icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻3号

1991年03月発行

雑誌目次

トピックス 高齢者と耳鼻咽喉科・愁訴と対応

老年医学と耳鼻咽喉科

著者: 平井俊策

ページ範囲:P.183 - P.187

 はじめに
 老年医学と耳鼻咽喉科との関連について述べるのが私に与えられたテーマである。まず病気について述べる前に,聴覚,嗅覚,味覚のより生理的な老化性変化につき述べ,次に耳鼻咽喉科と関連の深い老年者の症状について老年医学的な立場から考えてみたい。

聴覚障害

著者: 佐藤恒正

ページ範囲:P.189 - P.195

 はじめに
 近年,高齢化社会の到来に伴い,最近の統計1)によると難聴者群の半数以上が高齢者で占められる一方,70歳以上の高齢者の主訴の半数は耳に関する訴えである。そこで耳鼻咽喉科医がこれら老年者の難聴に適切に対処することは,社会的にきわめて重要な責務である。しかし,老年者の難聴は若年者の難聴と異なる幾多の特徴を有するために,これらの特徴を十分に熟知しておく必要がある。
 ここでは,まず,老年者に特有の聴覚像ならびにそれを裏づける聴覚系の病理組織像について述べ,さらに老年者に対する特有な対応法,補聴器に関する注意事項などについて述べる。

めまい・平衡障害

著者: 松永喬

ページ範囲:P.197 - P.204

 はじめに
 高齢者のめまい・平衡障害は高齢者の難聴と同様,平衡覚・平衡機能の加齢現象によって起こるのであろうか,あるいはすべて病的なのであろうか。この点に関しては,まだ十分わかっていない。
 そこで筆者は高齢者にみられる平衡機能の生理的変化(状態)についての臨床経験をまず整理し,ついで高齢者(ここでは65歳以上)にみられるめまい疾患の実態について,筆者らのデータを中心に述べ,この疑問点の解決への一つの手掛りとしたい。

鼻科学的愁訴

著者: 堤昌己

ページ範囲:P.205 - P.208

 はじめに
 本邦ではすでに65歳以上は全人口の11%以上となり,来たる21世紀初頭には世界一の高齢者社会となるといわれている。
 ここで高齢者の鼻に関する問題を取扱うに当って果たして何歳からと区切をつくることには問題があるように思える。本邦では生活環境の改善進歩が,ある面ではみられ着実に平均寿命は伸びており,当然鼻の老齢化も先送りされているものと推定される。従来より60歳以上を高齢者として鼻閉などに関していくつかの報告もみられているが,果たして老齢化現象を60歳以上とするのが妥当であろうか。また,20〜60歳までの加齢による変化を自覚的,他覚的に正確に捉えることは至難のことといわざるを得ない。しかし,20歳から一足とびに60歳,70歳へと鼻腔内や自覚症が変化するのではなく,その変化の過程を鼻腔形態の年齢的推移を追って,その加齢の実態の解明をまず試みたいと思う。

口腔の異常

著者: 池田稔 ,   濱田敬永 ,   田中正美 ,   冨田寛

ページ範囲:P.209 - P.216

 A.味覚障害
はじめに
 味覚に関する異常を訴えて受診する患者は50歳代が最も多く,次いで40歳代,60歳代と続く(図1)。この受診者数を年代別人口に対する割合でみてみると,図2で示されるように加齢とともに増加する。女性では40歳代から,男性では50歳代から特に受診者数が増加する。
 加齢により味覚障害が生じやすくなることは実験的にも報告されている。若齢および老齢ラットを亜鉛欠乏飼料により飼育した場合,味覚減退の発生率は若齢ラットでは30%なのに対し老齢ラットでは70%と有意(p<0.01)に高率になる1)

