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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻10号

1991年10月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

外耳道真珠腫の臨床像

著者: 牧野邦彦

ページ範囲:P.751 - P.751

原著

外傷性前頭・篩骨部位嚢胞について

著者: 飯沼壽孝 ,   小山悦子 ,   沖田渉 ,   田中利善 ,   石尾健一郎 ,   吉岡克己

ページ範囲:P.753 - P.757

 はじめに
 外傷性前頭・篩骨部位嚢胞(あるいは広義の前頭洞嚢胞,詳しくは文献1)参照)には直接性(該当する部位の外傷により発生)と,間接性(他の部位の外傷から間接的に発生)の2者がある2)。前頭洞が嚢胞化する機序は全て鼻前頭管の閉塞によるが前頭洞壁自体の外傷によれば直接性であり,従来からの外傷性前頭洞嚢胞と題する報告の大多数はこの機序による症例の報告であった。しかし前頭洞底部および鼻前頭管の周囲には篩骨蜂巣(前頭胞,前頭中隔蜂巣,側窩すなわち眼窩上含気腔)が存在し,これらの外傷による炎症化または嚢胞化によって前頭洞底部および鼻前頭管に閉塞が生じて,間接的な機序による前頭洞の嚢胞化が発生する。われわれは眼窩内壁骨折の後におのおの23,14年後に発症した前頭・篩骨部位嚢胞を経験したので発表し,併せて外傷性前頭・篩骨部位嚢胞の文献学的考察を行った。

口蓋扁桃および頸部リンパ節に初発したバーキットリンパ腫の1症例

著者: 門田吉見 ,   湯本英二 ,   亀岡博 ,   羽藤高明

ページ範囲:P.759 - P.763

 はじめに
 本邦におけるバーキットリンパ腫は大星ら1)の報告以来,現在までに90数例の報告がある。このうち耳鼻咽喉科領域におけるものは大星ら1)の1例をはじめとして50余例のものがある。今回筆者らは口蓋扁桃および頸部リンパ節に初発し,経過中に白血化をきたしたバーキットリンパ腫の1例を経験した。菊池ら2)の報告によると口蓋扁桃あるいは頸部を初発とする割合は各々4.2%,5.3%といずれも低頻度となっており,今回筆者らが経験した1例は比較的稀な症例と思われたので報告する。

頬部腫瘤で発症した非ホジキンリンパ腫の1症例

著者: 市川容子 ,   田中英和

ページ範囲:P.765 - P.767

 はじめに
 悪性リンパ腫はリンパ球系細胞の腫瘍性増殖によって起こる全身疾患である。したがって,全身のいかなる部位にも発生する可能性はあるが,節外性リンパ腫,中でも頬部の皮下および軟部組織を初発とするのは比較的稀なこととされている。今回小川赤十字病院耳鼻咽喉科にて右頬部腫瘤を呈した節外性非ホジキンリンパ腫を経験したので報告する。

頸動脈小体腫瘍の1治験例—術中内シャントの一工夫と頸動脈小体腫瘍の組織学的検討

著者: 村上匡孝 ,   松岡秀樹 ,   後藤達也 ,   任書熹 ,   中村昭光

ページ範囲:P.769 - P.776

 はじめに
 頸動脈小体(carotid body)は,頸動脈分岐部の後壁外膜内に位置し呼吸,脈拍,血圧などを調節する化学受容器(chemoreceptor)と考えられており,そこに発生する頸動脈小体腫瘍は比較的稀であり摘出に難渋する腫瘍とされている1,2)
 今回われわれは,左頸部無痛性腫瘤を主訴として来院した頸動脈小体腫瘍症例を経験,術中頸動脈バイパスとして簡単なシャントを工夫し,容易に全摘出することができた。今回得た腫瘍の免疫組織化学的所見を併せ,若干の考察を加えて報告する。

Tornwaldt病の1例

著者: 栗原秀雄 ,   田中克彦 ,   吉鶴博生

ページ範囲:P.777 - P.779

 はじめに
 Tornwaldt1)は1885年に上咽頭部の発生学的遺残である咽頭嚢の病変に伴う病態を報告し,以来咽頭嚢の感染,嚢胞,膿瘍はTornwaldt病といわれている。
 今回われわれはTornwaldt病と考えられた症例を経験し,文献的に報告例は少なく比較的稀と考えられるのでその臨床像について報告する。

Werner症候群に合併した甲状腺癌—老化と癌化について

著者: 高橋光明 ,   林達哉 ,   大島収 ,   村岡俊二

ページ範囲:P.781 - P.783

 はじめに
 老化と癌化は古くて新しい問題である。Werner症候群は若年期より白髪,白内障の老人様症状がみられる遺伝的背景を持つ疾患である1)。思春期の急激な身長増加を欠いた均整のとれた発育障害を特徴とし,早期老化症候群の代表的な症候群としてヒトの老化モデルとして注目されてきた2)。その約10%に悪性腫瘍を合併することが知られ,癌好発遺伝疾患の1つに数えられている3)。われわれは甲状腺癌を合併したWerner症候群の1症例を経験した。その病理診断は腺内の多発性濾胞腺腫で,その内の2個の腫瘍は腺腫内に乳頭癌がみられる“carcinoma in adenoma”であった。老化と癌化,癌の組織発生を考える上で興味がある症例と考え,検討を加えたので報告する。

