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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻2号

1991年02月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

口蓋扁桃の良性腫瘤性疾患

著者: 高橋廣臣 ,   八尾和雄 ,   稲木勝英

ページ範囲:P.96 - P.97

 口蓋扁桃から発生する腫瘍は,ほとんどが悪性腫瘍で,悪性リンパ腫が最も多いが扁平上皮癌も稀ではない。今回は我々が経験した比較的稀な良性腫瘍を示す。悪性腫瘍との鑑別上参考になれば幸いである。
 腫大した扁桃は,小児では腫瘍を考えることはほとんどないが,成人では扁桃組織の非腫瘍性の増殖・腫大であるか,腫瘍であるかの鑑別は必ずしも容易ではない。

原著

単脚アブミ骨奇形と手術治療

著者: 星野知之 ,   芹沢泰博 ,   石崎久義 ,   岡良己

ページ範囲:P.99 - P.103

 はじめに
 アブミ骨固着の原因としてもっとも頻度のたかいものは耳硬化症で,この治療法としてアブミ骨切除術(stapedectomy)が行われてきたが,近年stapedotomyないしsmall fenestra stapedectomyとよばれる術式が,内耳への侵襲が少ないことからより良い方法であるとされ1),広く行われるようになっている。固着した底板を全部除去せず,底板に小孔をあけてピストンを挿入するので,内耳に対する影響が少なく,聴力の結果もよい。
 同じく伝音難聴があっても,アブミ骨の先天性固着の症例では,耳硬化症では適応とされない可動術(mobilization)が適応とされ,容易に授動できない時にアブミ骨切除術が行われる。厚い底板のときは,耳硬化症と同様にドリルでの開窓もすすめられており2),筆者らもほぼこの原則にしたがって固着症の手術を行ってきた。

広域にわたる各周波数純音刺激にてTullio現象を呈した1症例

著者: 都筑俊寛 ,   加我君孝

ページ範囲:P.105 - P.109

 はじめに
 Tullio現象は,音刺激によりめまい感と限振が誘発される徴候で,1924年にTullioがハトの外側半規管に瘻孔を作成した実験において報告して以来1),本邦においてもENGに本現象を記録した報告が多くなってきている2)。一般に,Tullio現象は低音域の刺激により限振が誘発されやすいとされており3,4),高音域でも誘発されたという報告は少ない。
 今回われわれは,オージオメーターの125Hz〜8,000Hzの低音域より高音域にいたる各純音刺激により眼振を認めたTullio現象を示す1症例を経験したのでENG所見をあわせ報告する。

副鼻腔嚢胞重複症例の検討—とくに術後性篩骨嚢胞について

著者: 加瀬康弘 ,   沖田渉 ,   市村恵一 ,   飯沼壽孝 ,   小山和行 ,   田中利善

ページ範囲:P.111 - P.114

 はじめに
 日常診療において,同一症例の異なる副鼻腔に嚢胞が重複して存在する症例を経験することが少なくないが,その検討を行った報告は少ない。我我は昭和60年から平成元年までに術後性上顎嚢胞に篩骨嚢胞を合併した5症例を経験したので報告し,ついで篩骨嚢胞を中心に副鼻腔嚢胞重複症例について検討する。

鼻副鼻腔領域の血管腫の診断法およびその有用性について

著者: 田中利善 ,   市村恵一 ,   池田利昭 ,   飯沼壽孝 ,   小山和行

ページ範囲:P.115 - P.120

 はじめに
 鼻副鼻腔領域の血管腫性病変7症例に対して,検査法として普通X線検査(単純X-Pと略),X線CT (エンハンスを含む),MRI,血管造影を施行した。これらの検査法を検討し,有用性について興味ある知見を得たので文献的考察とともに報告する。

両側鼻副鼻腔悪性線維性組織球腫の1症例

著者: 大森琢也 ,   芦原誠 ,   竹内健二 ,   鈴木昭男 ,   八木沢幹夫 ,   西村忠郎

ページ範囲:P.121 - P.127

 緒言
 悪性線維性組織球腫Malignant Fibrous Histio-cytoma (以下,MFHと略す)は,軟部に好発する肉腫であるが,頭頸部領域に発生することは少なく,中でも上顎洞に原発することは稀である。今回我々は,極めて稀な両側鼻副鼻腔に発生したMFHの1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