音声障害

著者: 新美成二

ページ範囲:P.217 - P.221

 はじめに
 従来音声障害は「声に病的変化がある場合,または,発声に際して不快な自覚症状を伴う状態である。声の病的変化は,声の高さ・強さ・持続・音質の四要素について判断される。すなわち,これらの要素のどれかが,その人の年齢・性・発声環境から考えて,妥当あるいは必要と思われる条件から明らかにかけ離れている場合,その声に病的変化があるという」と定義されている1)。この定義では妥当と考える範囲が検者の主観に大きく依存している。ここで問題になるのは高齢者に関する正常範囲がいまだ明らかにされていないことであろう。

目でみる耳鼻咽喉科

内視鏡下鼻内手術

著者: 洲崎春海 ,   野村恭也

ページ範囲:P.180 - P.181

 光学器械の改良進歩により,細い手術用内視鏡やビデオカメラが鼻内手術に導入され,狭いうえに複雑な構造をもつ鼻・副鼻腔の術創内においても死角が少なくなり,操作部位を明視下にかつ近接できるため,より正確で繊細な手術が行えるようになった。従来の鼻・副鼻腔手術では術野の解剖学的問題で術者以外に手術操作がわからなかったが,ビデオを含むTV装置を用いることによりTVモニター上に手術の状況を提示し,同時に録画記録できるので教育上も極めて有用である。内視鏡下鼻内手術は最近急速に普及しつつある。
 内視鏡手術を行う場合には,視野角が広角であることや内視鏡での視野は近視眼的であるため鼻内形態全体の把握,関連術野との立体感の把握がやや悪く,内視鏡下での解剖に慣れることが大切である。また,狭い腔内に挿入した内視鏡全体が鉗子などの手術操作を制限することがあり,術者が内視鏡操作に習熟する必要がある。

原著

スギ花粉に付着している大気汚染物質に関する研究(その1)

著者: 伊藤博隆 ,   高木一平 ,   西村穣 ,   横田明 ,   馬場駿吉 ,   三谷一憲

ページ範囲:P.223 - P.227

 はじめに
 スギ花粉症の増加はいまや国民病ともいわれ,各方面で注目を集めている。その原因についてはスギの植林による花粉飛散量の増加や,大気汚染によるものであると考えられている。しかし,その機序については未だ明確ではない。今回,われわれは花粉と大気汚染物質の関係をより明らかにするために花粉や花序,樹葉に付着した汚染物質を経時的に測定し,大気汚染といかなる関係をもって変化するかについて検討を行った。

術後性上顎嚢胞の超音波診断

著者: 塩野博己 ,   矢野純 ,   北原伸郎 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.229 - P.234

 はじめに
 術後性上顎嚢胞の画像診断は普通X線撮影法のみでは困難であるが,X線CTが普及し,その診断は容易となった。しかし被爆,経費,時間等の諸問題が残る。
 今回は術後性上顎嚢胞の画像診断法としてX線CTと超音波検査(Aモード,Bモード法)を併用し,これらの結果を手術所見と比較検討して超音波検査の有用性と限界について報告する。

頭頸部癌根治治療の細胞性免疫能への影響

著者: 佃守 ,   久保田彰 ,   金子まどか ,   吉田豊一 ,   澤木修二 ,   平田佳代子 ,   古川滋

ページ範囲:P.235 - P.240

 はじめに
 頭頸部進行癌症例では宿主の細胞性免疫能が低下し1),この免疫能の破綻が予後に大きく関わっていると考えられる。それ故に免疫療法の必要性が喧伝されている。
 一方,頭頸部癌の根治治療としては放射線治療あるいは手術が選択される。今回こうした根治治療が担癌患者の免疫能にどのように影響を及ぼすかを,末梢血リンパ球サブセットおよびリンパ球幼若化率の変動を指標として検討したので,その結果を報告する。

頭頸部領域における悪性黒色腫—当科における過去16年間の臨床的検討

著者: 山田弘之 ,   鈴村栄久 ,   山際幹和 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.241 - P.245

