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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻5号

1991年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

若年性血管線維腫

著者: 初鹿信一 ,   平出文久

ページ範囲:P.352 - P.353

 若年性血管線維腫は,思春期男子に好発する比較的まれな疾患である。しかも,そのほとんどが鼻咽腔に発生し,易出血性で拡張的増殖力を有するために,進行すると完全摘出することが難しく再発しやすい。
 病因についてはいまだに明らかではないが,思春期の男子に好発し,またsexual maturityにより自然退縮が認められることもあるので,性ホルモンと脳下垂体ホルモンのアンバランスがその病因ではないかと推測されている。

原著

CTによる過長茎状突起症候群の検討

著者: 和田哲郎 ,   草刈潤 ,   川島宣義 ,   木内宗甫

ページ範囲:P.355 - P.359

 緒言
 過長茎状突起症候群あるいはEagle症候群は咽頭粘膜に異常を認めないにもかかわらず咽頭異物感,嚥下痛,耳痛などを呈する疾患で,慢性の咽頭症状の患者の鑑別診断として忘れてはならない疾患のひとつである。
 この疾患は扁桃洞の触診や単純写真で確認されるのが従来の一般的方法である1,2)。しかしながら,単純X線像においては解剖学的に下顎骨および歯の陰影と茎状突起は重なり易く,加えて,茎状舌骨靱帯骨化を不連続に伴うような症例3〜6)では正確な判読が必ずしも容易ではない。また,過長茎状突起は必ずしも症状を伴わないことが知られており,単に長さのみならずその走行と周囲組織の位置関係が症状発現に関与していると考えられている7)

Chubby Puffer症候群成人2症例の扁桃摘出前後の睡眠ポリグラフ

著者: 角田浩幸 ,   加我君孝 ,   本多裕 ,   佐々木司

ページ範囲:P.361 - P.365

 はじめに
 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndome)は,睡眠時に無呼吸発作を頻回に反復するために,精神神経症状や呼吸循環症状など多彩な臨床症状を呈する症候群である。原因として上気道の狭窄や閉塞が圧倒的に多いことから,内科,小児科,精神科に加え耳鼻咽喉科からの報告も数多くある。幼小児は元来成人に比べ気道狭窄による呼吸障害を起こしやすく,とくに乳幼児では気道狭窄による突然死が従来から問題になっている。また,成人においても気道狭窄や閉塞による夜間睡眠中の突然死が再びクローズアップされてきている。
 これらの症例の睡眠ポリグラフの多くは,末梢型と中枢型の混在したいわゆる混合型であり,外科的治療によって中枢型がどの程度改善するか現在のところ明らかではない。

von Recklinghausen病のDural Ectasia

著者: 岩崎聡 ,   森泰雄 ,   久保田賢三

ページ範囲:P.367 - P.370

 はじめに
 von Recklinghausen病(以下,R病と略)はカフェオーレ斑,多発性の神経線維腫を主微とする全身性母斑病で,主要症候以外に中枢神経系腫瘍,骨病変,眼病変などの多彩な症候を呈する疾患である。R病に聴神経腫瘍の合併した症例の報告は多数認められるが,最近は画像診断の発達とともに,内耳道の拡大を伴うが,腫瘍を認めない症例の報告も散見される1〜8)。この原因のひとつにdural ectasiaがあげられているが,MRIにて画像診断された症例の報告はいまだ見られない。
 今回われわれは,突発性難聴として発症し,聴力変動と内耳道拡大を認めたR病の1症例を経験した。MRIにより画像診断学的にその発症原因を検討し,若干の知見が得られたので報告する。

