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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科63巻9号

1991年09月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

耳介血腫と耳介偽嚢胞新鮮例の1治療法

著者: 納谷裕

ページ範囲:P.672 - P.673

 いわゆる耳介血腫にたいして,身近な材料を用いて,手技が容易で,日常生活にも支障のすくない治療法を施行し,良好な結果を得た。

原著

抗体保有率からみたChlamydia Pneumoniae感染と耳鼻咽喉科疾患との関連性

著者: 小川浩司 ,   橋口一弘 ,   片桐鎮夫 ,   熊谷直樹 ,   和山行正

ページ範囲:P.675 - P.679

 はじめに
 Chlamydia Pneumoniaeは3番目のクラミジア種として1989年に確認された1)。その名が示すように気道に感染し,肺炎,気管支炎,咽頭炎を起こすことが知られていて2〜4),われわれも痰や扁桃陰窩および中耳貯留液からこの病原体を分離したことを報告した5〜7)
 一般人のC.pneumoniaeに対する抗体保有率は世界的に極めて高く,本邦においても,Kobayashiらや尾内らによれば成人のおよそ50%が抗体を持っている8〜11)。人口密度の高い国での抗体保有率が高いことと集団生活者で感染が流行することから,かぜ症候群や不顕性感染を起こすことが考えられ,また他の病気との関わりの可能性も十分考えられる。とくに上気道は身体の中で最も感染の起こり易い場所であることを考えれば,耳鼻咽喉科疾患との関係は非常に強いものがあるように思われる。

突発性難聴と内耳道血管輪

著者: 小川郁 ,   神崎仁 ,   小川茂雄 ,   土橋信明 ,   井上泰宏 ,   山本美奈子 ,   池田俊也

ページ範囲:P.681 - P.686

 はじめに
 前下小脳動脈が内耳道内に入り込む,いわゆる内耳道血管輪(vascular loop,以下,VLと略)が難聴や耳鳴,めまいなど,蝸牛・前庭神経症状の原因になりうるかどうかについては未だ不明な点も少なくない1,2)。しかし,顔面痙攣や三叉神経痛,舌咽神経痛などの原因の一つとしてncurova-scular cross compression (以下,NVCCと略)が挙げられ3,4),神経と血管とのmicrovascular deco-mpression (以下,MVDと略)を行うことによりこれらの症状が軽快することが報告されるようになってきたことから,蝸牛・前庭神経症状についても同様の病態が考えられている3〜7)。本邦においても,耳鳴・めまいに対してMVDを行い,症状が軽快したとする報告が散見されるようになってきている8〜12)
 一方,高分解能CTを応用したair-CT cister-nography(以下,air-CTと略)が内耳道内に限局する早期聴神経腫瘍の診断法の一つとして一般に行われているが13),air-CTにより聴神経腫瘍が認められない非腫瘍例のなかにVLが認められることがあり,NVCCとの関連についてその臨床的意義が注目されている1,14,15)

味覚異常を主訴とし亜鉛投与で改善を認めたCronkhite-Canada症候群の1症例

著者: 古田晋也 ,   冨川寛

ページ範囲:P.687 - P.691

 はじめに
 Crokhite-Canada症候群1)は非遺伝性で多くは中年以後に発症し,消化管ポリポージス,皮膚の色素沈着,脱毛,爪甲の萎縮・脱落を四主徴とする稀な疾患であり,原因はなお不明である。しかし過去の報告を検討すると味覚障害を初発症状として発症している報告も多く2),本症候群と味覚障害とは何らかの関係があると推定される。今回味覚障害を主訴としてCronkhite-Canada症候群と診断し得た症例に対して,亜鉛内服療法を行ったところ,諸症状の改善を認めたので,若干の考察を加えて報告する。

喉頭に発生した悪性リンパ腫の2例

著者: 青地克也 ,   松原一仁 ,   西川邦男 ,   岡部健一 ,   小池聰之 ,   元井信

ページ範囲:P.693 - P.696

 緒言
 喉頭に発生する悪性リンパ腫は非常に稀であり,一般には,全喉頭悪性腫瘍の1%未満といわれている。今回,われわれは喉頭に発生した悪性リンパ腫を2例経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

