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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻8号

1991年08月発行

雑誌目次

トピックス 舌癌の治療 Stage Ⅰ,Ⅱ症例の治療

レーザー手術および凍結手術

著者: 法貴昭

ページ範囲:P.593 - P.598

 緒言
 Stage Ⅰ,Ⅱの舌癌に対する治療として,放射線治療,観血的手術,レーザー手術,凍結手術,化学療法,ハイパーサーミア,マイクロ波手術等各種多様である。いずれの方法も長所,短所があり,絶対的方法はない。癌の治療なので腫瘍を消失させることが一番重要なことはいうまでもない。
 これらの治療法は種々のエネルギーを用い,方法論的にも異なっているが,観点を変えて病巣を切除するか否かで分類すると,1)腫瘍を切除する方法として従来の観血的手術,CO2レーザーや接触型ヤグレーザーによる切除手術,2)病巣を切除しない方法として放射線治療,化学療法,凍結手術,ヤグレーザーによるハイパーサーミア,マイクロ波手術がある。

放射線治療を中心に

著者: 佐竹文介 ,   静隆男 ,   牧野総太郎 ,   松浦鎮

ページ範囲:P.599 - P.603

 はじめに
 舌癌の治療においては,舌の持っている構音,摂食などの社会生活に欠かせない機能のために機能保存を重視した治療が要求される。従来その役割が大きかった,舌癌治療における放射線治療,とりわけ組織内照射の持つ役割は再建外科の進歩した今日でも,依然重要であるかどうか,またどのように治療に取り込むべきかを検討した。
 そこで群馬県立がんセンターにて治療が行われた204例の舌癌の治療を分析し,放射線組織内照射の役割を特にT1,T2の早期舌癌につき検討し,T1,T2舌癌における治療法の選択についての私見を述べる。

Stage Ⅲ,Ⅳ症例の治療

国立がんセンターの場合

著者: 海老原敏 ,   真島一彦 ,   吉積隆 ,   斉川雅久 ,   大田洋二郎

ページ範囲:P.604 - P.608

 はじめに
 舌癌の治療は早期のものであれば,小線源治療,小切除,凍結療法などの保存的治療法でよく制御できる。しかし病期がⅢ期,Ⅳ期となると外科療法が主体となるのが一般的である。現在本邦で広く用いられているUICCの臨床分類TNM分類の病期分類にはⅢ期にはT2N1,Ⅳ期にはanyT,N2N3,MO,anyT,anyN,M1,が含まれており,同じ期の中でも様々な原発巣,リンパ節転移巣が含まれている。
 われわれの施設でのⅢ期,Ⅳ期の舌癌に対する治療選択とその成績について述べる。治療選択に当たっては,臨床的な進度のほかに病理組織学的悪性度,臨床病型—進展様式などを考慮して治療法を決定するが,いくつかの選択枝がある場合は,各治療法の長所短所について十分な説明をした上で患者自身に選択を委ねることになる。なおここでのTNM分類はUICCの1987年のものを用い,過去に遡って分類しなおしたものである。

癌研究会附属病院の場合

著者: 鎌田信悦 ,   川端一嘉 ,   中溝宗永 ,   井上哲生 ,   高橋久昭 ,   内田正興

ページ範囲:P.609 - P.616

 はじめに
 頭頸部癌の治療法は近年の再建外科の発達で大きな変貌をとげた。今では上咽頭癌や頭蓋底浸潤を伴う上顎癌も手術の対象となり,「手術不能」の概念も時代とともに変わってきている。このようななかでこれまでの舌癌の治療法,すなわちT1,T2は放射線で,T3,T4は手術を行うという“常識”を考え直すことは有意義なことであろう。特に治療成績が低いT3,T4に対象を限定して,治療成績を向上させるには何をすべきか考えてみた。

