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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻13号

1991年12月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

鼻・副鼻腔骨原性腫瘍および歯原性腫瘍とMRI

著者: 田島文司 ,   船井洋光 ,   小川恵子

ページ範囲:P.906 - P.907

 鼻・副鼻腔領域および歯科領域では骨や歯の充填物の影響から,X線CTではアーチファクトが生じやすく病巣を的確に捕えがたい。一方,MRIはこのようなアーチファクトがなく病巣の内容や範囲をより的確に捕えられる。従って,骨原性及び歯原性腫瘍ではMRIが重要な画像診断となる。また,X線CTと比較してMRIは組織特異性が高い。しかし,組織や内容成分と信号強度との関連が十分明らかにされておらず一層の知見の集積が必要である。
 本稿では,鼻・副鼻腔骨原性腫瘍2症例(fibrous dysplasia,cavernous hemangioma),歯原性腫瘍1症例(calcifyimg odontogenic cyst)の病理組織とMRIを対比して呈示する。いずれも比較的稀な疾患であり,一施設では十分な症例数が集積できず各施設からの今後の検討が必要である。

原著

耳下腺腫瘍の部位についての考察

著者: 佐久間信行 ,   加瀬康弘 ,   市村恵一 ,   飯沼壽孝 ,   小山和行

ページ範囲:P.909 - P.913

 はじめに
 耳下腺腫瘍の診断には,視診,触診に加えて,最近の傾向としてはCT1-6),MRI7-10),エコーなどの画像診断法が用いられる。今回われわれはCTおよびMRIを用い,腫瘍の存在部位(浅葉,深葉)をどの程度に診断できるかを,またエコーの有用性を自験例で検討し,CT,MRIおよびエコーに関する他の報告例と比較検討した。

大胸筋筋皮弁およびD-P皮弁による再建例の上肢機能の検討—新しく考案した独自の判定法を用いて

著者: 木村正 ,   岸本誠司

ページ範囲:P.915 - P.919

 はじめに
 頭頸部悪性腫瘍術後再建の方法としてD-P皮弁や前額皮弁など従来の皮弁のほか,各種筋皮弁さらに遊離皮弁などを用いる方法がよく知られている。それぞれ特長があり再建部位により使い分けられている。たとえばD-P皮弁では比較的薄い皮弁が作製できるため頸部食道再建時にロールとして管腔を形成しやすくBakamjian1)の方法が有名であるが,二期的再建となり治療期間が長引く。これに対し筋皮弁では厚いため管腔は形成しにくいが,血行がaxial patternで確実なため一期的再建が可能である。特に大胸筋筋皮弁による方法は手技が比較的簡単で頭頸部の再建部位に近く,煩わしい体位変換も不用で恵皮部も縫縮できる。組織欠損の大きい舌・口腔底癌などの再建には最適な方法と思われる。われわれの高知医大耳鼻咽喉科における30例を越える大胸筋筋皮弁による再建の経験でもそれらの利点を再認識した。しかしながらこれら皮弁による再建例で皮弁採取後の患側上肢機能を可動範囲や患者の満足度を含めて評価し検討した報告はない。大胸筋切除後の上肢の機能低下度などについてもあまり検討されていない。このため今回新たにこれら皮弁採取後の患側上肢機能を客観的に評価するために独自の判定法を考案し,これを用いて大胸筋筋皮弁使用症例とD-P皮弁使用症例とを比較検討してみたので報告する。

