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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻7号

1991年07月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

鼻翼再建—Nasolabial flap

著者: 田原真也 ,   天津睦郎

ページ範囲:P.510 - P.511

 日常の診療で,外鼻の部分欠損や変形に遭遇することは決して稀ではない。顔面の中央に位置する外鼻の再建,修正はおのずと整容面が目的となる。このため必要な組織移植はcolor match,texture matchを考慮してできるだけ近傍からの局所皮弁が望ましい。この点,鼻唇溝部からのNasolabial flap1,2)は特に鼻翼の部分欠損修復に適している。手術手技3)の実際を症例で供覧する。
 鼻翼部分欠損の修復法としては,耳介から皮膚と軟骨からなる複合移植(comositegraft)を行う方法もよく知られているが,Nasolabial flapはこの耳介移植に比べても,組織の萎縮が少なく,より優れていると思われる。また皮弁採取部も鼻唇溝に一致するため目立ちにくいという利点を有する。鼻翼再建には第一選択になりうると考えている。

原著

腎癌の鼻腔・上顎洞転移の1症例—治療上の問題点について

著者: 石川和郎 ,   滝沢昌彦 ,   加藤明夫 ,   酒井昇 ,   犬山征夫 ,   豊田健一 ,   小柳知彦

ページ範囲:P.513 - P.516

 はじめに
 鼻・副鼻腔悪性腫瘍の大部分は原発性であり転移性腫瘍は稀である。今回われわれは著明な鼻出血をきたし生検により腎癌の転移と判明した1例を経験したので若干の文献的考察および治療上の問題点について検討したので報告する。

腹部臓器からの転移性副鼻腔腫瘍の2症例

著者: 小川晃弘 ,   後藤昭一 ,   明海国賢 ,   滝口峻 ,   松浦博夫 ,   平本忠憲 ,   小出郁夫 ,   林佐和子

ページ範囲:P.517 - P.523

 はじめに
 他臓器の悪性腫瘍が頭頸部領域に転移をきたすことは比較的稀なことである。その中でも副鼻腔への転移は頻度が低い。このたびわれわれの経験した副鼻腔への転移性腫瘍2症例につき若干の考察を加えて報告する。

甲状腺へ単独転移をきたした腎細胞癌の1例

著者: 堤内邦彦 ,   田中省三 ,   野崎信行 ,   岸洋一 ,   井上滋彦 ,   高橋学

ページ範囲:P.525 - P.528

 はじめに
 甲状腺の転移性悪性腫瘍は,悪性腫瘍の剖検例中には比較的多く見られるが,甲状腺の手術例中には非常に稀である。
 われわれは,腎摘後8年目に甲状腺へに単独転移をきたした腎細胞癌症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

甲状腺原発扁平上皮癌の1症例

著者: 大原奎昊 ,   林崎勝武 ,   尾関由里子 ,   柴啓介 ,   今野暁男 ,   杉田佳信 ,   長尾孝一

ページ範囲:P.529 - P.533

 緒言
 甲状腺悪性腫瘍のなかで,扁平上皮癌は非常に稀な疾患とされており,その頻度は0.4%とされている。今回われわれは嗄声を主訴として当科を受診し,手術の結果,甲状腺原発扁平上皮癌と判明した1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えここに報告する。

高カルシウム血症を伴った甲状腺扁平上皮癌の1例

著者: 田島和幸 ,   岸本誠司 ,   岩井満 ,   小桜謙一 ,   宮本信昭 ,   小阪真二 ,   田村康一 ,   沼本敏

ページ範囲:P.535 - P.540

 はじめに
 甲状腺の悪性腫瘍のほとんどは分化型腺癌であり,扁平上皮癌は約1%と極めて稀である1〜4)。甲状腺扁平上皮癌は予後が極めて不良で,その発生起源に関しさまざまな説があげられ注目されている。今回,初回の生検では乳頭状腺癌と扁平上皮癌の両者の像がみられ,手術時の摘出標本においては扁平上皮癌のみの像を呈した1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。さらにこの症例は経過中に高カルシウム血症を呈した。これについても考察を加えたい。