愛知県がんセンターの場合

著者: 長谷川泰久 ,   松浦秀博

ページ範囲:P.617 - P.622

 はじめに
 病期Ⅲ,Ⅳの舌癌に対する治療をいかにするかについて,現在基本としている手術療法での症例ごとの対応の仕方,現在検討中の治療法の順に述べ,われわれの施設の治療力針を示したい。

九州がんセンターの場合

著者: 中島格 ,   野村和

ページ範囲:P.623 - P.628

 はじめに
 Stage Ⅲ,Ⅳの舌癌の治療が与えられたテーマだが,同じstageⅢ以上の進行癌でも遠隔臓器転移を有するM1症例は姑息的な治療が主体となるので,今回は対象外として触れない。本項ではT3N0M0やリンパ節転移(N1)を有するstageⅢおよびT4N0やany TN2(or 3)としてのstage Ⅳ舌癌のように,局所進展やリンパ節転移陽性症例を対象に,現在われわれの施設で行っている治療を中心に述べる。
 また,術前,術後に行う(neo) adjuvant che-motherapyや放射線治療は,この数年の間にも変化しつつあり,当施設でも色々な検討を行いつつ治療の一環として組み入れている。とくに,著者が当施設九州がんセンターに赴任した1988年4月とほぼ時期を同じくして,小線源埋没療法(Ir)が開始され,一方で久留米大学形成外科教室(田井良明教授)の協力を得ての術後の再建外科を始めるようになった。そこで本項では,過去3年間の症例を中心に現在われわれがとり入れている治療方式について触れてみたい。

目でみる耳鼻咽喉科

外耳道湿疹

著者: 星野知之 ,   門園明 ,   佐藤大三 ,   伊藤久子

ページ範囲:P.590 - P.591

 外耳道のうちでも入口部とこれに続く軟骨部外耳道では,身体の他の部分にみられるのと同じ湿疹がみられる(図1)。
 皮脂腺や毛嚢がなく,骨面の上に薄くはる骨部外耳道の皮膚では,こうした湿疹はみられない。かなりちがった所見を呈するから,慢性外耳道炎とよんで独立した疾患とする考え方もありうる。ステロイドの軟膏が効くが,難治性である。

原著

Sleep Apnea Syndromeを呈したDown症の3例

著者: 神田幸彦 ,   重野浩一郎 ,   中尾善亮 ,   馬場史子 ,   木下英一

ページ範囲:P.629 - P.633

 はじめに
 Guilleminaultらが提唱したsleep apnea syndomeをきたす先天性疾患には数多くのものが知られている1,2,6)。今回,睡眠時の著明な呼吸障害や肺性心が,両側口蓋扁桃摘出や気管切開により著明に改善されたDown症の3例を経験したので報告するとともに若干の考察を行った。

上咽頭へ進展した蝶形骨洞粘液嚢腫の1症例

著者: 山田勝士 ,   加納有二 ,   橋本循一 ,   平田思 ,   矢島克昭

ページ範囲:P.635 - P.639

 はじめに
 蝶形骨洞粘液嚢腫は,1889年スエーデンのBerg1)が報告して以来,現在までその報告は200例程度2)である。CTやMRIにより,診断が比較的容易になった現在においても,この嚢腫が蝶形骨洞内に限局している早期に診断がつくことは少ない。嚢腫内の粘液の貯溜量が増加して洞内を充填してくると,嚢腫は周囲の骨壁を圧迫,破壊し,洞外に進展する。前外方や上方への進展が多いため,蝶形骨洞粘液嚢腫の症状は,洞の解剖学的位置により,眼症状や頭痛が圧倒的に多い3,4)。われわれは,蝶形骨洞を充満せずに下方の上咽頭に進展し,鼻閉を唯一の症状とした,蝶形骨洞原発と考えられた粘液嚢腫の1症例を経験したので,報告する。

