icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻4号

1991年04月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

診断困難であった早期喉頭癌

著者: 古川浩三

ページ範囲:P.276 - P.277

 耳鼻咽喉科医において,喉頭癌の診断は一般的には,容易なものである。特に進行した症例においては,嗄声,血痰,呼吸困難などの症状からも,視診からも簡単に喉頭癌という診断はなされる(図1)。しかし早期の喉頭癌の診断はそれほど簡単なものではないと思う。隆起性の表面がブツブツした赤い腫瘍は癌を高率に推定できる(図2)。しかし,乳頭腫のようなブツブツの小さいものや境界明瞭なものは鑑別が困難なことがある(図3)。
 問題は白い病変であまり隆起のない症例の診断である。喉頭微細手術のときに白板症か癌かの鑑別診断はかなりむつかしいことがある(図4,5)。喉頭微細手術にレーザーを使用するにあたっては病変の深達度が問題になる。正常組織との境界の不明瞭な白板症や,周辺の組織が水々しい症例(たぶん浮腫や炎症を伴っているのであろう)は癌を考えて治療したほうがよいと思う(図6)。

原著

難治性前頭洞嚢胞の3症例

著者: 田中利善 ,   加瀬康弘 ,   山根雅昭 ,   飯沼壽孝 ,   小山和行

ページ範囲:P.279 - P.283

 はじめに
 再発性前頭洞嚢胞は,前回手術より局所の解剖が複雑になること,および治癒機転において鼻前頭管は閉塞傾向があることから,再手術時には問題点が多い。このような意味で再発性前頭洞嚢胞は難治性前頭洞嚢胞である。
 今回,難治性前頭洞嚢胞の3症例を報告し,本疾患の治療に対する問題点について文献的考察をする。

頭蓋内合併症をきたした前頭洞嚢胞2症例

著者: 浜口幸吉 ,   川口信也 ,   坂倉康夫 ,   浜口富美 ,   野々山勉 ,   森川篤憲

ページ範囲:P.285 - P.289

 緒言
 前頭洞嚢胞は前頭洞の自然孔である鼻前頭管がなんらかの原因により狭窄や閉塞をきたし,前頭洞内に分泌物が貯留した状態(粘液嚢胞)である。これに細菌感染が加わり,膿性になったものが前頭洞膿嚢胞である。鼻前頭管は他の副鼻腔自然孔に比べて距離が長く開口部も狭小なため,容易に通過障害をきたす1)。大野ら2)によれば,前頭洞嚢胞の原因のうち,約50%が術後性(副鼻腔手術後に発生),25%が外傷性,残り25%が原発性で占められ砲,また前頭洞はその解剖学的位置関係より頭蓋内合併症を最もきたしやすく,中枢神経系に重篤な機能障害をもたらすこともある3,4)
 最近,われわれは術後性前頭洞膿嚢胞が頭蓋内に広範に進展した症例および頭部外傷が誘因とされた外傷性前頭洞嚢胞に脳膿瘍を合併した症例を経験したのでここに報告する。

頸部気管に原発したAdenoid cystic carcinomaの2例

著者: 斉藤龍介 ,   西崎和則 ,   宇野芳史 ,   松岡寿子 ,   金谷真 ,   小山高司 ,   永瀬洋 ,   清水信義

ページ範囲:P.291 - P.296

 はじめに
 原発性気管腫瘍の中で腺様嚢胞癌は過半数を占めるが,気管腫瘍そのものの発生頻度が極めて低いため,わが国ではもっぱら症例報告として報告されており,その外科的治療に関して十分な経験を持っている施設は少ない。従って,このような症例に遭遇した際,どの様に診断,治療をすすめていくかについてはなお諸種の問題点が残されている。
 われわれは最近頸部気管に原発した腺様嚢胞癌2例を経験した。そこで,これら2例の治療経過を報告し,本症の治療について若干の文献的考察を加えた。

同時期耳下腺外ワルチン腫瘍について

著者: 古川仭 ,   山本環 ,   木村恭之 ,   大尾嘉宏巳 ,   長山郁生

ページ範囲:P.297 - P.301

 はじめに
 ワルチン腫瘍(リンパ腺腫)は全耳下腺腫瘍の6〜10%に見られる発育緩慢でしばしば無症状に経過する良性腫瘍であるが,時に両側発生や同側の多中心性発生をみる特異な腫瘍である1,2)。多中心性腫瘍は同時期発生のこともあるが,時期を異に発生することもある。したがって外科的切除後の同側発生腫瘍では,異時性多中心腫瘍であるのか再発性腫瘍であるのかは区別がむつかしくなるが,ワルチン腫瘍は耳下腺内のみでなく,耳下腺辺縁リンパ節や頸部リンパ節からの発生をみることもあり3,4),この場合はその判断は容易である。今回私達は,同側耳下腺内の複数腫瘍と辺縁リンパ節様腫瘍が組織学的に同一のワルチン腫瘍であった,いわゆる同時期耳下腺外ワルチン腫瘍を経験したのでその症例を紹介し,文献的考察を加えて報告する。

