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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻11号

1991年11月発行

特集 外来診療マニュアル—私はこうしている

II.外来治療の実際—私の処方

14.蝸牛型メニエール

著者: 猪忠彦1

所属機関: 1国立東京第二病院気管食道科

ページ範囲:P.164 - P.166

文献概要

 臨床症状
 メニエール病は,反復するめまい発作・めまいと消長をともにする難聴および耳鳴の三徴候よりなる疾患である.しかし,その初回発作である発症時にはこの三徴候全てが揃わずに前庭症状や蝸牛症状だけが先行する場合がある.これらはやがては三徴候を備える典型的なメニエール病に移行する場合と,そのままメニエール病の類型として留まるものとがある.蝸牛型メニエールとは,メニエール病の一類型であって,メニエール病診断基準のうちの第1項目である「回転性めまい発作を反復すること」が欠落した病像を呈するものである.低音障害型突発性難聴あるいは急性低音障害型感音難聴と呼ばれる疾患も症状が極めて類似しているので,発症時のみ診察して以後経過を追えなかったもののなかには,蝸牛型メニエールが混在していると思われる.
 メニエール病の病理組織は,1938年山川によって内リンパ水腫であることが報告されており,蝸牛型メニエールの場合も,その病態として内リンパ水腫が考えられている.内リンパ水腫の原因としては①内リンパ液の産生あるいは吸収機転の異常②内リンパ管壁の突発的破裂による内耳液電解質バランスの破綻,③迷路動脈領域の血栓・栓塞・出血・攣縮などによる血流障害およびそのための酸欠状態の加担,などが推察されている.蝸牛,前庭ともに障害されるが,一側性のことが多く,主として蝸牛に障害の顕われたものが蝸牛型メニエールということになる.聴力障害は特徴的で,初期には低音部障害を示し,閾値が変動する.補充現象陽性であることが多い.発作を反復するうちに難聴が進行する.蝸牛型メニエールはメニエール病に比べ両耳罹患例が多く,約10%とみられている.好発年齢は壮年期で,心身の過労,自律神経不安定状態が症状発現を誘発しやすい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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