鼻・副鼻腔パピローマについて—最近10年間の統計的観察

著者: 寺山善博 ,   野村俊之 ,   谷野徹 ,   内藤丈士 ,   山本昌彦 ,   長舩宏隆 ,   小田恂

ページ範囲:P.641 - P.645

 はじめに
 鼻・副鼻腔のパピローマは比較的稀な良性腫瘍であり,その組織型,易再発性,悪性変化などの点から他の鼻・副鼻腔良性腫瘍とは異なった性格を持っている。
 最近10年間に,私たちの教室で10例の鼻・副鼻腔パピローマの症例を経験したので,その臨床的特徴,経過ならびに病理組織学的所見について報告する。

自発性めまいを頻発した脳血管障害の1例

著者: 平塚仁志 ,   伊藤彰紀 ,   伊藤靖郎 ,   坂田英治

ページ範囲:P.647 - P.652

 はじめに
 めまいを診察するうえで,そのめまいの性状を詳細に問診することによって,ある程度はめまいの病態を把握することができる。
 一般的に自発性めまいは,末梢前庭性疾患を例にあげると,メニエール病,前庭神経炎,めまいを伴う突発性難聴,内耳動脈血栓症などに多くみられ,めまいの持続時間は数時間から数日間にも及ぶものまでさまざまである。

下咽頭梨状窩瘻により死亡した1例

著者: 北吉光 ,   佐藤武男 ,   吉野邦俊 ,   馬谷克則 ,   藤井隆 ,   伊藤聡

ページ範囲:P.653 - P.656

 はじめに
 下咽頭梨状窩瘻は1973年にTuckerとSkolnickが1)前頸部腫瘍の原因のひとつとして発表し,1979年にTakaiら2)がこれを急性甲状腺炎の原因疾患と位置づけてから年々報告例も増し,一般的に認識されるようになってきた。しかし報告症例のほとんどが若年者に限られ,高齢者における報告はほとんど見受けられない。今回われわれは若年時より左頸部の膿瘍形成,切開排膿を繰り返し,高齢となって膿汁と吐血の誤嚥により死亡した1例を経験したので報告する。

耳鼻咽喉科手術における悪性高熱症の経験

著者: 小橋眞美子 ,   酒井昇 ,   石川和郎 ,   浅井俊幸 ,   犬山征夫 ,   劔物修 ,   櫻谷憲彦

ページ範囲:P.661 - P.664

 はじめに
 悪性高熱症(Malignant hyperthermia)は全身麻酔合併症の中では比較的稀なもののひとつである。1937年Guedel1)により初めて症状の記載がなされて以来,多くの報告が見られるが,その原因および病態は十分明らかにされているとはいい難い。ダントロレンの臨床応用によりその死亡率は低下したといわれるが2,3),今なお全身麻酔の重大な合併症のひとつである。われわれが文献を渉猟し得た範囲では,耳鼻咽喉科領域で過去10年間に21例の報告がある。今回われわれは,中耳根治術中に悪性高熱症が出現した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

『臨床パネルディスカッション』

著者: 茂木五郎

ページ範囲:P.658 - P.659

 本誌随筆欄に執筆するよう依頼があり,さてなにを書こうかと思い悩んだ。もとより私には,これまでの筆者のようなスマートな文は到底は望めず,話題性にも乏しい。そこで,先週(7月13日)行われた日耳鼻北部九州連合地方部会での『臨床パネルディスカッション』について,興味ある企画だったので感想をまじえ,紹介してみることにした。
 北部九州連合地方部会は,前身の九州山口合同地方部会までさかのぼると40年近くつづいている。新設医大が生まれる以前は,長崎大学,久留米大学,九州大学,および山口医科大学の4校が持ち回りで主催校となり,毎年7月に行われてきた。蒸し暑い時期の学会といえばこの連合地方部会に思いを馳せるのは今でも変わりない。学会前日には対抗野球大会があり,結構盛り上がる。しかし,参加校が9校となった昨今は,野球場の確保が困難で,ここ数年はボーリング大会に代わってきた。学会前夜は各校の新人紹介を含めて芸能大会とスポーツ大会の成績発表があり,連合地方部会出席への楽しみの一つとなっている。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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