胸骨転移を示した甲状腺濾胞癌の1例—胸骨転移に対する合併切除の試み

著者: 鈴村滋生 ,   田中治 ,   宮原裕 ,   小川佳伸 ,   北奥恵之 ,   松永喬 ,   飯岡壮吾 ,   中川裕之

ページ範囲:P.541 - P.544

 はじめに
 近年再建術式の進歩に伴い分化型甲状腺癌の進展例に対して積極的に拡大手術が行われつつある。また遠隔転移のあるものについても,転移巣が切除可能ならば積極的な切除が試みられている。今回われわれは胸骨転移をきたした甲状腺濾胞癌の1症例を経験し,それに対して胸骨切除術を加えた根治術を施行したので若干の文献的考察を加えて報告する。

耳下腺に生じた単一形腺腫の9例—特にHybrid oncocytoma-Warthin's tumorについて

著者: 結縁晃治 ,   川上登史 ,   柳絵里子 ,   溝渕光一

ページ範囲:P.545 - P.549

 はじめに
 耳下腺腫瘍において多形腺腫(Pleomorphicadenoma)に対する単一形腺腫(Monomorphicadenoma)の頻度は低い。
 われわれは過去3年6ヵ月間に全耳下腺腫瘍31例中,Monomorphic adenoma 9例を経験した。またそのうちの1例は腺リンパ腫(Adenolymphoma,Warthin's tumor)と好酸腺腫(Oxiphilic adenoma)の組織像が同一腫瘍内に共存するHybrid onco-cyoma-Warthin's tumorというべき興味深い症例であった。これらの症例を臨床病理学的に検討し,文献的考察を加えて報告する。

篩骨洞結石の1症例

著者: 野崎信行 ,   堤内邦彦 ,   田中省三

ページ範囲:P.551 - P.553

 緒言
 鼻副鼻腔結石のうち固有鼻腔結石は比較的多く,本邦でも70例を越える報告1)があるが,上顎洞結石はおよそ30例の報告2)しかない。篩骨洞結石はさらに少なく本邦で3例の報告があるのみで,海外ではわれわれの検索した範囲では見あたらない。
 今回われわれは本邦で4例目となる篩骨洞結石を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

心身医学的治療が奏効した咽喉頭異常感症の1例

著者: 入江正洋 ,   久保千春 ,   手嶋秀毅 ,   中川哲也

ページ範囲:P.555 - P.558

 はじめに
 咽喉頭に関する不定愁訴は咽喉頭異常感症と呼ばれ,その原因として心理的因子の関与を指摘する報告は多い。
 しかし,実際の診療において心身医学的治療が行われることは少なく,何ら変化のない苦痛を有しながら転医を重ねる場合も多いものと思われる。
 今回われわれは,転医を繰り返した咽喉頭異常感症の症例に対して,心身医学的治療を行い奏効したので報告する。

家庭環境による心因性失声の1症例

著者: 酒井丈夫 ,   水田邦博 ,   野末道彦

ページ範囲:P.559 - P.562

 はじめに
 心因性失声は,器質的病変のない機能性音声障害で転換性障害(いわゆるヒステリー)と言われており,その治療は音声の再獲得とともに患者への心理面への配慮が必要である。最近,家庭環境が原因で発症したと思われ,家族療法的考察が発症機序解明に有効だった症例を経験したので報告する。

緩徐形成型突発性難聴の1症例

著者: 越宗麻子 ,   森望 ,   酒井俊一

ページ範囲:P.563 - P.568

 はじめに
 原因不明で突然に発症した高度感音難聴を突発性難聴(以下,突難と略)というが,その中で聴力障害が緩徐に形成される,つまり治療経過中に聴力の悪化を示すタイプの難聴が知られている。このタイプの難聴は,すでにslow typeの突難1),緩徐形成型の突難2)として報告されているが,その頻度は低い。今回われわれはこのような経過を示した1症例を経験したので報告し,また文献的考察を行った。