 緒言
 悪性黒色腫は皮膚または粘膜内のメラノサイトから発生する予後不良の疾患であり,とくに頭頸部領域に発生する悪性黒色腫は粘膜原発のものがほとんどであることから,他領域の皮膚原発のものに比較して一層その予後は悲観的である。
 本腫瘍は頭頸部領域のなかでもとくに鼻腔および口腔に好発するため,初診時には比較的局所に限局した初期のものでもその解剖学的理由ゆえに広範切除が不可能な症例も多く,化学療法,免疫療法あるいは低pheynylalanine-tyrosine食などに依存せざるをえない症例も多い。頭頸部上皮性腫瘍の最近の治療成績の向上に比較しても,悪性黒色腫の治療成績は一向に改善せず,われわれ頭頸部外科医にとって相変わらず悩みの種である。

眼窩および頭蓋内に進展した後部副鼻腔原発の胎児型横紋筋肉腫の1症例

著者: 沖田渉 ,   小川恵子 ,   山根雅昭 ,   市村恵一 ,   飯沼壽孝 ,   小山和行

ページ範囲:P.251 - P.258

 緒言
 横紋筋肉腫は中胚葉系腫瘍の中でも極めて悪性度が高く,予後不良の疾患である。頭頸部はその好発部位であるが,特に鼻副鼻腔領域は比較的頻度が高く,頭蓋内に近接する解剖学的な理由により,その診断と治療に困難を呈する場合が多い。最近われわれは,副鼻腔より中頭蓋内に進展し,化学療法のみで寛解に至った若年者の横紋筋肉腫症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

側頸部から頭蓋底まで進展していた脂肪腫

著者: 成田七美 ,   児玉章

ページ範囲:P.259 - P.263

 はじめに
 脂肪腫は,間葉系腫瘍の中で,もっとも発生頻度が高く,頸部は脂肪腫の好発部位の一つだが,ほとんどが表在性脂肪腫であり,深在性脂肪腫は少ないとされている。
 今回,側頸部より頭蓋底まで進展した,巨大な深在性脂肪腫の1例を経験したので報告する。

呼吸困難をきたした喉頭Saccular Cystの1症例

著者: 八田千広 ,   佐藤武男 ,   吉野邦俊 ,   馬谷克則 ,   藤井隆 ,   前谷近秀 ,   沢田達

ページ範囲:P.265 - P.269

 はじめに
 喉頭saccular cystは幼児の呼吸困難をきたす疾患として海外では多く報告されているが1〜4),本邦ではその報告は稀である。今回われわれは,呼吸困難をきたした喉頭saccular cystに対して頸部外切開による嚢胞摘出術を行い,良好な結果を得たので報告するとともに,若干の文献的考察を加えた。

鏡下咡語

投稿論文のレフェリー制度

著者: 奥田稔

ページ範囲:P.248 - P.249

 1.審査制度
 学術雑誌への論文掲載に審査(レフェリー)制度が一般化している。投稿原稿に対し,多くは複数の審査員が依頼され,その論文がその雑誌に掲載する価値があるか否かを審査し,その結果をふまえて掲載の可否が決定される制度である。
 学校の試験をはじめとしてどんなことでも審査されるのは当人にとっては億劫である。審査の結果がよければ問題は少ないが,批判的な結果になると当人はもちろん,当人の属する教室も愉快なことではない。批判が当を得ていれば納得もしようが,立場の相違や基本的考えの相違がある時は紛争の種になりかねない。審査員が不公正の場合は論外である。審査員も東洋的礼儀に従ったり,紛争を恐れるあまり,好い加減のところですましてしまったり,正直にすぎて後で不快な思いをすることがある。外国の一流雑誌にはこの制度が古くからあったが日本の風土に馴染まないように思われて今までは敬遠されがちであった。学術会議で認める学術団体の条件として,審査制度をもつ雑誌の発行が掲げられている。そして審査制度をもつ学術雑誌が本邦でも急増している。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?