喉頭蓋多形性腺腫の1症例

著者: 守田雅弘 ,   宮口衛 ,   酒井俊一

ページ範囲:P.697 - P.700

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域における多形性腺腫(以下,pleomorphic adenoma)はおもに大唾液腺,特に耳下腺に好発し1%〜6%の頻度で悪性像を呈することがあるといわれているが1),ほとんどが良性である。この他にも口腔内や咽頭,口唇部の小唾液腺由来と思われるpleomorphic adenomaの報告例はあるが,喉頭,特に喉頭蓋における報告例は極めて稀である。今回,著者らは初診時呼吸苦を主訴とし,声門を確認できなかったので悪性腫瘍との鑑別をも要した喉頭蓋原発のpleomorphicadenomaを経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

舌神経由来の神経鞘腫の1例

著者: 渡利容子 ,   高橋和彦 ,   芳田之 ,   瀬成田雅光 ,   高橋邦明 ,   原晃 ,   草刈潤

ページ範囲:P.701 - P.704

 はじめに
 神経鞘腫は外胚葉系のSchwann細胞に由来する腫瘍で多くは頭蓋内,特に聴神経から発生している。一方,その他の部位での発生も少なからずあり,耳鼻咽喉科領域においては舌,鼻副鼻腔,咽喉頭,口蓋等からの発生が報告されている。今回われわれは左顎下部に発生した舌神経由来の神経鞘腫を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

蝶口蓋動脈に仮性動脈瘤形成した反復大量鼻出血症例

著者: 矢野一彦 ,   小川雅浩 ,   辻久茂 ,   富田修一 ,   橋本邦雄

ページ範囲:P.705 - P.710

 緒言
 鼻出血は耳鼻咽喉科臨床上ごく日常的な症候であるが,時に大量の出血をきたし的確な診断と確実な止血処置が行われないと致命的な結果を招きかねない場合がある。大量鼻出血の原因のひとつに動脈瘤性鼻出血があるが,出血源となった動脈瘤は内頸動脈領域のものであり1),特に海綿静脈洞部周辺に発生し,後篩骨洞あるいは蝶形骨洞に穿孔破裂した例が多く報告されている。
 われわれは,外頸動脈領域である蝶口蓋動脈末梢に仮性動脈瘤を形成し,血圧上昇に伴い反復大量の鼻出血をきたし止血困難であった症例を経験した。この症例では仮性動脈瘤形成の原因となるべき頭部外傷や手術の既往がなく,動脈瘤の形成部位など他に例をみないため,その経過を報告し若干の考察を加える。また,外頸動脈領域の難治性鼻出血に対する治療法として選択的動脈塞栓術が出血部位の同定ならびに止血に極めて有用であったことを併せて報告する。

Sweep Frequency Tympanometryで予測できた先天性耳小骨離断の1例

著者: 斎藤啓光 ,   藤田博之 ,   佐伯哲郎 ,   永瀬茂代 ,   舩坂宗太郎

ページ範囲:P.711 - P.715

 はじめに
 現在チンパノメトリーは,滲出性中耳炎や耳管狭窄症の診断に有効な手段として,広く普及している。しかし,本法は外耳道圧変化に伴う中耳のインピーダンス変化を測定するものであり,プロープ音が220Hzと低いため,中耳インピーダンスのうち,主にスチフネスリアクタンス変化が反映される。このため,中耳病変の中でも主に,マスリアクタンス成分である耳小骨病変の診断には不十分である1,2)。今回われわれは,通常のインピーダンスオージオメトリを改良したSweep Fre-quency Tympanometryを使用し,耳小骨離断との診断のもとに手術を行い,術後聴力改善が得られ,術後のSweep Frequency Tympanogramでも改善を認めた1例を経験したので,ここに報告する。

