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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻1号

1991年01月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

下甲介化学剤手術

著者: 八尾和雄 ,   高橋廣臣 ,   設楽哲也

ページ範囲:P.6 - P.7

 アレルギー性鼻炎の治療に,我々は80w/v%トリクロール酢酸を下甲介に塗布する方法を行い,比較的良好な持続的臨床効果を得たので,その鼻内所見とたまたま得られた下甲介の病理組織像を示す。

原著

末梢性顔面神経麻痺を初発とした第4脳室腫瘍の1例

著者: 石川孝 ,   宮野和夫

ページ範囲:P.9 - P.12

 はじめに
 末梢性顔面神経麻痺は,その障害部位として小脳橋角部,側頭骨内およびそれより末梢であることが大多数である。しかし稀には橋にある顔面神経核および顔面神経髄内部の病変によって起こることも報告されている1〜3)
 今回,われわれは末梢性顔面神経麻痺を初発とし,その障害部位として第4脳室腫瘍による髄内部の圧迫が考えられた1例を経験したので報告する。

職業潜水夫と耳科疾患について—耳科症状と耳管機能検査を中心に

著者: 大平泰行 ,   矢部多加夫 ,   加我君孝 ,   比嘉國郎

ページ範囲:P.13 - P.17

 はじめに
 近年,海洋スポーツの普及によるスキューバダイビング人口の増加にともない,ダイビングに伴う合併症が注目されている。耳鼻咽喉科領域では,前頭洞スクイーズ,鼻出血,潜水性中耳炎,鼓膜穿孔さらに内耳窓破裂などの合併症が報告されている。
 今回,ダイビングと耳科疾患の関連を知ることを目的に職業潜水夫を対象に耳科症状と耳管機能を中心に調べたので報告する。

翼口蓋窩の画像診断

著者: 飯沼壽孝 ,   市村恵一 ,   山根雅昭 ,   池田利昭 ,   加瀬康弘 ,   栗山純一

ページ範囲:P.19 - P.22

 はじめに
 翼口蓋窩は前壁(上顎骨体後縁,口蓋骨眼窩突起),後壁(翼状突起),内側壁(口蓋骨鉛直板),上壁(蝶形骨体)を有する。内方は蝶口蓋孔で鼻腔に,前方は下眼窩裂で眼窩に,後方は翼突管で中頭蓋窩底,正円孔で中頭蓋窩に,下方は大口蓋管により口腔に交通する。翼口蓋窩の外側開口部は翼上顎裂をなし,側頭下窩に続く。翼口蓋窩の大きさは上下径21.3mm,前後径7.6mm,左右径11.3mmである1)。これらの局所解剖から翼口蓋窩はその近傍構造に発生する疾病の侵入を受けやすく,また疾病の通過路としても重要である2)
 翼口蓋窩の画像診断はX線CTにてほぼ確定するものであるが,従来の普通X線撮影法や最近のMRIによっても診断が可能であるので,以下に呈示する症例による具体的画像に引続き,現時点での問題点を若干の文献と自験例による知見を基にまとめてみたい。撮影機器と条件の詳細は省略する。

小児滲出性中耳炎について

著者: 石田稔 ,   金聖眞 ,   田矢直三 ,   堀内扇 ,   野入輝久 ,   神畠俊子

ページ範囲:P.23 - P.28

 はじめに
 幼少児の滲出性中耳炎:Otitis media witheffusion (=OME)については,多くの報告がみられる。その内容はOMEの成因に関して急性中耳炎より起こるもの,経耳管的に起こるもの,またアデノイド増殖症との関係によって起こるなどの報告が多い。しかし上気道疾患でもっとも多い疾患の鼻副鼻腔疾患の副鼻腔炎,鼻アレルギーとの関係についての報告は少ない。
 今回OMEが小児副鼻腔炎,鼻アレルギーとどの程度合併しているかについて検討し,さらに治療法の1つとしてチューブ挿入の結果について報告する。