早期より両側声帯運動障害が認められたShy-Drager Syndromeの1例

著者: 太田豊 ,   寺山善博 ,   小松崎篤 ,   廣瀬肇

ページ範囲:P.371 - P.375

 はじめに
 Shy-Drager Syndromeは,1960年にShyとDragerによって報告された1),起立性低血圧,屎尿失禁,発汗減少,陰萎などの自律神経症状を中心とし,筋固縮,振戦などの体性神経症状が加わった症候群であり(表1),病理学的には線条体,脳幹有色素核(赤核,黒質,青斑核),橋核,小脳皮質,オリーブ核などに変性,萎縮を認めることができる。
 従来,OPCA型の小脳症状,パーキンソニズムに自律神経症状を合併した症候群として考えられてきたが,近年ではmultiple system atrophyの一型であるとする考え方が有力となっており,multiple system atrophy with autonomic failurと記載されることも多くなってきた。

鼻腔発生の悪性リンパ腫の5症例

著者: 田矢直三 ,   石田稔 ,   野入輝久 ,   有賀秀治 ,   吉原渡 ,   伊藤信也 ,   阪本晴彦 ,   宇多弘次

ページ範囲:P.377 - P.382

 はじめに
 悪性リンパ腫は,ホジキン病と非ホジキンリンパ腫(NHL)に大別されるが,NHLは免疫学的検索方法の進歩によって,リンパ球由来の腫瘍であることが判明した。さらにT細胞,B細胞,あるいはその分化段階やサブセットを知ることができるようになった。モノクローナル抗体を利用することにより膜表面抗原を検索し腫瘍細胞の生物学的性状を知ることが可能であり,病態の理解および治療方針の決定などに応用できるようになりつつある。
 鼻腔発生の悪性リンパ腫の多くはT細胞由来とされ,Waldayer輪に発生するリンパ腫の多くがB細胞性であるのとは対象的である。本論文ではわれわれの経験した市立吹田市民病院の5例の鼻腔発生NHLについて臨床的病理学的特徴を免疫組織学的検討の結果を含めて報告する。

耳下腺から下顎骨に進展した多発性神経鞘腫の1例

著者: 中村良博 ,   宮田守

ページ範囲:P.383 - P.386

 はじめに
 頭頸部領域における神経鞘腫は比較的多く見られるが,局所に多発性に発症することはまれである。今回われわれは耳下腺から下顎骨に進展した多発性神経鞘腫の1例を経験したので報告する。

側頭下窩膿瘍の1例

著者: 硲田猛真 ,   新井宏紀 ,   横山道明 ,   榎本雅夫

ページ範囲:P.387 - P.390

 緒言
 頭頸部領域の膿瘍としては扁桃周囲膿瘍,副咽頭間隙膿瘍などがしばしばみられるが,側頭下窩に発生する膿瘍はきわめて稀な疾患である。今回,著者らは側頭下窩膿瘍の1症例を経験したので,その詳細について文献的考察を加え報告する。

深頸部ガス形成性膿瘍の1例

著者: 門脇敬一 ,   高城英俊 ,   岸本幸広

ページ範囲:P.391 - P.395

 はじめに
 抗生剤の出現以前には,深頸部膿瘍は,重篤でしばしば致死的な疾患であった。抗生剤の進歩によって,その頻度は少なくなってきている。一方,抗生剤による症状の隠蔽化や耐性菌の関与によって病態は複雑になっている。保存的治療で軽快するものもあるが,頸部外切開,ドレナージの必要性は従来同様に重要である。
 私達は,深頸部膿瘍に伴い頸部にガスを生じ,治療によって救命し得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

内耳機能の保存されていた真珠腫内耳進展例

著者: 小崎寛子 ,   奥野妙子 ,   水野正浩

ページ範囲:P.397 - P.401

 はじめに
 一般に真珠腫の広範な内耳進展例では内耳(蝸牛および前庭半規管)機能が低下・廃絶していることがほとんどであるが,近年,それが保たれている例のあることが報告されるようになった1,2)
 私どもは最近,真珠腫が広範に内耳に進展していたが,術後も内耳機能の保たれた例を経験した。その症例をここに報告するとともに,内耳機能の防御機能につき,文献的考察と,若干の推論をつけ加えた。