鼻・副鼻腔パピローマのフローサイトメトリーによる核DNA量の検討

著者: 寺山善博 ,   太田豊 ,   長舩宏隆 ,   小田恂 ,   伊藤金次

ページ範囲:P.785 - P.790

 はじめに
 1965年,フローサイトメトリー(flow cytometry,以後,FCMと略)の原型ともいうべきspectro-photometerがKamentskyら1)により完成して以来,幾多の変遷を経て現在のFCMへと発展をとげてきた。近年,本邦においてもこのFCMにより,細胞生物学的研究は急速に新たな発展を遂げつつある。特に悪性腫瘍の細胞周期,胞細動態の研究が進められ,腫瘍細細の悪性度や再発性,予後判定などの点において一つの重要な検査となる可能性がある。
 摘出標本のパラフィン包埋ブロックを用いた核DNA量測定が,1983年Hedley2)により報告されたが,未だDNA測定の方法論は確立したものとはなっていない3,4)。しかしHedley2)の報告以来,retrospectiveな研究が可能となり,腫瘍細胞,特に悪性腫瘍の核DNA量の測定による臨床的研究が多施設で盛んに行われるようになってきた5〜8)

口腔癌切除後の即時再建術の臨床的検討—とくに皮弁による再建例について

著者: 山田弘之 ,   鈴村栄久 ,   服部雅彦 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.791 - P.795

 緒言
 頭頸部悪性腫瘍の治療には抗癌剤による化学療法や免疫療法,放射線療法が普及し,その治療成績は向上を続けているが,ある程度進行した上皮性悪性腫瘍の場合には依然として根治的手術療法が必要とされ,治療成績のさらなる向上のためには腫瘍を含めた広範切除が原則とされる。しかし頭頸部という解剖学的特殊性から,美容上の問題点,さらに機能上の問題点を考慮せねばならず,一概に広範切除が唯一絶対というわけにはいかない。
 舌・口腔底を中心とした口腔内悪性腫瘍の場合,美容上の問題のみならず構音・咀嚼・嚥下といった生活の中心となる機能上の問題点を抱えており,手術的治療を施行した際の欠損部の再建が必要である。

診断困難であった喉頭癌の1症例—声門下原発か甲状腺原発か

著者: 藤田浩志 ,   折田洋造 ,   山本英一 ,   原田種一 ,   崔哲洵 ,   片桐誠

ページ範囲:P.797 - P.800

 はじめに
 喉頭病変の診断には,間接喉頭鏡,内視鏡,喉頭ストロボスコープによる喉頭の観察,分泌物,擦過物の細胞診,頸部X線検査などを用いるが,もっとも確実なものは,病変部位を拡大でき,確実に生検できるラリンゴマイクロ下の検査である。
 しかし,多くの症例の中には,初回の診断が前癌性病変でないために安易に考えていると,突然増悪し,悪性病変として発見されることがある。
 今回,筆者らは,ラリンゴマイクロドの生検では診断することができず,頸部腫脹,呼吸困難,発熱で発症した喉頭癌の症例を経験したので報告する.

鼻アレルギーにおける鼻粘膜表層の好塩基性細胞・好酸球と鼻粘膜ヒスタミン過敏性の関係

著者: 川堀眞一 ,   坂田文 ,   畑山尚生 ,   長野悦治

ページ範囲:P.801 - P.805

 はじめに
 正常者に比べた鼻アレルギー患者および花粉非飛散期に比べた飛散期の花粉症患者は化学伝達物質であるヒスタミンや神経遊離物質であるヒスタミンや神経遊離物質であるアセチルコリン,メサコリンに鼻粘膜過敏性を増している1〜3)。その要因としてアレルギー反応に伴う浸潤細胞,化学伝達物質,神経系が重要視されている。
 要因の一つである浸潤細胞について鼻アレルギーでは,非アレルギー鼻疾患あるいは正常者とは異なり,鼻粘膜表層に好塩基性細胞,好酸球が多く存在する。今までに,鼻漏,鼻粘膜擦過片中の好塩基性細胞・好酸球と鼻症状の程度,抗原により誘発される症状の程度などとの関係は報告されている2〜4)。しかし,鼻粘膜過敏性との関連は検討されていない。

下口唇巨大静脈性血管腫の1症例

著者: 名倉三津佳 ,   黄永信理 ,   石田直人 ,   向高洋幸 ,   中島仁

ページ範囲:P.807 - P.810

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域にみられる血管腫は,大部分が組織奇形や過誤腫に属し,その病理所見は海綿状または毛細管性血管腫に属するものが多いとされている。
 われわれはその腫大により摂食困難に陥り,全身衰弱まできたした下口唇の巨大静脈性血管腫を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

気道確保を要した急性喉頭蓋炎の3症例

著者: 坂口正範 ,   飯沼和枝 ,   花村潔 ,   雄山瑞巌 ,   原島規吉 ,   吉江忠正

ページ範囲:P.811 - P.815

 はじめに
 急性喉頭蓋炎はしばしば急激な経過をとって呼吸困難が悪化し,時には症状初発から数時間のうちに気道閉塞に陥ることもあるため,その治療にあたっては気道確保が最も重要な問題となる。特に小児においてはその緊急性が高い1〜3)
 一方本疾患は欧米では1〜5歳の幼小児に好発するといわれているが1〜5),本邦における報告例6〜9)は驚くほど少ない。
 われわれは1990年4月から1991年5月までの約1年間に,気道確保を要した急性喉頭蓋炎症例を3例(小児2例,成人1例)経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

続“損失補填”と“大蔵通達”—そして“医療保険行政通知”

著者: 北嶋俊之

ページ範囲:P.818 - P.819

 I.プロローグ
 前号で「大蔵通達」と「厚生通達」(保険医療に関する保険局長あるいは医療課長通知等)を並べて読者に話題を提供した。
 書き残りの記を続ける。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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