小脳橋角部脂肪腫の1例

著者: 緒方哲郎 ,   新川敦 ,   木村栄成 ,   鈴木秀則 ,   寺田多恵 ,   三宅浩郷 ,   坂井真

ページ範囲:P.303 - P.308

 はじめに
 頭蓋内脂肪腫は稀な脳腫瘍である。さらに小脳橋角部腫瘍の大多数が聴神経腫瘍であることを考えると同部の脂肪腫は非常に稀であるといえよう。今回われわれは,左慢性中耳炎の術前検査,特に画像診断にて左小脳橋角部腫瘍の疑いを持ち,手術により左小脳橋角部脂肪腫と診断された症例を経験した。この小脳橋角部脂肪腫は,国内外の剖検例,臨床例を合わせても現在までに23症例が報告されているにすぎず,極めて稀な疾患であると考える。そこで,今回,自験例の詳細を報告し,特に本症の画像診断上の問題点について文献的考察を加えた。

頸部手術に合併した気胸,縦隔気腫

著者: 竹内万彦 ,   高津暢尚 ,   清水猛史 ,   山際幹和 ,   鵜飼幸太郎 ,   坂倉康夫 ,   小西邦彦

ページ範囲:P.309 - P.312

 はじめに
 気胸と縦隔気腫は,古くから頸部手術,特に気管切開術の合併症の1つとして知られている1)。これらは頻発するものではないが,発症は突然でかつときに激烈であり,診断が遅れると致命的になる2)こともある。この意味において頸部手術を扱うわれわれ耳鼻咽喉科医にとって本合併症について十分な理解をもつことは極めて重要であると考える。最近,頸部手術に気胸,縦隔気腫を合併した3例を経験したのでこれらを報告し,文献的考察を加えた。

心因性反応を伴う経過を示した地方病性甲状腺腫の1例

著者: 千葉恭久 ,   丸山敬史 ,   古屋信彦 ,   楊福春

ページ範囲:P.313 - P.317

 はじめに
 甲状腺腫の発生誘因には,ヨード摂取量が極端に低下した環境下での生活や,ヨードが過剰に摂取される環境下での生活などが関与するといわれている1〜4)。さらに,ヨード摂取量の偏りが特定地域に限局し,かつ甲状腺腫が多く認められる場合,地方病性甲状腺腫と呼ばれることがある5,6)。われわれは最近,低ヨード摂取地域に長期間居住し甲状腺腫に罹患した患者を経験した。この患者は,甲状腺手術後に意識障害を伴う全身けいれん発作が出現し,その病態および発生要因の把握に苦慮したが,現在は比較的安定した生活が送れるようになっている。今回われわれは,この患者を通して,地方病性甲状腺腫および全身けいれん発作の病態を考慮する機会をえたのでここに報告する。

膿胸を合併したDeep neck infectionの1症例

著者: 黒田嘉紀 ,   吉田昭男 ,   牧嶋和見 ,   伊藤重彦

ページ範囲:P.319 - P.324

 はじめに
 頸部筋膜間隙に広範囲に広がった感染症は総称してdeep neck infectionと呼ばれているが,抗生剤の進歩によりこの種の疾患は年々減少している。今回われわれは膿胸を合併したdeep neckinfectionの症例を経験したので報告する。

側頭窩下に発生した横紋筋肉腫の治療経験

著者: 大道卓也 ,   川上晋一郎 ,   渡辺周一 ,   増田游 ,   内藤好宏 ,   小川晃弘

ページ範囲:P.331 - P.334

 はじめに
 鼻副鼻腔領域の横紋筋肉腫は比較的まれな悪性腫瘍であり,診断,治療に難渋する場合が多い。病理検査体制の進歩により病理学的診断に際しては早期に診断しえたものの側頭下窩というsilentareaに発生していたため患者の受診が遅れ,かなりの開口障害をきたしていた症例を経験した。術前化学療法および放射線療法の後,根治的手術を行ったが,治療に伴ういくつかの問題点を経験したので文献的考察を加えて報告する。

外傷性眼窩気腫の1治験例

著者: 田矢理子 ,   竹内万彦 ,   鵜飼幸太郎 ,   坂倉康夫 ,   久瀬真奈美 ,   有馬美香

ページ範囲:P.335 - P.338

 はじめに
 眼窩気腫は眼窩骨折や副鼻腔炎の手術後に時折見られるが,保存的治療で軽快するのが通常であり,手術適応となることは少ない。今回われわれは眼窩骨折後の擤鼻が原因と思われる眼窩気腫の一手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

12年後鼻腔に転移した腎癌の1症例

著者: 増野博康 ,   猪狩武詔 ,   泰地秀信 ,   関本靖雄 ,   鈴木理文

ページ範囲:P.339 - P.343

 緒言
 腎癌は他の癌に比べて,比較的時間をおいて転移するのが特徴といわれている。それでも数年以内という報告がほとんどであるが,今回われわれは腎癌にて腎摘12年後に鼻腔に転移した稀な症例を経験したのでここに報告する。

鏡下咡語

左扁桃痛(咽頭痛)と急性心筋梗塞—私自身の体験より

著者: 柳田則之

ページ範囲:P.328 - P.329

 一般に“急性心筋梗塞”の症状は“激しい胸痛”という概念が広く知られており,私自身もそのように記憶していたが,今回“胸痛のない”“左扁桃痛(咽頭痛)”を主訴とした,後壁の急性心筋梗塞に罹り処置も早く完治したので私自身の体験を言及してみたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?