突発性難聴と内耳道血管輪
著者:
小川郁
,
神崎仁
,
小川茂雄
,
土橋信明
,
井上泰宏
,
山本美奈子
,
池田俊也
ページ範囲:P.681 - P.686
はじめに
前下小脳動脈が内耳道内に入り込む,いわゆる内耳道血管輪(vascular loop,以下,VLと略)が難聴や耳鳴,めまいなど,蝸牛・前庭神経症状の原因になりうるかどうかについては未だ不明な点も少なくない1,2)。しかし,顔面痙攣や三叉神経痛,舌咽神経痛などの原因の一つとしてncurova-scular cross compression (以下,NVCCと略)が挙げられ3,4),神経と血管とのmicrovascular deco-mpression (以下,MVDと略)を行うことによりこれらの症状が軽快することが報告されるようになってきたことから,蝸牛・前庭神経症状についても同様の病態が考えられている3〜7)。本邦においても,耳鳴・めまいに対してMVDを行い,症状が軽快したとする報告が散見されるようになってきている8〜12)。
一方,高分解能CTを応用したair-CT cister-nography(以下,air-CTと略)が内耳道内に限局する早期聴神経腫瘍の診断法の一つとして一般に行われているが13),air-CTにより聴神経腫瘍が認められない非腫瘍例のなかにVLが認められることがあり,NVCCとの関連についてその臨床的意義が注目されている1,14,15)。