鼓室内内頸動脈の診断

著者: 星野知之 ,   本間芳人 ,   佐藤大三

ページ範囲:P.921 - P.925

 はじめに
 鼓室内を内頸動脈が走る内頸動脈走行異常(aberrant carotid artery)は稀な奇形で,わが国ではこれまで8例が報告されている1-7)。われわれもかつてこの疾患をみたことがなかったが,最近2年の間に2例を経験した。このうちの1例はCT像から診断したもので,画像診断法の進歩に伴って,内耳奇形の報告の増加と同様に,以前よりも報告が増すものと思われる。
 最近の児玉らの報告7)は,彼等のみた1例と国内外の報告例34例を調べ,所見,症状,診断,治療についてまとめてあり,この疾患の全体像をつかむのに有用である。われわれは2例の経験から,この奇形の診断のためには画像診断ことに軸位のCT像が有用であることを痛感したので,症例の報告を行って,この疾患の特徴を述べる。

長期介在声門下異物の1例

著者: 西脇智弘 ,   畠野聖子 ,   今井昭雄

ページ範囲:P.927 - P.930

 はじめに
 幼小児の気道異物は比較的頻度の高い疾患である。しかし,そのほとんどは気管支異物であり,声門下異物の報告は稀である。今回われおれは2年8ヵ月の長期にわたり喘息として治療されていた声門下異物の症例を経験したので,臨床的問題点を検討し文献的考察を加え報告する。

絞頸後に発症した急性中耳炎の1症例

著者: 小倉義郎 ,   杉浦友昭 ,   藤本政明 ,   木村守 ,   三崎敬三 ,   石津日出雄

ページ範囲:P.931 - P.934

 はじめに
 絞頸strangulationにょる病理的現象の記載は,多くの場合,転帰が致死的であるため,従来,法医学の領域に多く見られ,臨床医学面からの報告は極めて少ない。
 われわれは,暴力による絞頸を受けたが蘇生し,数日後,耳痛・鼓膜充血などの急性中耳炎症状を呈した症例を経験したので報告する。

咀嚼筋間隙の悪性腫瘍

著者: 市村恵一 ,   北原伸郎 ,   田中利善 ,   飯沼壽孝 ,   沖田渉 ,   小川恵子 ,   池田利昭 ,   堀内康治

ページ範囲:P.935 - P.941

 はじめに
 咀嚼筋群,下顎骨(体部後部と下顎枝),関連する神経・血管が存在する領域は咀嚼筋間隙(masticator space)と呼ばれ,深頸筋膜浅層により覆われた構造である(図1)。この間隙は後〜内方で副咽頭間隙,後方で耳下腺間隙,前方で頬筋間隙,下方で顎下間隙と境される。下顎枝を境にして外側を浅咀嚼筋間隙,あるいは咬筋間隙,内側を深咀嚼間隙と分類する考え方もある1)
 従来から側頭下窩と呼ばれてきた部位がある。解剖学(骨学)的には確立した概念であるが,咀嚼筋間隙がどちらかというと画像診断や局所解剖学の側から出てきた概念であるのに対し,手術を中心とする外科学の立場により立った概念といえよう。頬骨弓より下方レベルで,上方は蝶形骨大翼の側頭下面,内方は翼突板,外方は下顎骨,前方は上顎洞後壁で境されるが,当然ながら下方境界がない。包含関係でいえば側頭下窩は咀嚼筋間隙の一部を占める。すなわち,深咀嚼筋間隙の上咽頭部がこれに当たる2)(図2)。同様に,側頭窩は咀嚼筋間隙の頬骨上部を指す概念2)とするととらえやすい。

腎細胞癌の耳下腺転移症例

著者: 黒田嘉紀 ,   牧嶋和見 ,   吉田昭男 ,   土生秀明

ページ範囲:P.943 - P.946

 はじめに
 転移性耳下腺腫瘍は,頭頸部領域悪性腫瘍の耳下腺への転移,あるいは頭頸部領域以外の他臓器における悪性腫瘍の耳下腺実質への遠隔転移が知られている。転移性耳下腺腫瘍のなかで腎細胞癌の転移症例は非常にまれである。本稿では腎細胞癌の耳下腺転移症例について述べ,若干の考察を加えて報告する。