内耳道狭窄に先天性一側性顔面神経麻痺と外転神経麻痺を伴った1症例

著者: 牧野伸子 ,   松本達始 ,   八田千広 ,   田矢直三 ,   石田稔 ,   田中昌子

ページ範囲:P.569 - P.572

 はじめに
 内耳奇形については,従来より,組織学的分類がなされてきた1)。近年,画像診断の進歩により,側頭骨の形態学的異常の報告2)も増加しており,新しい分類が試みられつつあるが,内耳道狭窄は,それほど多いものではない。内耳道狭窄に同側の先天性顔面神経麻痺と,高度感音性難聴,前庭機能障害を伴った症例はGratzら3),麻生ら4),増田ら5)の4例の報告があるのみである。今回われわれは,先天性一側性顔面神経麻痺に,同側の高度感音性難聴,前庭機能障害を伴い,かつ,両側性外転神経麻痺を有し,X線学的には,患側の内耳道の狭窄を認めた症例を経験したので報告する。

医療ガイドライン

Day Surgeryによる鼓膜チュービングの管理

著者: 浜田慎二 ,   小林謙 ,   石田祐子 ,   相原康隆 ,   佐久間文子 ,   上村敏夫 ,   神尾友和

ページ範囲:P.573 - P.575

 はじめに
 Day surgeryは,手術当日に入院させ,施行後に帰宅させる,いわゆる一日入院による手術であり,欧米では広く行われており1),最近わが国でも普及しつつある力式である。
 神尾記念病院では入院患者の手術は,気管内挿管による全身麻酔で行うことを原則としているが小児の難治性の滲出性中耳炎に対する鼓膜チュービングは,マスク麻酔によるday surgeryとしている。当院におけるday surgeryのシステムについて報告する。

硬性鏡を組み込んだ咽喉頭異物鉗子の使用経験

著者: 石山英一 ,   相磯研一 ,   浜田敬永 ,   石山浩一

ページ範囲:P.581 - P.582

 はじめに
 咽喉頭の異物は開業機関では比較的によくみられる疾患の一つである。松永1)の異物統計よりすると大阪大8.7%に対して周辺開業機関では35.9%と報告されている。咽喉頭異物の中で特に下咽頭,喉頭の異物のうち特に小さな魚の骨はなかなか発見しにくく,また嚥下時に疼痛を訴えるため術者も発見除去について色々と苦労をするところである。通常咽喉頭部の異物除去では片手に間接喉頭鏡あるいは硬性鏡を,また他方の手に異物摘出のための鉗子を持つため患者の舌を患者自身がもつか,介補者によって牽引保持する場合が多いが,往々にして術者の観察上あるいは異物摘出の上でも舌の最適な位置えの保持が難しく,これが小さな異物の発見の困難と摘出術上の困難に結びつく場合が多い。
 日常の煩雑な外来診療の中で,全例に仰臥位でのlaryngo microscopyを行うわけにもゆかず局所麻酔の多用と結びつく場合も多かったが,最近著者らは閉回路TV systemとKarl Storz社製の硬性鏡と,これに組み込んで使用出来る異物鉗子(実際には生検鉗子)を使用することにより喉頭異物の摘出が非常に容易に行えるようになり,局麻の使用量も極端に抑制できるようになったのでここに報告し御批判をえたい。

鏡下咡語

医療をみる眼—私の研修報告

著者: 澤島政行

ページ範囲:P.578 - P.579

 1.はじめに
 東大音声研を停年退職して4年目を迎えた。偶然のご縁でこの病院の院長をつとめてから2年が経過した。真面目に院長職を勉強するために,診療には(お呼びがかからない限り)手を出さないことにした。その結果,院長室で独りで過す時間がたっぷりあるという生活,言い換えれば他人様から「忙しいでしょうね」と聞かれる度に「暇ですよ」と答えるような生活を送っている。
 私が院長職に就任するという(意外な)話を聞いた友人の中に,「院長になると色々な本が読めるようになりますよ」と言ってくれた人がある。恐らく今の私のライフスタイルを予測して,せいぜい勉強しなさいと忠告してくれたのだと思いあたっている。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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