聴力損失を聴力レベルに換算した。

幼稚園検診におけるAcoustic Otoscopeの使用経験

著者: 浦野正美 ,   高橋姿 ,   大滝一 ,   佐藤弥生 ,   今井昭雄 ,   中野雄一

ページ範囲:P.583 - P.586

はじめに
 Acoustic Otoscopeは中耳貯留液の検出を目的に開発されたもので,その臨床応用についてはすでにいくつかの報告がある1,2)。われわれは以前から主として滲出性中耳炎の検出を目的とした耳鼻咽喉科検診を幼稚園児を対象に行っているが3),今回Acoustic Otoscopeをこの検診に使用する機会を得たので,その集団検診における有用性について検討した。

喉頭平滑筋肉腫の1症例

著者: 川崎順久 ,   福田宏之 ,   川井田政弘 ,   大木和明 ,   塩谷彰浩 ,   辻Domingos 浩司 ,   田代征夫

ページ範囲:P.587 - P.591

緒言
 喉頭に発生する悪性腫瘍のうち,肉腫は稀で,その発生頻度は喉頭癌の1%あるいはそれ以下とされている。なかでも平滑筋肉腫は極めて稀な疾患であり,われわれが渉猟した内外の文献上,18例の報告を数えるのみである。
 われわれは,喉頭平滑筋肉腫の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

鼻アレルギー誘発時の自律神経機能の変化について—指尖脈波による検討

著者: 朝倉光司 ,   小島正 ,   白崎英明 ,   形浦昭克

ページ範囲:P.593 - P.597

はじめに
 鼻アレルギー症状発現の過程に自律神経反射が関与していることは古くより知られており,従って,鼻アレルギー患者における自律神経機能を調べた報告も数多くみられる。我々も,鼻アレルギー患者を対象として自律神経機能を検索して,交感神経系の反応性の低下と副交感神経系の反応性の亢進が存在していることを報告した1,2)。その後,これら自律神経系の反応性の変化が,ターゲット器官のレセプター数の変化としてとらえられるようになった3,4)
 ところで,これらの異常が,鼻アレルギー発症以前にすでに存在していたのか,あるいは逆に鼻アレルギーの結果として生じたものなのかは議論の別れるところである。しかし,その後,後天的鼻アレルギー動物モデルを用いた検討の結果,ヒトと同様の自律神経系レセプターの変化が証明されるに至り,鼻アレルギーの結果として自律神経系の変化が生じている可能性が強く示唆された4,5)。では実際に,鼻アレルギー症状発現の際には,自律神経活動自体は,どのようにご変化しており,前述のレセプターの変化とどのような関連を有しているのであろうか。そこで今回,鼻アレルギー発作時の交感神経系の機能的変化を調べる目的で,鼻誘発反応の際の指尖脈波(PTG)と心拍数の変化を調べた。

声門部喉頭癌T1 NO MOの放射線治療成績

著者: 宇野欽哉 ,   岡本宏司 ,   佐藤嘉余子 ,   小池聰之 ,   土井原博義

ページ範囲:P.599 - P.602

はじめに
 頭頸部癌の治療ではその機能保存のために放射線治療が第1選択とされることが多い。喉頭癌においても発声機能を温存するため放射線照射が行われ,早期癌では根治療法として良い成績をあげている。
 今回我々は今後の治療の参考とする目的で,当科における声門部喉頭癌T1 N0 M0症例の放射線治療成績をまとめたので,若干の考察を加えて報告する。

鏡下咡語

リヨン大学留学の思いで

著者: 犬山征夫

ページ範囲:P.604 - P.605

 もう23年も前のことになるが,私の恩師である鈴木安恒先生(当時慶大教授)の御推薦と現日仏医学会会長である国重信彦先生の御指導により,フランス政府給費技術留学生としてリヨン大学に留学する機会を与えられた。正直なところドイツ語は高校2年の時から大学2年まで4年間勉強していたので多少の自信はあったが,フランス語に関してはNHK教育テレビで少しかじった程度であったので全く自信がなかった。従って留学生試験を受けるまでの1年間はフランス人について必死で勉強した。
 当時はまだ外国に留学する人も少なかったため,鈴木教授をはじめ医局員総出の見送りを受けながら羽田を後にした。何しろ飛行機に乗ることさえ初めてであった上,Air Franceには日本人スチュワーデスは搭乗しておらず本当に不安であった。南廻りであったため30時間の長旅に疲れ果てた末パリのオルリー空港になんとかたどり着いた。

私は知りたい

異常値の読み方(9)心理テスト

著者: 筒井末春

ページ範囲:P.607 - P.613

はじめに
 精神科,心療内科以外の各科においては,患者の心理面に関する情報を把握することにややもすると乏しい面がみられる。
 患者を心身両面からアプローチすることの必要性は,臨床医であれば不可欠と考えてよく,その際面接を主体として補助的に心理テストが活用されている。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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