icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻12号

1991年11月発行

雑誌目次

トピックス 耳鼻咽喉科領域の異物とその除去法

外耳道異物

著者: 馬場俊吉

ページ範囲:P.831 - P.835

 はじめに 外耳道異物は日常外来診療でしばしば遭遇する疾患で,異物年齢は幼小児から高齢者まで幅広く分布している。異物の種類も有生異物から無生異物まで多岐にわたり,症状の発現も異物の種類による違いがある。診断は問診と耳鏡検査から容易である。しかし,異物の種類によっては鼓膜穿孔や内耳障害などの合併症を起こすことがあり,十分な検査を必要とする。特に,耳かき異物は鼓膜穿孔,内耳障害や顔面神経麻痺などの合併症を起こしやすく注意が必要である。異物除去は明視下に異物鉗子や耳垢鉗子で簡単に除去できることが多い。しかし,異物の種類によっては熟練した技術を必要とすることがある。異物除去に非協力的な小児や成人,あるいは,重篤な合併症の起きている場合には全身麻酔下に除去を行い,併せて合併症に対する処置を行わなければならない。

鼻腔異物

著者: 鈴木衞 ,   兼見良典 ,   原田康夫

ページ範囲:P.837 - P.840

 はじめに
 鼻腔異物は,大きく固有鼻腔の異物と副鼻腔の異物とに分けられる。

口腔咽頭異物とその除去法

著者: 石川和夫 ,   高橋敏江 ,   吉野泰弘

ページ範囲:P.841 - P.846

 はじめに
 日常診療で上部消化器および呼吸器領域の異物症に遭遇することは少なくない。異物の存在する解剖学的な部位,異物の種類と大きさ,受診までの日数,年齢,患者のもっている基礎疾患により,異物症の臨床像はいろいろな修飾を受ける。しかし,異物の存在部位を正確に診断してこれを除去することにより,患者は,速やかにその苦痛から開放される。従って,できるだけ速やかで適切な処置が望まれる。
 異物が口腔・咽頭領域に存在することは,少なからずある。しかし,口腔内異物では,その発見と除去に専門的な技術や,機器を要するほどの症例は少なく,臨床的に問題となるもののほとんどが,咽頭異物である。ここでは,口腔・咽頭異物の統計,臨床像,検査と除去法について述べる。

気管・気管支異物の診断と摘出法

著者: 丘村煕 ,   兵頭政光 ,   稲木匠子

ページ範囲:P.847 - P.852

 はじめに
 気管・気管支異物は生命に重大な危険を及ぼすことがあり,耳鼻咽喉科領域の異物の中でもとりわけ早期の診断と適切な治療が必要である。しかし本症は幼小児に多く,その診断と治療は必ずしも容易なことばかりではない。本稿では筆者らの経験をもとに,気管・気管支異物の診断と治療の要点について述べる。

食道異物

著者: 宇野浩平 ,   日野原正

ページ範囲:P.853 - P.856

 はじめに
 食道異物は,気道異物ほど緊急処置を必要としたり,経過が重篤となることは少ないが,時にその診断の遅れにより,食道周囲炎・食道穿孔・縦隔洞炎・膿胸などの致命的な合併症を招く可能性があり,治療方針決定のためにも適切な診断が必要である。

目でみる耳鼻咽喉科

舌根部髄外性形質細胞腫

著者: 曽根三千彦 ,   柳田則之 ,   小出純一 ,   上田幸夫 ,   伊藤麻子

ページ範囲:P.828 - P.829

 骨髄腫は形質細胞の腫瘍性増殖を本態とする疾患である。軟部組織に原発する髄外性形質細胞腫は,全形質細胞腫の数%であり比較的稀な腫瘍であるが頭頸部領域では鼻副鼻腔領域の報告が多い。最近われわれは,稀な舌根部原発髄外性形質細胞腫を2例経験した。
 症例1 72歳男性,主訴は咽頭異物感,血痰。初診時舌根部に拇指頭大の有茎性腫瘤を認めた。図1はその頸部CTである。舌根部に隆起性腫瘤を認める。生検では,図2のごとく,円形の核を有し核周のゴルジ野が発達した細胞を認め,細胞密度が高く異形性もあり,その細胞形態から形質細胞腫と診断された。骨髄検査は異常なく,Bence-Jones蛋白は陰性,全身骨X線像,Gaおよび骨シンチも正常であり,酵素抗体法にてIgG—λ型の髄外性形質細胞腫と考えられた。