顕微鏡下鼻内手術—計測と器械の改良

著者: 高橋正紘 ,   森田恵 ,   伊藤光子 ,   神崎仁

ページ範囲:P.29 - P.33

 はじめに
 鼻科領域の手術はマイクロサージェリーが普及した現在においても裸眼手術が主流である1)。ファイバースコープはblindnessの解消,深達性で優れ,手術にも積極的に導入されつつある2〜4)。一方,顕微鏡手術は便宜さの点でファイバースコープに劣るが,安全性,術野の確保,拡大率,全身麻酔の適応などの点で優れている5〜7)。これらの長所は視神経管走行をめぐる解剖学的バリエーション8〜10)や重篤合併症1,11)を考慮すると,後部副鼻腔手術に適している。
 われわれは視神経管開放術を中心とした顕微鏡下鼻内手術について報告してきた12,13)。今回は過去の経験を踏まえ,本術式普及の障害となっていた手術器械の改良,ならびに手術実施に便宜な鼻内解剖構造の計測結果について報告した。

上咽頭結核の1症例

著者: 西崎和則 ,   斎藤龍介 ,   金谷真 ,   時岡真美子 ,   安田英已 ,   浜家一雄

ページ範囲:P.35 - P.38

 緒言
 結核死亡率は年々減少しているが,なお欧米と比べると依然高率である。結核死亡率の改善は,抗結核剤の開発,結核対策の推進,生活水準の向上などによる。しかし,感染源として公衆衛生上問題となる感染性肺結核患者は減少の程度が少なく,自然感染率の低下による免疫をもたない若年層の未感染者の増加による集団発生の問題を新たに提起している1)。耳鼻咽喉科領域においても依然結核は念頭において診察にあたる必要のある疾患である。われわれは右耳閉感を主訴とした46歳女性に偶然,上咽頭結核を発見したのでここに報告する。

咽喉頭異常感患者における下垂体・卵巣内分泌系の検討

著者: 山田弘之 ,   高橋志光 ,   野々山勉 ,   湯田厚司 ,   岡田英作 ,   西井さつき ,   坂倉康夫 ,   矢野原邦生 ,   久保将彦 ,   村井須美子

ページ範囲:P.39 - P.42

 緒言
 咽喉頭異常感を訴える耳鼻咽喉科受診患者は近年増加傾向にあるが,一方で患者の訴えを受け止める耳鼻咽喉科医の対応は十分に系統化されているとは言えない。われわれ医師の側から見て,咽喉頭異常感は必ずしも器質的疾患がその基礎にあるとは限らず,対応そのものが難しいことは確かである。われわれはまず器質的疾患の検索をすべきであり,器質的疾患の存在が完全に否定された場合は更に内分泌系の問題や精神神経的な問題について検討すべきであろう。しかし,器質的疾患の検索方法さえも確立されていない現在,内分泌系や精神神経的な問題についての検討は更に種々雑多に行われていると言っても過言ではない。
 受診患者に女性例,とくに40〜50歳代のいわゆる更年期女性例が多いことから,更年期障害との関係を議論した報告は多い。しかし,実際に咽喉頭異常感が更年期障害の一症状であるのか,もしくは密接な関係があるのかを証明し得た報告,とくに内分泌動態の面から証明し得た報告は少ない。三宅1)はこの点に取り組み検討した結果,咽喉頭異常を訴える患者の内分泌動態は更年期障害患者のそれとはむしろ逆であることから,更年期障害との関係を否定すべきであると述べている。