鼻腔内神経鞘腫と合併した聴神経腫瘍症例

著者: 寺薗富朗 ,   大森敦子 ,   大島渉 ,   粂俊之 ,   中尾美穂 ,   紀平晋也 ,   松本真吏子 ,   水越文和 ,   久保哲

ページ範囲:P.407 - P.411

 はじめに
 神経鞘腫は有髄神経の分布領域にはどこにでも発生する可能性があるが,耳鼻科領域の好発部位としては前庭神経が存在する側頭骨・小脳橋角部が圧倒的に多く,舌・咽頭と続き,鼻副鼻腔神経鞘腫は比較的稀である。
 今回われわれは鼻腔内および小脳橋角部に神経鞘腫の重複発症を認めた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

軟部好酸球肉芽腫の4症例

著者: 加瀬康弘 ,   池田利昭 ,   山根雅昭 ,   市村恵一 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.413 - P.418

 はじめに
 軟部好酸球肉芽腫いわゆる木村氏病は特異な検査所見を示し,皮下に腫瘤を形成する良性の疾患である。頭頸部に好発するため耳鼻咽喉科にて最も多く取り扱われる。しかし再発率が高く,その治療法はまだ確立されていない。今回われわれは軟部好酸球肉芽腫の4症例を経験したので報告し,また発生部位と治療法について文献的に検討したので報告する。

鏡下咡語

ゲルベル隆起について

著者: 荒牧元

ページ範囲:P.404 - P.405

 術後性頬部嚢胞(Postoperative Wangenzyste以後,PWZ)は,昭和2年2月20日,大日本耳鼻科会九州地方会第84回集会において久保猪之吉教授が「上顎洞炎根治手術後ニ現レタル頬部嚢腫」として最初に発表記載された疾患で我々は日常しばしば経験するものである。この疾患の症状の一つにゲルベル隆起Gerberscher Wulst(以後,GW)がある。さて昭和63年熊本での第27回日本耳鼻科学会でのPWZの術式について私の発表の際,GWを「下鼻道側壁の鼻腔内への隆起」として述べた。すると東大分院の市村恵一講師からGWの解釈に誤まりがあるのではないかと御質問を受けた。すなわちGWとは「鼻底から鼻腔に生じた膨隆である」と。同時にフロアーにおられた北村武,曽田豊二両教授も「鼻底説」が正しいと述べられた。私はそれまでGerberの原典を知らず一般教科書の知識からGWは下鼻道外側壁の膨隆とばかり思い込んでいた。私の愛用している耳鼻咽喉学(河田政一・他編,改訂2版,金原出版,昭和40年)にも濾胞性歯芽嚢胞の項に「下鼻道の外壁が膨隆し,いわゆるGWを形成する」とあり更にPWZの項には「鼻腔側壁が洞内嚢腫のため内方へ圧迫されると鼻閉塞,鼻漏,嗅覚障害を来し鼻底部を圧迫してGWを来すこともある」とある。また図1を見ると側壁を内方への圧迫と同時に鼻底部の上方への圧迫像が認められるのでこの文や図からはどちらとも判断することが出来る。日耳鼻学会編集の耳鼻咽喉科学用語解説集(改訂2版,金原出版,平成元年)には「GWは下鼻道の外壁,歯槽突起の部分に形成された嚢胞による半球状の隆起をさす」とありこれらからは外壁説に誤りがないように思われる。そそこでもう一度GWとは何か,PWZの一症状か文献的渉猟を行いながら考えてみた。
 まず「外壁説」をとる教科書としては新耳鼻咽喉科学(切替一郎著,南山堂,1967)があり濾胞性歯芽嚢胞の項に「下鼻道側壁に所謂GWを認める」とあり,さらにPWZの項にも「鼻腔側壁を内方へ圧し鼻閉,鼻漏,GWをおこす」と書かれている。すなわちGWが「外壁の膨隆」とともにPWZの症状であることを記している。更にこの本が1983年,切替一郎,野村恭也編となり改訂されてからも同説をとっている。しかし付図からは外壁説とも底説とも理解することが出来る。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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