診断困難であった上咽頭悪性組織球症の1例

著者: 立川拓也 ,   辻裕之 ,   岩井大 ,   友田幸一 ,   山下敏夫 ,   熊沢忠躬 ,   村上卓 ,   井上昇

ページ範囲:P.129 - P.133

 はじめに
 組織球症(histiocytosis)の中には臨床的に強い全身消耗症状を呈し,病理学的に異型性のある組織球やその前駆細胞の腫瘍性に系統的増殖を示す疾患が存在し,悪性組織球症(malignant histio-cytosis以下,MHと略す)と命名されている。しかし現在でもなおその独立性,腫瘍性および細胞起源について多くの論議がなされている1)。今回我々は初期に耳閉等の上咽頭腫瘍症状を呈し,病理解剖によりはじめてMHと診断された稀な症例を経験したので報告する。

鼻咽腔進展を示した巨大下垂体腺腫の1例

著者: 大橋伸也 ,   鄭正舟 ,   飯塚尚久 ,   山口秀樹 ,   加藤朗夫 ,   藤田博之 ,   今給黎守慶 ,   舩坂宗太郎

ページ範囲:P.135 - P.138

 はじめに
 下垂体腺腫は下垂体前葉から発生する腫瘍で,組織学的に色素嫌性腺腫,好酸性腺腫,好塩基腺腫に大別される。近年,免疫組織学的手技の進歩により内分泌学的にホルモン産生の有無と,その種類により表1のように分類されることが多くなった1)。また,占拠部位により,従来からトルコ鞍内に限局し,径1cm以下の場合をmicroadenoma,トルコ鞍外に大きく拡大進展している場合をextrasellar cxtensionとも分類されてきた。
 extrasellar extensionは,その進展方向により表2のように分類され,その頻度は頭蓋内にとどまる進展がほとんどで,下方,ことに鼻咽腔にまで達するものは約2%と極めて稀である。今回私達は,巨大に鼻咽頭進展を示した症例を経験したのでここに報告する。

鼻腔・膀胱の悪性腫瘍を合併したWerner症候群の1例

著者: 山田弘之 ,   岡田英作 ,   金春順 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.139 - P.143

 緒言
 Werner症候群は1904年ドイツの眼科医であるWerner1)によって初めて報告された遺伝性疾患であり,その特徴的体型と早期老化の諸症状が特徴とされる。本症候群の患者の平均寿命はその早期老化のため40歳代とされ,この点では予後不良であるといえる。また本症候群には悪性腫瘍が高頻度に合併することは有名で,一層予後を不良としている。
 悪性腫瘍の合併例の報告は既に諸家によってなされており,特に悪性黒色腫の合併例の報告は比較的多い。今回われわれは鼻腔の悪性黒色腫を合併し,さらに以前に膀胱腫瘍の既往を持つ本症候群例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

造影剤ショック後の耳鳴で初発した聴神経腫瘍の1例

著者: 野田哲哉 ,   佐々野利春 ,   中田孝重 ,   重野浩一郎 ,   中島成人

ページ範囲:P.145 - P.147

 はじめに
 内耳道内に限局したり,後頭蓋窩にわずかに突出するような早期の聴神経腫瘍(AT)では典型的な症状が認められないことが多く1〜3)診断は必ずしも容易ではない。今回造影剤ショック後より一側耳鳴を自覚し,当初感音難聴は認められたが内耳道拡大や内耳温度刺激反応低下(CP)は認められず,経過を追っていくうちに内耳道内に限局したAT (ear tumor)の診断が確定された症例を経験した。診断確定後に症状や検査所見を見直し,発症早期の段階でATを疑えなかったのか検討を行った。

CT上異常を認めなかった視神経管骨折の1例

著者: 森田恵 ,   伊藤光子 ,   高橋正紘 ,   櫻林なおみ ,   金子行子

ページ範囲:P.149 - P.152

 はじめに
 視神経管骨折の診断は,眼科検査がその大半を占めるが,骨折を他覚的に証明するために,最近では高分解能CT scanの有用性が報告されている。Manfrediら1)は従来のX線検査で篩骨洞,蝶形骨洞に出血陰影を認める例,あるいは視力障害を伴う例では,CT scanは眼科的諸検査と同等の価値があると述べている。今回我々は,CT scanには異常を認めず一見心因性視力障害と思われたが,手術で骨折を確認した症例を経験したので報告する。