側頸部腫脹で発症した頸部巨大静脈血栓の1例

著者: 片桐聡 ,   村上匡孝 ,   日向美知 ,   松岡秀樹 ,   後藤達也

ページ範囲:P.717 - P.720

 はじめに
 静脈血栓はほとんどが下肢の静脈に起こり,頸部に認められることは稀である。比較的多いとされる内頸静脈血栓症を除けば頸部の巨大血栓は過去に報告がない。今回われわれは側頸部腫脹で発症し腫瘍と考え摘出したところ,巨大な頸部静脈血栓であった症例を経験した。極めて稀な症例であり,若干の文献的考察を加え報告する。

non O1 Vibrio choleraeによる急性化膿性中耳炎の1症例

著者: 湯田厚司 ,   前田太郎 ,   田上稔 ,   田邊美真子 ,   青木久美 ,   松井博

ページ範囲:P.721 - P.724

 緒言
 non O1 Vibrio cholerae (いわゆるNAG Vib-rio:non-agglutinable vibrio)はVibrio choleraeと形態や生化学的性状は同一であるが,O型血清においてのみ区別される菌種である1〜4)。NAGVibrioはコレラと同様な下痢症状を呈する場合もあるが,腸管内細菌であるため,耳鼻咽喉科領域よりNAG Vibrioを検出することは極めて稀である。今回われわれは,耳漏より検出しえたNAGVibrioの1症例を経験したので報告する。

咽頭後間隙脂肪肉腫の1症例

著者: 森末まり ,   坂本裕 ,   小川郁 ,   土橋信明 ,   高橋正紘

ページ範囲:P.725 - P.730

 はじめに
 脂肪肉腫は,軟部組織に発生する悪性腫瘍のなかでは比較的頻度の高いもののひとつであるが,その大部分は四肢,後腹膜に発生し,頭頸部領域に発生するものは稀である1〜7)
 今回われわれは咽頭後間隙に生じた脂肪肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

進行性両側性難聴を呈したびまん性転移性髄膜癌腫症の1症例

著者: 杉内友理子 ,   加我君孝

ページ範囲:P.731 - P.735

 はじめに
 突発性難聴は,比較的頻度の高い疾患であり,われわれも日常の診療の中でしばしば遭遇する。一般的には,中年に多い疾患であるとされているが,高齢者でも突然起こった片側性感音難聴が認められ,他の脳神経症状が認められなければ,とりあえず突発性難聴として対処される。しかし,確定診断にいたるには,他の疾患を除外する必要があり,時にそれが容易でない場合がある。最近われわれは,胃癌にて胃全摘の既往歴をもち,急に起こった左難聴・耳鳴で発症し,両側の難聴が次第に進行した,びまん性転移性髄膜癌腫症の1症例を経験したので報告する。

学会トピックス

Politzer Society

著者: 坂井真

ページ範囲:P.736 - P.738

 1.Politzer Societyの歴史
 この学会は日本ではそれほどなじみがない学会なので,まずこの学会の歴史について述べることにする。
 耳科学とくに耳科手術の分野で国際的に活躍していた欧米の専門医たちが,かねてから国際的な規模の学会を設立しようと計画をたてていた。計画を推進していた人達は,ドイツのClaus Jansen,アメリカのDavid AustinJack Pulec,北アイルランドのGordon Smythらであったそうだが,たまたま1981年に第12回世界耳鼻咽喉科会議がハンガリーのブタペスト市で開催されたときに,ハンガリー生まれで耳科学の功績のあったAdam Politzerの名前に因んでPolitzer Societyと名づけた学会を設立した。

鏡下咡語

“損失補填”と“大蔵通達”—そして“医療保険行政通知”

著者: 北嶋俊之

ページ範囲:P.740 - P.741

 1.プロローグ
 去る6月20日読売新聞のスクープ以来,国をあげて補填・ホテンの大合唱が続いている。
 N.H.K.大河ドラマ眞田広之尊氏・武田鉄矢正成・片岡孝夫後醍醐“太平記”の「この頃,都に流行るもの夜討,強盗,偽せ綸旨。召人,早馬,から騒動……」

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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