下顎骨に発生したcentral non-ossifying fibroma症例

著者: 加藤昌志 ,   中島務 ,   服部琢 ,   柳田則之 ,   長坂徹郎

ページ範囲:P.947 - P.952

 はじめに
 顎骨より発生する腫瘍には,外骨膜性に生ずるものと骨内部に生ずるものとがある1)。その絶対数は決して多いものではなく,特に顎骨内部に発生するcentral fibromaは少ない1,2)。今回われわれは10歳女児の下顎骨中心性に発生した巨大なsimple fibromaの1症例に遭遇し,病理的に検討した結果central fibromaの中のfibroma (同義語:non-osteogenic fibroma,non-ossifying fibroma)として分類される症例,すなわちcentral non-ossifying fibromaであるという結論に達した。文献的考察を加え報告する。

内頸静脈血栓症から肺癌が発見された1例

著者: 三国尚志 ,   小笠原誠 ,   西沢典子 ,   田中克彦 ,   明神一宏 ,   中林武仁

ページ範囲:P.953 - P.957

 はじめに
 抗生物質が出現する以前には,口腔や咽頭の炎症に続発するdeep neck infectionや内頸静脈血栓症はしばしばみられ1),ともに致命的な病態として恐れられていた。しかし,近年は抗生物質の使用により,これらの重篤な感染合併症は非常に稀なものとなった。
 内頸静脈血栓症は,その近傍の感染から生じることがよく知られているが,その他にも薬剤の頻回の静脈注射,中心静脈カテーテルの長期留置,外傷なども原因にあげられている。

肺病変との一致性を確認した肺・喉頭サルコイドーシスの1例

著者: 新井泰弘 ,   山下耕太郎 ,   山崎健 ,   佃守 ,   大石公直 ,   澤木修二

ページ範囲:P.959 - P.962

 はじめに
 サルコイドーシスは病理組織学的所見から命名された原因不明の多臓器肉芽腫疾患である1)。喉頭の病変は,サルコイドーシス全症例の約1%に出現すると考えられているが,本邦では,過去20年間に矢野の疑診例を含めて5例が報告されているのみである2-6)
 われわれは,喉頭の病変に加えて胸部X線像に異常を認め,開胸生検によって両者ともサルコイド病変であることを確認した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

耳鼻咽喉科と甲状腺手術

著者: 北村溥之

ページ範囲:P.966 - P.967

 I.本院耳鼻咽喉科での甲状腺手術
 最近耳鼻咽喉科で手術される甲状腺の症例が増えてきた。天理よろづ相談所病院耳鼻咽喉科における開院以来の甲状腺腫瘍の年度別患者数は表1のごとくで,年々増加傾向にあるが,昭和53年(1978年)に急増し,さらに,昭和57年(1982年)より一段と増えている。昭和61年より良性腫瘍と悪性腫瘍をあわせると年間100例を越すようになった。また表2にみるように,バセドウ病の手術患者も昭和53年より徐々に増えている。当院では,当初は外科(腹部,一般外科)でも甲状腺手術が行われていたが,最近では,もっぱら耳鼻咽喉科で行われるようになった。長年かかって,耳鼻科で行われた甲状腺手術が合併症も少なく安全に行われ,頸部外科に対する耳鼻咽喉科医の技術が外科医,内科医に認められた結果であった。甲状腺の手術の際に関連の深い喉頭機能の観察手段を持っていることも重要である。外科で行われたバセドウ病手術で両側反回神経麻痺を来し,気管切開を行ったことがきっかけで,内科から耳鼻科に患者が紹介されるようになった。合併症が少ないため内科医が安心して紹介してくれるようになったのである。奈良県の耳鼻咽喉科口腔外科の悪性腫瘍患者登録においても,甲状腺癌が喉頭癌,舌癌などを抑えて第1位を占めるようになった。甲状腺専門の外科医のいる病院でなければ,頭頸部の手術に詳しい耳鼻咽喉科が行うべきである。

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第63巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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