副鼻腔根治術時に見つかった陳旧性眼窩内側壁吹き抜け骨折の1症例

著者: 秋定健 ,   折田洋造 ,   藤田浩志 ,   半田徹

ページ範囲:P.153 - P.156

 はじめに
 眼窩吹き抜け骨折(blow out fracture)は,眼部に加わった鈍的外力により生じた眼窩壁の骨折で,眼球内容が副鼻腔内に突出することにより複視・眼球運動障害・眼球陥凹などの特異な臨床症状を呈する疾患であり,診断は比較的容易であるが,その治療方針,特に手術適応,時期などについてさまざまな意見があり,統一された見解が示されていないのが現状である。
 今回我々は慢性副鼻腔炎患者で,術前の問診では眼球打撲および複視の既往は聴取できず,手術直前の断層撮影および副鼻腔根治術時に見つかった陳旧性の眼窩内側壁吹き抜け骨折を経験したので,問診やX線像読影の重要性と共に吹き抜け骨折の治療方針についても若干の考察を加え報告する。

抜歯に起因する急性副鼻腔炎による眼窩内蜂窩織炎の1症例—手術的治療の適応について

著者: 川浪貢 ,   飯塚桂司 ,   柏村正明 ,   三国尚志

ページ範囲:P.157 - P.160

 はじめに
 急性副鼻腔炎による眼窩内合併症は,抗生物質の開発,発達により著しく減少しているが,現在もなお副鼻腔炎による眼窩内合併症が報告されている1)。原因として,副鼻腔と眼窩は解剖学的に隣接するため副鼻腔の炎症が直接的に波及しやすいこと,副鼻腔の静脈還流も眼静脈を経由して海綿静脈洞に流入することなどが考えられる。
 今回我々は,抜歯に引き続き起こった急性副鼻腔炎の炎症が眼窩内に波及し,眼窩蜂窩織炎となり,手術を要した症例を経験した。未だ明確にどのような状態,または病期で手術的治療に踏み切るべきか述べられたものは少なく,今回経験した症例を報告するとともに,病因,感染経路,さらに手術的治療の適応について考察した。

咽喉頭異常感で来院した急性心筋梗塞の1例

著者: 浅井美洋 ,   四ケ浦京子 ,   松井和夫

ページ範囲:P.167 - P.170

 はじめに
 耳鼻咽喉科において咽喉頭異常感は日常よく遭遇する症状の1つである。その原因疾患の中には悪性腫瘍などの予後不良なものがあるが,時間単位で急激に生命予後を危うくする疾患は稀である。最近当院において咽喉頭異常感を主訴に耳鼻科を受診した急性心筋梗塞の症例を経験したので報告する。

鏡下咡語

癌の告知 私のやりかた

著者: 山根仁

ページ範囲:P.164 - P.165

 Yさんは保険外交員をしている中年の女性である。しばらく前から舌縁に潰瘍があり,舌癌ではないかと心配して受診してきた。診ると直径5mmほどの浅い潰瘍だが,一部に堤防状の盛りあがりがあり,わずかな硬結を触れる。生検をしたところ,やはり扁平上皮癌との結果が出た。この程度の早期癌ならどうやっても治りそうだが,Yさんにとって最もよいのは組織内照射であろう。その設備が私の病院にはないので従来こういうケースは癌センターへ紹介している。
 Yさんが2度目に外来にやってきたとき,私は「検査の結果,悪性の細胞がみつかりました」と告げた。一瞬息を飲んだYさんは,放心状態となり,「気分が悪いので少し休ませて下さい」と言うなり崩れ落ちてしまった。外来のベッドで2時間ほど横になってもらい,落ち着いたところで「きわめて早期の癌で良好な予後が期待できること。当病院での治療も可能だが,術後の舌の機能を考えると癌センターで組織内照射をするのがよいと思われること」など約30分間説明した。Yさんは「本当に初期の癌なんですね」と不安そうではあったが,紹介状を持って帰って行った。3日後,Yさんは癌センターからの返事を持ってやってきた。「紹介して頂いてありがとうございました」と挨拶もしっかりしており,どうやら立ち直ったようだ。

学会トピックス

第20回国際オージオロジー学会

著者: 神崎仁

ページ範囲:P.171 - P.172

 スペインに属するテネリフェ島はマドリッドより南に約1000KM離れたカナリア諸島のひとつである。島には,富士山より高いスペイン最高峰のテイデ山がそびえている保養地である。
 第20回国際オージオロジー学会はこの島のPuerto de la Cruzというリゾート地のSemiramis Hotel(Barajas会長)で10月14日から19日まで行われた(写真)。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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