パッチテスト陰性の慢性中耳炎に対する鼓室形成術

著者: 小宗静男 ,   脇園茂樹 ,   井上裕章 ,   久和孝 ,   川口博

ページ範囲:P.43 - P.46

 緒言
 パッチテストで聴力改善が得られない慢性中耳炎の多くに耳小骨の固着や離断がみられる。これらに対しては,耳小骨の連鎖形成術が必要であるが,主として自家骨・軟骨や同種骨・軟骨,または人工耳小骨を使ったIII型変法が用いられている。その成績は著者によって異なるがおおむね良好の報告が多い1〜5)。確かに,キヌタ骨欠損や,キヌタ・アブミ関節の離断がある場合にIII型変法を行うことは合理的であるといえる。しかしながら,耳小骨連鎖周囲が硬い線維性肉芽で充満されていても連鎖そのものは,離断なく保たれている場合もよく経験するところである。このような場合に,連鎖の可動性が不良であるからといって,すぐにII型変動を行うことには疑問がある。Atticotomyを行い,周囲肉芽を十分に除去することによって,I型のままでもかなりの聴力改善を得ることができるからである。そこで,われわれはパッチテスト陰性であった慢性中耳炎症例に対して行った手術方法ならびにその術後成績について報告する。

当科における最近の甲状腺手術例の検討(第2報)

著者: 加藤昭彦 ,   高橋志光 ,   矢野原邦生

ページ範囲:P.47 - P.51

 緒言
 甲状腺は,頭頸部領域にありながら一般外科との境界領域であるため,現在のところでは一部の施設を除き,耳鼻咽喉科よりも一般外科で取り扱われることの方が多い。しかしながら甲状腺疾患の中には,咽喉頭異常感,嗄声等の耳鼻咽喉科的症状を主訴として,耳鼻咽喉科を受診するものも少なくない1)ため,耳鼻咽喉科でも積極的に取り組むべき疾患であろうと思われる。
 当科では1986年より,甲状腺疾患に対し積極的に治療を行っているが,山田が当科における甲状腺手術例の検討(第1報)2)を報告して以来1年7ヵ月が経過し,手術症例数も96例と前回報告時の約3倍に増加した。

5—Fu単独投与の抗腫瘍効果

著者: 飯塚桂司 ,   古田康 ,   川浪貢 ,   柏村正明 ,   三国尚志

ページ範囲:P.53 - P.57

 はじめに
 5—Fuは消化器癌に対して開発されたが,S-phaseに作用するtime-dependentな薬剤であるため頭頸部癌に対しても抗腫瘍効果が認められ,とくにシスプラチンとの相乗効果のために,併用療法として用いられる場合が多いが,その単独効果については報告が少ない。ロイコボリンに代表されるbiochemical modulationの発達とともに,頭頸部癌に占める5—Fu化学療法の比重はますます大きくなると思われ,今回頭頸部癌における5—Fu単独投与による抗腫瘍効果について評価を行った。

Bruns-Cushing眼振が観察された第4脳室epidermoid cystの1症例—神経耳科学的所見の検討を中心に

著者: 中川肇 ,   渡辺行雄 ,   上田晋介 ,   安村佐都紀 ,   久保道也 ,   高久晃

ページ範囲:P.59 - P.65

 はじめに
 従来からBruns-Cushing眼振(以下,Bruns眼振)は聴神経腫瘍をはじめとする小脳橋角部の一側性の病変を示唆する神経学的サインとして有名である。また,近年のCTやMRIの画像診断やABR,GBST1)(galvanic body sway test以下,GBST)などの電気生理学的検査の発達により内耳道に限局する小さな聴神経腫瘍,いわゆるeartumorが診断可能になった。しかしながら初診時に第一次平衡機能検査の一つとして注視眼振検査を行い,その結果を踏まえて第二次の聴,平衡機能検査を施行することは重要なことと推察される。今回,私たちは回転性めまいを主訴とし初診時にBruns眼振がみられ,その後の検索で第4脳室から発生したepidcrmoid cystと診断された1例を経験した。さらにこの症例は反撥眼振(以下,rebound nystagmus),方向交代性下行性頭位眼振,下眼瞼向き頭位変換眼振がみられており,OKN,FFS (failure of fixation suppression test)にも異常所見が得られ,これらの所見は術後の経過と共に推移したのでその概要について報告する。さらに,私たちの神経耳科外来でみられた注視眼振,rebound nystagmus,Bruns眼振についてその頻度,責任病巣,原因疾患などについてデータベースシステムにより検索,検討を加え,若干の知見を得たので併せて報告する。