原著

最近10年間のアブミ骨手術の検討

著者: 星野知之 ,   水田邦博 ,   酒井丈夫 ,   向高洋幸 ,   宮下弘

ページ範囲:P.857 - P.861

 はじめに
 アブミ骨手術は欧米ではもっぱら耳硬化症に対して行われ,おびただしい数の手術経験をもつ耳科医がいる。しかし近年では手術をやりつくした感があり,“post-stapedectomy era”とよんで著明な耳科医でも,1年に50ほどの手術を行い,これが最近の平均的なstapes surgeonではないかと述べられている1)。わが国では反対に近年手術症例が増加してきているが,欧米に比べるとはるかに少ない。
 われわれは最近10年間に浜松医科大学とその関連病院で,38例45耳にアブミ骨手術を行った。これらの症例を検討してみると,欧米の報告とはちがったわが国での特微が現われているように思われるので,retrospectiveに検討した結果を報告する。わが国でも国外でも,耳硬化症あるいは耳小骨奇形など疾患に関連してアブミ骨手術を検討した報告は多いが2),手術から適応になった疾患や結果を検討した報告は少ない3)

鼻出血を初発症状とした腎細胞癌の症例

著者: 大久保英樹 ,   宗田靖 ,   柴崎修 ,   和田哲郎 ,   高橋邦明 ,   草刈潤 ,   新井峻

ページ範囲:P.863 - P.866

 はじめに
 腎細胞癌の鼻・副鼻腔転移症例は稀ではあるが,われわれが検索した限り,本邦では12例の文献報告がなされている1〜12)。この多くは「鼻出血」という,耳鼻咽喉科医がしばしば遭遇する主訴により発見されることが多いようである。
 われわれは最近,鼻出血を唯一の主訴に来院し原発巣と鼻・副鼻腔転移巣を発見するに至った腎細胞癌の症例を経験したのでここに報告し,鼻出血をきたす鼻・副鼻腔腫瘍について若干の文献的考察を加えたい。

鍼治療が有効であった舌咽神経痛症例

著者: 仲西宏元 ,   佐々木和郎 ,   清下悦源 ,   瀬沼広幸 ,   橘正芳

ページ範囲:P.867 - P.872

 はじめに
 舌咽神経痛は1910年Weisenburg1)によって初めて症例報告がなされた。この症例は後に死後剖検により小脳橋角腫瘍による刺激症状として生じた症候性舌咽神経痛と診断された。原因のはっきりしない,いわゆる特発性舌咽神経痛については1920年Sicardら2)により報告されたのが最初である。
 この神経痛の特徴は咽頭部,口蓋弓,扁桃部,舌根部,耳深部などの舌咽神経支配領域に誘発点を持つ,限局した反復性の激痛発作を主症状とすることにある。嚥下,会話,くしゃみ,咳,笑い,うがい,痰の喀出,歯を磨くことなどによって誘発される。

長掌筋腱付遊離皮弁による軟口蓋動的再建例の鼻咽腔閉鎖機能

著者: 古川政樹 ,   古川まどか ,   澤島政行 ,   持松いづみ ,   佃守 ,   大石公直 ,   澤木修二 ,   吉田豊一 ,   古川滋 ,   伊藤元信