難聴,顔面神経麻痺を伴った急性骨髄性白血病の2症例

著者: 丹波さ織 ,   高山幹子 ,   石井哲夫 ,   溝口秀昭

ページ範囲:P.67 - P.71

 はじめに
 白血病における難聴,耳鳴,めまいなどの耳症状の合併は占くから知られており,1884年にDonneによって初めて報告された。近年,化学療法の発達により白血病患者の長期生存が可能となったため,白血病に耳症状を伴った症例をみる機会は今後増えてくると思われる。今回,急性骨髄性白血病(以下,AMLと略す)に難聴,顔面神経麻痺を伴った2症例を経験したので報告する。

Campomelic dysplasiaの1症例

著者: 高橋志光 ,   加藤昭彦 ,   矢野原邦生 ,   田畑しおり ,   矢花正

ページ範囲:P.77 - P.82

 緒言
 Campomelic dysplasiaはギリシャ語にて,“champe”(=curvature,bent=屈曲)+“melos”(=extremitis,limbs=四肢)すなわち屈曲した四肢を表わす言葉より命名された疾患名で,四肢の屈曲(特に下肢),特徴的な顔貌,気管軟骨の形成不全を特微とした致死性小人症である。本疾患は全身性の重症な軟骨形成不全が原因となる哺乳障害,呼吸障害を主訴とし,新生児期または乳児期に死亡するとされている。今回われわれは当疾患による呼吸困難に対して気管切開を行った1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

咀嚼筋筋強直の1例

著者: 石川和郎 ,   田中克彦 ,   八木克憲 ,   金沢勲 ,   吉村理 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.83 - P.87

 はじめに
 咬筋の腫大をきたす状態には,いわゆる咬筋肥大,増殖性筋炎等が知られている。しかしそれらの疾患では開口障害を合併することは少ないとされている。今回われわれは,治療に苦慮した,咬筋を含む咀嚼筋の肥大と著しい開口障害を合併した症例を経験したので報告する。

鏡下咡語

私の趣味

著者: 清水哲夫

ページ範囲:P.74 - P.75

 1.幾何学
 “趣味は何ですか”と聞かれると,とっさに答えられない。趣味を持っている人には,ゆとりを感じられるが,残念ながらその様なものがない。だが,それをしてさえいれば,他の事を何も考えられず,時の経つのも忘れられるものが趣味だとすれば,無いことはない。学生の頃よりユークリット幾何学が好きで,いまだに三角定規とコンパスは手元において,時折り図を書いている。教育テレビ講座で問題が出るとすぐスイッチを切ってしまい,それから考えるが,一週間くらい考え続けることがある。要はどこへ補助線を引くか,それが分ると一気に解決する。問題が難かしければ難かしい程,それを解いた時には一種の征服感にしたり,ビールがうまい。図を書いて夢中に考え込んでいる姿を見て,“頭の毛の白くなった受験生がいる”,とからかわれるが,言われるまでもなく,話の種にもならないので,独りで楽しんでいる。
 だが,この幾何学的思考方法が骨膜下法の手術の論文作成に,役立ったのではないかと思われる。補助線を見つけ出す時の一種のヒラメキ,三段論法による類推思考,等価変換思考,特に複雑なものを抽象的に簡略化し表現する図形認識,これらが無意識的に思考過程に作用していたのではないかと思われる。また問題に対しては簡単にギブアップせず,執拗に考え続けることが,種々な困難を乗り切れた力につながったものと思う。何ごとにも当てはまるが,“続ける事は力なり”,と言える。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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