ページ範囲:P.873 - P.880

 はじめに
 軟口蓋は構音,嚥下,鼻呼吸に重要な役割を果たしている。このため軟口蓋の全欠損による機能障害は極めて深刻で,軟口蓋を全切除した後の機能の修復は臨床上の大きな課題であり,今までに種々の再建手術が試みられてきた1〜5)。しかし,鼻咽腔の開放と閉鎖という相反する機能を同時に満足させるのは,単に形態的に軟口蓋を再建する従来の方法では,非常に困難であった。
 今回われわれは,軟口蓋の全切除例に長掌筋腱付遊離皮弁または遊離筋皮弁を用いて一期的再建を行い6),術後の鼻咽腔閉鎖機能について検討したところ,興味ある結果が得られたので報告する。

睡眠時無呼吸症候群への歯科からのアプローチ—スリープ・スプリントの有用性

著者: 池松武直

ページ範囲:P.881 - P.884

 はじめに
 睡眠時無呼吸は換気曲線と呼吸運動曲線の特徴により,閉塞型,中枢型,混合型の三種類に分けられるが,今回は歯科医師の治療の対象となる閉塞型睡眠時無呼吸症候群(以下,OSASとする)について報告する1〜3)
 OSAS患者は骨格性開咬と小下顎症の傾向があり,舌の肥大を伴い,上気道部は著しい狭窄があることが明らかにされている4〜7)
 OSAS患者に対して,就眠中に下顎を前方位に約5mm前後移動し,その状態を維持し就眠中に舌根部の気道空隙を拡大させることと開口睡眠を防ぐ,池松式スリープ・スプリント(以下,S-S装置とする)(図1,2)を装置し良好な結果が得られたので,治療の成績に検討を加えるとともに,歯科医の本疾患に対する役割について考察した。

眼球突出を呈したossifying fibromaの1症例

著者: 海老原秀和 ,   北沢秀行 ,   長谷川誠 ,   石川紀彦 ,   村岡秀樹 ,   小松崎篤

ページ範囲:P.885 - P.889

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域に発生する骨性腫瘍のうち,ossifying fibromaやfibrous dysplasiaは比較的稀な疾患であるが,現在のところ,両者が同一疾患か異なった疾患か意見の分かれるところである。今回われわれは,蝶形骨洞,節骨洞にまたがる巨大なossifying fbromaにより眼球突出を呈した22歳の女性の症例を経験したので,ossifying fibromaの概念および本症例における診断,治療法の問題点について,文献的考察を加えて報告する。

音声チックを示したトゥレット障害の1例

著者: 石塚洋一 ,   角田浩幸 ,   小島好雅 ,   鈴木幹夫

ページ範囲:P.891 - P.894

 はじめに
 チックとは「不随意的,急速な,再発的,非リズム的,常同的な筋肉運動または発声」をいう。この定義が示すように,チック症状の現われ方は単純ではなく,また単なる目や口などの体の一部を頻回に動かす運動性チックだけではなく,声や言葉になって現われる音声チックもある1)
 今回われわれは,口蓋扁桃摘出(以下,扁摘と略)後より発症したと思われる音声チックを示したトゥレット障害の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

擬声語漫想

著者: 太田文彦

ページ範囲:P.896 - P.897

 標準耳鳴検査法1984のなかに,擬声語による耳鳴の表現の検査がある。平凡社の大百科事典によれば,擬声語とは「物体の響く音,動物の鳴く音などを模した語。あるいは擬音語,写声語ともいう」とある。もともと物音や音声を完全に模倣することは出来ないし,またそれらは各人に一様に聞こえるものでもない。さらにその音の象徴する概念も各国民によって異なるので,用いられる擬声語も随分と違うものになっている。たとえば「コケコッコウ」と“cockadoodledoo”とを比べれば,われわれの耳には前者のほうがずっとそれらしく聞こえる。
 日本人は音を擬声語で表現しようとする習性があるのか,あるいは日本語が擬声的起源の濃い言語であるのかは知らないが,日本語には擬声語が背から随分と多い。これは一つには単音節ごとに対応する文字があるという日本語の特性にもよるのだろうが,日本人が単刀直入にズバッと表現することを好むからかも知れない。風刺のきいた落首が庶民の間にもてはやされたことを考えれば,いろんな音を自分の感じたままにずばりと表現することが日本の庶民には歓迎されたのかも知れない。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?